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17 夢見心地 ※ 人外で本番!
しおりを挟む青みの増した瞳は、きらりと赤に変わり、そして緑にきらめいた。
きれいだ。
美しい。
どんな言葉にしても、きっと、足りない。
一度落ちたら、どこまでも落ちていくだけなのか。
「我に全てを委ねてくれるか?」
「もちろんだ」
考えるよりも前に返事をしていた。
自分の膝裏を抱え、尻穴が見えるような体勢が長すぎて、喘ぎすぎた喉が痛くてまともに声にならなかったのに。
「我が番の献身に感謝を捧ぐ」
前にも同じようなことを言われた気がする、と思った瞬間。
いつのまにか汗まみれになっていたおれの胸に、喉に手を置いていたエト・インプレタ・エスト・コル・メウムが黒い何かを突き立てた。
ずっと胸の奥にあった何かが、喉にせり上がってきて、焼けつくように感じた。
喉が焼ける。
熱い。
「っあ!?」
弾けた。
何もかもが。
「目覚めよ、我が番」
「……だれ?」
「我は其方の番だ」
「つがい?」
「左様、どうだ、触れられたいか?」
「ふれて」
ぬくぬくと温かい。
ふわふわと浮かんでどこかに飛んでいってしまいそうな体を、二回りほど大きな体がとどめてくれている。
真っ黒できれいだ。
目覚めたばかりだからなのか、目の前がよく分からない。
見えているのは近い距離だけだ。
真っ白なのに色を変えて光るおれの体。
真っ黒で、やっぱり色の変わる……ええと、つがい?、の体。
すごい、きれいだな。
そんなことを思っていたら、おれの体につがいがまきつきはじめた。
「なに?」
「其方の望みを叶えるのだ」
「おれののぞみ?」
「そうだ」
つん、とつつかれて、ひくん、とうごいた。
つん、ひくん、つん、ひくん。
くりかえされるつん、の後にちゅ、と小さな水音が聞こえたり、ぬるりとすべるようなかんかくがのこる。
あいさつ?
ああ、これが好きだ。
ぬくぬくでふわふわで、つん、ってされるの好きだ。
「ひくついておるな」
「きもちいいから、もっとして」
「其方は時折、とても質が悪いな」
「おれがわるいの?」
「いいや、悪くはない、狂おしいほどに愛しい」
いとしい、と言われて、のどがあつくなった。
「んんっ」
「どうした……もう熟したか」
「じゅくし?」
「其方が、身も心も我のものになりたいと願っているという証だ」
きゅう、とどこかがしめつけられる。
どくどくとあばれるような音がするところ、おなかの下の方。
「番として、いつかは我の子を産んでくれるか?」
ぎゅ、っといたい。
のどがいたい。
ぱちん、と耳の奥で音が聞こえた。
水の泡が弾けたような、感覚。
準備ができた、と思考が切り替えられたように、意識が戻った。
ふわふわしているのは同じだ。
巻き付かれているのも。
え、巻き付く?
振り返るのが怖い。
ぬるぬるしているのがどこか、おれの尻の穴になにが押し付けられているのか、知っているから。
じくじくと尻がうずいて、ひりひりと喉が熱い。
問いかけられた内容が、とても大切なことのように感じた。
不安そうな、悲しそうな、切なそうな、苦しそうな。
言葉や態度では表しきれない想いが、全て、喉の熱に注がれていくような。
かつて裏切られた。
愛した相手に。
愛してくれていると信じていた相手に。
次などない、と思っていた。
恐ろしい、怖い、それでも、手放せない。
そんな気持ちが、感情が、おれの喉に生えた逆鱗から伝わってくる。
あれ?
おれには逆鱗なんてなかったよな。
喉にほくろはあったけれど。
……覚悟を決めろ。
頭ごと首を捻って、おれを抱え込んでいるエト・インプレタ・エスト・コル・メウムを見て、予想外に言葉が出ない。
きれいだ。
美しい。
おれは一体、何回、恋に落ちれば良いのだろう。
赤くて青くて、緑や黄色まで内在した、底が見えないのに透明感まで感じる、黒くて、つやつやときらめく鱗は完璧だ。
瞳も同じ。
今は、少し赤が強く、きらり、きらり、と不安そうにきらめいている。
以前なら近づくと鼻先しか見えなくて、巨体に感じていた長くて力強い肉体は、今でもおれよりも大きい。
けれど、以前ほど圧倒的ではない。
自分の体も変わっているから、と気がついたのは、エト・インプレタ・エスト・コル・メウムが抱え込んでいるのが、少し小さな、白い鱗に覆われた龍体だったから。
白くて、虹色に色を変える鱗に包まれている。
姿見でしか見たことのない、おれの瞳の色と同じ。
巻き付かれている隙間からこぼれて揺れている、白いたてがみ。
もしかして、髪の色がたてがみの色になっているのか?
まるで、黒くて虹のようにきらめくエト・インプレタ・エスト・コル・メウムと対のような姿に、目の前がにじむ。
まるで揃いの宝石みたいだ。
おれも変われたのだ。
いいや、変わることができるように、与えられたのだ。
「エト・インプレタ・エスト・コル・メウム、おれ……」
強引に体をよじり、黒い龍の喉元を見れば、かつて傷ついても黒いままだった逆鱗が、失われていた。
爪を引っ掛けて無理に剥がしたのか、血が滲んでいる。
建国神話には、明確に書かれていなかった。
龍が他の種族を番に選ぶ時は、己の心身を削り、与える、とだけ。
書けないわけだ、と納得してしまう。
逆鱗は全身が鱗に覆われている龍であっても、たった一枚しかない鱗だ。
途切れない激痛を与える弱点であると同時に、触れることの難しい場所。
建国神話には、そう書いてあった。
また生えてくるとしても、気軽にはがせるとは思えない。
自分の喉はどうなっているんだろう、と触れようとして、龍の手がひどく短いことに気がつく。
届きそうにない。
これは困った、龍は背中が痒い時はどうするんだ?
そんなことを思っていると、にゅる、と尻の穴をこすられて、びくりと体が震えた。
「返事をくれんのか?」
「お、おれ、あのさ」
ふわふわしていた時なら、きっと素直に言えただろう。
けれど、自分が龍の姿になっていると自覚した今、なんと言えば良いのか。
だいたい、今、自分たちがいるのはどこなんだ?
周囲に視線を向けようとすると、ぐちゅ、と先端を押し付けられて、入口が広がるのを感じた。
入口?
違う、出口だ。
「だめなのか?」
ぬちゅ、ぐちゅ、とひどく淫らな水音が聞こえる。
気持ちいい。
にゅるにゅると口をこすられることが気持ちよくて、全身が震えた。
「ん、ほしい」
龍の姿で行うことで、本当に子供ができるのだとしても。
怖いけれど、いやではない。
エト・インプレタ・エスト・コル・メウムなら、おれがどれだけ間抜けでも、きっと受け入れてくれる。
「いれて?」
「直裁だの、愛しいが」
あんあんうるさい側妃が、腰を振って王にねだる姿を思い出した。
気持ち悪いと思って悪かったかな、と少しだけ反省した。
「ううっ」
ぐぬ、と押し広げられながら思った。
龍の体ではほぐしてないのに、柔らかくなってるって、どういうことだ?、と。
見えていないのに太くて長いのを感じた。
おれの龍の体が、本当に龍になっているのかは置いておいて、この体はエト・インプレタ・エスト・コル・メウムより二回りは小さい。
だからあれだけ念入りにほぐしていたのか、と気がついた時には、おれは身動きが取れなかった。
全身に巻きつかれ、尻の穴に巨大な陰茎をねじこまれる。
痛くはない。
ただ、圧迫感がとんでもない。
「きもち、いいっ」
そう、気持ちよかった。
自分でも何が起きているのか、おれには分からない。
気持ち良いと感じているのに、同時に苦しい。
「ひぁっ」
「……うっ」
先端が引っかかったような形で、ゆさゆさと揺さぶられている間に、ずぷり、と先端部分が入った。
一度入ってしまえば、あとは簡単なのか。
「ひっ、ひぃいっ、いっ、いぃっ」
ずるずるずる、と熱がどこまでも入ってくる。
苦しいのに、気持ちいい。
自慰で達している時にも似てる。
なにが起きてるんだ、なんだよこれ。
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