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ランペイジ!
罪と自発的罰
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| 首藤 絹子
京介くんを一人部屋に残し、はるはると台所に来た。お茶受けとお茶を用意している間に考える。家には入った。部屋にも入った。
あとは。
「ねぇ」
「なんですか?」
「協力しない?」
「舎弟なんだから命令すれば良いじゃないですか」
この女、自分のリスクは侵さない気か。まあ仕方ないか。中2だし。視野が狭い。この状況がわかってない。
「嫌。それを盾に言い訳させない」
「ちっ。え~嫌ですよぉ~…。私は京介さんと一緒の部屋に居れるだけでも良ぃーんです。そんなリスクは侵せません」
わかってる。そんなこと私にもわかってる。道すがらずっと考えていた。
京介くんに見つかった以上、もうあのデートは出来ない。今日でお別れかもしれない。
小学校のとき、上級生にイジメられていた私を助けてくれた時と同じ距離まで初めて近づけた。
手を取って立たせてくれた、あの距離。
お気に入りのピンバッジを取られ、汚されて。長い髪を引っ張られて泣いて。相手をのして、ピンバッジを取り返してくれて。手を繋いで、柔らかく微笑んで、公園で洗ってくれて。クローバー可愛いって。髪短くても似合うって。そう言って付け直してくれて。
そんな距離まで近づいた。
でも。
「…多分、今日が、最初で、最後」
「……チャンスがですか? なんでですか?」
はるはるの写真…あんな愛香ちゃんは中学1年以来だ。京介くんも、あの笑顔なのは中学2年以来……
何度悔しい思いに泣いただろう。
「はるはるの写真。愛香ちゃんが蕩けていた。方針を変えた。隙がなくなっ…たかもしれない…」
「成瀬愛香の方針?」
あれだけ素っ気ない素振りで京介くんを振り回していたのに。まるで真逆だ。暴行だけじゃない。絶対に何かあった。でもそれはいい。そこじゃない。
「魔女は知らない。愛香ちゃんの正体を」
「はぁ~ん? あんな女対した事ないでしょ? 何ビビってんです?」
やっぱり同級生以外には無理か。あの愛狂いの愛香ちゃんを見抜くには。外面完璧だし。操るし。
「初期円卓12人。転校した桃ちゃん入れて。束になっても無駄だった」
「それ、小学生の時ですよねぇ~? ノーカンですよ、ノーカン」
私達もそう思っていた。最初は。
中学に上がって中学捨てる組と捨てない組に別れた。捨てない組の私達はいろいろと手を尽くした。
「…中学の、時もだった。三年間あったのに。京介くんに近づけなかった。聖ちゃんや、瑠璃ちゃんですら」
「それは円卓、さんたちの実力が……いや…中学になったらそれなりに策は思いつきます…周りも巻き込んだり。先生利用したり、同級生だし勉強とかも…イベント利用したり。そこにきぬきぬのデータもある。のに…だめだったと。そこまで強敵でしたか…」
どのイベントにも愛香ちゃんが絡んできた。小学校の時と一緒。何手先を読んでるのか。わけがわからなかった。
「狂愛の愛香、ちゃん。あの京介くんを軽々と手玉にとっていた。それがあんなに蕩けた表情」
「それで方針を変えた、ですか」
あの愛狂いがあんな表情したら誰も敵わない。京介くんがここにいる事自体防いでくるはず。
なのに今日、いま、ここにいる。
ならまだいけるはず。
「狂愛が蕩けたら、私には手が出せなくなる。ストーキングも気づいてる。泳がされてる。今度からは多分通報される」
「…認めるんですね」
ええ、認める。ここで認めないと欲しいものは手に入らない。
「なりふり構ってられない。だから協力」
「跡追い姫がそんなにも……事実みたいですね…」
「…それやめて。円卓のみんなに配慮してたらこの瞬間は逃す。今日しかない」
「……たしかに。1対2、ご家族がいない、声を出しても聞こえない、明日は日曜日……………ぅふっ」
円卓のみんなには悪いけど、連絡を待って、方針決めるまで待てない。逃す。だから私が突破口になる。魔女も使う。
「わかってもらえた?」
「っぇえ、ええ、ええ! この有用な時間をくださったこと、この間宮晴風。首藤先輩に感謝致します」
この子…他の魔女には隠す気だ。いや、私と同じようにする気か。それも仕方ない。聖ちゃんと瑠璃ちゃんは学校で会える。私とはるはるは……明日からレンズキャップで暗闇だ。
だから。
「…二人で籠絡する。一人じゃ逃げられるかも。だから代わる代わる扉の前」
「そういうことでしたか。でもどうやってその気にさせるんですか? さすがに拒否されたら堪らないんですけど…」
そう。拒否されたら立ち直れない。でも愛香ちゃんがいる。明日からストーキングは封じられる。追いかけられない。
この後の人生は今までの撮り溜めたものだけで過ごす事になる………それは、絶対イヤ。
「罰を利用する」
「罰? ああ、写真の。それをどう利用するんですか?」
京介くんはまだ罰を決めていない。だから自ら罰したと言えば、止める事も拒否する事もしにくい。そこに、想像を超えた一撃。記憶に残る一打。女だってわからせる。そう。
「自発的、全裸ボディペイント。これしかない」
「何言ってんだ、こいつ」
京介くんを一人部屋に残し、はるはると台所に来た。お茶受けとお茶を用意している間に考える。家には入った。部屋にも入った。
あとは。
「ねぇ」
「なんですか?」
「協力しない?」
「舎弟なんだから命令すれば良いじゃないですか」
この女、自分のリスクは侵さない気か。まあ仕方ないか。中2だし。視野が狭い。この状況がわかってない。
「嫌。それを盾に言い訳させない」
「ちっ。え~嫌ですよぉ~…。私は京介さんと一緒の部屋に居れるだけでも良ぃーんです。そんなリスクは侵せません」
わかってる。そんなこと私にもわかってる。道すがらずっと考えていた。
京介くんに見つかった以上、もうあのデートは出来ない。今日でお別れかもしれない。
小学校のとき、上級生にイジメられていた私を助けてくれた時と同じ距離まで初めて近づけた。
手を取って立たせてくれた、あの距離。
お気に入りのピンバッジを取られ、汚されて。長い髪を引っ張られて泣いて。相手をのして、ピンバッジを取り返してくれて。手を繋いで、柔らかく微笑んで、公園で洗ってくれて。クローバー可愛いって。髪短くても似合うって。そう言って付け直してくれて。
そんな距離まで近づいた。
でも。
「…多分、今日が、最初で、最後」
「……チャンスがですか? なんでですか?」
はるはるの写真…あんな愛香ちゃんは中学1年以来だ。京介くんも、あの笑顔なのは中学2年以来……
何度悔しい思いに泣いただろう。
「はるはるの写真。愛香ちゃんが蕩けていた。方針を変えた。隙がなくなっ…たかもしれない…」
「成瀬愛香の方針?」
あれだけ素っ気ない素振りで京介くんを振り回していたのに。まるで真逆だ。暴行だけじゃない。絶対に何かあった。でもそれはいい。そこじゃない。
「魔女は知らない。愛香ちゃんの正体を」
「はぁ~ん? あんな女対した事ないでしょ? 何ビビってんです?」
やっぱり同級生以外には無理か。あの愛狂いの愛香ちゃんを見抜くには。外面完璧だし。操るし。
「初期円卓12人。転校した桃ちゃん入れて。束になっても無駄だった」
「それ、小学生の時ですよねぇ~? ノーカンですよ、ノーカン」
私達もそう思っていた。最初は。
中学に上がって中学捨てる組と捨てない組に別れた。捨てない組の私達はいろいろと手を尽くした。
「…中学の、時もだった。三年間あったのに。京介くんに近づけなかった。聖ちゃんや、瑠璃ちゃんですら」
「それは円卓、さんたちの実力が……いや…中学になったらそれなりに策は思いつきます…周りも巻き込んだり。先生利用したり、同級生だし勉強とかも…イベント利用したり。そこにきぬきぬのデータもある。のに…だめだったと。そこまで強敵でしたか…」
どのイベントにも愛香ちゃんが絡んできた。小学校の時と一緒。何手先を読んでるのか。わけがわからなかった。
「狂愛の愛香、ちゃん。あの京介くんを軽々と手玉にとっていた。それがあんなに蕩けた表情」
「それで方針を変えた、ですか」
あの愛狂いがあんな表情したら誰も敵わない。京介くんがここにいる事自体防いでくるはず。
なのに今日、いま、ここにいる。
ならまだいけるはず。
「狂愛が蕩けたら、私には手が出せなくなる。ストーキングも気づいてる。泳がされてる。今度からは多分通報される」
「…認めるんですね」
ええ、認める。ここで認めないと欲しいものは手に入らない。
「なりふり構ってられない。だから協力」
「跡追い姫がそんなにも……事実みたいですね…」
「…それやめて。円卓のみんなに配慮してたらこの瞬間は逃す。今日しかない」
「……たしかに。1対2、ご家族がいない、声を出しても聞こえない、明日は日曜日……………ぅふっ」
円卓のみんなには悪いけど、連絡を待って、方針決めるまで待てない。逃す。だから私が突破口になる。魔女も使う。
「わかってもらえた?」
「っぇえ、ええ、ええ! この有用な時間をくださったこと、この間宮晴風。首藤先輩に感謝致します」
この子…他の魔女には隠す気だ。いや、私と同じようにする気か。それも仕方ない。聖ちゃんと瑠璃ちゃんは学校で会える。私とはるはるは……明日からレンズキャップで暗闇だ。
だから。
「…二人で籠絡する。一人じゃ逃げられるかも。だから代わる代わる扉の前」
「そういうことでしたか。でもどうやってその気にさせるんですか? さすがに拒否されたら堪らないんですけど…」
そう。拒否されたら立ち直れない。でも愛香ちゃんがいる。明日からストーキングは封じられる。追いかけられない。
この後の人生は今までの撮り溜めたものだけで過ごす事になる………それは、絶対イヤ。
「罰を利用する」
「罰? ああ、写真の。それをどう利用するんですか?」
京介くんはまだ罰を決めていない。だから自ら罰したと言えば、止める事も拒否する事もしにくい。そこに、想像を超えた一撃。記憶に残る一打。女だってわからせる。そう。
「自発的、全裸ボディペイント。これしかない」
「何言ってんだ、こいつ」
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