【R18】I've got a crush on ogre

Cleyera

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六、そのままの幸福

65 東鬼

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 それからの五月と六月はクソ忙しかった。

 家を建てるのに必要な打ち合わせをした。
 延々と打ち合わせばっかりした。
 請け負ってくれた妖関連の工務店に、とんでもなくでかい平屋にする理由を、説明しなくていいのは助かった。

 あとは、本職でも同僚になったガワさんと、話す回数が増えたくれえか。
 責任者資格の試験も近づいてきて、忙しすぎて目が回るかと思った。

 そんで、ウラ様は、思った以上に放任主義だった。

 ガワさんが言うには、人社会での犯罪行為に手を染めなけりゃ自由らしい。
 用事があって縄張りから出たい時も、相応の理由さえ伝えときゃ問題ねえって。

 つまり、人を襲うな、人を食うなってところか?
 そんで人の犯罪行為がダメだって言ってっから、縄張りの中に弱い奴らがいっぱい集まるらしい。
 守ってくれるのかな、って勘違いして?
 養殖場だって前に聞いた気がすんだけどな。

 あれ、これってママに出かける先を伝えて、帰る時間を守りなさい、みてえな感じか?
 眷属って小学生扱いなのか?

 まあ、周辺地域にウラ様に敵う妖がいねえから、仕事なんて見回りくれえしかねえらしい。
 あとは本性が水系の妖だから、地面の上のことは放置ってことか。

 本当に、おれは生まれてくる子供のための警備員扱いかよ、って思った。
 人でも鬼でも警備員かよ。
 考えようによっちゃあ、警備員こそおれの天職ってやつなのかもしんねえ。

 新人研修とか、他の眷属との顔合わせはねえの?って聞いたらよ。
 ガワさんが言うには、嫁さんがもうすぐ子供産むってんで、テンパってるらしい。
 まあそれがなかったとしても、顔合わせだのなんだのはねえらしい。

 放任にもほどがあるだろ。
 部下をなんだと思ってんだ?
 あー、眷属か。

 あんなおっかねえ妖でも、自分の子供が生まれるってなると焦るんだな、って変な感じがした。
 おれを眷属として囲い込んだのも、嫁と子供のためだってんだから、まあ、良いパパになるんじゃねえ?ってくれえかな。
 上司としては、まだ一回も仕事を回されてねえから、何も分かんねえ。

 家一軒を土地付きでポンとよこすんだ、太っ腹なのは間違いねえ。
 本性も太っ腹だったしよ。

 新居については、工務店と建ててもらう人でやれ、ってことなのか知んねえけど、顔も見せねえ。
 いつのまにか土地がおれの名義になってんだけど、戸籍とか税金とかどうなってんだ?

 大妖ってのは、そんなに金と権力?が有り余ってんのか?って怖すぎる。
 そのおこぼれに預かってるおれが、こんなこと言っちゃいけねえんだろうが。

 まあ、生まれてくる子供の飯に、伯父を飼い殺しにしてるっつー話は聞いてっからな。
 詳しくは教えてもらえねえけど。

 里から逃げ出した伯父が、ウラ様の縄張りに侵入して薬をばらまいたことへの罰だってさ。
 喰われるのが罰か、ゾッとしねえ。
 里の薬番がいなくなっちまったけど、どうすんだろうな。

 伯父を生かして捕らえてんのは、おれを囲い込むためか?ってのは考えすぎか?
 タクの安全が保障されてんのは間違いねえけど。

 まあ、これ以上の借りを作りたくねえ気持ちだけは、変わんねえよ。
 これから長い付き合いだとしてもな。


  ◆


 待ち望んでいたマイホームができたのは、年の瀬も迫る頃だった。
 鬼が住んでも壊れねえ、外から見ると人の家にしか見えねえってのが大変で、半年もかかっちまった。

 人間用の床材は、踏み抜いちまう。
 人間用の壁も、ちょっと小突いただけで穴が開く。
 人間用の廊下は狭くて通れねえ。
 もちろん玄関も通れねえ、ってなって、全体的に家っていうよりも公民館か、体育館みてえなぶち抜きになっちまった。

 部屋以外は人の姿で使えば良いだろ、ってタクに言われたけどよ。
 人の姿の全裸でうろつくと怒るじゃねえか。
 いちいちパンツはくのもめんどくせえよ。

 おれが鬼の里の家の構造を知ってりゃ良いんだが、親父の家しか分かんねえ。
 それも茅葺だったってことしか言えねえから、強度と外観の兼ね合いが試行錯誤になっちまったらしい。

 山付きで周囲に家がねえとしても、茅葺きはダメなんだとさ。
 法律がなんちゃら?って、忘れた。
 まあ、ゴリ押しでめちゃくちゃ頑張ればできるかもしんねえけど、別に茅葺きが好きなわけじゃねえ。

 ただ広いだけの家だと、タクが落ち着かねえ。
 ってことで、家の中にタク専用スペースを作った。

 棚とパーティションで仕切った、こじんまりとした書斎だ。

 そこに、タクが前から欲しかったらしい、レーシング用バケットシートを使ったゲーミングチェア?ってのが収まった。
 これからも資格取得や仕事のスキルアップを目指す、って言うから、大きな本棚は壁に作り付けだ。

 人間の姿でも、鬼の姿でも愛しあえるように、キングサイズのマットレスはぶち抜きのスペースに置いた。
 本当はベッドが欲しかったんだが、金が……ねえんだよな。

 椅子は、タクが自分で買ってる。
 あとはタクのアパートにあった家電や家具を運び込んで、独身寮でおれの使ってたもんを運んだら引っ越しはおしまい。
 タクもおれも家財道具を最低限しか持ってねえから、家の中がガランとしてんだよ。

 まあ、おれはタクさえいりゃ、どこでも良い。
 もっと言うならタクがおれの腕の中にいて、おれの珍宝かちんぽがタクのケツマンに収まってりゃ天国だ。

 ってわけで。



「あ、っ、ぁあっっ」

 子供と大人並みの体格差があるから、いつもは寝転がったおれの腹の上に、タクの腰を支えて乗せる。
 だけど「今夜が……初夜だよな?」っていう照れ隠しタクのセリフが発端で、初めてに挑戦した。
 おれが勝手に挑戦してる、っつーか。

 そうだ。
 根元まで、受け入れてもらう。

 これまでは拡張ができてねえから、って我慢してきた。
 タクが死ぬとかねえから。

 でもよ、何百回もおれの珍宝を受け入れて、腔の中を精液で満たしてんだから、そろそろ体が変わってきてると思うんだ。

 孕ませんなら体液を飲ませるのが一番だって、ガワさんに言われたが、なあ?
 鬼の珍宝を口に突っ込むのは無理だ。
 普通に顎が外れちまう。
 むしろ、珍宝が収まってるだけですごくねえ?って自分でも思うくれえだもんよ。

 そんな訳で、タクには言ってねえけど、今夜、おれはタクの中に全部を収めるつもりだ。

「あ、っあーっ、タッくん、っっ」

 この半年で、タクは変わった。
 いや、タクの体が変わったっていうか。
 前戯までは必死で声を我慢して、呼吸だって例の、あの、痛くなくなる?とかいうのでふーひーしてるタクだが、いざ珍宝を受けいれちまうと、人が変わったように乱れるようになった。
 どエロくてヤベえ。

 おれ的には、これはオニイノクルか、オニグルイの後遺症、もしくは突っ込んだ珍宝の先走り、おれの体液が原因でこうなっちまうんじゃねえか?って。

 なんかさ、タクらしくねえって、思っちまうんだよな。
 おひいさまが腹の上で乱れる姿を見て、こんな風に感じる日が来るなんて、思いもしなかった。

「……?、っ、……タッくん?」

 ほろほろとこぼれた涙の筋跡の残る顔で、タクがおれを見上げる。

 あぐらで座ったおれの上に向かい合わせでタクを座らせて、今はまだ根元まで入らないように腰も支えてる。
 このまま、後遺症で快感に溺れる姿を見てるの、つれえんだよな。

「……どうした?」

 そう聞いてくる間も、タクの腔が、おれの珍宝をキュ、キュ、と締め付ける。
 好き、好き、って言ってるみてえに。

「タクは……嫌じゃねえか?」

 今更おれは何言ってんだよ、と思った。
 そして、おれ以上にそう思ったのは、タクだったようだ。

「は?」

 それまで快感に溶けてたタクの表情が、ビキリ、と硬直する。
 そして、眼球が左右にゆらゆらと揺れて、ものすっごいなんか考えてんなーってのが分かった。

「……東鬼」
「お、おう?」
「お前の話は、今、この状況でないと話せないことなのか?」

 そう言われて始めて、タクの、血色の良くなってる頬が引きつってることに気づいた。
 なんか前に、ヤってる時に変な話したくねえみたいな、言われた?
 ……言われたか?
 言われたような?

「あー……そんなことねえ、な」
「っ、こ、このどア「っあ、やべ!」ふぁ"っ!?、っぃ"あ"ああーーっっっ!!」

 タクが息を吸って怒鳴ると同時に、ギュウっと腔がうねって珍宝を絞りあげ、一気に迫り来る射精の快感に目が眩んで手が汗で滑った。

 痛々しいほどの絶叫と共に、珍宝が、根元までねっとりと柔らかい筒に包まれて、愛撫されたのを感じる。
 そのまま腰を振りたくり、タクの中を満たしたい衝動に、体を受け渡そうとしたその時。

 タクが、にへら、と笑った。

「……あ……ぜっ、んぶ、はいったぁ」

 その顔があんまり嬉しそうで。
 とろとろに溶けた腹の中が、呼吸をしようと喘ぐタクの表情が、薬の後遺症もあるかもしんねえけど、それだけじゃねえ!って、訴えてる。
 タクが、おれを受け入れてくれてんのは、真実だ。
 薬とか、後遺症とか関係なく。

 おれは、何もかも全て、情けないところまで、何もかも全部。
 まるごとタクの掌の中で転がされてるのか。
 いつのまにか転がされてたのか。

 気がつくの遅すぎだろ。
 自分のクソアホさ加減に呆れる。
 タクが一緒にいりゃ幸せだって、あんだけ感じてたのに。
 ようやくか。

 おれが幸せだって感じるのは、幸せになれるのは、幸せを手に入れたのは、全部タクのおかげだ。
 タクの深い懐が、鬼のおれにハッピーなエンドで新しいプロローグを与えたのか。
 この世に一つくれえ、赤鬼が嫁さんと幸せになる話があっても悪くねえよな。

 こんな風にして、おれたちはやっと新婚生活を始めた。

 最高の終わり方で始め方だろ?
 二人はいつまでも幸せに暮らしましたってな。

 とりあえず、人間社会での虫除けになるように、指輪買う金くれえは早く貯めねえとな!










  了
















次話からおまけに続きます
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