異世界帰りの僕が100人斬りの勇者だなんてまだ誰にも知られていない ~帰還した元勇者の爛れたラブコメディ~

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悪魔の討伐

やっちゃえTOMOKA!

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| 藤堂 京介


 昼休み、葛川はお昼ご飯を食べ終わるのを待てず、放課後いつものところに来い!なんて言って立ち去ろうとした…んだけど、そんな事言われても…ちなみにどこ? とつい聞き返してしまった。

 葛川は体育館裏だあ! と言って足早に立ち去った。


 だって…五年前のいつもの場所、なんて言われても困ってしまう。教室もあやふやだったのに。わかるわけないよ。

 結局、放課後に体育館裏で待ち合わせる事になってしまった。

 はー。僕の買い食いが…

 遅くなると未羽の料理がお腹に入らなくなるしなあ。帰りも遅くなるだろうし…

 まあ、明日か…

 絹ちゃんと晴風ちゃんの策、まだなんかありそうだったから水曜くらいにスタートかと思ってたけど…仕方ないか。

 なら、始めようか。クエスト。

 朋花と一緒にパーティだ。


「京ピ…わたし怖い…」

「…大丈夫だよ。安心して」


 撫で撫でして声かけをする。まあ、瞳の色に若干謀りが混ざってはいるが、可愛いものだ。撫で撫でに大方ハマってしまったのだろう。微回復だし、ツヤツヤだし。

 それに、そういう建前、嫌いじゃない。

 どの世界であっても、女の子の建前は大事なものだ。頼ってくれて嬉しいよ。


「朋ちゃ~ん」

「ひっ、愛香、…な、何?」


「…ま、良いけどさ~京ちゃん、じゃあ先に帰るね~」

「ああ、気をつけなよ」

「はーい! だいしてる!」


 ギャル語…気に入ったのか…

 愛香には先に帰宅してもらった。まあ愛香は愛香で、聖と瑠璃ちゃんに用があるらしい。何か丸卓もっかいひっくり返してくるーとか言っていた。
 その意味はまあわかるが、どうなるかまではわからない。流れに身を任そう。

 僕は学んだんだ。





「でも、実際どうするの?」


 朋花は不安そうに尋ねてくる。


「うーん。僕はリアクションなら得意だけどアクションはね…この前言った事、覚えてる?」

「? 愛香と仲良くして煽る、でしょ? でも中田からじゃなかった? 今日休みだったけど…」


「だね。それでちょっとまだわからないんだけど、中田は片付きそう…みたい…なんだよ。ごめんね、変な言い方しか出来なくて。僕もよくわからないんだ。まあ、だからさ、葛川と下出だけじゃあ物理アクションは無さそうなんだよね。せいぜいお話だけじゃないかな?」


 絹ちゃんと晴風ちゃんから先程、同じ時刻にメッセが競うように届いていた。だけど文面からはどうも一緒には行動していないみたいだった。


 絹ちゃん─
 武力カクホ 中田ハツケン 安心サレタシ

 はるはる─
 中田八犬伝!最大戦力投下!ナデナデ確定!ラブラブ申請!


「………」


 ……まあ、楽しそうだし、いっか。


 決死の覚悟とかは感じないし、二人とも危ないことはしないと約束していた。なら信じよう。


 昨日の夜10時スタートの策は、陵辱系主人公葛川がしてきた酷い事実を、小説に仕立てて公開することだった。

 危な過ぎた土曜日。朋花に聞いた話を、事後、絹ちゃんと晴風ちゃんに伝えたら、絹Pが動いた。晴Pも混ざった。瑠璃ちゃんは下半身にチュッチュしていた。

 それを二人で葛川の部分だけを抜き出し、編集し、動画も作って、SNSに紹介する形で発信し、リンク先の某サイトに連載小説として載っけていた。

 多分そのサイトだと警告をくらってしまうような小説の内容だった。警告を受けるまでは放置するみたいだ。ちなみに警告は、なんか、こう、痛いらしい。

 まあそのサイトが駄目になればまだまだあるそうだ。いろいろと教えてくれる親切な人も多いらしいと絹ちゃんは言っていた。うんうん。親切な人、ありがとう。


 ただ、僕には何のことかはわからない。

 勇者にサイトの細かい違いは通じない。素人にもだ。よく読まないとも言う。


 その結果、葛川を縛ることには成功していた。クラスではヒソヒソと囁かれ続けたせいか、今日はずっと大人しかった。それに愛香も、休み時間の度に僕の席に来て無邪気に笑い、会話するものだから、半ばうやむやになっていた。

 どうやら聖と瑠璃ちゃんが、おしゃべりなクラスメイトに拡散をお願いしたらしい。暴行のシーンもあるし、すぐに広まるから安心しなさい。愛香を助ける事になるけど、まあいいわ。それよりまたアオハルさせなさいよね! と言っていた。

 聖はそのお馬さんごっこをアオハル・ライドと呼んでいた。何か違うと思うけど…


 まあいい。

 姫……お馬さんたるこの勇者に全てお任せを。

 背なのか、腹なのか。どちらに乗るかはわからないけども。なんならテクノロジー満載のワイヤー手錠もまた掛けても構わない。


 だけど、勇者に手錠は通じないんだ。壊してごめんね。

 ただ、串刺し公呼ばわりはやめて欲しい。僕は公国の王ではなく、勇者なんだ。

 でも、串刺し勇者か……そういえば言われたこと、あったな…

 まあいい。それにあれはマウンティングにこだわる聖が悪いんだよ。





 体育館裏に着いた。夏休みに工事に入るのか、重機がシートを被って鎮座している。だいたい猪の魔物くらいか。


 葛川・下出の二人は腕を組み、手をトントン、足をグリグリさせ、待っていた。

 瞳の色は朝見たときより、大きくなっていた。今日一日で随分とストレスを溜めたようだ。


「来たな。ぼさお。…ちっ、朋花もか…」

「藤堂、君かい? これを流したのは」


 さっそくだ。

 これ、と下出はスマホを見せてくる。

 愛香の件は…朋花が居るからか。いや、下出が止めてるな。こいつ、楽しそうだし。スマホには…葛川物語か。いや、これ僕じゃないけど。


「違うけど」

「っ、なら広めたやつは…誰だ!」


 葛川には随分と効いてるな。広めた…拡散か。つまり、


「おしゃべりクラスメイトだけど」

「だから誰だって聞いてんだろが! 舐めてんのか!」


「おしゃべりクラスメイトだけど。あと舐めてないよ」

「なんなんだ! こいつはぁ!」

「くっすん、落ち着いてって!」


 いや、それをヒントにして探しに行きなよ。村人とかに何回聞こうがだいたい知らないもんなんだよ。足で稼ぐんだよ。それがコミュニケーションだ。

 そうやってみんな勇者になっていくんだよ。それにだいたい、2回聞いて同じ答えだったら、ああ、そういうルールね、って気付くだろうに。

 これだからクエスト童貞は……


「っ~! それに朋花! なんで藤堂にくっ付いてやがる! お前はこっちだろが!」

「初芝さんさぁ~ 立場わかってんの?」


 しかもちゃんと答えたのに流すとか…なら二回も聞くなよ。


 …………面倒だな。

 朋花をチラリと見る。瞳の色は…うん。良い色だ。そっか。ならやろう。


 でもどうしようか。

 最初は僕自身で成すつもりだった。ただ、今日の様子を見る限り、愛香は大丈夫だ。それに僕がやったとしても秒で終わる。

 そんな事をすれば、朋花の本当の復讐にはならない。ポカーンだ。

 ──なんか、終わったね? う、うん。──みたいな。

 目が点になるだけだ。


 それだと僕の積み上げた顧客満足度と依頼達成率の高さ、その日々を裏切ってしまう。

 それは許されない。


 いや…………だいたい目が点、だったな…悪即斬だったし……

 だけどそれは位階がある異世界アレフガルドの価値観だ!

 この元世界では僕は違うモノを積み上げる! 既に三日で12人だ! 違う、そっちじゃぁない!

 この元世界に合わせた顧客満足度だ!

 僕は飛び込み営業なんだ!


 ん~けどなあ。うちの売れ筋商品、素直パンチ改もなあ。ピーキーというか。

 朋花の決意に水を差す気が ... 。o O


 ───私は初芝朋花! あんた達に弄ばれた親友のカタキを打つ! 覚悟しなさい!

 ─────────アヘアヘ


 うーん。…これはマッチングしない。違う。

 拘束の魔法もなあ。気が晴れないと思うんだよね。リアクション無いし。

 うーん。満足度、満足度…

 耳、千切るのもなあ。

 陵辱スタートならアリだと思うけど…僕がしたら結局、目が点系だし…


 ふむ。ならば。
 

「……あ、あ、あーしは!、いや、違う…私は! …ぇ? な、何、京ピ? ぁっ、んちゅ?!」

「なっ! ぼさおぉ! 話の最中にキスとかふざけてんのか! 今日はほんっと、いい加減にしろよ! ギャルゲじゃねーんだよ!」

「へー。なんだ、藤堂、キスとか人前でよくやるね」


 ごめんね、朋花。朋花の身体を引き寄せ頭を撫でて鼻を擦り合わせながらキスをする。

 復讐は後で存分にさせてあげるから、僕に任せて。瞳を見て訴える。


 君に────うちのイチオシ商品を提案するよ!


 ────『在れ、"フルアド"』


「…んちゅ、ちゅ、ぇ…もう終わ…、あ、あ、ああ! 京ピィ…なにぃこれぇ? 体があちゅい…」

「うんうん。ちょっと耳貸して」

「ぃゃぁん」


「だからギャルゲか! …こいつイキりやがって! もう許さね…あん? 朋花? なん───ぷげっ!」

「あ、はっはっはー藤堂、は、おもしろすぎ…え? ───ふぎゃ!」


 さあ! うちの商品、「身体強化の魔法」、存分に使ってね! 朋花が満足したら、それがなによりの報酬だ! 

 万が一、相手の突然の欠損でも完璧安心サポート!

 副作用…は多分ちょっと…あるけど…気にしなくていい! 気にしなくていいんだ!

 やっちゃえTOMOKA!
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