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種の発芽促進を頑張っている迷子は、手放したくないと感じる姿だった ※
しおりを挟む木が、どうして他の木と違うのか。
ぼくは考えていた。
巨木だからなのか。
特別な木だったりするのか。
たくさんの木がからみあったような見た目で、白い樹皮はぼんやりと光る、枯れ葉と若葉が混ざる不思議な巨木が、木の本体なのは間違い無いと思う。
若葉のまま散ってしまったり、青々とした葉が少ないのは、どうしてだろう。
人がいなくて寂しさを覚えるかなと思ったのは、木と会話していれば解決してしまう程度だった。
十歳までは幼さから家を出ることが少なくて、おかあさまが亡くなった後は家の中に監禁されてるようなものだったから、きっと知らない人と話す方が緊張する。
夜は、寒くないように柔らかい葉がぼくを包んでくれる。
昼中は歩き回りたがるぼくに、次々と美しい景色を見せてくれる。
お腹が減ったら美味しい白い果実を食べて、満たされる生活。
木の上は広くて、周囲がよく見える。
どこに向かって歩いても迷子にならない安心感から、気持ちが楽になった。
獣に襲われる心配がなくなったことで、よく眠れるようになった。
誰にも、やりたくないことを強要されない。
それは、とても喜ばしいことだった。
木から離れたくない。
ずっとここに置いてもらえないだろうか。
お世話になっているのに今以上を望んでしまうぼくは、はしたなくないだろうか。
そう考えて、口にはしていない。
そんな日々の中で。
『お願いがあるんだけど』
「ぼくに?」
種を求められた時を思い出させる木の様子に、不安を覚えた。
『君の種をコンカクの素にして無事に種ができたけど、発芽させるのに助けがいるみたいなんだ』
「どうしたら芽が出るの?」
『君のお腹の中で、種の発芽を促してほしい』
「……???」
意味が理解できなくて、返事できなかった。
『痛くしないから、一回だけ、試してくれないかな』
「でも……う、うん」
なにをするのか、分からないから。
頷いてしまった。
種を渡した時のように体を拭き清めて、水を飲んで。
違ったことは、水の後に、小さな果実を渡されたこと。
「まだ、お腹はすいてないよ」
『それは発芽を促すための栄養を詰め込んだ実だから、負担を減らすために食べてほしい、無理にとは言わない』
木は、口数が少ない。
呼びかけには答えてくれるけれど、おしゃべり好きではないんだろう。
初めから説明して欲しいと思うけれど、お世話になっているぼくからは言いにくい。
口下手だとしても、木が優しいのは間違いなくて。
「教えてくれてありがとう、それなら食べるね」
真白い果実は、いつも食べるものよりもぎゅっと味が濃くて、酸っぱさで頬の内側がしみるような気がした。
『美味しくなかった?』
不安そうな木の雰囲気が、そのまま心に伝わってくる。
声のような音のような木の意志は、嘘をつけないのかもしれない。
もしかして、渡される果実の味がいつも違うのは、ぼくが好きな味を調べてくれてる、のかも?
そんな自分に都合の良い解釈をしながら、種の無い果実をいつものようにまるごと食べた。
お腹の中で発芽を促す、それはどういうことだろう。
密集した枝葉の上にぺたりと座り込んで、じんじんとお腹の中から温かくなってくる感覚にぼおっとしていたら、細い枝が手足にからみついた。
気がついた時には宙吊りで、うつ伏せになっていた。
「っっうわぁっ!?」
顔が枝や葉に突っ込む前に、胸元からお腹までが柔らかい葉に包まれた。
慌てて顔を上げてみれば、見える範囲の葉で作られた服が無くなっていた。
体は枝に支えられて、宙に浮いている。
そういえば、ぼく、ずっと下着を身につけてない。
服がなくなったら裸だ。
どうして、忘れていたんだろう。
「え、まって、なに、ぼく、はだかっ?」
『怖くないよ、大丈夫』
怖いなんて言ってない、ただ裸がいやだ、ってえええっ!!?
ぐい、と引っ張られて、両足が開かれる。
種を渡した時だって、こんなふしだらではしたない格好なんてしなかったのに。
「や、やめ、やだ、あしっ」
『お腹の中に、種を入れるね』
「やだ、だめ、ぅひいいいっ!?」
ぼたぼた、と生ぬるい液体が腰からお尻、太ももにかけられた。
周囲に鼻の奥が痛くなるほど甘い匂いが満ちて、ぼくの頭は考えることをやめたように、白っぽく濁ってしまう。
『痛くないからね、大丈夫だよ』
「……うっ!?……ぅうっ!……ぅんんっ……」
たぶん、細い枝がたくさん集まって、ぼくのお尻をなでて、もんで、ほぐして、左右に広げている。
尻たぶを左右に広げられた状態で、再びぼたぼたと液体がお尻にかけられた。
『へえ、ひくひく動いてる』
「……ぁっ!?……っっん……ううっ~……」
『果実を食べていたから、中もきれいになってきているね』
数本の細い枝に、お尻の穴が広げられたのを感じても、頭が真っ白になってしまったぼくの口からは、変な声とよだれしか出ない。
ぐに、ぐに、とお尻を揉まれて、お尻の穴を広げられると、全身にぞくぞくとした感覚が走り抜けた。
『種を入れるよ』
「あぁ、あっ……あぁあっっっ」
お尻の穴に押し当てられた、硬い種の感触
外からお尻の中になにかを入れられる感覚は、これまでに一度も感じたことがないものだった。
種を運ぶ細い枝が、お尻の中に入ってくる。
それが分かるのに、怖いよりも動揺の方が強いのはなぜだろう。
ぐちゅ、ぬちゅ、ぼたぼた、ぶちゅ、ぐりゅ、と聞いたことがないような音が耳に届いて、なにが起きているのか想像もできない。
ただ、お尻に入れられた枝が、ゆっくりと少しずつ奥へ奥へと進められていく。
痛くはない。
じんじんとしびれるようにお腹が熱い。
でも、好ましいとも思わない。
圧倒的な異物感だけが、出すはずのお尻の中を逆流していく。
『んー、この辺ならすぐに押し出されないかな』
「……っっぁ……ぅうっ……」
『ありがとう、これでしばらく様子を見させてね、発芽して根付く前に取り出さないといけないから』
「っっっっん!?」
ええええ、このまま過ごすの?
ぼんやりと濁った頭でそう思ったのは一瞬で、口元に添えられた葉から注がれる水が喉を潤していくと、すぐになにも考えられなくなった。
うつらうつら、と時間を過ごした。
何時間か、何日か。
おいしい水を飲みながら、ぼくは木の作ってくれた枝葉のゆりかごで横になって、一日中、光る木の姿を見つめていた。
頭がぼんやりする。
お腹の奥がじんじんする。
木がきれいだ。
なんで、ぼくがこんな目に。
でも、痛くないし、怖くもない。
木は強引だけど、気遣ってくれている。
優しいところが好きだ。
女性の格好と義姉の名を騙ることを強要され、酔っ払いの変態男に服を脱がされそうになった経験の方が、今の何倍も怖かった。
何度も目を覚まして、まどろんで、夢を見たような見てないような時間をたくさん過ごした後。
『お腹を貸してくれてありがとう、発芽時期の確認をするね』
また、細い木の枝に全身をからめとられて、宙吊りのうつ伏せで足を広げられ、細い枝をお尻の中に突っ込まれた。
はしたないの、いやだ。
お尻なんて見ないで。
「……うぅ……やだ……おしりやだぁ」
『ごめんよ、どうしてもウツシミを発芽させたいんだ、本当にごめん』
ゆっくりお尻の中から引き抜かれていく種は、大きくないから痛くない。
でも、痛くないから大丈夫とは言えない。
ものすごく、気持ち悪い。
木の枝がお尻の中をこすると、うまく言葉にできない感じがする。
種に巻きついた枝がちゅぽんと音を立てて抜かれた時、これは全身がぞくぞくするほど気持ち良いことだ、と分かった。
気持ち良いと感じることが、怖かった。
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