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禁断の恋
禁断の恋4 - 宣言
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| 藤堂 未羽
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
あれから由真の家に行き、少し落ち着いた頃に響子から準備完了の連絡があった。
三人で集まり、いろいろな事を話ながら自宅へ向かった。
いろいろと吹っ切れたのか、私は自然と持ち直していった。いや、二人の気遣いが嬉しかったのだろうし、秘密を話した事で、本当の意味で分かり合えたと感じたからだろうか。
そう言えば、今まで思いを共有していたのは、結局あのサイコパス愛香だけだった。
あいつを特殊な女だとは思っていたけど、あいつとは分かり合えていたのか…なんか複雑。
自宅に着くと、二人には一旦外で待ってもらった。
京介は居なかった。
2階にある京介の部屋の形跡も見たけど、何も無かったように見える。だけど…
「おかしい」
ない。
具体的には京介の匂いだ。いつもなら扉を開けただけで京介の匂いに包まれるのに、何も、ない…
「どういうこと…」
とりあえず二人をお迎えして、リビングで麦茶を飲む。冷静に考えても、やっぱりおかしい。
コトリとグラスを置き、両手を祈るように組み、額を乗せる。
「…」
「京介さん、どこに行ったんでしょうか」
「未羽、京介くんの行き先に心当たりは…どしたの? 司令官みたいにして…」
私は心から搾り出すようにして、切実な訴えを二人にした。
「…ないの」
「何がですか?」
「何か無くなってたの?」
「京介の匂いが無くなっているの」
「…匂い、ですか?」
「何? 変態?」
「おかしいの。掃除をしたって匂いまでは無くならないっ、全然無いの!」
「……」
「やっぱり変態じゃん」
私は身振り手振りで異常を訴える。二人は顔を見合わせ複雑な表情をしていた。
あれ? なんか温度差を感じるな。
気を遣っている態度が丸わかりな響子がおずおずと聞いてくる。由真はメガネを外し、眉間を揉んでいた。
「それは、その、それほど重要な?」
「未羽、ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」
「はー…」
「溜息やめて。言動がおかしいのは未羽だからね」
「何やら未羽さんにとっては重要なようですね」
仕方ない。百聞は一臭にしかず、だ。
二人を京介の部屋に案内する。
「ここが京介さんの、部屋」
「これが京介くんの、部屋」
二人はジロジロと見渡していた。京介の部屋は清潔感のある寒色系の色合いですっきりと纏められている。
対照的に二人の頬は赤みを帯びていた。
「ね?」
「何が?」
「何ですか?」
「無いでしょ?」
「…そもそも私たち、京介さんの匂いを知らないんですが…その、良い匂いかすらも」
「そうだよ。あのね、未羽みたいに変態じゃないの、私たち」
「はー…」
「そのやれやれみたいな顔やめて」
「ちょっとその溜息止めてもらっていいですか?」
仕方ない。私は自分の部屋から今までの戦利品と、昨日の第一級特別戦利品を持ってきた。
「これ」
「なんですか?」
「何?」
「二人とも、ちょっとこれを嗅いでみて」
「いったい何です、かっ……っ!」
「このTシャツが何なの?柔軟剤を変えたと、かっ……っ!」
「この匂いが、この部屋には、あったの」
「これはもしかして京介さんの…」
「……」
「由真?」
「…」
「わかってくれた?」
「わかりたくなかったけど…まあ、うん」
「わからせられました」
それがこの部屋から消えている。新築の家でもそれなりに匂うのに、この部屋にはそれすらない。絶対おかしい。そして分かり合えた友ならばと、切り出す。
「あと、これ。特別だから」
「「!!」」
二人に昨日の禁制品を渡す。二人は黙ってすんすんし出した。わかる。実は私だけ可笑しいのかと思ってたけど、良かった。違った。
「ね?」
「…鼻を突き抜ける瞬間が…」
「…しゅごい」
そろそろ返してもらう。
二人の匂いがついてしまう。これは良いものだ。
「…あっ」
「…ああっ」
リビングに戻り、再び話合う。
急に不安になってきた…匂いがない異常自体は、京介がどっか遠いところに行ってしまって、もう二度と帰ってこない気にさせる…
「何か異常な事が起きてる、との未羽さんの見解には私も賛成です」
「すごかった」
「とりあえず、ご飯の支度をしましょう」
「すごいの作ろう」
「そして、いよいよ帰って来なければ、警察に連絡しましょう」
「そうだね。未羽の主観では普通に見えたらしいし、お腹が空いたら帰ってくるんじゃないかな。きっと大丈夫だよ」
不安な気持ちに襲われ、私は頷くしかできなくなっていた。
その上で。と響子は語り出した。
「成瀬さんは強敵です。未羽さんは義妹と言うことで、そもそも女として見られていないかも、というのが私の認識です。ですが、昨日の暴行もあって、京介さんが見限った可能性も多いにありえると思います」
「今まで未羽はツンツンしてたしね」
「ですので、いま、この瞬間はチャンスなのです。そうですね、私と由真さんで京介さんを接待しますので、未羽さんはその際に混ざり、素直な気持ちで接する事をまずはしましょう」
「あ、響子と私が励ましたりしてるところを未羽もマネればいいんだね。ピンでするより、簡単かも」
響子は矢継ぎ早にプランを述べる。そのシーンを想像する。前向きな気持ちにしてくれる。
「…未羽さんは禁断の恋、と言いました。それは京介さんも同じ気持ちかもしれません。その為にはまず、タガを外さねばなりません」
「タガ?」
「そう、禁断の、つまり理性の蓋です。念のため伺います。未羽さん。あなたは京介さんと結ばれたいのですよね?」
こくりと頷く。叶うなら何だっていい。
「目的のためなら手段は問いませんか?」
こくりとまた頷く。叶うなら何だってする。
「では、私、狭川響子にお任せいただけますか?」
こくりと改めて頷く。響子と由真ならいい。
「ふふっ、ありがとうございます」
「何するの?」
由真の問いに、響子はかつて見たことのないキメ顔でこう宣言した。
「3Pです。ぃたっ」
すぐに由真に頭を叩かれ、4Pに訂正させられた。
「お邪魔します」
「お邪魔しまーす」
「どうぞ」
あれから由真の家に行き、少し落ち着いた頃に響子から準備完了の連絡があった。
三人で集まり、いろいろな事を話ながら自宅へ向かった。
いろいろと吹っ切れたのか、私は自然と持ち直していった。いや、二人の気遣いが嬉しかったのだろうし、秘密を話した事で、本当の意味で分かり合えたと感じたからだろうか。
そう言えば、今まで思いを共有していたのは、結局あのサイコパス愛香だけだった。
あいつを特殊な女だとは思っていたけど、あいつとは分かり合えていたのか…なんか複雑。
自宅に着くと、二人には一旦外で待ってもらった。
京介は居なかった。
2階にある京介の部屋の形跡も見たけど、何も無かったように見える。だけど…
「おかしい」
ない。
具体的には京介の匂いだ。いつもなら扉を開けただけで京介の匂いに包まれるのに、何も、ない…
「どういうこと…」
とりあえず二人をお迎えして、リビングで麦茶を飲む。冷静に考えても、やっぱりおかしい。
コトリとグラスを置き、両手を祈るように組み、額を乗せる。
「…」
「京介さん、どこに行ったんでしょうか」
「未羽、京介くんの行き先に心当たりは…どしたの? 司令官みたいにして…」
私は心から搾り出すようにして、切実な訴えを二人にした。
「…ないの」
「何がですか?」
「何か無くなってたの?」
「京介の匂いが無くなっているの」
「…匂い、ですか?」
「何? 変態?」
「おかしいの。掃除をしたって匂いまでは無くならないっ、全然無いの!」
「……」
「やっぱり変態じゃん」
私は身振り手振りで異常を訴える。二人は顔を見合わせ複雑な表情をしていた。
あれ? なんか温度差を感じるな。
気を遣っている態度が丸わかりな響子がおずおずと聞いてくる。由真はメガネを外し、眉間を揉んでいた。
「それは、その、それほど重要な?」
「未羽、ちょっと何言ってるかわかんないんだけど」
「はー…」
「溜息やめて。言動がおかしいのは未羽だからね」
「何やら未羽さんにとっては重要なようですね」
仕方ない。百聞は一臭にしかず、だ。
二人を京介の部屋に案内する。
「ここが京介さんの、部屋」
「これが京介くんの、部屋」
二人はジロジロと見渡していた。京介の部屋は清潔感のある寒色系の色合いですっきりと纏められている。
対照的に二人の頬は赤みを帯びていた。
「ね?」
「何が?」
「何ですか?」
「無いでしょ?」
「…そもそも私たち、京介さんの匂いを知らないんですが…その、良い匂いかすらも」
「そうだよ。あのね、未羽みたいに変態じゃないの、私たち」
「はー…」
「そのやれやれみたいな顔やめて」
「ちょっとその溜息止めてもらっていいですか?」
仕方ない。私は自分の部屋から今までの戦利品と、昨日の第一級特別戦利品を持ってきた。
「これ」
「なんですか?」
「何?」
「二人とも、ちょっとこれを嗅いでみて」
「いったい何です、かっ……っ!」
「このTシャツが何なの?柔軟剤を変えたと、かっ……っ!」
「この匂いが、この部屋には、あったの」
「これはもしかして京介さんの…」
「……」
「由真?」
「…」
「わかってくれた?」
「わかりたくなかったけど…まあ、うん」
「わからせられました」
それがこの部屋から消えている。新築の家でもそれなりに匂うのに、この部屋にはそれすらない。絶対おかしい。そして分かり合えた友ならばと、切り出す。
「あと、これ。特別だから」
「「!!」」
二人に昨日の禁制品を渡す。二人は黙ってすんすんし出した。わかる。実は私だけ可笑しいのかと思ってたけど、良かった。違った。
「ね?」
「…鼻を突き抜ける瞬間が…」
「…しゅごい」
そろそろ返してもらう。
二人の匂いがついてしまう。これは良いものだ。
「…あっ」
「…ああっ」
リビングに戻り、再び話合う。
急に不安になってきた…匂いがない異常自体は、京介がどっか遠いところに行ってしまって、もう二度と帰ってこない気にさせる…
「何か異常な事が起きてる、との未羽さんの見解には私も賛成です」
「すごかった」
「とりあえず、ご飯の支度をしましょう」
「すごいの作ろう」
「そして、いよいよ帰って来なければ、警察に連絡しましょう」
「そうだね。未羽の主観では普通に見えたらしいし、お腹が空いたら帰ってくるんじゃないかな。きっと大丈夫だよ」
不安な気持ちに襲われ、私は頷くしかできなくなっていた。
その上で。と響子は語り出した。
「成瀬さんは強敵です。未羽さんは義妹と言うことで、そもそも女として見られていないかも、というのが私の認識です。ですが、昨日の暴行もあって、京介さんが見限った可能性も多いにありえると思います」
「今まで未羽はツンツンしてたしね」
「ですので、いま、この瞬間はチャンスなのです。そうですね、私と由真さんで京介さんを接待しますので、未羽さんはその際に混ざり、素直な気持ちで接する事をまずはしましょう」
「あ、響子と私が励ましたりしてるところを未羽もマネればいいんだね。ピンでするより、簡単かも」
響子は矢継ぎ早にプランを述べる。そのシーンを想像する。前向きな気持ちにしてくれる。
「…未羽さんは禁断の恋、と言いました。それは京介さんも同じ気持ちかもしれません。その為にはまず、タガを外さねばなりません」
「タガ?」
「そう、禁断の、つまり理性の蓋です。念のため伺います。未羽さん。あなたは京介さんと結ばれたいのですよね?」
こくりと頷く。叶うなら何だっていい。
「目的のためなら手段は問いませんか?」
こくりとまた頷く。叶うなら何だってする。
「では、私、狭川響子にお任せいただけますか?」
こくりと改めて頷く。響子と由真ならいい。
「ふふっ、ありがとうございます」
「何するの?」
由真の問いに、響子はかつて見たことのないキメ顔でこう宣言した。
「3Pです。ぃたっ」
すぐに由真に頭を叩かれ、4Pに訂正させられた。
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