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本編

25 大人になったおれ ※

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 兄の手で尻の中を徹底的に洗われた。
 本当に洗われた。

 〝怖い〟

 温室に水場があってよかった。

 でも、わからないんだ。
 尻の中をなんのために洗ったのか。

 〝いやだ〟

 なんてことをさせるんだ。
 恥ずかしいだろ。
 相手が兄でも、あんな姿は見られたくなかった。

 〝思い出したくない〟

 そんなことを考えつつ、もうろうとしているおれを再びうつぶせにして、尻だけを高くあげさせる兄。

「今から、スノシティが気持ちよくなれる場所をさがすからね」
「うん」

 えー、おれが気持ちよくなれる場所が、まだ他にもあるの?

 それを知って嬉しくなった。
 尻を洗われてしょんぼりしていた気持ちが、一瞬で上を向く。

 普段ならちんこと玉と乳首だけで十分だったのに、今のおれは満たされてない。
 兄がいくらちんこを擦ってくれても、満足できない。
 疲れているのに、まだ欲しいと体が訴えてくる。

 尻尾をよけられて、くにくにと細いもので尻の穴の周辺を押される。
 この時点で、もうすでに気持ちいいことに、少しだけうろたえてしまう。
 なんでなのかわからないのに、すごく落ち着く。
 心地よい。

 触れているのが兄だから?
 それともおれには、尻に触られて喜ぶ癖があるのか。
 今までにそんな覚えはないけど。

 尻の穴周辺を、兄の指や細い棒で押されて撫でられると、勝手に腰が揺れる。
 ちんこにはめられた筒をマットに押しつけると、筒が歪んで中の凸凹がうねるから、前も一緒に気持ちよくなれる。

「ふぁ、ぎゅうううぅ」

 へこへこ、へこへこ、と尻だけ高く持ち上げて腰を振るおれは、きっと情けない姿だ。
 でも頭がぐつぐつしてたまらない。
 沸騰してるみたいだ。

 何も考えないで、兄の手に与えられる心地よさに浸るのが、おれは大好きだ。

「いやだと思ったら言うんだよ」
「うんっ」

 口をあけないままの返事はくぐもって、きちんと言葉になっていない。
 しかし兄には言葉など必要ない。

 ぐに、と尻の穴を外から広げられる、初めての感覚に、全身の毛が逆立った。

「ぎゅわぁあああっっっ」
「す、スノシティっ?」
「やだない、いやらないっ」

 もごもごと、驚いて変な声が出ただけ、と必死で伝えると、背後にいる兄が深く安堵の息をついたのが聞こえた。

「ゆっくり動かすよ」

 その言葉通り、細いなにかがおれの尻の穴をぬるぬると出入りする。

 なんでぬるぬるしてるんだろう。
 もしかしたら、おれの尻っていつもぬるぬるしてるのか?
 これまでずっと?
 なんだそれ、おれったら、すごい恥ずかしいやつだったんじゃないのか。

 あ……だから、尻尾穴ありまん丸パンツはかないといけないのか!

 成人間近だというのに、ずっとおもらし状態だったのかよ、と初めて知った事実に、おれが衝撃を受けている間も、くにくにと尻穴を広げるような動きは止まらない。

 うへあ、気持ちいー。
 尻の穴に触れられるって、気持ちよかったんだな。

 たしか前の時は……ええと。
 なんかあったけど、忘れた。
 思い出さなくても問題ない気がする。

 細い棒が、くにゅくにゅと尻の穴の入り口をつついて、ぬぽぬぽと出入りするのにうっとりしていたら、よだれが半開きの口の端から垂れるのを感じた。
 べろりとなめとって、かふ、と息をついた。

「あにぃえ」
「なんだい」
「そえ、きもひいい」
「そうか、それなら良かった」

 兄の優しい声。
 兄の優しい手。
 兄の優しい心。

 筒をはめられたちんこは、そのままの状態で何度も子種を出したせいで、腰が揺れるたびにぐぽ、とかごぽとか変な音がする。

 気がつけば、周囲に常夜灯がいくつも置かれていたから、兄におれの姿が見えているかもしれない。
 もう、恥ずかしくないのは、なんでだろう。

「スノシティ、いいかい」
「うん」

 なんでもいいよ。
 そう思いながら返事をした。

「ぎゃひんっ!?」

 その直後、快感で溶けていた頭に、びりっと衝撃が走った。
 今の刺激はなんだろう、と脱力してほとんど動かせない首をひねる。

「よかった、見つけられた」

 なにを?
 そう聞く声が、形になることはなかった。

 細い棒の丸い先端が、びりびりとする場所ばかりをつつく。

「うっぎゅ……ふへぅっ……んぎぃっ」
「くふ、っふふ」
「わらわないれぇ」

 兄がつんつんと棒を動かすたびに、いつも以上におかしな声が出てしまって、腰が動く。
 おかしい。
 なにこれ。
 なんか変なことになってる。

 おれ、これ知ってる。
 幼い時に兄が見せてくれたおもちゃであったやつ。

 ぽちって押すと、ぴょん、って飛び出すやつ。
 ぐにって押されると、おれがびくってするところなんて、そっくりじゃないか?

 兄がおれの尻穴でくちゅくちゅ音をさせるたびに、おれの腰がぴょこっ、ぴょこっ、と動いてしまう。
 つつかれるたびに、なんかちんこから出てる気がする。
 もしかして、もらしてるのか。

「気持ちいいかい?」
「ふぁ、わ、わかんらい」

 これ、気持ちいいの?
 すっごい変なんだけど。

 でも、不思議なことに、さっきまで感じでいた強烈な欲求は鳴りを潜めている。

 やっぱり兄はすごい。
 おれの体はこれを求めていたらしい。

「あにぃえ、あっとおありがとう
「くふふ、どういたしまして」

 うつ伏せで尻だけ高く上げたまま、もうくたくただぁ、と目を閉じる。
 何時間こうしていたんだろう。
 明日にはこのおかしな欲求を感じなくなっているといいな、と思いながらうとうとする。

「スノシティ?」
「むー、ん」
「疲れたんだね、ゆっくりお休み。
 来年の発情期には……いいや、誕生日から抱いてあげるから、それまでに中で気持ちよくなれるようにしようね」

 優しい兄の言葉がふわふわの雪のようにおれに降り積り、溶けて、染み込んでいく。

 そうか、抱きしめてくれるのか。
 嬉しい。
 はつじょうきってなんだろう。
 誕生日に抱っこ嬉しい。
 中って?

 寝ぼけた頭で考えられたのは、そこまでだった。



   ◆



 おれの願いも虚しく、おかしな欲求に振り回される日々は、かなり長く続いた。
 花が咲き乱れる時期が終わり、暑くなってくる頃まで。

 股間がもにょもにょするような違和感から、無意識にクッションに尻を擦りつけていると、兄に優しく注意される。

 注意された後に、棒で欲求を解消してもらうまでが一連の流れで、これをたくさん繰り返した。
 たいてい、おれが疲れて寝てしまうまで。

 兄が仕事を減らして付き合ってくれたのと、尻に棒を入れてもらうことで解消できると判明したので、本当によかった。

 棒を突っ込まれている時に、もらしているかもしれない疑惑については、言及しないことにした。
 前も後ろも、ぬるぬるでどろどろなのは感じるけれど、うつ伏せでは見えない。

 いくら兄が優しいからって、おれがもらしてないかどうかなんて。
 さすがに聞けない。



 しっかりと暑くなってきた頃。
 すっきりと元気になったおれに、いつもの生活が戻ってきた。

 ただ、毎日の日課の弱点探しに、尻に棒を突っ込んでびりびりを押す、が追加された。

 兄が言うには、来年から毎年同じ時期にむずむずする可能性が高いらしい。
 ご馳走が用意されて「大人になったんだよ、おめでとう」と言われたけれど、あんまり嬉しくなかった。

 これから毎年、あんなつらい目にあうのか?

 尻の中を洗うの嫌だ。
 あれ、好きじゃない。

 棒でつんつんされるのは変な感じだけど、痛くないし我慢できる。
 でも洗うのは嫌いだ。

 〝怖い〟

 大好きな兄を相手に、半泣きで精一杯威嚇するおれを見て、護衛や使用人たちが変な顔をしているのを横目に見ながら、訴えた。

 尻つんつんは嫌いじゃないけど、洗うの嫌い!
 おなか、いたい。

 〝いやだ〟

 数人、目をそらした文官と使用人に、兄が短く何かを告げる。
 わがままを言ってる自覚はある。
 でも、あれ、すっごくいやだ。
 おなか、ぐるぐる。

 〝思い出したくない〟

 そう、思い出したくない。

 洗う時の痛みで、毒を食わされて、腹が痛くて血を吐いていた頃を思い出してしまうから。
 どこもかしこもずたぼろだった時を、思い出したくない。

 今がこんなに幸せなのに、苦しかった時のことなんて。

 言えなくて。
 兄の前から逃げて、クッションに頭を突っ込んで隠れた。

 鼻をすすりながらめそめそしていたら、ぽんぽん、と兄の手が背中を叩いてくれる。

「ごめんなさい」

 泣き声で告げる。
 兄が大好きだよ。
 でも、お腹が痛くなるのは、すごく怖くてつらいんだ。

 
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