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本編

17 十三歳になったおれ ※

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 この数年で、兄は背が伸びた。
 肩はばが広くなって、筋肉質なのに長い手足がすごい良い。
 もうどこからどう見ても、立派な成人男性だ。

 おれは、兄よりもさらに大きくなった。

 処刑された時は、二足で立てば兄より頭ひとつは大きかったはずだ。
 あれ、頭二つぶんだったか?

 順当にその頃の身長に向かっている。
 身長は同じでも、体重と毛並みの豊かさは、以前と比べようがないほどに違うから、まるで別人のように見えるはずだ。

 二歳の俺になったのが、もうそんなに前のことになるのか。
 自分の命が奪われた時のことなのに、もう、ほとんど思い出せない。

 前のおれが弱くて貧相だったこと。
 ただ怖くて、痛かったこと。
 寒くて仕方なかったこと。
 その時に感じた強烈な感情だけを覚えている。

 ふわふわと浮かんで見た時の、兄の地獄の日々は回避できた。
 できたと思う。
 おれと過ごしてきた日々を、兄が苦痛に思っていないとは言い切れない。

 おれは、兄の心身を守れたんだろうか。

 まだ油断してはいけない。
 あと数年。
 おれが処刑された日を生き延びたとしても、その後は未知でしかない。

 国王と王妃がいる限り、いつ兄が地獄に引きずり込まれるか、可能性はなくなっていない。





「おはよう、スノシティ」
「……ん、んっ!?」

 半裸の兄が、おれの腹毛を撫でている。
 嬉しそうに微笑みながら。

 丸めていた体をそっと伸ばしながら、兄を引き裂いてしまわないように手をゆっくりとよける。
 兄の幸せそうな笑顔から視線をそらす。

 日焼けしてない肌が光って見える。
 被毛がないから、つやつやに見えてしまう。
 きっと、どこもかしこもすべすべなんだろうな。

 すごくとてもめちゃくちゃ、兄の肌をなめまわしたいと思ってしまう。
 好き、大好きって言いながら。

 そして、兄が寝衣を着てないってことは、昨夜のことは夢じゃなかったということだ。
 どうしよう。
 兄に、とんでもないことをしてしまった。

 昨夜。
 兄に大好き鼻先ぺろぺろをされて。
 いつもと同じように、おれの弱点に兄がどこまで触れて良いのか、という話になって。
 そう。

 兄が、おれの、ちんこに触れたんだ。

 いつも触れないように気を使ってくれるのに、おれが動いたことで兄の手のひらがぐにっとおれの股間を揉んで……。

 自分の体が大人になってきている自覚はあった。
 先日、十三歳になってから、急激になにかが変わった気がしてた。

 実は最近、兄が側にいるとむずむずしてたまらなかったんだ。
 ちんこが。

 なんだよこれ、って思ってたけど、ちんこがむずむずする理由なんて聞けなくて。
 前に、兄が自分でちんこを擦ってた姿を思い出して、このむずむずがそれなのかな、と不安になった。

 被毛のない兄の手ならともかく、鉤爪と石のように硬い手のひらしかないおれは、むずむずするちんこをどうすることもできなかった。

 腹一杯の食事よりも、兄にもっと触れられたい。
 そう願ってしまう。
 弱点でもなんでも良いから、ちんこも触って欲しいって。

 図体ばっかり大きくなっているのに。
 子供の頃のように甘えたら、兄に呆れられるかもと言えなかった。

 兄に触れられたい。
 でもこのむずむずの原因が分からなくて。
 言わなかったから、こんな失敗をしたのかもしれない。


 昨夜、兄の手の中に、寝衣に放ってしまった。


 まるで国王や王妃と同じだ。
 おれの欲望で兄を汚した。

 許されないことだ。
 兄を守りたかったのに、なんでこんなことに。

 夢ではなかったと知って、兄の顔が見られない。
 昨夜の情けない姿を見られて、嫌われてもおかしくないのに、兄の態度は変わらない。

「スノシティ、どうした?」
「……」

 兄の手で与えられた、昨日の快感が忘れられない。
 そんなこと言えない。
 自分から頼むなんてできない。

 兄の手のひらは剣を握るからごつごつしている。
 それなのに、気持ちよかった。
 もっとして欲しいと思ってしまった。

 そう、偶然じゃない。
 おれは兄にむずむずをなんとかして欲しくて、他でもない兄に触れて欲しくて、自分で腰を動かしたんだ。
 なんてことをしてしまったんだ。

「どこか具合が悪いの?」
「違う、から」
「スノシティ」

 不意に兄の口調が変わる。
 仕事中のように。
 厳しい王子殿下の口調に。

「教えてくれ」

 切なくて苦しい。
 兄に悲しい顔はさせたくない。

「兄上の服」
「うん」
「……汚した」

 おれは、男のちんこから出るものが何か知っている。
 浮いてる時に散々見せられた。

 あれは子種だ。
 無理矢理ではなく、好きあっている者同士で体内に注ぐものだ。

 そんなものを兄の手や服にかけてしまうなんて。
 おれはなんてダメダメなんだ。

「くふふ、ふふっ」

 おれがどん底に落ち込んでいると言うのに、兄が楽しそうに笑う。
 笑う兄の姿にむくれるおれを見て、さらに楽しそうに声を上げた。

「落ち込まなくて良いんだよ、男の子ならいつかはそうなるから。
 スノシティが精通したことは知っていたよ、パンツを隠しただろう?」
「!?!?!?」

 な、ど、そ、うそだあああっっっ!!
 なななな、なん、なんでっ!!

 がちん、と固まるおれに、兄は肩を笑いで揺らしながら言葉を続けた。

「スノシティ、見られたくなかったのなら、洗濯場に持っていくかごに入れておかないと」

 昨日の朝の汚れたまん丸パンツ、あ、あれ、兄に片づけられてたのか!?

「よ、汚れたの、洗おうと思って」
「洗えるの?」
「……むぅぅ」

 鉤爪の手で、服は洗えない。
 洗うどころか、服を自分で着脱するのも難しい。

 本当は引き裂いてぼろ布にして、訓練場に穴でも掘って埋めようかなと思ったんだけど、その前に隠しておいた場所からなくなってしまったから、焦って困っていた。

 兄がおれに用意してくれた服を破ろうとしたから、無くなってしまったのかなと、すごく後悔していたのに。

「服を汚したくないなら、手伝うよ」
「……?、うん」

 なにを?
 一瞬だけそう思ったけれど、兄の言葉を疑う必要などないから、おれは頷いた。
 知らないから、頷けたのだ。



 ぐりぐり、ぐちぐち、と兄の手がおれのちんこを揉む。

「っぐふ、っぅあっ、ぐぅっ」
「なんか痛そうな声だけど、大丈夫かいスノシティ?」

 痛くない。
 気持ちいい。
 でも、なんか変な声が出る。

 なんでおれ、兄にちんこを揉んでもらってるんだろう?
 そんな疑問は、ぐりゅ、とちんこの先端をぬめる手のひらでこすられて、弾けて消えた。

「ふぐぅっ」

 びくんびくんっと、毒で倒れた時みたいに震える体。
 目の前がぱしぱしと光る。
 さらりとした長い白銀の髪を揺らす兄の姿が、目の前でゆらめく。

 だめだ、これ、もっと欲しくなるやつ。

「あにうぇ、もっとぉ」
「気持ちいいんだね、いいよ、何度でもしてあげる」

 舌がうまく回らない。
 頭の中がでろでろに溶けたようだ。

 兄の優しい手で甘やかされて、おれは何も出なくなるまで、何度もちんこを揉んでもらった。
 気持ちよくて、腰が揺れる。

 兄のきれいな薄青の瞳が、とろけてしまいそうに甘い光を放っている気がして、目を瞬いた。

 こんなだめなおれを、受け入れてくれるのかな。
 処刑された時のおれが知らなかった快感を、知ってしまって良いのかな。

 兄の手が淫らに動いて、おれの腹毛から突き出したちんこをしごきあげる。
 ぐちゅぐちゅと変な音がして、腹の周りがべたべたになっているのを感じた。

「まだ薄いね、大きくなあれスノシティ」

 優しく甘い口調で言う兄に、うん、うんと頷いた。
 もっと大きくなったら、どうなるのか。
 兄が何を望んでいるのか、そんなことは考えもせずに。

 兄の手のひらにこすりつけるように腰を振り、びくびくと震えながら、おれは思った。
 すごく幸せだ、と。

 
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