【R18】I've got a crush on ogre

Cleyera

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五、受け入れて、受け入れられて

51 志野木 :注意:自傷?

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 轟々と燃えていた。
 家々が燃えている。

 燃えている家に、火に照らされた赤鬼が殴りかかり、建物が崩れていく。
 体当たりで家を崩すのか、鬼という生き物は凄まじいな。
 周囲には倒れている鬼の姿が見えるけれど、東鬼に痛めつけられた後なのか、動く姿はない。

 昌壽ヨシカズさんと話して、作戦ともいえない作戦をたてた。
 俺が東鬼の気を引く。
 どこかに連れていって、どうにかして薬を使わせて……やることをやる。
 その間に、昌壽さんに倒れている鬼たちを助けてもらえるように頼んだ。

 成功するなんて思ってない。
 でも、成功させないと。
 この状態の東鬼を見捨てて、俺だけが逃げだすなんて……できない。

「タッくん」

 精一杯甘えた声を出したつもりだけれど、通じているだろうか。
 素直に甘えるなんて、俺にはうまくできる気がしない。
 どんな口調や態度が正解なんだろう。

 似合わないだろう?
 もうすぐ二十五歳の男が、同性で、しかも鬼に甘えた声で話しかけるなんて。

「タッくん」

 怖い。
 燃え盛る業火に煌々と照らされ、艶めく肌は赫々としている。
 東鬼の黄金の瞳が俺を見つけると同時に、獣のように、ぐるり、ぐるりと喉を鳴らしているような、そんな音まで聞こえてくる。

「タッくん?」

 俺だよ。
 タクだよ。
 お前の、おひいさまだ。
 そういえば、おひいさまって、なんなんだろうな。

『……グァあ?』
「タッくん、寒いんだ、抱きしめてくれよ」
『ァあ、グゥう』
「そうか、俺も同じ気持ちだ、二人っきりが良いよな」
『ぐルゥう、ぁガぁあ』
「俺も大好きだよ」

 東鬼が、何を言ってるのか、分からない。

 それが悔しくて、腹立たしくて、怒鳴ってわめき散らしたい。
 俺の東鬼を傷つけやがって!と。

 赤鬼が一歩ずつ近づいてくるごとに、地面が揺れる。
 巨体が近づいてくる圧迫感と、異様な威圧感。
 黒い鬼から感じた押しつぶされるような感覚を、東鬼からも感じる。

 気がついてくれよ。
 俺に。

「タク、って呼んでくれないのか?」

 見上げる巨体は普段と変わらない。
 室内でないから、普段より小さいような気もする。

 それでも俺の視線は東鬼のみぞおち辺りで、もう逃げられる距離ではない。
 伸ばされた指が、大きな手が、俺に触れる直前、一瞬だけためらうように止まり、そして……。





 気がつくと、板の間に寝ていた。
 どこかの室内で、体の下にはござが敷かれている。
 見える限りの周囲は真っ暗で、遠くに一つだけ裸電球が灯っているのがぼんやりと見えた。

 腕を使って体を起こそうとすると、ぞわりと背筋を寒気が上っていく。

「ふーぅ……ふー……ぅー」

 俺を覗き込む二つの金。
 低く唸るような、呼吸。
 獣を相手にしているような錯覚を覚えながら、俺に向かってかがみこんでいる巨体を見上げた。

 こんなに近くにいるのに、全く気がつかなかった。
 一体、いつからこうしているんだろう?

「……タッくん」

 握っていた拳の中で、紙が潰れる音がした。

「タッくん?」
「……ぅー……」

 意思の疎通ができないとしても、東鬼は俺に優しくしてくれるだろうか。
 少し自信がない。
 ゆっくりと動いて、刺激しないように気をつけながら、手の中の薬包を確かめる。

「噛まないでくれよ?」

 手を伸ばして、体を起こして、口を半開きにしてうなっている東鬼の口の中に、薬の包みごと手を突っ込んだ。
 布の破れる音がする。
 手に巻いておいた布が、東鬼の牙に当たって裂けたのだろう。
 血の匂いが東鬼を興奮させると聞いたから、口に手を突っ込むことを考えて巻いておいたけれど、うまくいったようだ。

「う……うぅ……」
「タッくん、優しくしてくれよ」

 薬を、東鬼の口に突っ込むことは成功した。
 鬼の時の東鬼の口が、思った以上に大きくてよかった。
 裂けたっていう表現がぴったりで牙まで生え揃っているから、手を突っ込むのに勇気が必要だった。

 包みごと突っ込んだので、うまく溶けることを祈るしかない。
 問題は東鬼の唾液と混ざった薬をどうやって、俺の尻に仕込んでもらうか、だ。
 中に塗りつけるって、色々と無理だろう。

 そもそも唾液を混ぜて完成の薬なんて、聞いたことがない。
 唾液で作るツバメの巣……あれは食材か。

 そう思っていたら、東鬼が突然、自分の右手の人差し指を咥えた。
 何してるんだ、と問う暇もなかった。

 指の先に生えている鋭い鉤爪を食いちぎって吐き捨てた東鬼が、にぃと笑う。
 まるで無邪気な子供のように。
 口を自分の血で汚しながら。

 驚いている俺に気がついていないのか、東鬼が無傷な左手を伸ばしてくる。
 鉤爪だけでスウェットを引き裂かれながら、お前、本当は不器用じゃないだろ!と関係ないことを思った。

 あっという間に、引き裂かれた布をまとわりつかせた格好にされ、東鬼が正気を取り戻しているのではないかと思ってしまうけれど、俺を見てくる瞳は、いつもと違うままだった。

 服の残骸を手足に残したまま、板間のござの上で、少し迷う。
 これは、東鬼は、理性があるのか?
 まともに戻ってるのか?
 それにしては、言葉がないし、意思の疎通ができているとも思えない。

 ボクサーパンツに手を伸ばしてくる東鬼の意図に気がつき、裂かれる前に自分で脱ぐ。
 スウェットと一緒に切り裂かれたけれど、体に巻いた布は残っている。
 このまま……死ぬかもしれない、と体がすくむ。

「……あ"ぁー……」
「うわっ」

 軽く体を押されて、ござの上にうつ伏せになる。
 何を求められているのかは分かっても、恐怖心は無くせない。
 必死で震える体をなだめて、四つん這いになり、脚を大きく開いた。

「あ……ーぁ……」
「っ!?」

 昨夜から風呂に入っていない、体を洗っていないのに、尻を舐められた。
 暖かい濡れた感触が肌に押し当てられるたびに、肌が粟立つ。
 覚悟していたとはいえ、嫌悪感が強い。
 汚いからやめてくれ、と。

 俺の内心など知らないで、尻を舐める東鬼が、嬉しそうにふぅ、ふぅっと息を漏らす。
 てっきり、いきなり突っ込まれるかと怯えていたけれど、そうではないようだ。
 ぐ、と穴に濡れたものが触れ、それが押し込まれる。

「うっっ」

 痛い。
 恐怖で体がこわばっているからなのか、与えられる痛みを考えてしまうからなのか。

 大丈夫だ、東鬼が相手なんだ。
 大丈なのに、我慢できるはずなのに、怖い。
 死にたくない。
 東鬼を助けたいのに、怖い。

「……ぁーう」
「え?、ぅあっっ」

 今、タクって言ったのか?
 驚いて顔を上げると同時に、ぬるり、と尻の中に何かが入ってきた。
 熱いけれど痛くはない。

「っ……ふぅ…………ふぅっ……」

 落ち着け、と呼吸を意識する。
 何があっても、されても、相手は東鬼なんだ。
 だから。
 だから。
 大丈夫のはずなんだ。

 呼吸に集中している間に、尻の中をぬめるものが動くのを感じ、次第に、痺れるような感覚へと変わっていく。
 ぬめるものが抜かれて、もっと固いものが押し付けられるけれど、抵抗なく入ってしまった。

 オニグルイが効いてきているのか、と少しだけ安堵して、ぬめるもの、おそらく東鬼の舌と、固いもの、指?が交互に腹の中をかき回すのに耐え続ける。

 時間を知る手段がなくて、だんだんと尻の感覚がなくなってきた頃には、何が尻に入っているのかも分からなくなっていた。

 そんな時に、唐突に尻に入っていたものが抜かれて、ホッと息をつき安堵した俺の脇腹に、何かが食い込む。
 布を何重にも巻きつけてあるのに、痛いほどに食い込んでくるのを感じて、胸を肺ごと押し潰されるように力がかかって、息ができない、苦しい。

「やさ、しく、ッ、ぅあ"あ"っっっ?!ーーーっっう"ぅっ」

 ほとんど尻の感覚が残っていない上に、痛みを感じないのに、腹の中を削って巨大なものが体内へ入ってくるのを感じた。

 内臓を押し上げられて、口から何かがこぼれて垂れる。
 ただでさえ苦しかったのに、息が肺から押し出されて、酸欠の頭がくらくらする。

 目の前が一瞬真っ暗になって、気がつくと、仰向けの東鬼の上に両脇腹を押さえられた姿でまたがっていた。

 腹の中に太いものが入っているのを感じるのに、太ももが宙に浮いている。
 感覚の鈍った尻が、硬くて熱い肌に触れていない。
 まだ、全部、入れられてない?

 もしかして、言葉が出ないだけで、理性を取り戻してるのか?
 前に俺に言ってきた、これ以上は入れないって約束、覚えているんだろうか。

「……タッ、くん、やさし、っ、して、っーーーーーっ!」

 東鬼が少しでも元に戻っている可能性にかけて、声を出した直後に体が揺さぶられる。
 奥へと突っ込まれるような動きではなかったけれど、湧き上がるような快感に、頭の芯が白熱する。
 ぱち、ぱちとフラッシュをたかれているように、意識が弾ける。

 たった一度だけ軽く揺さぶられただけで、俺は絶頂を迎えていた。

 ああ、ま、まずい。
 これがきっと、薬の効果だ。
 痛みを感じなくなるだけじゃないって、ジョウタさんが言っていたのを忘れていた。

 正しい使い方をされると、快感で気が狂うのか。
 前に俺がおかしくなったのは、飲み薬でない薬を飲んだからなのかもしれない。

 ずっと痛くて、怖くなってきていたのに、鬼の東鬼に抱かれることで、絶頂にたどり着ける時がくるなんて。
 だからオニグルイなのか。

 これからの時間を思うと、本気で死んでしまうのではないか、と恐怖を覚えるほどの快感の中、俺はどうにかして東鬼を止めないといけない、と追い詰められていた。
 
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