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悪魔の討伐
討伐の基本
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| 藤堂 京介
僕はいろいろとスッキリした後、おかしらに連絡し車を用意させた。あれから一日経って、まるで人が変わったかのように、ニコニコとした真っ新で真っ白なおかしらが誕生していた。
「住所は…どこだっけ」
「あっし、わかります」
僕のお願いに、おかしらはテキパキと模範囚のように従っていた。ボロボロな葛川と下出を車に放り込み、ゆっくりと法定速度で走り出した。
「…ぅう、堕天使……」
「なんで、前沢さんが…それにナカまで…」
「……藤堂…くん…これは…」
実況中継中、絹ちゃん晴風ちゃんコンビから中田討伐達成連絡があり、すぐさまおかしらに回収に行かせていた。
最初はエリカのマンションのおかしら部屋に運ぼうかと思っていたけど、朋花のアッパーであっはーでアッハーンな様子から学校近くに待機させていたのだ。
まあ、そのせいで予定より長くおかしらを待たせてしまったのは内緒だ。
「だぁーてろ、タコ! 京ピの邪魔すんな。ね~京ぴぃ~? …………さっきの、また…して欲しい、です…愛香には内緒で…またお外で、なんて……えへ、えへへっ」
朋花は僕の腕に抱きつきながら葛川達を睨んで恫喝していた。
その後はデレデレした顔を僕に向け、緩いウェーブがかった金髪をキュキュっと僕の指に巻きつけたり、大きな胸を擦りつけたり。
普段している疲れたような表情も充分魅力的だったが、事後の気怠さは何というか、良い。
余韻を残しつつも小さな声で次のリピートの催促。どうやらオプションに満足してくれたようだ。欲しがりさんだなあ。
「ひっ! …ぐぅ、てめぇ…」
「……何が起きてる? 先週末に何かがあった…? まずいまずいまずい……」
「…ぅう、眠らせババア…」
なんか中田もボロボロだった。
絹ちゃんの武力とは、晴風ちゃんの最大戦力とは何だったんだろうか。女の子らしいが、ここまで容赦なく出来るとは……骨折れてるし………ま、僕には関係ないか。
「…ぅう、かみなりが…」
なんか意識も混濁してるな…雷はもっとダメージの出方が違うけど…
朋花と葛川と下出には強弱の違いはあれど回復の魔法をかけてある。意識をはっきりさせてないと復讐になんないしさ。中田にも後でかけるか。
「…まだだ。まだ何か出来るはず…」
そして、下出くん。ボソボソ言ってるけど、聞こえてるんだよね。ただ、この車に乗ったからにはもう後戻りはできない。君たちに待ってるのは断罪と辺境への追放だけさ。
「葛川くん、下出くん、上田くんはそこに居るのかな?」
「っ……」
「………ぐはっ!」
「京ピが聞いてるじゃん。あくしろや。ね~京ピィ?」
「うんうん」
…肘でカチ上げか。拘るね。肘。まあ、まだ魔法消して無いし、仕方ないね。
でも……良く乗りこなすな…?
僕、最初は結構きつかったのに…朋花は何の気負いもなく力の強弱を自然につけ、魔法を自分の手足のように扱っている…
人族の傑出した才能とはいったい…
◆
到着したのは六階建ての雑居ビル。繁華街もそこそこ近かった。
ビルの左右に隙間は無く、周りに溶け込んでいて、つい見逃してしまいそうな、どこにでもありそうな建物だった。
「何人?」
「……くそっ」
「…」
「まあ、いっか。行こうか。葛川くん。下出くん。案内してよ」
「グズが、あくしろや。んふふ、ねー京ピ~」
おかしらは車で待たせ、中田を担ぐ二人を先に行かせる。葛川は小さな声で悪態をつき、下出は大人しくしてる。そして朋花は僕にくっついている。
葛川と下出は中田を担ぎながらも空いた手でスマホを必死に操作していた。
何か策でもあるのかな?
だいたい聞き分けの良い山賊は100パーセント何かしら罠を用意している。大量に待ち構えていたり、即死級のトラップだったり。
でも、ごめんね。その罠、音信不通だから。
「葛川くん、下出くん、スマホは使えないよ」
「…なんで…」
「そりゃあ、魔物討伐の基本でしょ」
「何を…言ってやがる」
仲間呼ぶやつから最初にぶち殺すからね。経験値美味しいやつは仲間呼ぶまでじっくりと、だ。
「京ピ、キャパいね」
それ、合ってるの、かな?
◆
エレベーターを上がり、六階についた。一番奥の部屋だと下出は言う。
「ここだよ、僕らの遊び場、OLLIE。藤堂くん、僕らの仲間になりたかったんだね」
檻をオーリーとか苦しくないかな? スケボーじゃなくて、スケベーじゃないかな? それも苦しいか。
下出は六階に上がると余裕を取り戻していた。おかしらがいないからか、回復によってかはわからない。まあ、見た目はボコボコなままなんだけど。
確かに鍵は開いた。この部屋も本物なんだろう。けど僕の索敵は誤魔化せない。もちろん瞳の色も。
うーん。乗るか。
その上で潰そうか。
まあ足掻くのはわかるけどさ。悪い貴族とか山賊とか、簡単に諦めたりはしなかったし。
諦めた時はだいたい目と耳と鼻が両手いっぱいになった時だったし。
早く諦めたら良かったのに。
欲しがるなあ。
僕はいろいろとスッキリした後、おかしらに連絡し車を用意させた。あれから一日経って、まるで人が変わったかのように、ニコニコとした真っ新で真っ白なおかしらが誕生していた。
「住所は…どこだっけ」
「あっし、わかります」
僕のお願いに、おかしらはテキパキと模範囚のように従っていた。ボロボロな葛川と下出を車に放り込み、ゆっくりと法定速度で走り出した。
「…ぅう、堕天使……」
「なんで、前沢さんが…それにナカまで…」
「……藤堂…くん…これは…」
実況中継中、絹ちゃん晴風ちゃんコンビから中田討伐達成連絡があり、すぐさまおかしらに回収に行かせていた。
最初はエリカのマンションのおかしら部屋に運ぼうかと思っていたけど、朋花のアッパーであっはーでアッハーンな様子から学校近くに待機させていたのだ。
まあ、そのせいで予定より長くおかしらを待たせてしまったのは内緒だ。
「だぁーてろ、タコ! 京ピの邪魔すんな。ね~京ぴぃ~? …………さっきの、また…して欲しい、です…愛香には内緒で…またお外で、なんて……えへ、えへへっ」
朋花は僕の腕に抱きつきながら葛川達を睨んで恫喝していた。
その後はデレデレした顔を僕に向け、緩いウェーブがかった金髪をキュキュっと僕の指に巻きつけたり、大きな胸を擦りつけたり。
普段している疲れたような表情も充分魅力的だったが、事後の気怠さは何というか、良い。
余韻を残しつつも小さな声で次のリピートの催促。どうやらオプションに満足してくれたようだ。欲しがりさんだなあ。
「ひっ! …ぐぅ、てめぇ…」
「……何が起きてる? 先週末に何かがあった…? まずいまずいまずい……」
「…ぅう、眠らせババア…」
なんか中田もボロボロだった。
絹ちゃんの武力とは、晴風ちゃんの最大戦力とは何だったんだろうか。女の子らしいが、ここまで容赦なく出来るとは……骨折れてるし………ま、僕には関係ないか。
「…ぅう、かみなりが…」
なんか意識も混濁してるな…雷はもっとダメージの出方が違うけど…
朋花と葛川と下出には強弱の違いはあれど回復の魔法をかけてある。意識をはっきりさせてないと復讐になんないしさ。中田にも後でかけるか。
「…まだだ。まだ何か出来るはず…」
そして、下出くん。ボソボソ言ってるけど、聞こえてるんだよね。ただ、この車に乗ったからにはもう後戻りはできない。君たちに待ってるのは断罪と辺境への追放だけさ。
「葛川くん、下出くん、上田くんはそこに居るのかな?」
「っ……」
「………ぐはっ!」
「京ピが聞いてるじゃん。あくしろや。ね~京ピィ?」
「うんうん」
…肘でカチ上げか。拘るね。肘。まあ、まだ魔法消して無いし、仕方ないね。
でも……良く乗りこなすな…?
僕、最初は結構きつかったのに…朋花は何の気負いもなく力の強弱を自然につけ、魔法を自分の手足のように扱っている…
人族の傑出した才能とはいったい…
◆
到着したのは六階建ての雑居ビル。繁華街もそこそこ近かった。
ビルの左右に隙間は無く、周りに溶け込んでいて、つい見逃してしまいそうな、どこにでもありそうな建物だった。
「何人?」
「……くそっ」
「…」
「まあ、いっか。行こうか。葛川くん。下出くん。案内してよ」
「グズが、あくしろや。んふふ、ねー京ピ~」
おかしらは車で待たせ、中田を担ぐ二人を先に行かせる。葛川は小さな声で悪態をつき、下出は大人しくしてる。そして朋花は僕にくっついている。
葛川と下出は中田を担ぎながらも空いた手でスマホを必死に操作していた。
何か策でもあるのかな?
だいたい聞き分けの良い山賊は100パーセント何かしら罠を用意している。大量に待ち構えていたり、即死級のトラップだったり。
でも、ごめんね。その罠、音信不通だから。
「葛川くん、下出くん、スマホは使えないよ」
「…なんで…」
「そりゃあ、魔物討伐の基本でしょ」
「何を…言ってやがる」
仲間呼ぶやつから最初にぶち殺すからね。経験値美味しいやつは仲間呼ぶまでじっくりと、だ。
「京ピ、キャパいね」
それ、合ってるの、かな?
◆
エレベーターを上がり、六階についた。一番奥の部屋だと下出は言う。
「ここだよ、僕らの遊び場、OLLIE。藤堂くん、僕らの仲間になりたかったんだね」
檻をオーリーとか苦しくないかな? スケボーじゃなくて、スケベーじゃないかな? それも苦しいか。
下出は六階に上がると余裕を取り戻していた。おかしらがいないからか、回復によってかはわからない。まあ、見た目はボコボコなままなんだけど。
確かに鍵は開いた。この部屋も本物なんだろう。けど僕の索敵は誤魔化せない。もちろん瞳の色も。
うーん。乗るか。
その上で潰そうか。
まあ足掻くのはわかるけどさ。悪い貴族とか山賊とか、簡単に諦めたりはしなかったし。
諦めた時はだいたい目と耳と鼻が両手いっぱいになった時だったし。
早く諦めたら良かったのに。
欲しがるなあ。
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