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06 確かめんのか? ※ 腸内洗浄
しおりを挟むドワーフは魔法武具や魔法防具を作る。
エルフは魔法道具や精霊道具を作る。
もちろん全員ではない。
親が得意なら教わるし、そうでないなら知識で終わる。
親の知らない事を学びたい時は、得意な者に教わりに行く。
私の両親は魔法道具も精霊道具も使う側で、作る知識も技術も習っていなかった。
里に手紙と報酬になりそうな物資を送り、本や工具を用意してもらい、独学混ざりで学んだ。
師匠はいない。
相談相手もいない。
そもそもブレーの勃起ブレーを作りたくて魔法道具の作り方を学んでいる事を、誰に言うのか。
書物の知識だけで、実物を作成する道は険しかった。
初めての魔法道具、ブレーの勃起ブレーを完成させるのに、素材集めを含めて五年かかった。
今回、二つ目を作ろうと思い立つまで、初めての魔法道具を大切に使い続けてきた。
たくさん作る必要性を感じなかった。
修理や改造で、百個くらい作れる材料と時間を注ぎ込んでいるけれど。
と、創作の苦労を訴えている間に、なにを訴えたいのか分からなくなってきた。
「…………なるほど、分かった」
とにもかくにも、分かってくれたようだ。
さすが私のブレー。
懐の深い素敵な恋人だ。
よし、この件は終わりにして晩御飯にしよう。
そうしよう。
「わしのと同じに出来とるか確かめとったんだな?」
「そう、そうだよ」
きちんと伝えられたと安堵しながら、魔法道具をしまおうとした手を、ブレーに柔らかく押さえられた。
「ブレー?」
「一職人として、完成間近のもんを放り出すのは見逃せん」
「どういう……いみ?」
スッと頭が冷えて、ようやく気がついた。
ブレーが目を据わらせて、ぎらぎらと光らせている事に。
それで?、と手を包むように握り込まれて、持っている魔法道具の形と温かさを否応なく感じてしまう。
目の前にブレーがいるのに、私の手の中にブレーの勃起ブレーそっくりのものがあって落ち着かない。
「これがわしのと同じなら、どう使う?」
「これ、は、こう、やって……」
話している間に乾いてしまったので、卓上に置いてある器から潤滑液を追加しようとすると、ブレーはそちらにも興味を示した。
「こいつはなんだ?」
「野菜のグリョン・ロの粘液から精製した潤滑液で、乳油と併用しようと新しく作った」
ドワーフ達の技術は鉱物由来素材の加工に特化していて、植物由来素材の扱いは得意ではない。
武具や防具の一部として木材を扱うことはあっても、ドワーフの生活環境内に植物が少ないので、食材以外の用途で取り扱う機会は少なく、技術として確立しにくいらしい。
同様にドワーフの魔法道具は武具や防具の能力を高めるものが多く、金属に刻印してはめ込んだ魔石を動力に使うものが多い。
エルフは逆だ。
木々が深く茂った森や山で大量の鉱物は得にくい。
ゆえに木や蔓の細工物を扱う技術や、薬草学が発展した。
精霊石は厳密には鉱物ではないので、粉末にして塗料に混ぜたり、砕いて樹脂に練り込み、刻印魔法式に組み込む。
精霊が入っていても粉末にできる技術があるらしい、できないけれど。
それぞれの場所で出現する魔物も違うため、魔物素材の加工方法もかなり違う。
薬草学は私の専門分野なので、グリョン・ロという野菜がいかに潤滑液を作る素材として向いているかを話していたら、ぬるりと手を撫でられた。
いつのまに潤滑液を!?
「なるほど、これは良いな」
ぬっちゅ、ぬっちゃ、と音を立てる節張って硬いブレーの手に包まれ、揉み込まれると、握っている魔法道具がひどく卑猥なものである気持ちになってくる。
いや、実際にこれは卑猥な淫具だ。
でもブレーのブレーだから、卑猥ではない。
やけに乾いた気がする喉を鳴らして、すぐ側にあるブレーの顔を見つめる。
私の方が頭二つ背が高いから、膝の上に乗る時も見下ろしてばかりで、とても新鮮な気分になる。
里帰りで、新しい服を仕立てたのかな。
丈夫な魔物革の上衣は襟ぐりが大きく、袖もない。
ブレーは暑がりで、一年中同じような格好をしている。
けれど、今日は盛り上がって筋肉質な首元や肩周りがとても近くて、胸が苦しくなる。
私はどうなっているのか。
あの日から、初めて抱かれながら達した日から、なにかがおかしい。
私が、淫乱みたいではないか!!
「のう、これは、こうやってしごいて使うもんじゃなかろう?」
「っんんっ」
使ってみんのか?
そう言外に言われた。
ブレーの目の前で、これを使う?
なにそれ、絶対に無理、そんな事できない。
「実際の動きを確認せんのか?、なにかあった時はわしがおるぞ」
「え゛……」
無理。
でも、でも、これ、え。
もしかして、見ただけでこの魔法道具にドワーフの技術が使われていると、見抜かれた?
魔法刻印に動力源をはめこむのは、ドワーフ流の魔法石を使った魔法道具の作り方だ。
私は魔法道具の基礎こそエルフ流で学んだけれど、作る方はブレーの修理したものを参考にしている。
『自壊』の魔法がかけられたエルフ語の本は、里の外に持ち出せる。
工具も同様、使うのに魔法が必要だから人種族の手に渡っても、悪用される心配はない。
魔法を解除せずに読もうとすれば本は燃え、使おうとすれば工具は崩れる。
けれど、魔法道具は流出禁止品だ。
魔法道具を稼働させる魔法式に干渉してしまうので『自壊』が組み込めない。
魔法道具を送ってもらえない以上、作る参考にできたものは、ブレーの直した魔術道具しかなかった。
刻んだものは魔法式で、はめこんだものは精霊石だけれど、一流の修理職人には改造も修理もできるだろう。
「見ておってやるから」
「わ、わかった」
部屋の中なので、長衣一枚に下着しか身につけていない。
脱ぐのは簡単だ。
でも私は、二百年付き合っていても、明るい部屋で裸を見せた事がほとんどない。
ドワーフは、森林に適応したエルフの肉体を貧弱に感じていると、人種族が他種族の事をまとめた本には書いてあった。
信憑性は薄くても、ドワーフが岩塊のように力強く、エルフが貧弱なのは間違いない。
くるぶし丈の長衣を着たまま下着だけ脱いで、用意していた浄化栓に潤滑液をたっぷりとかけた、ところで「待った」が入った。
「使う所が見えんと、正しく動いておるか分からん」
「っっ」
その通りだ。
その通りだけどっっ。
「寝台に横になると楽だろう、さあ」
「……」
もう、言葉にできない。
自室の寝台に這い上がり、膝を開いて四つん這いになった。
私は、一体、なにを、しているんだ。
「服をまくるぞ」
「っ、う、っっっ」
なんて返事をしたら!?
直後、尻が涼しくなって、服のすそを腰まで捲り上げられた事を知る。
「それはなんだ?」
「じょうかのまほうしきをきざんだ、まほうどうぐっ」
小さい卵の尖った方同士を向かい合わせてくっつけたような浄化用尻穴栓の魔法道具は、握り込める大きさだ。
魔法の発動範囲を決める刻印を収めるにとても苦労した。
先達のブレーにそれを話すべきだったのか、言わない方が良かったのか、もうよく分からない。
「そうか…………」
ブレーが黙る。
視線が、尻に刺さっている。
「うううっ」
ぬるつく魔法道具を起動して、自分で尻の穴に押しつける。
優秀な潤滑液のおかげで抵抗少なく、卵ひとつ分が尻穴に入れられた。
入れるのは半分だけ。
「全部は入れんのか?」
「だせなくなるからっ」
卵を二つくっつけたような形なのは、全部中に入ってしまうと取り出すのがものすごい大変、と初代ブレーの勃起ブレー魔法道具で学んだから。
速攻で根元に凹凸と段を刻む改造をした。
「これは、このまま待つのか」
なるほど、とブレーが私の尻の穴を見つめているのを感じる。
どうしよう、なんでこんな事に。
ブレーのブレーを模した魔法道具の事、ずっと秘密にしてたのに!
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