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雨の日の怪
19話:濁流(だくりゅう)
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彩那は、娘と見られる少女が父親と見られる男性にいじめられている光景を見て、怯《おび》えている。
しかし、河川敷だ。しかも雨によって濁《にご》り、増水している。あの流れに飲まれれば死んでしまうだろう。
「嫌な予感は的中したな、さあ帰ろう」
「ちょっ……、彩那ちゃん、ここからだよ」
「信濃ちゃん……、怖いじゃん。警察呼ぼうよ」
「それはそうだな。こんな虐待親が生きてること自体、世の中の怪奇だもん」
信濃路は、彩那の通報したいという気持ちを尊重した。あいつのトラウマは簡単に消えない。
彩那が電話を出し、通報し終わると、いきなり早苗が来ていた。いつもの派手なチェックの羽織物《はおりもの》に、ジーパンである。
「おっはー、私も来てやったぜ!」
「早苗ちゃん、こんなところまで来てさー、何があったの?」
「綾ちゃん、よく聞いてくれたね! 実はね、『舵名』という子がこの怪奇に関係してる……、というか犯人なんや。けどな、黙ってほしいんだ」
早苗はどうして知っていたのか? そしてまだ怪奇は起こってないのに、なぜ止めることを止めようとしているのか?
そもそも舵名は周りにいない。
「どうして君が?」
佳奈もそう思って、早苗に尋ねるように聞いた。
「佳奈ちゃん、この状況を見てわかるでしょ。少女が虐待を受けてる。こういうのが許せない舵名は少女を楽にして、妖怪にする。そうやって出来たのが……、おっと、危ない危ない」
早苗の発言の、最後の部分が気になる。何が大きなことを隠しているのではないか?
雨は未《いま》だに降る。川は濁り、溢れる。けれども、向こう岸の君下の街並みが、雨によって輝いて見える。
「なんか変わった波が押し寄せるね」
彩那の一言で気づいた、上流から流れてくる、上から叩きつけるような波。こんな波は普通、嵐の海でしか見られないはずである。
しかし、河川敷だ。しかも雨によって濁《にご》り、増水している。あの流れに飲まれれば死んでしまうだろう。
「嫌な予感は的中したな、さあ帰ろう」
「ちょっ……、彩那ちゃん、ここからだよ」
「信濃ちゃん……、怖いじゃん。警察呼ぼうよ」
「それはそうだな。こんな虐待親が生きてること自体、世の中の怪奇だもん」
信濃路は、彩那の通報したいという気持ちを尊重した。あいつのトラウマは簡単に消えない。
彩那が電話を出し、通報し終わると、いきなり早苗が来ていた。いつもの派手なチェックの羽織物《はおりもの》に、ジーパンである。
「おっはー、私も来てやったぜ!」
「早苗ちゃん、こんなところまで来てさー、何があったの?」
「綾ちゃん、よく聞いてくれたね! 実はね、『舵名』という子がこの怪奇に関係してる……、というか犯人なんや。けどな、黙ってほしいんだ」
早苗はどうして知っていたのか? そしてまだ怪奇は起こってないのに、なぜ止めることを止めようとしているのか?
そもそも舵名は周りにいない。
「どうして君が?」
佳奈もそう思って、早苗に尋ねるように聞いた。
「佳奈ちゃん、この状況を見てわかるでしょ。少女が虐待を受けてる。こういうのが許せない舵名は少女を楽にして、妖怪にする。そうやって出来たのが……、おっと、危ない危ない」
早苗の発言の、最後の部分が気になる。何が大きなことを隠しているのではないか?
雨は未《いま》だに降る。川は濁り、溢れる。けれども、向こう岸の君下の街並みが、雨によって輝いて見える。
「なんか変わった波が押し寄せるね」
彩那の一言で気づいた、上流から流れてくる、上から叩きつけるような波。こんな波は普通、嵐の海でしか見られないはずである。
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