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恋した人は魔法使い
お姉さんムーブ
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| 首藤絹子
さらさらと雨が降る中、緑色の傘をさしながら、私はエリカちゃんのマンションに向かうため足早に歩いていた。
待ち合わせの15時はとっくに過ぎている。遅れてるけど、傘をクルクル回してしまう。
ブルーシートとチェコ軍雨ガッパは卒業だ。
「ふん、ふん。ふへふ、…間違えた」
罪と罰から一夜明け、世界は大きく変わった。
鼻歌なんてお風呂でしかしたことなかった。慣れないこともしたくなる。する時はベストショットが撮れた時。
その第一位が…いや、もうランキングは乱れてる。順位なんてつけれない。過去もこれからも全部一位。
写真には映らない美しさが、ある。
ほんとにその通り。
声色、感触、吐息、そして、匂い。
エアコン設定、黙って2℃上げてて良かった。思ったとおり。時間とともに脳が揺れた。
それに、魔法。
本当に美しくて、全てを塗り替える。私の白い塗料もキレイに消え去った。鼻先に付いた白くて熱くてすごい匂いで塗り替えてもらった……あんなに出るんだ。すごい。人間の神秘。
京介くんだからか、魔法使いだからか……いや違う。あれは、
愛。
今日の雨は感動の涙だ。祝福が私の上から降り注ぐ。湿気はカメラの敵だった。だから雨はキライだった。でも今日から違う。空を見上げ、雨粒を受け止める。手のひらのキズはもう無い。
違うキズはつけてもらった。ふへ。
浮かれる、そうだ。浮かれていた。昨日から私はずーと、おのぼりさんだ。打ち上がったまま落ちてこれない。高い塔から落ちてきたくない。
雨雲を見上げ、思った。
みんなと、ずっと浮かんだままでいたい。
◆
円卓の間に着いた私は、昨日のことを全て二人に話した。ショックで固まってしまった二人には悪いけど、元々協定には書かれていたことだ。
だから協定に従い、今度はみんなをバックアップする。
ま、お姉さんに任せて。
「本当に、本当に、本当ですの? 本当にこんな事をするんですの?」
「私はこれで、成功した」
「絹子と瑠璃が嘘をつくとは思わないけど…」
「京介くんは嘘がつけない。私もつかない」
エリカちゃんは世間を知らない。聖ちゃんは美学を間違えている。
私は絶対に負けられない戦いに勝った。勝者の歴史に学ぶべき。
でも試合はコールド負けだった。
「それにしましてもこれは…恥ずかしいですわ…」
「昨日はクオリティが低かった」
「絹子、私、アオハルしたいんだけど…」
「これも一ページ」
はー。これだから処女はめんどくさい。
羞恥一杯の胸の扉を無理矢理こじ開けられるズッキュンも、お腹の奥が青い稲妻で痺れる春も、そこにあるというのに。
はー。生娘はこれだから。
やれやれ。
「仕方ない。私と京介くんのラブ動画を見せる。寝ないで編集した」
「それで遅刻したんですのね…」
「…そんなの、撮ったの………」
遅刻したのは朝から昂ったせいだけど、黙っとこう。
「京介くんは知らない。三脚は魔女が動かしてた。私も後で動かした」
「……」
「…その、それで、実際の京介さんは…」
「魔王」
「…」
「…今、なんと?」
「魔王、だった。まさに恐るべき魔法使いの王様。レベル100。私はしもべ。何回天国に行ったかわからない。奉仕も出来ないダメしもべ。特に最初。身体の撃ち抜き洗浄からのおあずけ。気持ち良い顔で嬉ションしてる瑠璃ちゃんをただ眺めるだけの放置プレイ……」
「絹子さんの独白を…なんといいますか……エロ──」
「言わせないわよ」
「だから策を用意した。みんなもセイコーしてほしい」
きっと、みんなで浮かぶと楽しい。
◆
「本当だ。青い光で絹子の小さな小さなおっぱいが…」
「そこじゃない。でも京介くんは可愛いって言ってくれた」
「……腹立つわね」
「絹子さんの身体から塗料が消えていきますわね。綺麗ですわぁ……」
「そう、チラリズム」
「チラリじゃないじゃない。丸見えじゃない」
「どういう意味ですの?」
はー。これだからバージンは。
やれやれ。
恥ずかしさで実を取る事を優先できない。コンセプトを理解してない。
やれやれ。
「違う。さっきまでチラリとしか見えなかったものにピントが合った。その感動を利用する」
「…整う刹那でこころを掴むのですわね」
「………」
「京介くんの目は特別。して欲しいことを見抜く。だからプラスアルファ」
「……そうよ。して欲しいことはしてくれてた。でもそれ以上にはいけなかった」
「突いて欲しいところは見抜かれた」
「絹子、黙って」
「聖さんの前で言うのは憚られるのですが、その、魔女は愛香さんのおかげだと…」
「もうやめて、って言っても無駄だった」
「絹子、黙ってってば。…いいわ。この写真の京介君、久しぶりに見たし、ね。愛香に唆されてないなら良い。だけど、このラブマシンめ。どうしてくれよう…………」
「…抵抗しても、無駄ですのね………ぃぃ」
エリカちゃんはわかってる。聖ちゃんは拗らせすぎて抵抗がまだある。最高のシーンを求めてるせいだ。
そんなの後で全部サイコーになるのに。
はー。これだからおぼこは。
やれやれ。
仕方ない。この経験者様に任せて。迷える未体験者たち。その必中の策を授けるから。
「だから罰はこれ、全裸ボディペイント、バージョン、ラバー」
「………」
「それほんとにいろいろ大丈夫なんですの?」
さらさらと雨が降る中、緑色の傘をさしながら、私はエリカちゃんのマンションに向かうため足早に歩いていた。
待ち合わせの15時はとっくに過ぎている。遅れてるけど、傘をクルクル回してしまう。
ブルーシートとチェコ軍雨ガッパは卒業だ。
「ふん、ふん。ふへふ、…間違えた」
罪と罰から一夜明け、世界は大きく変わった。
鼻歌なんてお風呂でしかしたことなかった。慣れないこともしたくなる。する時はベストショットが撮れた時。
その第一位が…いや、もうランキングは乱れてる。順位なんてつけれない。過去もこれからも全部一位。
写真には映らない美しさが、ある。
ほんとにその通り。
声色、感触、吐息、そして、匂い。
エアコン設定、黙って2℃上げてて良かった。思ったとおり。時間とともに脳が揺れた。
それに、魔法。
本当に美しくて、全てを塗り替える。私の白い塗料もキレイに消え去った。鼻先に付いた白くて熱くてすごい匂いで塗り替えてもらった……あんなに出るんだ。すごい。人間の神秘。
京介くんだからか、魔法使いだからか……いや違う。あれは、
愛。
今日の雨は感動の涙だ。祝福が私の上から降り注ぐ。湿気はカメラの敵だった。だから雨はキライだった。でも今日から違う。空を見上げ、雨粒を受け止める。手のひらのキズはもう無い。
違うキズはつけてもらった。ふへ。
浮かれる、そうだ。浮かれていた。昨日から私はずーと、おのぼりさんだ。打ち上がったまま落ちてこれない。高い塔から落ちてきたくない。
雨雲を見上げ、思った。
みんなと、ずっと浮かんだままでいたい。
◆
円卓の間に着いた私は、昨日のことを全て二人に話した。ショックで固まってしまった二人には悪いけど、元々協定には書かれていたことだ。
だから協定に従い、今度はみんなをバックアップする。
ま、お姉さんに任せて。
「本当に、本当に、本当ですの? 本当にこんな事をするんですの?」
「私はこれで、成功した」
「絹子と瑠璃が嘘をつくとは思わないけど…」
「京介くんは嘘がつけない。私もつかない」
エリカちゃんは世間を知らない。聖ちゃんは美学を間違えている。
私は絶対に負けられない戦いに勝った。勝者の歴史に学ぶべき。
でも試合はコールド負けだった。
「それにしましてもこれは…恥ずかしいですわ…」
「昨日はクオリティが低かった」
「絹子、私、アオハルしたいんだけど…」
「これも一ページ」
はー。これだから処女はめんどくさい。
羞恥一杯の胸の扉を無理矢理こじ開けられるズッキュンも、お腹の奥が青い稲妻で痺れる春も、そこにあるというのに。
はー。生娘はこれだから。
やれやれ。
「仕方ない。私と京介くんのラブ動画を見せる。寝ないで編集した」
「それで遅刻したんですのね…」
「…そんなの、撮ったの………」
遅刻したのは朝から昂ったせいだけど、黙っとこう。
「京介くんは知らない。三脚は魔女が動かしてた。私も後で動かした」
「……」
「…その、それで、実際の京介さんは…」
「魔王」
「…」
「…今、なんと?」
「魔王、だった。まさに恐るべき魔法使いの王様。レベル100。私はしもべ。何回天国に行ったかわからない。奉仕も出来ないダメしもべ。特に最初。身体の撃ち抜き洗浄からのおあずけ。気持ち良い顔で嬉ションしてる瑠璃ちゃんをただ眺めるだけの放置プレイ……」
「絹子さんの独白を…なんといいますか……エロ──」
「言わせないわよ」
「だから策を用意した。みんなもセイコーしてほしい」
きっと、みんなで浮かぶと楽しい。
◆
「本当だ。青い光で絹子の小さな小さなおっぱいが…」
「そこじゃない。でも京介くんは可愛いって言ってくれた」
「……腹立つわね」
「絹子さんの身体から塗料が消えていきますわね。綺麗ですわぁ……」
「そう、チラリズム」
「チラリじゃないじゃない。丸見えじゃない」
「どういう意味ですの?」
はー。これだからバージンは。
やれやれ。
恥ずかしさで実を取る事を優先できない。コンセプトを理解してない。
やれやれ。
「違う。さっきまでチラリとしか見えなかったものにピントが合った。その感動を利用する」
「…整う刹那でこころを掴むのですわね」
「………」
「京介くんの目は特別。して欲しいことを見抜く。だからプラスアルファ」
「……そうよ。して欲しいことはしてくれてた。でもそれ以上にはいけなかった」
「突いて欲しいところは見抜かれた」
「絹子、黙って」
「聖さんの前で言うのは憚られるのですが、その、魔女は愛香さんのおかげだと…」
「もうやめて、って言っても無駄だった」
「絹子、黙ってってば。…いいわ。この写真の京介君、久しぶりに見たし、ね。愛香に唆されてないなら良い。だけど、このラブマシンめ。どうしてくれよう…………」
「…抵抗しても、無駄ですのね………ぃぃ」
エリカちゃんはわかってる。聖ちゃんは拗らせすぎて抵抗がまだある。最高のシーンを求めてるせいだ。
そんなの後で全部サイコーになるのに。
はー。これだからおぼこは。
やれやれ。
仕方ない。この経験者様に任せて。迷える未体験者たち。その必中の策を授けるから。
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