タイムロード(時の小道)

カルラ店長

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1章 峠の釜めし

棍棒

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ここはタイムロード(時の小道)いつもの様に全身茶色ずくめの老人が暖かい缶コーヒーを飲んでいた。そこへ2人の会社員風の男達が通り過ぎる。「おやおや今度はあの方たちでしょうか?いやはや会社員ってのは大変ですねぇ上司がカラスは白いと言ったら白いぞと言わなければならない世界です」「この話を笑い話ととらえるか?怖い話ととらえるか?それはあなたの感性に任せましょう」そう言うと老人は再び缶コーヒーを飲んだ。

真昼のオフィス街2人の中年男性が道を歩いていた。少し白髪混じりのおじさんが話しかけた。「まあまあそう緊張する必要はないよ、要は相手に合わせて全てはいっ!とでも言っときゃいいのさ」そう言われた男性若いようだが何と言うか人生に疲れたみたいな雰囲気を持った男ははぁ!とだけ言った。
さてここだ!2人はここら辺で1番デカいビルの前に着いた。大手の消費者金融会社の本社だった。「か、課長本当に私1人で行くのですか?」若い男性は明らかにビビった様子で課長に言った。課長はぽんぽんと若い男の肩を叩くと「心配すんなって!ちゃんとアポはとってあるし後は小坂君が社長にはいはい言ってればいいんだよ」小坂と呼ばれた男はまだ心配そうだったがそんな彼をよそに課長は「まあまあ後は頼んだよ、いいかい?決して社長を怒らすなよ社長の言葉は絶対と思いイエスマンしとけばいいんだから!」「じゃあ、後は頼んだよ小坂君!」そう言うと課長はそそくさと人混みに消えてしまった。「課長~」小坂は呟いたが最早そこには課長の姿はなかった。仕方なく小坂はその巨大なビルの腹の中に入った。
「ここの最上階です!」いかにも受付嬢の様な女の子に簡単にアポが取れて少し楽になった小坂だったがこの50階建てのビルの最上階と言われまた小刻みに震え出した。
・・ここまで来たんだ仕方ない!・・と思いながら意を決してエレベータに乗ると50階のボタンを押した。ほどなくチーンと言う音とともに開いた先には正面の部屋に「応接室」と書いてあったので小坂は軽く咳払いをすると扉をノックして「こんにちは!AC印刷の者です!」と言った。するとすぐに「ああ、下で聞いたよ入りたまえ!」「失礼します!」小坂は恐縮しながらも重そうな扉を開けて中に入った。
中はまるでドラマのセットのようだった。広い三十畳の部屋に観葉植物、ズラリと並ぶ賞状や盾やトロフィー真ん中にドンと応接用ソファーといかにも高そうな机その真ん中に主人はいた!サングラスをかけ髪はオールバック高級そうなスーツを着てるその人は「小坂くんだっけ?まあ座りたまえ!」と告げた。
「あっは、はいっ!」一瞬ビクッとしたがさすが大手の社長、まるで小坂はライオンと対峙してるようになり、いそいで右手の重厚なソファーに座った。「さて、先ずは仕事の話に入ろう!決めたよ!お宅のコピー機60台使わせて貰うよ!」・・小坂はろ、60台?すげぇ・・と思いながらすぐ
「は、はい!ありがとうございます!」と直立し深々と頭を下げた!「ははは!この位どおって事ないよさて、細かいことはまたにしてどうだい?今時間あるかい?」そう言うと社長はニンマリと笑った。小坂は恐縮しながら「はいっ!もちろん暇でございます」と言った。「じゃあどうこれ行く?」そう言うと社長は両拳を縦に並べてぎゅっと握った。小坂は一瞬戸惑ったがすぐ「あ、ああゴルフですか!ああいいです」ねと言おうとしたら社長が立ち上がって机をバンっと叩き「ノン!」と言った!そしてあからさまに不愉快な顔になり「君!この俺があんなどこのオッサンでもやってるスポーツやるというのかね?」
小坂はあまりの社長の変わり様に驚き慌てて「すいません!えっとじゃあそうか!野球ですか?」すると社長はさらに机を叩き「ファック!」と言った。・・やばい社長が何故か怒ってるやはり草野球やるわけないか?ここは知らないから聞いた方がいいだろう・・そして小坂は立ち上がって深々と頭を下げ「す、すいません社長!私の様な凡人にはあなたの様な高尚な趣味は分かりません!是非ともお教えください!」
一瞬の沈黙・・・すると社長はコロっと笑顔になると「何だ知らなかったのか、ならしょうがないな」社長はまた座り直してこう言った「棍棒だよ!」・・・小坂は?になった。「は?はい?」すると社長はまた機嫌が悪くなりサングラスを上に上げながら「何?おいっまさか棍棒を知らないのか?」
「おいおい、こんな無礼な会社と取り引きする気はねぇな!」と凄んできた。小坂は焦った!・・・まずいだ怒らせてしまったこのままでは俺のせいで取り引きが破談になってしまう!し、仕方ないここは相手に合わせるしかない!・・小坂は意を決すると「あっ思い出しました!こ、棍棒ですね知ってます!」するとまた社長はコロっと笑顔になると「なぁんだ知ってんじゃん!全く君は人が悪いな!」すると社長は立ち上がって何かを振る仕草をしながら「私はコレに今大ハマりしていてねぇ~」「つい先日も行ってきたばかりなんだよー」「いやはや昨日は結構殴ったなぁ」社長は嬉しそうに腕をブンブン振る。小坂は混乱した。・・・殴った?棍棒で?何を?・・・
と心では動揺しながら「いや~いいっすね」
とか言ってた。
社長はまた座り直して「君はまだやったことは無いんだろ?任せてくれ!もう場所は押さえてある」「後は道具だが・・」小坂はぺこぺこしながら「ああ、そうですね道具は持ってませんね」・・・道具?棍棒のことか?どこにそんなもん売ってんだよ・・
「まあ、任せてくれたまえ!道具は私が用意してあげよう」「取り敢えず棍棒は三番までとあと金棒七番まであればいいだろ?」
小坂は背中にヒヤリとした物を感じながら
「あ、そうですね、そんだけあれば充分です!」・・・か、金棒?鬼が持ってるやつか?・・・すると社長は手をパンと叩くと
「よっしゃ決まりださて今からいくよ」「もう仲間は屋上でアップしてるから」「あっそうそう今回はコジカ電気の会長も居るからね」小坂はもうどうでもよくなり「コジカ電気ってあの有名な電気店のへぇ~」「あの会長はプロ級の腕前だよ」「はぁ凄んですね」・・・何のプロ?・・・「君も初めてだろうけど頑張って殴れよ」「最低ワンキルはいってくれよ!」小坂はもうヤケクソで「ははは、そうですね頑張ります!」と言った。「君も初めてだろうけど頑張って殴れよアシストするから最低3人は潰すから」「ハハハそうですね頑張ります!」小坂は震えながら言った。「さぁ行くぞ屋上!」
社長は立ち上がっていつ間にか皮のグローブ付けていた。「俺は6人やる!」「ふはははは!」小坂は小さく「ははは・・・」と言った。

例の小道老人が上を見るとゴゴゴーと戦闘機が通った。「あっあれパブジーのやつだ!」空はどこまでも真っ青だった。 完
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