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SS 心残りは爆散しました

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 ステルクと初めての顔合わせをした時の発言が、ずっと気にかかっていた。

 「子供はいらんから男で良い、すごい美人だが、そちらこそおれで良いのか?」

 婚約者となり、最後までしない発言を守りつつ、それ以上は思いつく限り好き放題にわたしを貪るステルク。

 体温を混ぜあってする行為は嫌いではない。
 むしろ盛んすぎる。
 それならどうして、子供はいらん、などと言ったのか。

 子供が嫌いなのか。
 なにか理由や確執があるのか。
 男を嫁にするための言い訳なのか。

 理由は、考えれば考えただけ思いつくけれど。
 真意を聞けば教えてくれるだろうと思いつつも、わたしは聞けずにいた。

 男であるということに、どうしても引け目を感じていたから。



 そして、初めて辺境の地を踏んだ日。
 わたしは、ステルクの言葉の意味を知った。

「おかえりおっちゃん!」
「やっと帰ってきたわね、遅いのよ!」
ステューステルクあんちゃん!」
「兄さん、連絡くらいしなさいよ!」
「おみやげは!?」
「この美人だれ?!」
「ねえねえ、月の妖精さんなの?」

 数えきれないほどの、きらきらでふわふわでくるくるの妖精に囲まれて。
 見た目こそ妖精なのに、その言動はわたしの全く知らない俗っぽいもので。

 わたしは目を回して、倒れた。
 らしい。



 目を覚ませば、見たこともない巨大なベッドの上。
 すぐ横には天使の寝顔のステルク。

 体を起こそうとすれば足が温かい、見れば、足元に小さいステルク。
 慌てて見回してみれば、その横、上、下、とベッドの上が小さいステルク(色違い)で埋め尽くされていた。

「!?!?」

 幻覚か、妄想か。
 わたしはおかしくなったのか。

 ベッドを降りようにも、周囲は増殖したステルクに囲まれている。
 なんだこれは、ステルク畑か。

 わたしは知らないうちに妖精の国に迷い込んだらしい。
 帰れる気がしない。

 可愛い。
 あ、まずい、動悸息切れめまいが。

 不意にステルクが、ころりと寝返りを打って。
 目を閉じたまま、わたしが寝ていた場所を手でぽんぽんと叩き。

「アルッッ!?」
「ひいっ!?」

 宙に飛び上がった。

 ふわり、と足音をさせずに床に降り立ってから、ステルクはわたしをねっとりと見回して、ふわりと微笑んだ。

「起きたか」
「はい」

 呆然としているわたしに、ステルクは満面の笑みで言った。

「我が家にようこそ、おれの花嫁!」
「……はい」

 なんのことはない。
 ステルクの家族は、兄と弟だけではなかったというだけの話で。

 甥っ子姪っ子が山ほどいるから、子育てには強制参加させられる上に、養子が必要なら選び放題だから「子供は自分たちに子供がなくいらん」ても、なにも問題ないと言ったらしい。


   *





なんかいっぱい読んでもらえているなーと嬉しくなったので
ステルクの子供いらない発言を説明してなかったな、と突貫で書きました

辺境は合法ロリと合法ショタの楽園……
でも、合法を見抜く目がないと、普通に捕まります(´∀`*)
現地の人は、しっかりと見分けられるのですよ、きっと
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