【R18】付き合って二百年、初めての中イき

Cleyera

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01 初めての中イき? ※ 少しだけ

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初めまして、お久しぶりです
木です、人外偏重してますが、今作は人型かっぷるです
ドワーフ×エルフ
実は題名詐欺

知己が夏休みという名のデスマーチの訪れを恐れおののいているので、お疲れさまの気持ちを込めて、お腐れさまを投下爆撃します(役に立つかは不明)
聞いた+調べたら20日くらいから休み始まりが多いらしいので、見切り発車の突貫です
途中で止まる可能性高めですが、暑さで死んでます、きっと
精神的にくそで体調最悪な時ほど筆がすすむ、芯まで腐り済みな木に寛恕な御心をジョウロで注いでくださると喜びます


:人種族:という言葉について
普人族、獣人族、魔人族、その他、人と定義される存在を全部含む、のつもりで使ってます(人間ではないつもり)
主人公:エレンは恋人以外への興味が薄く、ねこは全部ねこ、いぬは全部いぬ、くらいの大雑把さ

エルフとドワーフについても、独自妄想解釈と設定を入れとります





   ===
 

 いつか、この腕の中で達したいなー、とかなり昔に考えた事を思い出したのは、初めて尻の中だけで達している今まさにこの時だった。

「え?……ぁ、あぁっ」
「うっ、待て、っ、締めつけんなっ」
「あ、いやっ、だめっ」

 ずっと頭の中で妄想していたように「イく、イくぅ」、なんて言葉が出る事なく。
 私は、湯気を立ち上らせる汗だくの恋人に全身でしがみついて、初めての体験に混乱を引き起こした。

「う、出るっ」
「んん゛っ、ぁ、あぁ……ん、あつい、っ」

 びく、びく、と震えながら被膜越しに注がれる熱が嬉しくて、声が勝手にこぼれる。

 どこが気持ちいいのかよく分からないのに、気持ちいい。
 なにこの多幸感。
 頭がおかしくなる。

 おじさんと呼ばれておかしくない年齢になってから、生まれて初めて挿入だけで達する事ができた。
 腹の奥がうねるように動いている気がして、息がうまく整えられない。

 二百年、抱かれ続けて、初めての経験だ。
 なんで、今、いきなり?

 混乱したまま。
 私は、目の前で色っぽく息をつく恋人の頭部に唇を寄せた。

 丁寧に洗っても落ちない染み付いた鉄と煙の匂いと、黒土色の豊かな髪に心をくすぐられる。
 なめし革のように硬い額に口付けてから、自分の唇を舐める。
 恋人のしょっぱい汗の味すら喜ばしい。

「エレン、どした?」
「ふ、なんでもないよ」

 達した余韻で声がかすれたけれど、誤魔化せただろう。
 ここで笑い出したらいぶかしがられてしまうと分かっていても、顔が勝手に笑みを作ってしまう。

 自分でも忘れていた願いが、唐突に叶った。
 ここ数十年は思い出しもしなかったのに。

 嬉しい。
 でも、とても言えない。
 初めて抱かれてから二百年近くの間、一度も挿入で達してなかった、なんて。

 だから、今日のこれは、秘密の記念日にしよう。
 大切な初めて中イき記念日として、日記に残しておこう。
 ……一応、暗号化して。



   ◆



 私は妖精族に属している、エルフと呼ばれる種の一端だ。

 同族相手に身分証明として名乗る真名は長いけれど、人種族には〝イェーリンクピロス・エレデティ〟と名乗っている。
 普人族に多い、個人名+家や出身地の名前に寄せた。

 愛称はエレン。
 信頼を与えた者にしか呼ばせない。

 私は普人族の街で暮らしている、エルフのおじさんだ。
 エルフらしくないと言われる短髪で、平凡な容姿を自覚している。

 髪を短くしたのは、女性に間違われまくって苛ついた結果だ。
 人種族は目が悪いのでくどくど言うつもりはないが、繰り返されれば苛立つ。

 私は自分を変わり者だと知っている。
 里で生きるのが息苦しい、と成人の儀式を終えた日に森を飛び出し、流れ流れてこの地に辿りついた。

 普人族の国〝シンネラン〟。
 その副都〝ホーヴェスタッド〟。
 普人族だけでなく、獣人族、魔人族、妖人族など種族のるつぼなので、妖精族の一人くらい大丈夫だろう、と目論んだ。

 ここで、私は運命的な出会いを果たした。

 いつでもどこでも人種族は多く群れるなぁ、と騒がしく雑多でごちゃごちゃした通りを歩いていたら、金属と焼け焦げた煙の匂いを嗅いだ。
 鼻の奥が刺されたように痛くなり、涙がこぼれた。

 生まれて初めての強烈な匂いに鼻を押さえて振り向いたら、そこには、生まれて初めて見たドワーフがいた。
 驚くほどの初めて尽くしで、私はまじまじと背の低いドワーフを見つめた。

 ドワーフはエルフと同じ妖精族だが、住んでいる場所が重ならないので、話にしか聞いた事がなかった。
 エルフとして生まれ育った私にとって、同族であり、決して相容れない相手。

 私はドワーフから立ち上る、金属と焼け焦げた煙の匂いに不快感を覚えないが、普通のエルフはもうそこが受け入れ難いらしい。

 強烈な匂いだとは感じたが、特に気負わずに声をかけた。
 呑気にも程があるが、当時の私は若かった。

「おい、そこの金気臭いドワーフ、このような場所でなにをしている?」
「おいおい、なんでこんな所に生っ白くてひょろがりのエルフがいるんだ?」

 これが私たちの初めての会話。
 なぜだか、今でもしっかり覚えている。

 私は痩せてはいない。
 ドワーフが筋肉質すぎるのだ。

 初対面からお互いに嫌悪感はなかった。
 けれど、二百年後の今でも、人口五十万の普人族の国の副都にいるエルフとドワーフは私たちだけらしいので、この出会いは天文学的な確率だったのだろう。

 私たちは友人になった。
 一つも共通点のない友人だ。

 好きな食べ物も生活習慣も趣味も余暇の過ごし方も、全てが私たちは違った。
 けれど、彼は私に恋をしてくれて、私も彼を受け入れて。

 今に至る。



   ◆



 人種族から見ると、エルフには性欲が無いらしい。

 否定はしないが、無いわけではない。
 けれど、人種族のように年がら年中、繁殖の事を考えてはいない。

 エルフの在り方として、体を交わすことは重要ではない。
 一緒に座っているだけで、共に時間を過ごしているだけで満たされ、周囲からいちゃついてるな、と微笑ましく見られるのがエルフの里だ。

 私は変なエルフなので、温もりに触れたかったし触れられたかった。
 エルフとしてはおかしかった。
 実際、母や父に抱きつこうとすると、「どうした?」、「なにかあった?」、と困ったように言われた。

 里を出たのは、どこかに私の空っぽの心と体を満たしてくれる誰かがいるかもしれない、と期待してだ。

 温もりが欲しい。
 温もりを与えたい。

 エルフとしては異端で、受け入れてくれと願う事が難しい考え方。

 望みを捨てる事ができずに里を出たけれど、寿命と価値観が違いすぎる他種族と距離を詰める事ができなかった。
 諦めかけていた時に出会ったドワーフは、私以外のエルフにとっては金属と煙臭くて受け入れ難い存在だっただろう。
 でも、私にとっては違った。

 他のドワーフは知らないけれど、この街で出会った〝ブライト・イマグルン・シュモクロス〟。
 愛称〝ブレー〟は好ましかった。



 私をひょろがり呼びしていた彼が、イェーリンクピロス、と名を呼んでくれるようになるまでに五年かかった。
 次の五年で友人として過ごし。
 彼に告白された。

 私は恋愛に鈍いと言われるエルフであり、自分でもその通りだと思っている。
 彼は知人にからかわれると知りながら、玉砕覚悟で「恋人になってくれ」、と言ってくれた。

 はて、恋人とはなにをするものか。
 隣人、知人とは違うだろう。
 友人とは違うのか。

 共に時を過ごす関係。
 同じ部屋にいるだけで幸せな関係。
 視線を交わすだけで喜ばしい関係。
 友人でも、あまり変わらないような?

 人種族の友人関係より身体接触が少ない、エルフの恋人、夫婦しか知らなかった私は、人種族の知人たちに「恋人とはなにをするか」を聞いたが、結果は大いに混乱させられただけだった。
 人種族にも色々あると、知らなかったので。


 悩み抜いた結果、恋人となる事を受け入れてエレンと呼ばれるようになり、時を過ごして、私はブレーと繁殖行為をした。

 男同士なのに。
 もう我慢ならん!、と押し倒された。
 なにを我慢していたのかは、今でも分からない。

 ……その時の事は、覚えてない。

 私の体に残されたのは、全身に散らばった発疹のような赤い痕と、きしむように痛む腰と、外れたような気がする股関節、ひりひりと痛い尻の穴に残る、なにか挟まっているような違和感だった。

 生まれて初めての経験は、いつでも嵐のようだ。
 ほとんど記憶が残らないと言う意味で。

 うまく記憶に残らなくても、これではいけない、と思った。
 私にとってブレーは失いたくない友人であり、手放したくない恋人であり、現状のただ一人の理解者だ。

 繁殖行為をブレーが望むなら、巷にあふれる艶本や春画を参考にして、快楽を感じられるようにならなくてはいけない。
 そう思い込んだ。

 
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