17 / 23
17 夢見心地 ※ 人外で本番!
しおりを挟む青みの増した瞳は、きらりと赤に変わり、そして緑にきらめいた。
きれいだ。
美しい。
どんな言葉にしても、きっと、足りない。
一度落ちたら、どこまでも落ちていくだけなのか。
「我に全てを委ねてくれるか?」
「もちろんだ」
考えるよりも前に返事をしていた。
自分の膝裏を抱え、尻穴が見えるような体勢が長すぎて、喘ぎすぎた喉が痛くてまともに声にならなかったのに。
「我が番の献身に感謝を捧ぐ」
前にも同じようなことを言われた気がする、と思った瞬間。
いつのまにか汗まみれになっていたおれの胸に、喉に手を置いていたエト・インプレタ・エスト・コル・メウムが黒い何かを突き立てた。
ずっと胸の奥にあった何かが、喉にせり上がってきて、焼けつくように感じた。
喉が焼ける。
熱い。
「っあ!?」
弾けた。
何もかもが。
「目覚めよ、我が番」
「……だれ?」
「我は其方の番だ」
「つがい?」
「左様、どうだ、触れられたいか?」
「ふれて」
ぬくぬくと温かい。
ふわふわと浮かんでどこかに飛んでいってしまいそうな体を、二回りほど大きな体がとどめてくれている。
真っ黒できれいだ。
目覚めたばかりだからなのか、目の前がよく分からない。
見えているのは近い距離だけだ。
真っ白なのに色を変えて光るおれの体。
真っ黒で、やっぱり色の変わる……ええと、つがい?、の体。
すごい、きれいだな。
そんなことを思っていたら、おれの体につがいがまきつきはじめた。
「なに?」
「其方の望みを叶えるのだ」
「おれののぞみ?」
「そうだ」
つん、とつつかれて、ひくん、とうごいた。
つん、ひくん、つん、ひくん。
くりかえされるつん、の後にちゅ、と小さな水音が聞こえたり、ぬるりとすべるようなかんかくがのこる。
あいさつ?
ああ、これが好きだ。
ぬくぬくでふわふわで、つん、ってされるの好きだ。
「ひくついておるな」
「きもちいいから、もっとして」
「其方は時折、とても質が悪いな」
「おれがわるいの?」
「いいや、悪くはない、狂おしいほどに愛しい」
いとしい、と言われて、のどがあつくなった。
「んんっ」
「どうした……もう熟したか」
「じゅくし?」
「其方が、身も心も我のものになりたいと願っているという証だ」
きゅう、とどこかがしめつけられる。
どくどくとあばれるような音がするところ、おなかの下の方。
「番として、いつかは我の子を産んでくれるか?」
ぎゅ、っといたい。
のどがいたい。
ぱちん、と耳の奥で音が聞こえた。
水の泡が弾けたような、感覚。
準備ができた、と思考が切り替えられたように、意識が戻った。
ふわふわしているのは同じだ。
巻き付かれているのも。
え、巻き付く?
振り返るのが怖い。
ぬるぬるしているのがどこか、おれの尻の穴になにが押し付けられているのか、知っているから。
じくじくと尻がうずいて、ひりひりと喉が熱い。
問いかけられた内容が、とても大切なことのように感じた。
不安そうな、悲しそうな、切なそうな、苦しそうな。
言葉や態度では表しきれない想いが、全て、喉の熱に注がれていくような。
かつて裏切られた。
愛した相手に。
愛してくれていると信じていた相手に。
次などない、と思っていた。
恐ろしい、怖い、それでも、手放せない。
そんな気持ちが、感情が、おれの喉に生えた逆鱗から伝わってくる。
あれ?
おれには逆鱗なんてなかったよな。
喉にほくろはあったけれど。
……覚悟を決めろ。
頭ごと首を捻って、おれを抱え込んでいるエト・インプレタ・エスト・コル・メウムを見て、予想外に言葉が出ない。
きれいだ。
美しい。
おれは一体、何回、恋に落ちれば良いのだろう。
赤くて青くて、緑や黄色まで内在した、底が見えないのに透明感まで感じる、黒くて、つやつやときらめく鱗は完璧だ。
瞳も同じ。
今は、少し赤が強く、きらり、きらり、と不安そうにきらめいている。
以前なら近づくと鼻先しか見えなくて、巨体に感じていた長くて力強い肉体は、今でもおれよりも大きい。
けれど、以前ほど圧倒的ではない。
自分の体も変わっているから、と気がついたのは、エト・インプレタ・エスト・コル・メウムが抱え込んでいるのが、少し小さな、白い鱗に覆われた龍体だったから。
白くて、虹色に色を変える鱗に包まれている。
姿見でしか見たことのない、おれの瞳の色と同じ。
巻き付かれている隙間からこぼれて揺れている、白いたてがみ。
もしかして、髪の色がたてがみの色になっているのか?
まるで、黒くて虹のようにきらめくエト・インプレタ・エスト・コル・メウムと対のような姿に、目の前がにじむ。
まるで揃いの宝石みたいだ。
おれも変われたのだ。
いいや、変わることができるように、与えられたのだ。
「エト・インプレタ・エスト・コル・メウム、おれ……」
強引に体をよじり、黒い龍の喉元を見れば、かつて傷ついても黒いままだった逆鱗が、失われていた。
爪を引っ掛けて無理に剥がしたのか、血が滲んでいる。
建国神話には、明確に書かれていなかった。
龍が他の種族を番に選ぶ時は、己の心身を削り、与える、とだけ。
書けないわけだ、と納得してしまう。
逆鱗は全身が鱗に覆われている龍であっても、たった一枚しかない鱗だ。
途切れない激痛を与える弱点であると同時に、触れることの難しい場所。
建国神話には、そう書いてあった。
また生えてくるとしても、気軽にはがせるとは思えない。
自分の喉はどうなっているんだろう、と触れようとして、龍の手がひどく短いことに気がつく。
届きそうにない。
これは困った、龍は背中が痒い時はどうするんだ?
そんなことを思っていると、にゅる、と尻の穴をこすられて、びくりと体が震えた。
「返事をくれんのか?」
「お、おれ、あのさ」
ふわふわしていた時なら、きっと素直に言えただろう。
けれど、自分が龍の姿になっていると自覚した今、なんと言えば良いのか。
だいたい、今、自分たちがいるのはどこなんだ?
周囲に視線を向けようとすると、ぐちゅ、と先端を押し付けられて、入口が広がるのを感じた。
入口?
違う、出口だ。
「だめなのか?」
ぬちゅ、ぐちゅ、とひどく淫らな水音が聞こえる。
気持ちいい。
にゅるにゅると口をこすられることが気持ちよくて、全身が震えた。
「ん、ほしい」
龍の姿で行うことで、本当に子供ができるのだとしても。
怖いけれど、いやではない。
エト・インプレタ・エスト・コル・メウムなら、おれがどれだけ間抜けでも、きっと受け入れてくれる。
「いれて?」
「直裁だの、愛しいが」
あんあんうるさい側妃が、腰を振って王にねだる姿を思い出した。
気持ち悪いと思って悪かったかな、と少しだけ反省した。
「ううっ」
ぐぬ、と押し広げられながら思った。
龍の体ではほぐしてないのに、柔らかくなってるって、どういうことだ?、と。
見えていないのに太くて長いのを感じた。
おれの龍の体が、本当に龍になっているのかは置いておいて、この体はエト・インプレタ・エスト・コル・メウムより二回りは小さい。
だからあれだけ念入りにほぐしていたのか、と気がついた時には、おれは身動きが取れなかった。
全身に巻きつかれ、尻の穴に巨大な陰茎をねじこまれる。
痛くはない。
ただ、圧迫感がとんでもない。
「きもち、いいっ」
そう、気持ちよかった。
自分でも何が起きているのか、おれには分からない。
気持ち良いと感じているのに、同時に苦しい。
「ひぁっ」
「……うっ」
先端が引っかかったような形で、ゆさゆさと揺さぶられている間に、ずぷり、と先端部分が入った。
一度入ってしまえば、あとは簡単なのか。
「ひっ、ひぃいっ、いっ、いぃっ」
ずるずるずる、と熱がどこまでも入ってくる。
苦しいのに、気持ちいい。
自慰で達している時にも似てる。
なにが起きてるんだ、なんだよこれ。
0
お気に入りに追加
62
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
捨て猫はエリート騎士に溺愛される
135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。
目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。
お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。
京也は総受け。
【BL】どうやら精霊術師として召喚されたようですが5分でクビになりましたので、最高級クラスの精霊獣と駆け落ちしようと思います。
riy
BL
風呂でまったりしている時に突如異世界へ召喚された千颯(ちはや)。
召喚されたのはいいが、本物の聖女が現れたからもう必要ないと5分も経たない内にお役御免になってしまう。
しかも元の世界へも帰れず、あろう事か風呂のお湯で流されてしまった魔法陣を描ける人物を探して直せと無茶振りされる始末。
別邸へと通されたのはいいが、いかにも出そうな趣のありすぎる館であまりの待遇の悪さに愕然とする。
そんな時に一匹のホワイトタイガーが現れ?
最高級クラスの精霊獣(人型にもなれる)×精霊術師(本人は凡人だと思ってる)
※コメディよりのラブコメ。時にシリアス。


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる