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20 すれ違う ※ バイブ、オナホ

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 ブレーは考えてくれた。
 私が痛い目にあわず、かつブレーも気持ちよくなる方法を。

 人種族の街にも村にも立ち寄らない旅路の途中で、潤滑液の材料を入手するのは難しい。
 それならば、潤滑液がなくても大丈夫な行為で止めておけば良い。

 体を交わすと私の負担が大きい。
 それならば、お互いで快感を得れば良い。
 二人で一緒に〝ブレー君〟と〝エレン君〟を各自使えば良い。
 自分で動きの調整が出来れば、痛みを感じる事も少ないだろう。

 と、なったらしい。
 なんでそうなった、とは言わない。
 だって私は、ブレーに意見できる立場じゃない。
 痛みに耐えていた訳じゃないけれど、我慢していたと思わせてしまった。

 今回、暫定目的地ベルストーナに到着したので数日休むと考え、多少羽目を外しても構わないだろうと結論を出したようだ。
 目的地はベルストーナではなく、その側の森に残っているかもしれない元拠点の朽木の洞だったのだけれど。

「ふぁ、……あ、あぁ、……ああっっ」
「気持ちいいか、エレン?」
「なん、なにこ、あ、……ん、んぁあっ」

 なんでこんな事に。

 ブレーが自分の陰茎に〝エレン君百二十五号〟をかぶせて、左手で上下にしごいている。
 私の尻の穴には〝ブレー君三号〟がずっぽりと刺さって、ぐいんぐいんと回転しながらねじれるような動きを展開している。
 〝ブレー君〟を支えて前後に抜き差ししているのはブレーの右手だ。

 私は作ってないのに、三号ってどーゆーこと!?

 私が作った震えながら伸縮する形ではなく、震えながらうねるように回転するブレー君。
 回転するせいで、腹側のきもちいい場所を不意に押しつぶされて、体が硬直する。

 仰向けに転がされて、なぜか両手首を揃えるように布で縛られた。
 なにをする気だろうと思っていたら、尻の穴に乳油をまぶしてほぐされてから〝ブレー君〟をつっこまれた。


 ブレーが自分の片手で自分の陰茎を擦り上げる姿から、目を逸らせない。
 〝エレン君〟が大活躍している。
 私は仰向けで手首を縛られた格好で、〝ブレー君〟を尻に突っ込まれているから、うまく動く事もできないのに。

 ……私の手首を縛る必要あったか?
 逃さんぞって事か?

「……っう、っっぅう」

 ブレーが望むなら、私は嫌ではない。
 何度も出して中身がないはずの陰茎から、垂れるように押し出されるように、わずかにしたたる体液を見るブレーの目が嬉しそうで反応に困る。

「痛くないな、気持ちいいな?」
「うううぅっ」

 確認されても、答えられる訳がないだろう!
 快感はあるのに、浸れない。
 何度も達している感覚はあるのに、それを与えてくるのが〝ブレー君〟だという現実に打ちのめされている。

 ブレーに触れられているのに、私の中を満たしているのがブレーではない事が、辛い。

 ああ、私は寂しいのか。
 快感に満たされるのに、愛おしい恋人に痴態をさらす事が恥ずかしいのに、それ以上に寂しくて苦しい。

 ブレーを腕の中に閉じ込めて、ブレーに弱点をさらけ出して、達したい。
 私は、ブレーが欲しいのだ。

 ごり、と腹側を押し込まれ、世界が明滅する。

「ブレー、あ、ぁ、あ、ブれーぇっ」

 これならきっと、どれだけ達しても記憶は失われない。
 心が幸福を感じていないから。

 確信めいた心の動きと共に、私は〝ブレー君三号〟で何度も絶頂に押し上げられ続けた。



   ◆



 翌朝、体を交わしていないのに痛む腰を抱えて、なんとか寝台から降りた。
 ……なるほど、欲求不満とは、こういう状態を言うのか。

 全て、覚えている。
 与えられた快感も、己への不甲斐なさも、苛立ちも、悲しさも。

 体は疲れきり、心は足りないと叫んでいる。
 目の前が赤く染まりそうな予感に、頭を両手で押さえる。
 かんしゃくからの魔力暴走は、幼児が起こすものだ。
 おじさんのかんしゃくなど、誰が微笑ましく思うものか。

 頭と胸に手をあて『鎮静』の魔法を念入りにかけて、ようやく落ち着いた。

 私はブレーを愛してる。
 でもそれがブレーと同じ愛なのか、自信がない。

 ブレーは、二人でお互いに〝ブレー君〟と〝エレン君〟を使う事に抵抗がないようだった。

 ドワーフの恋人たちにとって、目の前で自分の快感を追う姿を見せ合うのは、普通のことなのだろうか。
 もっと詳しく聞いておくべきだった。

 二百年も一緒にいるのに、私はブレーの好みを知らない。
 聞こうと思わなかった。

 人種族の場合、物語の中に限ってかもしれないが、最終的に繁殖が目的になっていた。
 結ばれた二人の間には子が生まれて死ぬまで幸せ、という話が多かった気がする。

 戦いが終わり、国が再建されたと同じようなものか。
 それが不幸せな話であっても、何らかの形で後継を求めるのが、繁殖を至上とする人種族の存在意義なのかもしれない。

 生物としては正しい。
 繁殖しなければ滅びる。
 正しいのに、私には無理だ。
 後継が必要だからと、最低限の行いで繁殖を済ませるエルフがおかしいのか。

 私は、自分が思う以上にエルフだったようだ。

 昨夜はひどかった。
 私は快感を得たいのではなく、ブレーに触れて、触れられたいと思い知った。

 エルフらしいといえば、らしいのか。
 伴侶と寄り添って生きる事がエルフの幸せで、私はそこに触れたい触れられたいという欲が加わっただけで、本質は変わらない。

 おじさんと呼ばれる年齢になってから、自己分析などしたくなかった。

「……ブレーのばか」

 彼は私を思って動いてくれたのに、それが私の思っていたものと同じではないから、受け入れられない。
 私は、ブレーがいないと生きていけないのに。
 狭量な自分が嫌いになる。

 大至急、潤滑液になるものを探して採取しよう。
 昨夜の行為を繰り返されるのは、好ましくない。
 心が腐る。
 私はブレーに抱かれたいのであって、一人で気持ちよくなったり、一人で気持ちよくなっているブレーを見ていたくはない。

 そんなもの使うなら、私に触れろ。
 そんなもの使うなら、私に入れろ。
 そんなもの、私に使うな。
 そんなもの、私に、……くそ。

 だめだ、鎮静が無駄になる、頭を冷やしてこよう。

 眠っているブレーに八つ当たりしてしまいそうになり、自分の未熟さに打ちのめされる。
 年齢を重ねても愚かな私は、さらに歳をとっても愚かなままなのだろう。


 痛み止めの湿布を貼って、患部に炎症を抑える薬を塗り、全身の筋肉痛がない事を虚しいと思いながら、薬草茶を淹れる。
 火を熾さなくても、水に圧力をかけて茶葉の成分を抽出すれば良い。

 鎮静の魔法に加えて、鎮静効果のある茶を飲んで。
 気分を変えるためになにかしようと考えるくらいは、余裕が出てきた。

 ブレーが起きてくるのは昼を過ぎるだろう。
 今は、朝と昼の中間くらい。

 木の洞を探しに行くには時間が足りない。
 採取に行くにも足りない。
 ……保存食でも作るか。

 乳鉢と薬研を取り出して、天秤と素焼きのほうろくも。
 道程で集めた木の実の選別は終わっているから、炒って、剥いて、砕いて、すりつぶして、味付けは塩となににしようか。

 炒り穀物が少なくなってきた。
 こればかりは人種族の里に行かなくては手に入れられない。
 野生の穀物は探せても、そこで十分な量を手に入れるのは難しい。
 乾燥や脱穀の過程も、手持ちの道具で行うのは大変だ。

 ……と、まだ諦めないのか。

「誰だ?」

 遮蔽結界に誰かが触れて、目が覚めた。
 しばらく意識を向けていたけれど結界が破られそうな気配はなく、危険性は低いと判断。

 気がつかないふりをしているのに、魔法道具がもたらす忌避感を通り抜け、見えないように偽装されている遮蔽結界を見つけて叩き続ける存在がいる。
 うっとうしい。
 面倒臭い。

 機嫌が良くない状態に重ねられて、最悪な気分だ。

 
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