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46 失敗、失敗、また失敗 ※かも?
しおりを挟むそして、二人が儀式を終えてから何日かが過ぎた。
「おっふぅ」
(あ、出ちゃうー)
真っ白なお腹の上に。
「ぐぬぅっ」
(ダメ、俺氏暴発)
小ぶりなお尻の上に。
「おおっ」
(ドピュからの~ヒュールリーヒュールリーララー)
お手てに。
ここまでの戦績は、全敗で惨敗だ。
毎晩とは言えないものの、二日、三日に一度の挑戦を繰り返し、ケェアは、未だに一度もエトレの中に入ることができずにいた。
牛は早い。
牛の一突きという言葉があるほどに。
ケェアもその例に漏れなかった。
特にケェアの場合は惚れた欲目があり、エトレの裸体を見ると興奮しすぎてしまう。
本来なら孕み腹側の発情がスイッチになる行為も、ケェアの人間の前世が影響しているのか、うまく噛み合わない。
「……寝よう」
「はい」
エトレを前戯から可愛がって、もうらめぇと言わせたい、満足させたい、と意気込んでいたケェアだが、己の不甲斐なさに落ち込んでいた。
事後の汚れた体を妻に洗ってもらう喜びも、エトレの手際が良すぎて色っぽさが足りない。
モコモコの泡でヌルヌルする体をこすりつけあっての、泡姫プレイをしたくても、早々に洗い終えたエトレに、きれいになりました、と笑顔で言われてしまうと、お礼しか言えないケェアだった。
ケェアが可能な限り一緒にいたい、と望んでいることはエトレも察していた。
普通なら重いと思うのだろうが、これまでに誰からも強烈に求められたことのないエトレは、勢いに押されるばかり。
そして、ケェアに望まれることを嬉しいと感じていた。
いつかは、くっついて来る旦那が鬱陶しくて仕事にならない、と思う日が来るのかもしれないけれど、今はまだ蜜月の真っ只中だった。
「クー様」
「おう」
(今日もできんかった、嫁ちゃんの準備は万端だったのに、エトレしゃんごめんよー、俺氏ったら婿どの失格ぅ)
少しだけ同衾に慣れて、寝台でお互いに腹を向けあって眠れるようになった。
エトレには、ケェアの望みで寝巻きを着てもらっている。
いくら愛おしくても、妻の全裸族な姿はちょっと……という繊細な男心だ。
袖のないネグリジェといえば素敵に聞こえるかもしれないけれど、ようは貫頭衣だ。
ケェアもエトレも、このままでは上手くいかないと、なんとなく分かっていた。
骨格と体格の違いは偽牝台で補える。
それでもケェアが興奮しすぎて、挿入に至らない。
挿入前に、ケェアの渾身を込めた前戯でエトレがイかされてしまうと、目も当てられない状態になる。
妻が可愛らしく恥じらいながら、快感に悶える姿を見てしまうと、ケェアは鼻息だけでエトレを吹き飛ばしそうになる。
そして興奮した勢いのまま、男根を尻に突っ込もうとするので、目測を誤り、挿入に至らずに暴発してしまうのだ。
ケェアには自分の股間が見えていない。
人のように、手で支えて挿入することは不可能だ。
自分が勃起していることは感じられても、どこに先端があるのか分からない。
興奮しすぎて行先を定めずに突進した時点で、無事に穴に入れられる可能性は限りなく低かった。
二人とも、エトレが事前に自分で用意して、もう入れるだけ、の状態にしたら、ケェアが興奮する前なら挿入できるのではないかと思っている。
しかし、嫁ちゃんを可愛がりたい、恥ずかしがりながら、甲高く鳴きながらイくエトレを見たい、という欲求を捨てられないケェアの望みで、ズルズルとここまで来ていた。
言えていないけれど、目の前で挿入準備して欲しい、という変態的な望みもある。
それを見たら暴発一直線の自覚がある。
どうにもこうにも、二人が触れ合う時間と機会が少ないのが、一番の問題だった。
ケェアが嫁とのエチ飽きたー、倦怠期やー、と思う日が来れば、普通に挿入して中出しできるのだろう。
今の暴走状態では、そんな日が来るのは何年も、下手をしたら何十年も先になりそうだが。
いつまでもこのままではいけない、とエトレは覚悟を決めた。
愛しいオスとのふれあいは心地よいけれど、子供を授けてもらわないといけないのだ。
領民に、地方で働いている部下となる人々に、領主として認めてもらうために。
領地の視察に出る日は、すぐそこまで迫ってきている。
それまでに、オスを知っておかなくてはいけない。
ケェアの匂いを体内からさせていないことで、出向いた先で仮面夫婦だと思われては困る。
毛無しだというだけで立場の弱いエトレには、勝ち目のない賭けをするつもりなどない。
どんな手を使っても、子種を中で出してもらわなくてはいけない。
「次は、わたしが用意しても良いですか?」
「……頼む」
(ひぐうぅ、やっぱりそれしかないんか、それしかぁっ)
挿入を失敗しても、エトレはケェアを責めたりしない。
ケェアがエトレとの行為を嫌がっているわけでも、子作りをしたくないと思っているわけでもないと、理解しているから。
それでも、思うところはあるようだと、ケェアは感じていた。
早く中出しして欲しい、というあまりにも直接的すぎる望みだと、知らないままに。
ケェアとしても、いつまでたっても暴発しかできない夫と思われたくないので、涙を飲んで折れることにした。
愛おしいエトレをぺろぺろして喘がせて、それからゆっくり……が出来ない事実は、思った以上にケェアを落ち込ませていた。
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