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41 二度目の挑戦 ※ 顔射?
しおりを挟む夫婦の寝室に移動して、エトレは道具の入った箱を棚から取り出した。
行為を見せてもらったことはあっても、オスに抱かれた経験のないエトレは、師匠に教わったことしかできない。
「用意してまいります」
「ん?……そうか」
(用意?って、あーそうだった、用意いるんだった!)
ケェアはエトレの容姿が(ケェア基準で)美女なので、男の証が付いている、という事実をすっぱりと忘れていた。
突っ込むところが、どこなのかも。
ケェアの股間のものを、用意もなくそのまま突っ込んだら、間違いなく大惨事だということも。
「エトレ……その」
(そうだ、女の子じゃないんだよ、エトレしゃんは男なんだよな、かといって男の娘でもなく、どっちかっつーとモデル系美女なのよね)
「はい」
「やらせてくれ」
(ってことはだ、もちろんあるわけよ、アレとアレ、つまり黄金ボールとバットがな!)
「……!?」
見ないふりをしても、いつかは通る道だ。
そして、きっとこの先何十年生きたとしても、この世界に女性はいないし、エトレよりも美人はいない!とケェアは覚悟を決めた。
男の尻の穴だろうがなんだろうが、見る。
動物よりマシに違いない。
きっと綺麗な尻の穴だろうと期待して。
なんとなくだけれど、エトレが相手なら萎えないという根拠のない自信もある。
ケェアには、前世で鍛えた妄想力がある。
「だめか?」
(エトレしゃんがものすげー巨根とかじゃなきゃ、俺氏ダイジョブよー、多分な、うん)
「……」
「優しく、する」
(見たくないからって、娼婦と同じように突っ込むだけとか、嫁ちゃんにはできないよぅ)
「……」
恥ずかしさから真っ赤になったエトレは、もう、頷くことしかできなかった。
体に巻いていた布を……全部脱いでしまうのが怖くて、エトレはためらっていた。
ケェアがいくら毛無しに優しい人でも、全身に毛がない化け物じみた姿を見たら、さすがに嫌悪の表情を浮かべるのではないか、と。
「見ないで下さい」
「無理だ」
(見ます、見せてください、見させて頂けないと泣きます)
部屋の中はできるだけ暗くしたけれど、ケェアの瞳がわずかな光を反射して、エトレへ向けられているのは分かる。
バッサリと拒否され、エトレがショックを受けていると、ねっとり、と頬が舐められた。
ケェア本人がどういうつもりかはともかく、体格が良く、力もあるひと舐めは、エトレをよろめかせる。
「あ」
よろめく身体を支えようと、ケェアが素早く身を寄せてくれたけれど、身体を隠していた布の端が手から抜け落ちていくことに、エトレは絶望した。
「…………」
目を閉じて、ブルブルと震え、夫からの罵倒を待つ。
醜い化け物と呼ばれ、自分でも自分を醜いと思っていても、辛い。
父親やテルが時折こぼした、心ない言葉には傷ついたけれど耐えられた。
けれど、一年とはいえ優しくしてくれたケェアに、ここで拒絶されたらと思うと、全身から血を抜かれるような寒さを覚えた。
生きる気力の全てを奪われていくような、闇の中に落ちていくような息苦しさを。
「…………?」
いつまで経っても、何も言われない。
エトレが恐る恐る目を開けてみると、目の前にケェアはいた。
間違いなく、エトレの姿を見ていた。
カッ!と目を見開きすぎて、普段は見えない白眼まで見えている。
少し、いいや、かなり怖い。
「……く、クー様?」
「…………ん」
「え?なんですか?」
「……俺のお嫁ちゃん」
また変な時のケェア様に変わってしまった、とエトレが思った直後。
強く身体を押されたエトレは二歩、三歩と後ずさり、部屋の中央に置かれたクッションに背をもたれさせる格好になった。
「クーさま、っ!、うわっ!?」
バランスを崩し、クッションにもたれかかったエトレは、思わず逃げ出していた。
膝を曲げて身体を丸めて、床に転がった瞬間。
先ほどまでエトレがいた場所に、ドスン!と重たい音を響かせた巨体が突っ込んだ。
「え、何、なに、ひゃあっ!」
地響きすらともなう衝撃に、慌てて上げたエトレの頭に、温かい液体がかかる。
それが昨夜もかけられたものだ、とエトレが気がつく頃には、クッションに思い切り体当たりして、そのまま自爆していたケェアも、射精後の快感から正気に立ち戻っていた。
「……う、エトレ?どこだ、エトレ?!」
(はふースッキリ、俺氏ったら一人上手、じゃねえよ!?
もしかしてエトレしゃん潰した!?)
「あ、あの、ここに、います」
焦ったように声をあげ、突進の勢いで上半身を乗り上げた偽牝台から下ろしたケェアは、足元で座り込んでいるエトレを見て安堵の息を吐く。
それから、その顔にまたしても白い粘液がかかっているのを見て、顔を引きつらせた。
「す、すまないっ!!」
(ギャヒー!床から嫁ちゃんから精液まみれえっ!!)
クッションにケェアが性器をこすりつけて、そのまま放ってしまったので、床が広範囲に汚れている。
それを踏まないように気をつけながら、ケェアはエトレをどうにかして抱き上げようとする。
「今すぐ洗いにっ」
(なんで二日も続けて嫁ちゃんにぶっかけてんの、俺氏はぶっかけ萌え属性持ってないってのーっ)
「あの、自分でできますから」
頭からケェアの精液をかけられたというのに、なぜかエトレは冷静だった。
ただ、冷静というよりも驚きすぎて、一周回って冷静になってしまった、というべきかもしれない。
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