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本編

22 勉強を始めるおれ ※

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 兄が、手のひらをおれのちんこの竿に添えて、する、する、と撫でさする。

「ふぐっ」

 気持ちいい。
 すっごくいい。
 兄はもう二年もちんこに触れてくれているから、力加減も触れる場所も素晴らしく絶妙で、おれはいつでも簡単に子種を吐いてしまう。

 おれのちんこに触れるのは、兄だけだ。
 自分では触れない。
 他人が弱点に触れると考えるだけで、全身を怖気が走るのに、その相手が兄なら怖くない。

「気持ち良い?」
「ひぃぐっ、あにうえ、きもちいいよぅ」
「……そうか、それなら、もう少し触れる場所を増やしてみようね」
「うぅ?」

 腰をへこへこと揺らし、兄の手にちんこを押し付けていたおれは、言葉の意味を考える余裕なんてなくて、完全に聞き流していた。
 兄がおれを痛めつけるはずがないという信頼と。
 以前に約束してくれた、痛いお仕置きをしない、という言葉を心から信じているから。

「ふぎゅっ!?」

 片手でちんこを撫でながら、兄が反対の手を股間に突っ込んで、完全に毛に埋もれている二つの玉に触れてきた。
 初めてのことに変な声が出た。

「ふふ、痛くない?」
「あ、あにうえっ、なん、なんでそんな、ふぎ、うぐっ」

 うわ、うわあ、気持ちいー。
 今までちんこだけでも十分すぎるくらい気持ちよくて、兄すごいなって思っていたのに。
 まさかその下のふわふわの玉まで気持ちいいなんて!

 処刑された時は自分で股間までなめて毛繕いしてたのに、全然知らなかった。

「あぐ、うゔっ、ふうううっ」
「くふ、ふふ、どうして、気持ちよさそうな顔をしているのに、いつも痛そうな声なのかな」

 勝手に変な声が出るだけで、痛くはない。
 それを誰よりも知っている兄だから、おれがへこへこと格好悪く腰を振っても、白目むいてよだれ垂らしても、許してくれるのか。

 二つの玉を柔らかい手つきで揺らされて、揉み込まれながら、同時に汁でぬるぬるになった竿の先端を撫でられるのが、すごく気に入ってしまった。
 たぷたぷ、って揺らされるの好き。
 もにゅもにゅって揉まれるのも好き。

 うああ、気持ちいい。
 目の前が弾ける。

「いぎいっっ」
「くふふ、上手に気持ちよくなれたね」

 ふああ、うん、気持ちいいよー。
 兄、大好き。

「ふーっうふーっ」
「スノシティ」

 呼吸を整えていると、兄がおれの顔を覗き込んできた。

「あにう、いでっ」

 うまく話せなくて舌をかんでしまい、傷があったことを思い出す。
 牢屋に入れられた時に、寝てたまるか、と自分で噛みついたんだった。

 さっき、食事をしている時は少し痛いくらいで我慢できたのに、兄が戻ってきてくれて気が抜けたからなのか、ずきずきと痛みだした。

「あ、傷跡になっているね」

 ぬる、と舌に何かが触れる。
 鼻先に当たりそうな距離で、きらきらと常夜灯の明かりを反射する兄の顔がある。
 肌がほのかに艶めいて光って見える。
 きれいだなぁ。
 格好良いなぁ。

 ちゅく、と水音がして、ぬるぬると舌に触れるそれが、温かくて心地よいことにぼうっとしてしまった。
 兄が与えてくれるものは、何もかも心地よくて。

「ん、ふぅ~っ」
「可愛いね、スノシティは」

 おれのでろりと伸びた舌を、形の良い桃色の舌が絡めとろうとする。
 なめられるの、気持ちいい。
 いつもの弱点探しみたいにドキドキする。

 うっとりと兄のなすがままになってしまう。

 おれの舌をなめている兄が、さっきから腹、いや胸あたりの毛を探っている。
 栄養が足りていて被毛の密度がすごいからなのか、掻き分けて揉まれるのすっごい好き。

 あれ、今日はいろいろ揉んでくれないのかな、と思う余裕もなく、おれは兄のふわりと柔らかくてぬるぬるの唾液まみれの舌を、必死で追いかけていた。

「……毛が分厚くて見つからない」
「んあい?」

 うまく舌が回らなくて、くらくらしながら返事をする。

「スノシティのおっぱいは、どこかな」
「……おれのおっぱい、そこにあるの?」

 あれ、ちんこがおっぱいで、おっぱいはちんこだよな?
 股間だけでなくて、胸にもちんこが生えるのか?
 んんん?
 兄の胸には何も生えて無かったと思うけど。

 おれがまったく理解していないことを、兄は察してくれたようだ。
 眉を困ったように下げてから、おれの顔をしっかりと見つめて言った。

「明るい時間に探そうね」
「うん」

 探すってなにを?
 なにか失くしていた?

 まさか、朝一で兄がおれのおっぱいを探すつもりだなんて、知らずに返事をした。



   ◆



 翌日から、おれの生活が変わった。

 王妃になるための勉強が始まったのだ。
 兄の手によって。

 明るい時間に探すと兄が宣言した翌朝、普段は行かない温室に連れ込まれた。
 そこにあるのは知っていても、これまで入ったことはなかった。

 まだ、朝ごはん食べてないのに。
 ぐるぐる鳴る腹が恨めしくて、空きっ腹を抱えたまま、兄のあとについて温室へ入る。

 外から見ると、木や草が生い茂っているように見えたけれど、中から見ると、透明な天井が丸見えだ。
 周囲には見たこともない花々が咲き誇っていて、むしむしする温室内は光を遮るものがないので、ひどくまぶしい。

 目を細めて、上を見上げる。
 天井があるのに、空が見える。
 どうなってるんだ。

 暑くなりそうだから、ここには長居したくない。
 したくないのに。

 温室の床には訓練場で見たことがある、防水機能のあるマットと何枚もの絨毯が敷き詰められて、薄いクッションが大量に積み上げられていた。

「今日から、日中はここで過ごすんだよ」
「え、なんで?」

 こんなポカポカのところにいたら、ぐったりしてしまう。
 兄の寝室ではだめなのか?

「僕の国王就任にあわせて、城内を改装することになったんだよ。
 工事をしている邪魔になっては困るからね」
「そっか」

 相変わらず、言葉にしなくても先取りしてくれる兄すげーなーと思いながら、うなずいた。

 納得はしたけれど、おれは被毛があるから暑いのは苦手だ。
 他のところが良いな。
 せめて木陰とか。

 困ったなと思っていると、兄がスッと手をあげた。

「失礼いたします」

 温室に入ってからずっと隅にいるのが気になっていた、数人の使用人たちが一礼して、すすすーっと動き出す。
 滑らかな動きに驚いた。

 なんか、見たことない使用人たちだな、とぼんやり見ている間に、温室内に柱を組み立てて日除けの布を貼り、風が通り抜けるように何箇所かの小さな換気口を開けて、低い台の上に水差しや食事を並べて去っていった。

 仕事が早い。
 これまでおれが城内で出会ったことのある使用人たちと、足運びから違う気がした。

「もしも暑かったら、教えるんだよ?」
「うん」

 頷いたおれに笑顔を見せ、兄は台の上に並んだ食事へ手を伸ばした。

 焼いた芋うまい。
 焼いた木の実うまい。
 焼いた葉っぱうまい。

 兄がおれの口の中に美味しい食事を入れてくれる。
 うまーい。
 幸せ。

 兄が口に食事を入れるたびに鼻先に触れたり、頬を撫でてくれるのも嬉しいのだ。
 国王も王妃も今はどうでも良い。

 兄と二人で過ごすひと時が、世界一幸せだ。
 少し暑いけれど、日差しを遮っていて風が通り抜けていれば、温室でも過ごせるかもしれない。

「明日までに屋根とついたてが必要かな」
「んむ?」

 もぐもぐしながら、殻付きのナッツの殻を舌で選別していたので、兄の言葉が聞こえていなかった。



 そして、食後に休憩をしようと言われて、クッションの上に横になる。
 兄の言う通り、仰向けになる。
 なんで?

 日除けの布目越しに太陽の光がちかちかして眩しい。
 なんか、眠い。
 風が吹きぬけると快適だー。

 おれの腹を優しく撫でさすっていた兄の手が、次第に上にのぼり。
 胸毛に埋もれていたなにかをつまんだ。

「ふみゃああっ!?」
「ぶふっ、くふふっふふっっ」

 突然のことに叫んだおれの声に、兄が笑う呼吸が混ざる。

「ああ、よかった、やっと見つけたよ」
「兄上、なにそれ、そこなに?」

 おれの胸になんかある。
 いぼ!?

「これがスノシティのおっぱいだよ」
「おっぱい!?」
「正しくは乳首かな」
「ちくび、ってなに?」

 おれの言葉を聞いた兄が、ふんわりと満開に咲く花のように色づいた。
 そんな気がした。

「とっても、気持ちよくなれる場所だよ」
「そうなんだ」

 思わず期待してしまう。
 兄が触れてくれるなら、絶対に気持ちよくなるだろう。

 
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