【R18】かみさまは知らない

Cleyera

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7 おれ

45 ※ ディス プラグ

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「……戻ったぞ、っておい、なんでゼンが全裸で泣いてんだ!?」
「やっと来たか、今すぐゼンを抱きしめろ、お前がいないから泣いてるに決まっとるだろ!」
「えええっっ、ごめんゼン、遅くなってごめん!!」
「(ふぅー、こいつちょろい)ゼン、スペラが戻りました、もう大丈夫ですよ」

 ディスの宥めすかすような声に顔を上げると、滲んだ視界の中にスペラがいた。
 おれを抱き上げているディスの斜め後ろに立って、覗き込んでいる。
 きらきらしいスペラ、頼りになるスペラだ。

「スペラ、助けて、苦しいぃ」

 入れて欲しい、擦って欲しい、気持ちよくしてほしい。
 焦らすいじめっこディスと違って、スペラならすぐにくれるはずだ。

「ゼンっ、ボク汗臭いから」
「やだ、やだっ」

 涙で歪んだ視界だと距離が良く分からないけれど、手を伸ばすと指先を捕まえてくれるスペラ。
 触れている指先を頼りに上半身をねじって倒してスペラに抱きつくと、服の上からでも汗の匂いがした。

「ディス、あんたなにした?」

 スペラがおれの背中をとんとんと手のひらであやしながら、低い声を出す。
 服越しに筋肉で硬い胸が震えるのがおもしろい。
 おれの下半身を片腕で中途半端に抱えた姿勢で、ディスが返事をした。

「分からん、昼にセダティ小児五疳薬を一口飲ませたが、……こんな風にぐずられた事があったか?」
…………抜け駆け失敗したのかそれ、カンの虫が強い乳幼児向けの栄養剤だよな?」
「そうだ、甘味代わりにな。
 気落ちしておられたから気分転換になればと思ったが」

 二人でぼそぼそ話しているのが近くて、尻がいらいらする。
 抱きしめられて、中に突っ込まれたい。

「使用量は守ったのか?」
「たった一口じゃ赤ん坊の量だぞ」
「ゼンの肉体が、赤ん坊と同じくらい弱い可能性は考えたのか?」
「そんなことが……有りうるか」

 はーっと深くため息をついたスペラの胸が膨らんでしぼむ。
 体が揺れて面白い、あったかいしくっついてんの楽しい。

「勝手に色々するからだ」
「待て、ぼくが知るセダティの薬効は精神安定、胃腸虚弱、食欲不振、消化不良の改善で、飲んで泣きぐずりがひどくなるとか聞いた事ない。」
…………こいつ気付いてない?ちょっと待ってろ」
「悪いな」

 スペラ、まだかな。
 早くつっこんで。

「ゼン」

 呼ばれて顔を上向けると、きらきらと夕暮れに光る銀糸が揺れていた。
 茶色に染まる世界に沈む事なく、宝石のように光る瞳はすっきりと切長で、鼻は高すぎず形良く麗しい。
 かっこいい。

 見とれていると、ふっくらとした唇がゆっくりと動いた。

「ゼン、どうして泣いたの?」
「スペラがいないとちんこ入れないって、ディスが言うんだ」
「なるほど(自制はしてたのか)」
「入れてくれる?」
「もちろん」

 快諾された。
 やっぱりスペラは最高だ。
 さスペぇ。

「おい、スペラ」
「ディス後で話聞かせろ。
 ゼンが泣いた理由は、お前の愛撫がねちっこすぎて辛かったみたいだ」
「……うそだろ」
「当分の間、ボクがいない時にゼンにちょっかい出すのは禁止だ、良いな?」
「ちきしょう、わぁったよ」

 おれの下半身を支えていたディスの手が力を失って離れていく。
 思わず、その手を捕まえていた。

「……どうしたんですか、ゼン?」

 なんだか元気がない気がするディスを見れば、ゆらめく瞳に戸惑いがあった。

「スペラ来たから、入れてくれるだろ?」
「あの、ゼン、ぼくで良いんですか?」
「ディスもスペラも一緒が良い」
「良かったな、ディス」
「……っ」

 せっかくスペラが帰って来てくれたのに、どっちか一人だけなんて嫌だ。
 おれだけ仲間はずれにされると悲しい。

「ディス、ボクは体を拭いてくる」
「ぅぐっ、分かった、準備しとく」

 俯いてしまったディスが低く震える声で答えた。

「少し待っていて、ゼンに触れるならきれいにしたい」

 離れたくないと思って、でもおれだって汗臭いと言われたくないから手を離した。

 スペラがおれをディスに渡して、テントへと歩いていく。
 片手に大きな塊をぶら下げて。

「ゼン、スペラが戻るのを待つ間に、準備しませんか」
「分かった」

 見下ろしてみれば、ほんのりと頬を赤くしたディスが微笑んでいた。
 これから二人に抱きしめてもらえるなら、もう少し我慢してもいいかなと安堵した。

 ディスがおれを片腕で抱え、片付けたばかりのカーペットを地面に敷く。
 汚れていたはずなのに、どういう仕組みなのかどろどろのぐちゃぐちゃになっていなかった。

「膝をついて、お尻を上げて下さいね」
「ううっ」

 疼いて仕方ない尻に、これまでで一番太い栓がゆっくりと押し込まれ、穴を強引に広げるようにはめられた。
 めりめりっと音がしそうな痛みと、いまいち気持ち良くない感覚に声が出た。

 空っぽの奥が切ない、広げて固定されてる感覚と栓がきつくて違和感がある。
 でも、これを我慢したら、今度こそ気持ちよくなれる。

 楽しみで顔が緩んでいるのか、おれを見たディスが顔を赤くして眉を下げた。

「失敗しました、ひどくして良いと言われたのにいざ泣かれると苦しいなんて。
 可愛い顔をされると虐めたくなるのに泣き顔は見たくない、どうしたら良いんでしょう」

 なにか困っているらしいディスに、おれは考えた。
 頭の中は最高のセックスへの期待でいっぱいで、他を考える余裕があんまり無いから、端的に。

 あれだ、男の子が女の子をいじめるやつ。
 嫌われて絶交されて、後になってから恋でした、みたいなあれ。
 つまり。

「優しくすれば良いんじゃないか?」
「……そうですね」

 そう答えたディスの顔が、さらに困って見えた。
 ダメだった?



 広げられている尻の穴が痺れてきた。
 なんか前にも同じ事があった。

「ディス、なんか変なんだけどこれって普通?」
「そう言えば聞いておりませんでしたね、道具をお使いになるのは初めてですか?」
「初めて」
「なるほど、確認せずに使ってしまいましたね、申し訳ありません」

 使っても大丈夫だろうとスペラと話していたので聞くのを忘れてました、と呟いてから、ディスは悩むような声をあげた。
 そして。

「ひゃああ゛っ!?」

 ぐにぐに、と尻の穴をこねられるような感覚がして、変な声が出た。

「切れてませんから大丈夫に見えます、痛いですか?」
「痛くなぃ、けどっ」

 もっと、それもっとして。
 と言おうとしてから、また、スペラがいない、と断られる可能性に気がつく。

「どんな感じですか?」
「しびれてる?」
「道具を使って慣らした方が体には負担が少ないと聞きますが、以前の方が楽でしたか?」
「わかんない」

 尻の穴だけ広げられるのは、気持ちよくない。
 穴自体を擦られるのは気持ちいいのに。
 でも、指でぐりぐりされるのも奥が空っぽで不完全燃焼だから、どっちも変わんないのか。

「ぼくにはゼンの相手をする経験も知識も足りないと痛感しました、続けて精進しますので教えてください」
「あのさ」
「はい」
「おれはディスにも気持ちよくなって欲しいんだよ?」

 無理してる。
 ずっとディスにそう感じてる。
 執拗なまでの愛撫にもそれを感じた。

 おれはディスの素顔を知らない。
 どんな性格で、どう育ってきて、なにが嬉しくて、なにを悲しむのか。

 全てを知りたいなんて言わないけど、夫の嗜好くらいは知っておきたい。

 性の不一致は離婚の原因になると聞いたことがある。
 特殊な性癖でも、受け入れる努力はするつもりだ。
 おれがこの世界で気持ちいいセックスが大好きだと知ったように、ディス本人も知らない性癖があるかもしれない。

 尽くしてくれなんて言わないよ。
 無理しないで欲しい。

「ぼくは……」
「ディスがやりたいようにしてくれたら嬉しい、痛いのは怖いけど」

 おれは「ディスは怖くない」よ。

 ディスの顔が歪んだ。
 ぽたぽたと顎から涙の雫を垂らしながら、ディスが静かに泣きだした。

 
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