16 / 45
14 愛しい夜 ※ 対面座位→騎乗位
しおりを挟む焦らされているようで辛いと訴えたのに。
「おう、ほれ、おいで」
「え?」
振り返ると、ブレーが寝台に腰を下ろして両腕を広げていた。
えー……それ、苦手なんだけど。
と言えるはずもなく。
「どうした?」
「う、あ……うん」
胡座をかいているブレーの股間で、帽子を被った本物のブレー君が元気よく「こんにちは!」、してくれている。
どうしよう、これ、記憶なくなったら。
焦りと記憶が飛ぶ予感で目の前が滲むのを感じながらも、私は足を広げ、ブレー君に尻の穴で挨拶する事しかできなかった。
ブレーの肩に手を置いて、足を開く体勢の卑猥さは考えない。
ちゅ、ちゅ、と口づけのように挨拶して腰を下ろす事を躊躇っていると、尾てい骨を撫でられて、骨盤を掴まれた。
「ぅうっっ、や、あ、んんっ」
くすぐったさと快感が同時に襲ってくる。
ブレーの手つきは優しくて、私が慰める側だったはずなのに、いつもと同じように翻弄されている。
「ほれ、おいで」
「ん、うんっ」
少しずつ引き摺り下ろされて、ぐぷくぷと音をたてながら、私の中にブレーが収まっていく。
「あ、っ、ぁ、あぁっ」
熱くて固くて、すごい、好き、ブレーが好きっ。
腰に回された手で尾てい骨と、受け入れている最中の尻の穴の縁をくすぐられた。
「っん、あ、あっ、そこだめ、なでちゃだめぇ」
「ひくひくしとるぞ」
実況中継しないでーっ!!
ブレーの口を塞ごうと、胸の辺りにあるもじゃもじゃの頭を抱え込む。
腰に回されたブレーの力強い腕が、体を支えてくれた。
支えてくれるけれど、その手の動きが怪しい。
「あ、や、ああ、やめて、くすぐったいっ」
「ここを揉むと中がうねる」
「やあ、それやだっ」
くすぐったいのと快感の境目が曖昧になるからやめて。
腰骨の周辺を触られるのは苦手だ。
本来そこは肉体的な急所。
快感なんて感じるはずないのに、くすぐったいのに気持ちよくて、体がびくびくと震えてしまう。
震えるたびに、ブレーが少しずつ入ってくるのが、気持ちいい。
ず、ずっ、と本当にゆっくりと中が擦られて、満たされていっぱいになるのを感じてしまう。
ゆっくり、気持ちいい。
一息に奥までも好きだけど、じれったいのも好き。
「エレンの中が絡みついてくるのを、喜んではいかんのか?」
言い方!
傷ついてますって顔をするのも。
「……だめ、ではない」
うぐぐぐ、私は意志薄弱なエルフだ。
たとえあからさまな演技でも、ブレーが傷ついた顔をする事に耐えられない。
「そうか……エレン、ありがとう」
唐突だったから、くすぐったさに悶えていて聞き逃してしまう所だった。
ブレーの声に含まれた切羽詰まった重さを。
私はホーヴェスタッドに偶然、流れ着いた。
出会ったブレーに妖精族の縁で生活を保証され、居場所を得た。
でも、ブレーは一から全て、自分の手で作り上げてきた。
友人も、自分の価値も、仕事も、住む場所も。
積み上げてきた全てを失って、平気なはずがない。
明るく振る舞って、笑い飛ばしてあげたいと思ったけれど、やはり、私に喜劇役者の才能はない。
傷ついているのはブレーなのに、私が苦しくて仕方がない。
「ごめん、私がもっとしっかりしていたら、工房も、まもれたのにっ」
謝るべきじゃないのかもしれない。
ブレーをもっと追い詰めてしまうかもしれない。
それでも、悔しくて、許せなくて、怒りで声が震えた。
工房には、防犯設備があった。
ブレーが用意した魔法道具は、人の侵入や家屋破損の阻害設定はされていたけれど、放火は想定外だった。
周辺地域を包括する放水魔術道具があるから、自分の工房にだけ取り付けるのはやめておこう。
人種族を信用していないと思わせるような行動は控えよう。
そう考えたブレーが間違っていたとは言わない。
彼は自分が出来るからと言って、他人の未熟さを怠慢だと考えたりはしない。
ドワーフもエルフも人種族も関係なく、十人十色を認める事が出来る素晴らしい人だ。
人種族のやり方に合わせただけ。
自分の工房兼住居だけ守りを固めた所で、それを見抜く目を持つ人種族はほとんどいないのに。
ブレーの優しさを、私は甘いと思っていたのに。
人種族の中に理解できない価値観がある事も、暴走癖も知っていたのに。
動かなかった。
いくらでも防ぐ事ができたのに、ブレーの意思を尊重すると言い訳して、必要な事をしなかった。
その結果、放水魔術道具は稼働せず、工房は燃え落ちた。
「エレンは悪くない」
「でも、な、ん、あぁっっ!?」
反論しようとしたら、腰に回された腕に力が入って引き下ろされ、残りが全て中に収められた。
衝撃で膝が崩れて、尻に触れた熱い肌に、全身が震える。
「ありがとな」
「そ、っ、う、うう゛っ」
お礼を言われるような事、してない。
できてない。
尻の中が熱くて気持ちいい。
深々と収められたブレーの熱は、いつでも私を翻弄する。
快感が背中を登っていく。
根元まで受け入れて、しばらく馴染むのを待っていたブレーが私の腰から手を離した。
「動いて、くれるか?」
「あ、う、ん」
上になるの苦手なんだけど。
それがブレーへの慰めになるなら。
ごろりと仰向けになったブレーは、暗闇の中で裸身をさらしている。
武器や防具など重い物を扱っているからか、壮年になっても腹だけ太ったりしていない。
もともとでっぷりとして見えるのは、背が低いことと、分厚い筋肉を脂肪が覆っているからで、種族的に筋肉がつきやすいのだと思う。
鉱石を掘り、集めて溶かして金属を選別し、選別した金属を型に流し入れたり、叩いて形作って。
ドワーフが得意とする鉱石加工は大掛かりで、体力も筋力も必要だ。
所々に火傷の跡が残る、油を塗ったなめし革のような固い肌に、私の貧弱な指を滑らせる。
長年、薬草に触れすぎて指先が染まり黒ずんでいるけれど、傷ひとつないように手入れはかかしていない。
腹部と胸の筋肉の凹凸を楽しみ、手のひらを寝台に降ろそうとしたら、両手をブレーに捕らえられた。
「きれいな手だ」
「……ありがとう」
ドワーフの美意識で私の手が美しく見えるとは思えないけれど、ブレーの言葉に嘘は感じられなかった。
私の手は、年を経るにつれて薬師の父の手にそっくりになった。
平凡エルフである私の数少ない自慢だ。
私はエルフの薬師。
人種族の街にエルフの薬を流通させる訳にはいかないので、酒しか作れないように振る舞ってきたけれど、私の本業は薬師だ。
薬草酒の製法を知るのは薬師だから。
植物採取は薬師の必須技能の一つ。
薬師なのだから当然、丸薬、粉薬や練薬、水薬も作れる、これはエルフの常識だ。
指をからめられて、手と手をしっかりと組まれる。
無骨でふしくれだった指、分厚くて固くて傷の残る手のひら、四角く固い爪、骨の太い手首。
見た目は力強いのに、ブレーの手はいつも私に優しい。
「わしの代わりに怒ってくれるエレンが好きだ」
「……っ、……ぅ、あり、がとうっ」
私が素晴らしい人物であるかのように扱ってくれる、ブレーが好きだ。
私をあるがままに受け入れてくれて、一緒に笑ってくれる。
彼の懐の大きさに、私はずっと救われてきた。
だから。
「エレン、っ」
指と指をからめて繋いだまま、私は腰を前後に揺らした。
ずり、ずり、と肌同士を擦りあわせるように
ゆっくりと腹の中でブレーの陰茎をこねるように。
「……ぁ、っん、……ぁあっ」
ゆっくりと、奥の押されて気持ちいい場所にブレーの張り出した先端が当たり続けるように、ゆるゆると腰を揺らしていると、じわじわと快感が蓄積していく。
「……く、……ふ」
ブレーは口を閉じて、気持ちよさように息をもらしているけれど、その視線がずっと私から離れない。
私とブレーが繋がっている場所に向けられた視線が熱くて、腰の動きが大きくなりそうになった。
37
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


皇帝陛下の精子検査
雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。
しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。
このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。
焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる