上 下
89 / 156
悪魔の討伐

討伐の基本

しおりを挟む
| 藤堂 京介


 僕はいろいろとスッキリした後、おかしらに連絡し車を用意させた。あれから一日経って、まるで人が変わったかのように、ニコニコとした真っ新で真っ白なおかしらが誕生していた。


「住所は…どこだっけ」

「あっし、わかります」


 僕のお願いに、おかしらはテキパキと模範囚のように従っていた。ボロボロな葛川と下出を車に放り込み、ゆっくりと法定速度で走り出した。


「…ぅう、堕天使……」

「なんで、前沢さんが…それにナカまで…」

「……藤堂…くん…これは…」


 実況中継中、絹ちゃん晴風ちゃんコンビから中田討伐達成連絡があり、すぐさまおかしらに回収に行かせていた。

 最初はエリカのマンションのおかしら部屋に運ぼうかと思っていたけど、朋花のアッパーであっはーでアッハーンな様子から学校近くに待機させていたのだ。

 まあ、そのせいで予定より長くおかしらを待たせてしまったのは内緒だ。


「だぁーてろ、タコ! 京ピの邪魔すんな。ね~京ぴぃ~? …………さっきの、また…して欲しい、です…愛香には内緒で…またお外で、なんて……えへ、えへへっ」

 朋花は僕の腕に抱きつきながら葛川達を睨んで恫喝していた。

 その後はデレデレした顔を僕に向け、緩いウェーブがかった金髪をキュキュっと僕の指に巻きつけたり、大きな胸を擦りつけたり。

 普段している疲れたような表情も充分魅力的だったが、事後の気怠さは何というか、良い。

 余韻を残しつつも小さな声で次のリピートの催促。どうやらオプションに満足してくれたようだ。欲しがりさんだなあ。


「ひっ! …ぐぅ、てめぇ…」

「……何が起きてる? 先週末に何かがあった…? まずいまずいまずい……」

「…ぅう、眠らせババア…」


 なんか中田もボロボロだった。

 絹ちゃんの武力とは、晴風ちゃんの最大戦力とは何だったんだろうか。女の子らしいが、ここまで容赦なく出来るとは……骨折れてるし………ま、僕には関係ないか。


「…ぅう、かみなりが…」


 なんか意識も混濁してるな…雷はもっとダメージの出方が違うけど…

 朋花と葛川と下出には強弱の違いはあれど回復の魔法をかけてある。意識をはっきりさせてないと復讐になんないしさ。中田にも後でかけるか。


「…まだだ。まだ何か出来るはず…」


 そして、下出くん。ボソボソ言ってるけど、聞こえてるんだよね。ただ、この車に乗ったからにはもう後戻りはできない。君たちに待ってるのは断罪と辺境への追放だけさ。


「葛川くん、下出くん、上田くんはそこに居るのかな?」

「っ……」

「………ぐはっ!」


「京ピが聞いてるじゃん。あくしろや。ね~京ピィ?」

「うんうん」


 …肘でカチ上げか。拘るね。肘。まあ、まだ魔法消して無いし、仕方ないね。

 でも……良く乗りこなすな…? 

 僕、最初は結構きつかったのに…朋花は何の気負いもなく力の強弱を自然につけ、魔法を自分の手足のように扱っている…

 人族の傑出した才能とはいったい…





 到着したのは六階建ての雑居ビル。繁華街もそこそこ近かった。
 ビルの左右に隙間は無く、周りに溶け込んでいて、つい見逃してしまいそうな、どこにでもありそうな建物だった。


「何人?」

「……くそっ」

「…」

「まあ、いっか。行こうか。葛川くん。下出くん。案内してよ」

「グズが、あくしろや。んふふ、ねー京ピ~」


 おかしらは車で待たせ、中田を担ぐ二人を先に行かせる。葛川は小さな声で悪態をつき、下出は大人しくしてる。そして朋花は僕にくっついている。

 葛川と下出は中田を担ぎながらも空いた手でスマホを必死に操作していた。

 何か策でもあるのかな?

 だいたい聞き分けの良い山賊は100パーセント何かしら罠を用意している。大量に待ち構えていたり、即死級のトラップだったり。

 でも、ごめんね。その罠、音信不通だから。


「葛川くん、下出くん、スマホは使えないよ」

「…なんで…」


「そりゃあ、魔物討伐の基本でしょ」

「何を…言ってやがる」


 仲間呼ぶやつから最初にぶち殺すからね。経験値美味しいやつは仲間呼ぶまでじっくりと、だ。


「京ピ、キャパいね」


 それ、合ってるの、かな?





 エレベーターを上がり、六階についた。一番奥の部屋だと下出は言う。


「ここだよ、僕らの遊び場、OLLIE。藤堂くん、僕らの仲間になりたかったんだね」


 檻をオーリーとか苦しくないかな? スケボーじゃなくて、スケベーじゃないかな? それも苦しいか。

 下出は六階に上がると余裕を取り戻していた。おかしらがいないからか、回復によってかはわからない。まあ、見た目はボコボコなままなんだけど。

 確かに鍵は開いた。この部屋も本物なんだろう。けど僕の索敵は誤魔化せない。もちろん瞳の色も。

 うーん。乗るか。

 その上で潰そうか。

 まあ足掻くのはわかるけどさ。悪い貴族とか山賊とか、簡単に諦めたりはしなかったし。

 諦めた時はだいたい目と耳と鼻が両手いっぱいになった時だったし。

 早く諦めたら良かったのに。

 欲しがるなあ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

男女比世界は大変らしい。(ただしイケメンに限る)

@aozora
ファンタジー
ひろし君は狂喜した。「俺ってこの世界の主役じゃね?」 このお話は、男女比が狂った世界で女性に優しくハーレムを目指して邁進する男の物語…ではなく、そんな彼を端から見ながら「頑張れ~」と気のない声援を送る男の物語である。 「第一章 男女比世界へようこそ」完結しました。 男女比世界での脇役少年の日常が描かれています。 「第二章 中二病には罹りませんー中学校編ー」完結しました。 青年になって行く佐々木君、いろんな人との交流が彼を成長させていきます。 ここから何故かあやかし現代ファンタジーに・・・。どうしてこうなった。 「カクヨム」さんが先行投稿になります。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貞操観念逆転世界におけるニートの日常

猫丸
恋愛
男女比1:100。 女性の価値が著しく低下した世界へやってきた【大鳥奏】という一人の少年。 夢のような世界で彼が望んだのは、ラブコメでも、ハーレムでもなく、男の希少性を利用した引き籠り生活だった。 ネトゲは楽しいし、一人は気楽だし、学校行かなくてもいいとか最高だし。 しかし、男女の比率が大きく偏った逆転世界は、そんな彼を放っておくはずもなく…… 『カナデさんってもしかして男なんじゃ……?』 『ないでしょw』 『ないと思うけど……え、マジ?』 これは貞操観念逆転世界にやってきた大鳥奏という少年が世界との関わりを断ち自宅からほとんど出ない物語。 貞操観念逆転世界のハーレム主人公を拒んだ一人のネットゲーマーの引き籠り譚である。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...