【R18】I've got a crush on ogre

Cleyera

文字の大きさ
上 下
53 / 72
五、受け入れて、受け入れられて

51 志野木 :注意:自傷?

しおりを挟む
 
 轟々と燃えていた。
 家々が燃えている。

 燃えている家に、火に照らされた赤鬼が殴りかかり、建物が崩れていく。
 体当たりで家を崩すのか、鬼という生き物は凄まじいな。
 周囲には倒れている鬼の姿が見えるけれど、東鬼に痛めつけられた後なのか、動く姿はない。

 昌壽ヨシカズさんと話して、作戦ともいえない作戦をたてた。
 俺が東鬼の気を引く。
 どこかに連れていって、どうにかして薬を使わせて……やることをやる。
 その間に、昌壽さんに倒れている鬼たちを助けてもらえるように頼んだ。

 成功するなんて思ってない。
 でも、成功させないと。
 この状態の東鬼を見捨てて、俺だけが逃げだすなんて……できない。

「タッくん」

 精一杯甘えた声を出したつもりだけれど、通じているだろうか。
 素直に甘えるなんて、俺にはうまくできる気がしない。
 どんな口調や態度が正解なんだろう。

 似合わないだろう?
 もうすぐ二十五歳の男が、同性で、しかも鬼に甘えた声で話しかけるなんて。

「タッくん」

 怖い。
 燃え盛る業火に煌々と照らされ、艶めく肌は赫々としている。
 東鬼の黄金の瞳が俺を見つけると同時に、獣のように、ぐるり、ぐるりと喉を鳴らしているような、そんな音まで聞こえてくる。

「タッくん?」

 俺だよ。
 タクだよ。
 お前の、おひいさまだ。
 そういえば、おひいさまって、なんなんだろうな。

『……グァあ?』
「タッくん、寒いんだ、抱きしめてくれよ」
『ァあ、グゥう』
「そうか、俺も同じ気持ちだ、二人っきりが良いよな」
『ぐルゥう、ぁガぁあ』
「俺も大好きだよ」

 東鬼が、何を言ってるのか、分からない。

 それが悔しくて、腹立たしくて、怒鳴ってわめき散らしたい。
 俺の東鬼を傷つけやがって!と。

 赤鬼が一歩ずつ近づいてくるごとに、地面が揺れる。
 巨体が近づいてくる圧迫感と、異様な威圧感。
 黒い鬼から感じた押しつぶされるような感覚を、東鬼からも感じる。

 気がついてくれよ。
 俺に。

「タク、って呼んでくれないのか?」

 見上げる巨体は普段と変わらない。
 室内でないから、普段より小さいような気もする。

 それでも俺の視線は東鬼のみぞおち辺りで、もう逃げられる距離ではない。
 伸ばされた指が、大きな手が、俺に触れる直前、一瞬だけためらうように止まり、そして……。





 気がつくと、板の間に寝ていた。
 どこかの室内で、体の下にはござが敷かれている。
 見える限りの周囲は真っ暗で、遠くに一つだけ裸電球が灯っているのがぼんやりと見えた。

 腕を使って体を起こそうとすると、ぞわりと背筋を寒気が上っていく。

「ふーぅ……ふー……ぅー」

 俺を覗き込む二つの金。
 低く唸るような、呼吸。
 獣を相手にしているような錯覚を覚えながら、俺に向かってかがみこんでいる巨体を見上げた。

 こんなに近くにいるのに、全く気がつかなかった。
 一体、いつからこうしているんだろう?

「……タッくん」

 握っていた拳の中で、紙が潰れる音がした。

「タッくん?」
「……ぅー……」

 意思の疎通ができないとしても、東鬼は俺に優しくしてくれるだろうか。
 少し自信がない。
 ゆっくりと動いて、刺激しないように気をつけながら、手の中の薬包を確かめる。

「噛まないでくれよ?」

 手を伸ばして、体を起こして、口を半開きにしてうなっている東鬼の口の中に、薬の包みごと手を突っ込んだ。
 布の破れる音がする。
 手に巻いておいた布が、東鬼の牙に当たって裂けたのだろう。
 血の匂いが東鬼を興奮させると聞いたから、口に手を突っ込むことを考えて巻いておいたけれど、うまくいったようだ。

「う……うぅ……」
「タッくん、優しくしてくれよ」

 薬を、東鬼の口に突っ込むことは成功した。
 鬼の時の東鬼の口が、思った以上に大きくてよかった。
 裂けたっていう表現がぴったりで牙まで生え揃っているから、手を突っ込むのに勇気が必要だった。

 包みごと突っ込んだので、うまく溶けることを祈るしかない。
 問題は東鬼の唾液と混ざった薬をどうやって、俺の尻に仕込んでもらうか、だ。
 中に塗りつけるって、色々と無理だろう。

 そもそも唾液を混ぜて完成の薬なんて、聞いたことがない。
 唾液で作るツバメの巣……あれは食材か。

 そう思っていたら、東鬼が突然、自分の右手の人差し指を咥えた。
 何してるんだ、と問う暇もなかった。

 指の先に生えている鋭い鉤爪を食いちぎって吐き捨てた東鬼が、にぃと笑う。
 まるで無邪気な子供のように。
 口を自分の血で汚しながら。

 驚いている俺に気がついていないのか、東鬼が無傷な左手を伸ばしてくる。
 鉤爪だけでスウェットを引き裂かれながら、お前、本当は不器用じゃないだろ!と関係ないことを思った。

 あっという間に、引き裂かれた布をまとわりつかせた格好にされ、東鬼が正気を取り戻しているのではないかと思ってしまうけれど、俺を見てくる瞳は、いつもと違うままだった。

 服の残骸を手足に残したまま、板間のござの上で、少し迷う。
 これは、東鬼は、理性があるのか?
 まともに戻ってるのか?
 それにしては、言葉がないし、意思の疎通ができているとも思えない。

 ボクサーパンツに手を伸ばしてくる東鬼の意図に気がつき、裂かれる前に自分で脱ぐ。
 スウェットと一緒に切り裂かれたけれど、体に巻いた布は残っている。
 このまま……死ぬかもしれない、と体がすくむ。

「……あ"ぁー……」
「うわっ」

 軽く体を押されて、ござの上にうつ伏せになる。
 何を求められているのかは分かっても、恐怖心は無くせない。
 必死で震える体をなだめて、四つん這いになり、脚を大きく開いた。

「あ……ーぁ……」
「っ!?」

 昨夜から風呂に入っていない、体を洗っていないのに、尻を舐められた。
 暖かい濡れた感触が肌に押し当てられるたびに、肌が粟立つ。
 覚悟していたとはいえ、嫌悪感が強い。
 汚いからやめてくれ、と。

 俺の内心など知らないで、尻を舐める東鬼が、嬉しそうにふぅ、ふぅっと息を漏らす。
 てっきり、いきなり突っ込まれるかと怯えていたけれど、そうではないようだ。
 ぐ、と穴に濡れたものが触れ、それが押し込まれる。

「うっっ」

 痛い。
 恐怖で体がこわばっているからなのか、与えられる痛みを考えてしまうからなのか。

 大丈夫だ、東鬼が相手なんだ。
 大丈なのに、我慢できるはずなのに、怖い。
 死にたくない。
 東鬼を助けたいのに、怖い。

「……ぁーう」
「え?、ぅあっっ」

 今、タクって言ったのか?
 驚いて顔を上げると同時に、ぬるり、と尻の中に何かが入ってきた。
 熱いけれど痛くはない。

「っ……ふぅ…………ふぅっ……」

 落ち着け、と呼吸を意識する。
 何があっても、されても、相手は東鬼なんだ。
 だから。
 だから。
 大丈夫のはずなんだ。

 呼吸に集中している間に、尻の中をぬめるものが動くのを感じ、次第に、痺れるような感覚へと変わっていく。
 ぬめるものが抜かれて、もっと固いものが押し付けられるけれど、抵抗なく入ってしまった。

 オニグルイが効いてきているのか、と少しだけ安堵して、ぬめるもの、おそらく東鬼の舌と、固いもの、指?が交互に腹の中をかき回すのに耐え続ける。

 時間を知る手段がなくて、だんだんと尻の感覚がなくなってきた頃には、何が尻に入っているのかも分からなくなっていた。

 そんな時に、唐突に尻に入っていたものが抜かれて、ホッと息をつき安堵した俺の脇腹に、何かが食い込む。
 布を何重にも巻きつけてあるのに、痛いほどに食い込んでくるのを感じて、胸を肺ごと押し潰されるように力がかかって、息ができない、苦しい。

「やさ、しく、ッ、ぅあ"あ"っっっ?!ーーーっっう"ぅっ」

 ほとんど尻の感覚が残っていない上に、痛みを感じないのに、腹の中を削って巨大なものが体内へ入ってくるのを感じた。

 内臓を押し上げられて、口から何かがこぼれて垂れる。
 ただでさえ苦しかったのに、息が肺から押し出されて、酸欠の頭がくらくらする。

 目の前が一瞬真っ暗になって、気がつくと、仰向けの東鬼の上に両脇腹を押さえられた姿でまたがっていた。

 腹の中に太いものが入っているのを感じるのに、太ももが宙に浮いている。
 感覚の鈍った尻が、硬くて熱い肌に触れていない。
 まだ、全部、入れられてない?

 もしかして、言葉が出ないだけで、理性を取り戻してるのか?
 前に俺に言ってきた、これ以上は入れないって約束、覚えているんだろうか。

「……タッ、くん、やさし、っ、して、っーーーーーっ!」

 東鬼が少しでも元に戻っている可能性にかけて、声を出した直後に体が揺さぶられる。
 奥へと突っ込まれるような動きではなかったけれど、湧き上がるような快感に、頭の芯が白熱する。
 ぱち、ぱちとフラッシュをたかれているように、意識が弾ける。

 たった一度だけ軽く揺さぶられただけで、俺は絶頂を迎えていた。

 ああ、ま、まずい。
 これがきっと、薬の効果だ。
 痛みを感じなくなるだけじゃないって、ジョウタさんが言っていたのを忘れていた。

 正しい使い方をされると、快感で気が狂うのか。
 前に俺がおかしくなったのは、飲み薬でない薬を飲んだからなのかもしれない。

 ずっと痛くて、怖くなってきていたのに、鬼の東鬼に抱かれることで、絶頂にたどり着ける時がくるなんて。
 だからオニグルイなのか。

 これからの時間を思うと、本気で死んでしまうのではないか、と恐怖を覚えるほどの快感の中、俺はどうにかして東鬼を止めないといけない、と追い詰められていた。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

【R18+BL】ハデな彼に、躾けられた、地味な僕

hosimure
BL
僕、大祇(たいし)永河(えいが)は自分で自覚するほど、地味で平凡だ。 それは容姿にも性格にも表れていた。 なのに…そんな僕を傍に置いているのは、学校で強いカリスマ性を持つ新真(しんま)紗神(さがみ)。 一年前から強制的に同棲までさせて…彼は僕を躾ける。 僕は彼のことが好きだけど、彼のことを本気で思うのならば別れた方が良いんじゃないだろうか? ★BL&R18です。

処理中です...