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シャンプルディ
11 箸に目鼻をつけても男は男 ※
しおりを挟む子種を放ったと同時に、湧き上がるような歓喜と独占欲を覚えた。
これが、話にだけは聞いていた雄の狂気かと、くらむような快感の中で思う。
ほとんどの娼婦には伴侶がいない。
相手にもよるが、嫉妬に狂う伴侶に客共々殺されかねないからだ。
金に困って仕方なしだとしても、本能に飲まれた雄はそんな事情を斟酌しない。
だからこそ娼婦になった者は、腹の中に子種を放たせない上に、孕まなくなる薬を常用すると聞く。
下手に子供ができてしまえば、子を孕ませた雄だけの腹になるしかなくなるから。
種や個人によって独占欲の強さは違うというし、国によっては一人の腹を複数の雄で守ると聞いたことがあるが、俺の生まれ育ったこの国では、雄と腹は一対であることがほとんどだ。
もしくは雄も腹も固定の相手を定めずに、村単位で子作りと子育てをしている。
「~ぁっ、ああっ」
……俺に似た種族を他で見たことはないが、こんな俺にも腹への独占欲があったらしい。
この危険な感情をどう制御したら良いのか悩みながら、俺の下で愛らしく震え、甘い声をこぼしているバンマヌッシュを見た瞬間、萎えようとしていた外性器が再び熱を持つのを感じた。
種をつけたい。
孕ませたい。
強烈な本能的欲求に頭痛まで感じ始めた。
止める必要などないのではないか、バンマヌッシュは俺を望んだ。
俺が中で種を放つことを拒否しなかった。
これは、俺の腹だ。
一瞬で大きくなった外性器を一度引き抜き、バンマヌッシュの蕾が傷を負っていないか確認をした後、再度根元まで差し込む。
先端が突き当った子袋は、雄を受け入れなれた娼婦のものとは違い、小さく硬く未成熟のように感じた。
「あ、ああっおく、そこ、ふかいぃっ」
孕んだことがなくても、雄を幾度も受け入れれば、子袋は成熟して柔らかくなっているはずだ。
つまり、バンマヌッシュは本当の意味で雄を知らないのだ。
幾度も子種を送り込めば、子袋がほころんで俺の子を孕むだろう。
「バンマヌッシュ、止められそうにない」
「あ、ああ、っん、おれも、もっと欲しいっ」
俺の放った子種で滑りが良くなり、腰を突き出すたびに卑猥な音を立てる蕾を、さらに広げるように根元まで入れたまま腰を回すように押し付けると、バンマヌッシュの口から悲鳴が上がる。
「ぅあ"あ"ああぁっっ」
俺以外の穢れを知らない最奥は、突かれると痛みを覚えるのかもしれない。
それでも、途中で止めることなどできそうになかった。
バンマヌッシュが気を失うまで、交合は続いた。
最後の方は声すら出せずに、ひぃひぃと掠れたような呼吸をしていたバンマヌッシュだったが、小さな外性器から透明な体液を放つと同時に、死にかけているかのように痙攣し、そのままくったりと寝床にくずおれてしまった。
揺さぶっても反応が得られないことに気がついて、ようやく冷静さを取り戻して己を引き抜くが、白濁に塗れた外性器は、まだ堪能し足りないと血管を浮き上がらせていた。
こんな風になったのは初めてで困惑してしまうが、相手がバンマヌッシュなら起こり得るのだろう。
己の腹が孕むまで注ぎたいと思ってしまうのは、雄の本能なのだから。
硬いままの外性器を自分の手で慰め、ぐったりとしている銀毛の背中に何度も放って、これ以上ないほど穢したというのに、ひどく満たされた心地になった。
美しい体を丁寧に何度も拭き清め、重たい体を持ち上げることは叶わなかったので、ゆっくりと転がして寝床の布も新しいものに交換する。
腹をゆっくりと押すと、蕾から際限なくあふれてくる子種を指で掻きだし、初めとは別物のように腫れてしまった蕾に傷薬を塗りこんだ。
水差しの水をガブのように飲み干し、バンマヌッシュの持ってきてくれた籠の中の食事を平らげた。
バンマヌッシュの目が覚めたら、作りたての食事を用意して、腹を満たしてやらなくてはいけない。
空腹を満たした後は、蕾に子種も満たしてやらなくては。
美しいバンマヌッシュに嫌われたくないという思いから、疲労で重い体を強引に動かして水浴びを済ませ、全身を清潔にした。
醜さは変えられなくても、身ぎれいにしておけば浮浪者とは違うのだと分かってもらえる。
そして黒い体の横に倒れこむと同時に意識を失った。
◆
目が覚めて、俺は同じ寝床で寝ていたバンマヌッシュを夢の産物かと思い、朝から抱きつぶしてしまった。
交合の経験が少なかったとはいえ、こんなにも性欲に振り回されたのは初めてで、俺自身も混乱していた。
ぐったりしたバンマヌッシュの体を綺麗にしてやり、俺自身も水を飲んで身繕いをして、少し落ち着いたところでやるべきことを整理する。
このまま眠る姿を見ていたい誘惑に逆らい、先々のことを考えた。
まずは近所にある伝書屋で、傭兵斡旋所に速達の通信を送った。
一、傭兵斡旋所から、バンマヌッシュの家族と仕事場へ、子作り休暇の申請と通達を依頼、必要経費は斡旋所に預けてある違約時手付け金から出して欲しいこと。
二、バンマヌッシュが食べられる食料を、俺の借りている家まで届けてもらいたい。
特に二は重要だ。
ほとんどの商店に入店拒否をされる俺では、まともな食材を手に入れることができない。
美しいバンマヌッシュの口に、廃棄寸前の腐りかけて萎れた食品を含ませると思っただけで、腹の奥に苛立ちが湧き上がる。
早くしてくれ、と金をどっさりと積んだおかげか、伝書屋は街一番だという駆け手を出してくれた。
伝書屋は商店とは違い、金を積めば仕事を受けてもらえるので助かった。
意識のないバンマヌッシュを残して、一人で斡旋所へ出向くことは、どうしてもできなかった。
伝書屋に行くのですら何度も家に戻りかけたくらいで、これが話にだけは聞いていた雄の本能なのだろうか?と恐ろしくなる。
家に戻ってからは洗濯を済ませて、バンマヌッシュの目覚めを待つ間に、芽の生えてしぼんだ生芋をかじる。
飢えを満たすには十分だが、ひどく味気ない。
困ったことになった、と俺はようやく気がついた。
これまで最低限のものがあれば満たされていた俺の生に、バンマヌッシュという美の神が現れてしまった。
満たされることを知ってしまった俺は、もう、飢えていた頃の水準には戻せそうにない。
バンマヌッシュのために新しい水を汲みに出て、水瓶と水差しを満たしておく。
昨夜から水分をとっていないバンマヌッシュには、新鮮な水がたくさん必要だろう。
太陽が高く昇る頃、家の戸を叩く音がした。
頼んだ食料が届けられたのだろうか、と頭に布をかぶり、金を手にして扉を開けば、そこには昨日、傭兵斡旋所でバンマヌッシュと一緒にいた老人が立っていた。
「……うちの孫を孕ませたのか」
「……」
老いてなお整っている美しい顔は無表情で、その言葉に含まれる感情がどんなものかを察することはできない。
「どうなんだ?」
「それを聞いてどうする」
今はまだ孕んでいない。
バンマヌッシュは雄を知らなかったのだから、体が孕めるように変化するのに時間がかかる。
……それを知らないはずがないだろうに。
「あの子に会わせてくれ」
「断る、バンマヌッシュが会いたいと言えば、あんたのところに通信を送ろう」
「お前のような醜いバケモノが、あの子を手に入れられると本気で思っているのかっ」
「さあな」
吐くように叩きつけられる言葉は、ほとんど何もかもがどこかで聞いたようなもので、心に響きもしなければ、まともに受け取る気にもなれない。
それでも、バンマヌッシュを家族として心配しているのだろうということは理解できるから、老人の罵りを素直に受けた。
しばらく老人が独白を続けていたら、カタリと音がして調理場の扉が開き、バンマヌッシュが顔を覗かせた。
「バナ!!」
「あ、お爺ちゃん」
「無事か?無体なことはされとらんか?」
歳はとっていても、筋肉の盛り上がりを見せる立派な体格は伊達ではないらしい。
簡単に押しのけられた俺は、素直に老人を家に入れたが、バンマヌッシュの反応を伺いながら、扉の外に積まれていた食材を家の中に運びいれる。
バンマヌッシュの反応次第では、老人への態度を変える必要もあるだろう。
「大丈夫だよ、おれ、すっごく幸せだよ」
「……本当にか?」
「うん」
やはりバンマヌッシュは少し頭が緩いのかもしれない。
俺のような醜い雄と一緒にいたいというくらいだから、どこか変なのだとは思っていたが、まさか幸せだと言うとは思いもしなかった。
「しゃむ」
「少し待っていろ、すぐに食事を用意する」
見様見真似だが、傭兵団が壊滅してからは自炊生活だった。
食えないことはない、と思う。
届けられたばかりの新鮮な芋を洗い、四つに割って水を張った鍋に放りこむ。
「あ、待って」
よろよろ、と俺の横にきたバンマヌッシュが、手を洗ってから鍋の中の芋を見て、少し困ったような顔をする。
なんだ、その可愛らしい表情は、と途端に熱を持った体を持て余している間に、バンマヌッシュは鍋の中の芋を取り出して、その大きな手には不釣り合いな小さなナイフで、チョン、チョン、と何かをとった。
「芽をとった方が美味しいですよ……あ、邪魔してごめんなさい」
「いいや、俺の料理は誰かに習ったわけじゃない、酒場で働くお前の方が詳しいだろう」
「それじゃ、手伝っても良いですか?」
「俺が手伝いをした方が、美味いものが食えそうだ」
「あの、おれ、そんなに料理は上手くないです」
「そうか、それなら俺は下手だろうな」
「え……ええと、そんなことないと」
俺の言葉に、顔色を変えて表情を次々に変えるバンマヌッシュの姿を見つめていると、わざとらしい咳払いが背後から聞こえる。
首を回して、まだ老人が家の中にいたことに驚いた。
俺の危機察知能力は狂ってしまったのか。
他人が近くにいて、危機感を感じないのはかなり不味い。
「邪魔をする気はない、悪鬼の如きシャンプルディ、あんたをバナの伴侶にするにあたり、一つだけ譲れない条件がある」
「……」
「お爺ちゃん!?」
「バナより先に死ぬのは許さん」
「俺に傭兵をやめろと言うのか」
「そうだ、バナには跡を継いでもらう、常に側に侍る専属護衛になれ」
そっとバンマヌッシュを見ると、うろたえているようで、それでも明らかに期待をしているのか、俺をみる瞳が光っていた。
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