13 / 15
SS 心残りは爆散しました
しおりを挟むステルクと初めての顔合わせをした時の発言が、ずっと気にかかっていた。
「子供はいらんから男で良い、すごい美人だが、そちらこそおれで良いのか?」
婚約者となり、最後までしない発言を守りつつ、それ以上は思いつく限り好き放題にわたしを貪るステルク。
体温を混ぜあってする行為は嫌いではない。
むしろ盛んすぎる。
それならどうして、子供はいらん、などと言ったのか。
子供が嫌いなのか。
なにか理由や確執があるのか。
男を嫁にするための言い訳なのか。
理由は、考えれば考えただけ思いつくけれど。
真意を聞けば教えてくれるだろうと思いつつも、わたしは聞けずにいた。
男であるということに、どうしても引け目を感じていたから。
そして、初めて辺境の地を踏んだ日。
わたしは、ステルクの言葉の意味を知った。
「おかえりおっちゃん!」
「やっと帰ってきたわね、遅いのよ!」
「ステューあんちゃん!」
「兄さん、連絡くらいしなさいよ!」
「おみやげは!?」
「この美人だれ?!」
「ねえねえ、月の妖精さんなの?」
数えきれないほどの、きらきらでふわふわでくるくるの妖精に囲まれて。
見た目こそ妖精なのに、その言動はわたしの全く知らない俗っぽいもので。
わたしは目を回して、倒れた。
らしい。
目を覚ませば、見たこともない巨大なベッドの上。
すぐ横には天使の寝顔のステルク。
体を起こそうとすれば足が温かい、見れば、足元に小さいステルク。
慌てて見回してみれば、その横、上、下、とベッドの上が小さいステルク(色違い)で埋め尽くされていた。
「!?!?」
幻覚か、妄想か。
わたしはおかしくなったのか。
ベッドを降りようにも、周囲は増殖したステルクに囲まれている。
なんだこれは、ステルク畑か。
わたしは知らないうちに妖精の国に迷い込んだらしい。
帰れる気がしない。
可愛い。
あ、まずい、動悸息切れめまいが。
不意にステルクが、ころりと寝返りを打って。
目を閉じたまま、わたしが寝ていた場所を手でぽんぽんと叩き。
「アルッッ!?」
「ひいっ!?」
宙に飛び上がった。
ふわり、と足音をさせずに床に降り立ってから、ステルクはわたしをねっとりと見回して、ふわりと微笑んだ。
「起きたか」
「はい」
呆然としているわたしに、ステルクは満面の笑みで言った。
「我が家にようこそ、おれの花嫁!」
「……はい」
なんのことはない。
ステルクの家族は、兄と弟だけではなかったというだけの話で。
甥っ子姪っ子が山ほどいるから、子育てには強制参加させられる上に、養子が必要なら選び放題だから「子供はいらん」と言ったらしい。
*
なんかいっぱい読んでもらえているなーと嬉しくなったので
ステルクの子供いらない発言を説明してなかったな、と突貫で書きました
辺境は合法ロリと合法ショタの楽園……
でも、合法を見抜く目がないと、普通に捕まります(´∀`*)
現地の人は、しっかりと見分けられるのですよ、きっと
198
お気に入りに追加
487
あなたにおすすめの小説
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
魔王討伐後に勇者の子を身篭ったので、逃げたけど結局勇者に捕まった。
柴傘
BL
勇者パーティーに属していた魔術師が勇者との子を身篭ったので逃走を図り失敗に終わるお話。
頭よわよわハッピーエンド、執着溺愛勇者×気弱臆病魔術師。
誰もが妊娠できる世界、勇者パーティーは皆仲良し。
さくっと読める短編です。
裏切られた腹いせで自殺しようとしたのに隣国の王子に溺愛されてるの、なぁぜなぁぜ?
柴傘
BL
「俺の新しい婚約者は、フランシスだ」
輝かしい美貌を振りまきながら堂々と宣言する彼は、僕の恋人。その隣には、彼とはまた違う美しさを持つ青年が立っていた。
あぁやっぱり、僕は捨てられたんだ。分かってはいたけど、やっぱり心はずきりと痛む。
今でもやっぱり君が好き。だから、僕の所為で一生苦しんでね。
挨拶周りのとき、僕は彼の目の前で毒を飲み血を吐いた。薄れ行く意識の中で、彼の怯えた顔がはっきりと見える。
ざまぁみろ、君が僕を殺したんだ。ふふ、だぁいすきだよ。
「アレックス…!」
最後に聞こえてきた声は、見知らぬ誰かのものだった。
スパダリ溺愛攻め×死にたがり不憫受け
最初だけ暗めだけど中盤からただのラブコメ、シリアス要素ほぼ皆無。
誰でも妊娠できる世界、頭よわよわハピエン万歳。
魔王様の瘴気を払った俺、何だかんだ愛されてます。
柴傘
BL
ごく普通の高校生東雲 叶太(しののめ かなた)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。
そこで初めて出会った大型の狼の獣に助けられ、その獣の瘴気を無意識に払ってしまう。
すると突然獣は大柄な男性へと姿を変え、この世界の魔王オリオンだと名乗る。そしてそのまま、叶太は魔王城へと連れて行かれてしまった。
「カナタ、君を私の伴侶として迎えたい」
そう真摯に告白する魔王の姿に、不覚にもときめいてしまい…。
魔王×高校生、ド天然攻め×絆され受け。
甘々ハピエン。
悪役なので大人しく断罪を受け入れたら何故か主人公に公開プロポーズされた。
柴傘
BL
侯爵令息であるシエル・クリステアは第二王子の婚約者。然し彼は、前世の記憶を持つ転生者だった。
シエルは王立学園の卒業パーティーで自身が断罪される事を知っていた。今生きるこの世界は、前世でプレイしていたBLゲームの世界と瓜二つだったから。
幼い頃からシナリオに足掻き続けていたものの、大した成果は得られない。
然しある日、婚約者である第二王子が主人公へ告白している現場を見てしまった。
その日からシナリオに背く事をやめ、屋敷へと引き篭もる。もうどうにでもなれ、やり投げになりながら。
「シエル・クリステア、貴様との婚約を破棄する!」
そう高らかに告げた第二王子に、シエルは恭しく礼をして婚約破棄を受け入れた。
「じゃあ、俺がシエル様を貰ってもいいですよね」
そう言いだしたのは、この物語の主人公であるノヴァ・サスティア侯爵令息で…。
主人公×悪役令息、腹黒溺愛攻め×無気力不憫受け。
誰でも妊娠できる世界。頭よわよわハピエン。
婚約破棄されたショックで前世の記憶&猫集めの能力をゲットしたモブ顔の僕!
ミクリ21 (新)
BL
婚約者シルベスター・モンローに婚約破棄されたら、そのショックで前世の記憶を思い出したモブ顔の主人公エレン・ニャンゴローの話。
奴の執着から逃れられない件について
B介
BL
幼稚園から中学まで、ずっと同じクラスだった幼馴染。
しかし、全く仲良くなかったし、あまり話したこともない。
なのに、高校まで一緒!?まあ、今回はクラスが違うから、内心ホッとしていたら、放課後まさかの呼び出され...,
途中からTLになるので、どちらに設定にしようか迷いました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる