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8 ボク
53 二人 愛撫
しおりを挟むいつだってゼンさまは、とても慎ましく遠慮深い。
多くを望まれないのは、ボクらの限界値を知っているから。
いざという時にボクらが動けない状況にならないように、ゼンさまは自ら動こうとする。
自分でできる事はやる、と遠慮されるたびに、ボクらはゼンさまにお仕えしたい気持ちが溢れてしまうのに。
助けを求めないから、助けたくなる。
誰よりも弱いのに、強いから、離れたくなくなる。
悪意を向けてくる相手にさえ救いの手を差し伸べる御方だから、ボクらも優しくしたくなる。
緊張しているのか、ゆらりと揺れる視線をボクだけに向けてほしくて、子供のように小振りな顎を指先で捉える。
「きすしたい」
「おれも」
少し震える声で答えられ、ぞくりと背筋に快楽が走る。
しまった、もうシンシの姿になりかけてる。
ゼンさまを知れば知るほど、抱けば抱くほど堪え性がなくなっていく自分の体に、呆れるばかりだ。
二人で奪うようにゼンさまを貪った。
「ん、んちゅ、んぁ、んんっ、ふゃぁっっ」
ゼンさまがふるふると震える。
ほっそりと筋肉の少ない首筋に背後からべろりと舌を這わせて、がじがじと歯を立てているディスがいた。
ゼンさまが少しでも疲れを感じないように、今回はボクが唇を独占する。
二人で一箇所を奪い合うと困らせてしまうのは、すでに経験している。
ボクが唇を独占していると言う事は、それ以外はディスに任せているわけで。
二人で調子に乗った成果とでもいうか、ゼンさまの肉体はどこもかしこも快感を感じてしまうようになった。
分かりやすい生殖器周辺でなくても、それこそ指先をちゅくちゅく音を立てながらしゃぶるだけでも、恥ずかしそうに感じ入ってくださる。
あまりに感度が良い事に感激して、売れた果実のように柔らかく滑らかな全身の皮膚を、二人で丸一日舐め続けたら流石に叱られた。
快感で全身を昂らせ「ふやけちゃう」と半泣きで言われて、止まる男がいるわけないのに。
ボクもディスも、ゼンさまの細い首筋に魅了されている。
成人男性のように喉仏が尖っているのに、少女のようにほっそりと華奢で、少年のようにしなやかで瑞々しい。
気持ちが分かるので止めない。
舐めすぎ、と後で叱られるのはディスだ。
「んー、んぅ」
人ではありえない長さにした舌を、ふんわりと柔らかく小さな舌にからめてしごいてから、上顎に伸ばしてじゅるじゅると音を立てながら擦れば、塞いだ口から甘い声が上がる。
気持ちいいと言葉にされなくても、頬を上気させて目を閉じている姿で十分。
風に跳ね飛ばされそうな羽毛を摘むように、慎重な手つきで、薄い下着越しに存在を主張している胸の先端を指で押すと、悲鳴を上げるように喉が痙攣した。
精一杯膨らんで、触れてくれと訴えてねだってくるから、指先で弾いて、撫でて、さすって、こねる。
傷つけないように、そっと、そーっとだ。
布越しの快感では物足りずにまどろっこしいのか、胸を手に押し付けてくる様がいじらしい。
お気に召すのはどれだろうといつも色々試すのだけれど、どれも好きなようで、反応は全て可愛らしい。
「んふ、んんぅふっ、んん~~っ」
ボクが口を覆っているせいで、鼻から一生懸命呼吸している姿が可愛い。
成人している男を模しているはずなのに、時々ゼンさまに庇護欲を感じすぎて心臓が止まりそうになる。
かみさま、愛してます。
「んん゛っっ!?」
ボクがきすしてゼンさまの胸を刺激して楽しんでいる間に、ディスも随分と好き勝手にやったようだ。
濁った声を上げたゼンさまに、またディスがやりすぎているのかと唇を離して見てみると、服を捲り上げて背中をしつこく舐め上げていた。
ああ、ゼンさまを味わってるんだな。
匂いではない甘い香りと共に、味も感じられる。
一度味わってしまうと延々と舐めていたくなるんだ。
気持ちは理解するけど、これは、びっくりさせてしまう。
何度も加減しろと言ってるのに、ディスはゼンさまに執着しているせいで執拗にやりすぎる。
快感に溺れている時ですら真っ白で真っ黒な醜さの欠片もない姿に、かみさまのかみさまたる所以を見出し、溺れてしまう。
ボクもそうだから。
髪の一本、目玉から足の指の股まで舐めたいと言い出した時は、流石に止めた。
ゼンさまが疲れてしまうから。
ボクだって、一日中ゼンさまを包み込んでぬっちょぬっちょのぐっちょぐっちょに絡まり合っていたい。
妻と愛しあってなにが悪いと開き直る。
「んひぃっ、せなか、ちょ、まってぇ」
くすぐったいのか気持ちいいのか、判断が難しい悩ましい様子で逃げようとしているけれど、ディスの手が腰に回されて固定されているせいで、もぞもぞと腰を振っているようにしか見えない。
「待ちたくない、ゼン、気持ちよくないか?、もっと良いだろ?」
制止されたのが気に入らないのか、ディスが溶けたような声でゼンさまにねだっている。
しかし、もう何度もディスのおねだりに負けて酷い目にあっているゼンさまは、流石に学ばれたようだ。
「もうきもちいいから、ディスっ」
止めようとしてるんだよな?
ものすごく誘惑してるようにしか聞こえない。
ゼンさまの生殖器が触れてほしいと伸び上がっている。
精一杯に背を伸ばした生殖器の先端部分の下履きが、濡れて色を変えている。
もっとしてほしいと、願っているように。
ディスの瞳がゆらゆらと揺れた。
まるで、策を考えている時のように。
「やめとけよ」
「……わぁってる」
ディスがこういう顔をする時は、碌でもない。
ゼンさまを狙う奴らが相手なら良いけれど、ゼンさま相手にする時は泣かせてしまう結果になるから、止めるのが最善だと思う。
どうせ、ゼンさまからおねだりしてほしいな、とか考えてるんだろ。
おねだりさせるために追い詰める方法を考えてるんだろ。
策を練らなくても、ゼンさまは素直に言ってくれる。
こちらから頼めば良い。
愛情をいっぱい言葉に乗せて。
「ゼン、ボクらも気持ちよくなりたい」
「あーうん、もちろん」
「ぅぐぬぅっ」
ほら、策なんて練らなくても、ゼンさまはボクらを甘やかしてくれる。
配慮は必要だけど遠慮はいらないんだ。
ボクらにふんわりとした微笑みを向けるゼンさまの姿に、ディスが喉の奥で唸り声を上げた。
こいつ、基本的に人間不信だからなのか、相手を試す悪癖を持っている。
ゼンさまには不要だと分かっていても、思わずやってしまう感じなんだろう。
人ならざる力で苦労してきたのはお互い様だから、少しは助けてやるけど、改善するかどうかはディス次第だから常に自覚し続けて欲しい。
「ディス、貸しとく」
「こんなんで借り一つは重すぎないか?」
「そう思うなら、(悪癖を)改めろって」
「頭では分かってんだよ、くっそぉ」
ボクらが小声で言い合いをしている所を、ゼンさまはご機嫌な様子で見ている。
シンシとしても、夫としても、ボクたちを同等に扱うべきと考え行動しているのは伝わってくる。
真っ白で真っ黒なかみさまは世界の全てを愛している。
けれど、ボクらはかみさまの特別になれた。
慢心していられるほど、愚かじゃないつもりだ。
仲が良い訳じゃない、夫として、シンシとして、ディスはいつまでも好敵手だ。
「ゼン、大好き」
「ぼくも大好きだ」
ボクたちに挟まれてにこにこしていたゼンさまが、目を見開いて、心から嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。
「おれも、スペラとディスが大好きだ」
スペラ、ディス、とゼンさまに頂いた名前を呼ばれる度に、存在が昇華されていく気がする。
シンシとしての高みに登り、ゼンさまを守り、生きていけると言われているようで、心が喜びに沸き立った。
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