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説教する ※結腸
しおりを挟むうつ伏せで目が覚めて、まず汗をかくほどの暖かさに包まれていることに気がつく。
それから体が緩やかに揺れていて、ひどく気持ちいいことにも。
「ん、ぅぁ?」
声を出そうとして、慣れつつある喉の痛みを覚え、ゆらゆらと揺れながら何が起きているのかを考える。
昨夜は蟻の建てたビルで一泊して、なんか流されてギルとしたのは覚えてるが、いつ終わったのか覚えていない。
つまり久しぶりに途中で気絶もしくは寝てしまったのか。
で、なんかすっごく気持ちいいんだけど、どこが気持ちいいのか……ええと、尻?
そこまで考えて、ハッと覚醒した。
「え、何だこれ、うぁあっ!?」
体を起こそうと下に敷かれていた暖かい毛皮に手をついたら、両脇に痛みが走ると同時に体が後ろに押し下げられて、電気が走るような快感が背筋を通り抜けた。
何が起きてるんだよ、淫夢でも見てるのか?
「おはよう、私の愛しい修也」
頭上から甘い声がして、再び体が揺さぶられる。
「あ、あっ、ギル?、これ、なっ、んで?」
意識は覚醒したけれど、体がそれに追いついていないせいで、うまく動けない。
ブプッグブプッと聞き慣れた淫らな音がして、ギルのペニスが俺の中に収まっているのだと理解はできても、力が入らなくて確認できない。
寝起きで動けないというよりも、快感で力が入らなくなってしまっているのか?
「可愛らしい修也の寝顔を見て、もっと匂いをつけておこうと思ったのだ」
「だか、って、ねむ、って、うっ、ん、ぅああっ」
だからって眠ってるうちに突っ込むなよ!と言いたいのに、うまく言葉にできない。
熱くて太いペニスが後孔をゴリゴリ擦りながら出入りするのも、時々思い出したように腹側の痺れるところを擦られるのも、奥に当たっているのも気持ちいい。
すごい気持ちいい。
なんだこれ、頭がおかしくなるくらい気持ちいい。
語彙が乏しくなるくらい、他のことを考えられなくなるくらい。
体を揺さぶられるたびに気持ちよすぎて、だんだん頭がクラクラしてきた。
でもそろそろ抜いてもらわないと、と怖くなる。
奥に当たった時の感触が、ハッスルの時に近い気がする。
今は俺がギルの腹の上にうつ伏せになっているからいいが、体を起こされて自重が一点にかかったら絶対にまずいことになる。
ゆるゆると揺さぶられているだけでも、意識が溶けてしまいそうに気持ちいいのに、緩んだ奥の奥にギルが入ってしまったら、と思うと……怖い。
「ギル、たのっ、むから、ぬいてっ」
「すまないが修也、それは無理だ、修也の中が私に吸いついて離してくれない」
「そ、なっ、け……っあう、ぁあ」
そんな訳あるか!と回らない頭で思うが、うまく声に出てこない。
ギルのペニスでゆるゆると肉壁を擦られているだけなのに、何も考えられない。
両脇を支えられて奥をこねるように体を揺さぶられ、擦れる部分が変わると、上りつめたいのにままならなくて泣きたくなる。
小刻みに奥を突かれると、さらに奥に入ってしまうのではと怖い。
怖いのに、この先が欲しい。
ギルに与えられる快楽に溺れたい。
きっと何も考えられなくなって、意識も記憶も吹っ飛んでしまうと分かっているし、そんな卑猥で情けない姿をギルに見られたくないと思うのに、体が望んでいる気がする。
ギルの全てが欲しい、全てを受け入れたい、とどこかで常に感じている。
「ギ、ルっ、あっ、ま、待って、これ、だ、めだっ」
痛みを快感に感じたことなどないのに、脇の少し下あたりで肌に食い込んでいるギルの爪さえも痛気持ちよくて、必死で止めて欲しいと頼むけれど、ギルは下から突き上げる勢いを変えることで返事をしてきた。
快感が過ぎて、口から出てくるのは喘ぐような声と、掠れた呼吸だけで、映像作品で女性があげる嬌声にしか聞こえなかった。
本当に気持ちいいと、言葉が出てこないだけでなく、呼吸までできなくなるらしい。
「修也、ああ、すごい、中がうねって、奥が吸い付いてくるっ」
俺自身は毛皮越しのギルの腹に押し付けられて擦れているから、もちろん気持ちいいが、射精で得られるものとは明らかに違う種類の絶頂がやってくるのを感じた。
未知の体験だが、これは知らない方がいい気がする。
この先を知ったら戻れないような気がする。
「あ、だめっギルっ、これこわい、いや、だっ、やめぇ」
「修也、うっ」
なんとかして快感を逃がそうと、掠れた声で助けを求めてギルの毛皮にしがみついたが、腹の中にギルが放った熱を感じた瞬間、パチンとスイッチを入れたように全身が痙攣した。
「っっ!?あぁああっっ」
「うっ、うぅっ修也、愛してる、修也っ」
「ギルっ、だめ、もうだめぇっ、ぁぐ!?、あ"あ"あぁっ~~~~っ」
未知の快感に堕とされた俺が全身を強張らせて痙攣しているところで、さらに奥へとギルが竿の先端を捻じ込んできて、意識が吹っ飛んだ。
そして多分だが、吹っ飛んだ直後に奥の奥を再び揺らされて覚醒させられた。
ギルに体を揺さぶられると、内臓まで同じように揺さぶられて引っかき回され、意識が吹っ飛んで真っ白になるほどの絶頂感まで同時に襲ってくる。
何が起きているのか全く理解できない。
「ぁが、おくはぃって……ぃあ"あ"っィルッ、こわ、れるぅっ、やらぁっ」
「あぁ大丈夫だ、修也、とても気持ちがいい、修也の中が私を包んできつく抱きしめてくれている、離すまいと吸いついてくれている」
「ち、ぁうっ、それ、おかしっぃ、お"ぁあっっ」
ギルのペニスがどこまで入っているのかは知らないが、気持ちいいなんてとっくに通り越していた。
強制的な絶頂で自失して、突かれて覚醒を繰り返すことが気持ちいいならともかく、本当に狂ってしまいそうで恐怖しか感じない。
怖くてたまらないのに、幾度もそれを繰り返されるうちに、これも快感だと体が学んでしまったらしく、快感の一番上に登りきったまま下りてこられなくなった。
「イ、ィルっ、……ぁ、も、むぃい、ぁめっ」
まともに言葉も発せない状態になって、ギルを制止しても通じていないのか、やめてくれない。
やめるどころか俺の上半身を抱き起こして、ギルの股間に押し付けると同時に奥の奥に突き入れて精を放つ。
放った後は抜いて、緩んでいる奥への入口を舐めるようにぐちぐちと捏ねて、再び奥へ突き込んで射精という流れを、延々と飽きずに繰り返された。
体は起きていても支えているのはギルで、奥に捻じこまれて熱を放たれるたびに、下りられないままの絶頂が長引き、小さい子供のように泣きじゃくることしかできなかった。
快感が過ぎて苦痛だと感じているのに、奥に放たれるたびに歓喜を覚えていた。
このまま、溶けて一つになってしまいたい、いつまでも離さないで欲しいと思ってしまった。
ギルが昨夜から抜かずに、ずっと俺の中に入れていた、と知るのは、疲労困憊で目覚めた後のことだった。
◆
今回、ギルは呪いのせいでハッスルしたのではなかった。
ちゃんと会話が成立していたし、目も濁ってなかった、と思う。
つまり呪いに影響されて強引な行為をしたのではなく、本人の意思でしたと考えていいだろう。
ということで行為の翌日の今、幸運にも熱は出なかったが腰から下の感覚がなく、体にも力が入らずに座ることもできなくなった状態で目覚めた俺は、ギルに説教をすることにした。
これまでのことを思い返して、長時間の挿入で奥の奥に入りやすくなる、と仮説を立てた。
早漏で射精の回数が多いギルの精液で腹の中がふやけてしまうのか、ただ単に緩むのか、ギルのペニスの長さがちょうど良いのか。
理由は不明だが、今回のように一晩中入れたままは負担が大き過ぎる。
人体の、しかも尻周辺の構造なんてほとんど知らないので、そこに入ってしまうのが自然なのか、入れてしまって大丈夫なのかすら分からない。
そもそも尻は出す場所であって、突っ込む場所じゃない。
奥の奥に突っ込まれた経験は、覚えている限りでは今回で三度目だが、とりあえず目に見えるような体調不良は出ていない。
行為直後は例外として、多分、死ぬような後遺症はでないと思う。
まことに遺憾ながら、尻だけで性的快感の絶頂にたどり着けるようになってしまったらしい、と自覚してからのアナルセックスへの感想は、他の何もかもを忘れてしまうくらい気持ち良かった。
ギルに与えられたものは、射精とは全く違うもっと強くて長い絶頂で、星が飛び散る世界で無重力体験をした気分だ。
俺自身には一切触れてないのに絶頂を迎えて、しかもイキっぱなしとか普通なのか。
どこで快感を覚えているかも不明なのに、突っ込まれて気持ちよくなってしまうなんて、どう捉えていいのかと悩んでいる。
分かりたくないのに、アナルセックスが好きな人の気持ちが、理解できてしまった。
だが、問題はそこじゃない。
動けなくなるような行為を強行されるのは困る。
俺は精一杯やめてくれと頼んだのに、ギルは聞き入れてくれなかった。
熱が出ていないから加減してくれていたなんて思わない、ギルは俺がもう無理!ともがいて逃げ出そうとしても手(というか鉤爪)を離してくれなかった。
涙とよだれ、多分鼻水もでべっちょべちょの顔を「愛らしい、可愛い」とか言いながら舐めるのはやめろ。
動物の発情に巻き込まれた気分だ、死ぬまで腰を振るつもりならともかく、俺はこの先もギルといるつもりだし、望まれれば可能な限り受け入れたいと思っている。
そのためには、どちらか片方に負担が大きいのは良くない。
毎回ギルがその気になるたび、こちらには拒否権がなく奥の奥まで突っ込んで抱き潰される、では本当にオナホ扱いだと思うのだ。
それがいくら気持ちよくても。
「ギルが奥の奥に入れるのが好きなのは分かった。
俺だってギルをそこまで受け入れるのは頭が吹っ飛ぶくらい気持ちがいい、でも、俺の意見を無視するな。
ここには俺が動けなくなった時に、ギル以外に世話をしてくれる人がいないだろう?」
「……その通りだ修也、くっ、う、神に懸けて、修也の許しなく長時間はしないし、奥に入れない」
「俺が意識ない時に入れたままにするのも駄目だ」
「……くうぅ、分かった」
報告連絡相談を怠り自己判断で失敗したのに、反省しない新人にやるように淡々と説教をしたせいか、ギルが半泣きになってしまった。
抱きしめて頬ずりしながら何度も謝ってくれたし、すまないと本気で思っているらしい態度を疑ってはいない。
普段の行為の時なら止めてくれたんだろうが、今回は道中での会話も手伝い、ギルのヤる気スイッチが入ってしまったのだろう。
それでも何度謝罪の言葉を口にしても、ギルががっかりしているのは明らかだ。
器用に体を折り曲げて自分の腹を舐めて毛繕いしながら、修也の味がする、とか名残惜しそうに呟いてるのを見ると、もっと反省しろ!と思ってしまう。
俺はそもそも童貞なので自慰以外の経験がない、穴に突っ込むってのはそんなに気持ちいいことなのか?
突っ込まれている方としては、快感として受け取れるようになった今は最高だが、動けなくなるのは困る。
「修也が柔肌を血色よく染めて、愛らしい仕草で心地よいと喘ぎ、艶をまとい腰をくねらせて快感を拾う様に、どうしようもなく煽られてしまって止められなかった」
「……」
やばい、今、絆されそうになった!
髭までしょんぼりさせるイタチとか可愛すぎるだろ!
エロ王子発言もやめてくれ!
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