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五、受け入れて、受け入れられて
60 東鬼
しおりを挟む鬼の姿で、華奢な骨格に薄い肉を貼り付けたような、タクに触れんのは怖え。
人間の姿だったら、そこまで気を使わなくていいと分かってても、もうおれは珍宝で得られる快楽を知っちまってる。
珍宝がタクに快感を与えることを知ってる。
鬼の姿でタクとセックスしてえと思うのは、おれのエゴだ。
タクから鬼の姿でしてえって望まれたことは、一度もねえ。
できるからって、成人男性の腕くれえあるもんを尻の穴に突っ込まれるのを、望むわけもねえ。
気持ちよくなれるっつっても、その後にボロボロになるのを分かってるからな。
それでも、タクはおれを受け入れてくれる。
おれが望むままに。
おれにできんのは、タクの負担が少しでも減るように、時間をかけてしっかりと準備をすることだけだ。
最中はなんも考えられねえ。
あとは事後にタクを優しく扱うくれえしかできねえ。
タクが復職してから、おれは週に二回タクとセックスをしてる。
週末が確定、もう一回は火曜日か水曜日、タクの休みに合わせてどちらか。
今日は金曜日。
ヤる日だ。
人の姿なら、負担が少しでも減らせるんだろうが、おれの珍宝はもう、タクのケツマン以外は衝動の解消先にしてくれねえ。
大地への抱擁?そんなのあったな、クソだったわ。
手コキでザーメン垂れ流すだけなら、タクの匂い嗅ぎながらいくらでもできっけど、衝動が解消されねえのが辛え。
つーわけで、晩飯や準備のために先に帰って来た。
「東鬼、いるか?」
ゴンゴンと扉を叩く音に気がついた。
いけねえ、変なこと考えてたせいで、タクが来たのに気がつかなかった。
慌てて出迎えると、スーツ姿のタクが少しだけ眉を寄せて、おれを見上げていた。
「なんだ?」
「東鬼、体調でも悪いのか?」
「どこも悪くねえけど」
「そうか、なら良いんだ」
いっつも独身寮の玄関まで出迎えてたから、おれの体調が悪いのかって心配してくれたらしい。
鬼に生まれて四十年近く、人間みてえに風邪なんぞ引かねえから、親父に半殺しにされた時くれえしか寝込んだことがねえって、言いづれえ。
ジャケットを脱いで、常備することになったスーツ用ハンガーにかける。
するりとネクタイを引き抜きながら、おれを見上げる色白の顔は、少し疲れているように見えた。
「やっぱりどこか調子が悪いんじゃないのか?」
おれを見つめる鳶色の瞳は澄んでいる。
なんでだろうな。
鬼に関わって辛い目にあってんのに、こんなに迷わない目え出来んのがすげえって、心から思う。
ガリガリに痩せちまってた時は尖って突きでてた頬骨も、ふっくらとまではいかねえものの、全身に肉がついてきたことで、細面くれえになった。
タクが言うには、まだ〝痩せ〟の範囲内らしいけどな。
人の美醜の基準はよく分かんねえけど、タクはきれえだ。
「タクこそ、疲れてんじゃねえの?」
おれが暴走しちまうから、ヤらねえって選択肢がねえ。
タクが風邪ひいて寝込んじまったら、おれはどうすりゃ良い、って本気で思ってる。
タクの腔の味を知ったおれの珍宝は、辛抱って言葉を忘れちまった。
自家発電がごまかしにしかならねえ。
前は耐えられたってのに、今は三日と保たねえ。
シャツのボタンを上から二つ外した状態で、タクが振り返って、スラックスに手をかけた。
「先にシャワーが浴びたい」
「お、おう」
突然の言葉に頷いて、衣装ケースから下着を出しながら、スラックスを部屋着のスウェットに変えたタクを横目で見る。
怒ってる、わけじゃねえよな。
なんだろうな。
この後、いつもは夕食を軽めに食べて、少し腹を休めてからシャワー。
しっかりあったまっちまうと、消化に悪い上に眠たくなるからってんで、湯船に入んのは事後。
(寝落ちしちまうから)タクの希望で、歯磨きしてから本番。
入れるまでも時間はかけっけど、入れちまった後は、いっつもタイムリミットの土曜日の昼まで、ほぼ繋がりっぱなし。
タクが気絶なのか寝てんのか分かんねえ間を除いて、飯もトイレも繋がったままお世話する。
初めは「抜けよ!」って言ってたタクだが、入れっぱなしの方が楽だって途中で気がついたらしい。
まあ、何度も抜き差しするもんじゃねえ大きさだってのは、分かってる。
本当に入れっぱなしが楽なのかは、分かんねえ。
おれは、タクの腔からあふれてもやめられなくなってる。
タクもイきすぎておかしくなっちまってる。
おれとしては激しく腰を打ち付けてえ気持ちはあるけど、それやると、本気で母親に親父が杭打ちしてたみてえになっちまうからよ。
タクが壊れちまうのが怖くてできねえ。
まあ、ゆっくりと繋がり合うのも気持ちいいから不満はねえ。
どうしても激しくしてえ!って時は、タクにやっても良いか聞いてから、人の姿でやることに決めてる。
熱出して寝込んじまうのが分かってっから、やんねえけど。
で、二人でシャワー浴びて、タクの腹ん中もきれいにして。
ちょっとトイレ……って、さっき腹ん中洗っただろ!?っておれが気がついた時には、タクが部屋を出てった後だった。
本当にトイレだったのか、すぐに戻って来たタクに、名前を呼ばれた。
「タッくん、笑うなよ?」
「え、何をだよ?」
似合わないっていうなよ、ともう一度言って、タクは床にあぐらをかくおれに抱きついてきた。
「前に言ってただろ、下着がって」
「下着?」
そりゃあなんの話だ?と首を傾げたおれに、タクが視線を彷徨わせてから、体を離した。
「お前の好みが分からなかったから、気に入らなかったら、すまない」
いや、だからなんの話だよ?と目を瞬くおれの前で、タクがスウェットを下ろした。
「……」
うん、なんかエロっぽい下着を履いてんな。
ってのはすぐに気がついた。
ピッタピタの……ビキニ?
超ローライズで、布は股間部分とウエストバンドだけ、みてえな潔い下着だ。
色は白、ウエストバンドにブランドのロゴらしきものが入ってる。
またシモの毛がなくなってんだけどよ。
剃ったんか?
似合うとか似合わねえの前に、おれの好みがってどう言うことだ?
気になって、じっくり穴が開くくれえ見れねえよ。
「これは競技用の下着らしいけど、前のは嫌だったんだろう?
レースの下着とか、俺に似合うわけないし……」
……思い出した。
あれだ、性欲溜め込みすぎて暴走した時だ。
片側しかねえドエロい下着の時の話な。
言われてみりゃ、おれのために買ってくれたんじゃねえのかよ、って拗ねた覚えがあるような?
気に入ってねえわけじゃねえよ、つーかあれ、やべえし。
溜まってる時にあれはダメだって。
これまで着衣セックスは好きでも嫌いでもなかったけどよ、エロい下着つけたままのタクを、おれのザーメンまみれにしてえって今では思ってる。
なるほど、タクにとっては、こう、露出が増えるとエロいって感じなわけか。
生真面目すぎね?
その割によ、おれが常にほぼ全裸でそばにいても、あんまり反応してねえのはなんでだ?
おれが赤いからか?
「競技?」
「そう説明が書いてあった」
そう言って、くるりとおれに背を向けたタク。
「……!?」
その剥きだしのケツを、声もなく見つめるおれ。
あれ、前から見た時に、股間に布あったよな?
なんでタクのケツが丸見えなんだよ!?
「はい、これ」
不安そうなタクが、持って来たスマホにメンズショーツのページを開いて見せてくる。
……ジョックストラップ?
その名称は知らんけどさ、これって、Oバックってやつ?
まさかの変化球。
普通に露出度が高いピタピタのマイクロビキニかと思いきや、まさかのまたまた履いたまま突っ込める系!!
……こいつを買うと決めるまでの、タクの迷走ぶりが眼に浮かぶなー。
うん、おれがタクの気遣いを無駄にしちゃいけねえよな。
「タッくん?……やっぱり変だよな、着替えてく、え、タッくん?」
「変じゃねえ、かっこいい、似合ってる、めちゃくちゃ可愛い」
「可愛いは違うだろ、本当に変じゃないか?」
不安そうなタクを抱き寄せて、下着を履いてんのに剥き出しのケツを揉む。
「変じゃねえ、めっちゃ良い、このまんま良いのか?」
「あんまり汚すなよ?」
「そりゃ無理だろ、おれが手洗いすっからよ、な?」
「……分かった」
おれの太ももの上に膝立ちにさせて、ようやくタクの頭が顎辺りだ。
照れてるってより、困ってるって感じか?
柔らかくって小さい尻を揉みながら、優しくしようと新しく決意を固めた。
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