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過去:一花繚乱
花は咲き誇る 3/4 ※
しおりを挟むはあ、はあ、と彼の呼吸が荒れているのを聞く幸福に感じ入っていたら、ごり、と下肢に押し当てられる熱を感じた。
これまで何度も袋に受け入れているから知っている。
彼の生殖器官だ。
この身の胎に精を注ぎたいと彼が考えると、形が変わる。
謎記憶で知ってるけど、何度見ても不思議だ。
なんとか片手で包み込める大きさのふわふわと柔らかい生殖器官が、彼がその気になると背を伸ばすように太く長く、とても熱く固くなる。
弛んでいた皮ふが伸びきって、ひび割れた木の樹皮みたいにごつごつした血管が浮き上がる。
固くなっているのは中で、ごつごつした見た目でも皮ふは柔らかい。
先端はヘビやカメの頭みたいに歪んだ丸で、サクランボの表面みたいにつるんとして、ぷるりと柔らかい。
捕生殖器官袋の奥を押された時には柔らかい先端がクッションになって、今から精を注ぐぞと訪問の予告をされている気分になる。
植物の授精とはまるで違うのに、そうされるとこの身は嬉しくなる。
知らないうちに震えてしまう。
彼の熱が欲しい。
思いを行動に移すべきだと、腕を伸ばして彼の生殖器官を柔らかく捕まえる。
熟れきった果実を持つ硬い茎に蔓をからませるように、布の上へ指を這わせる。
「ネムま、まてっ」
「待ちたくない」
「まずいって、うっっっ」
焦ったような声に耳を傾けながら布越しの熱をさすると、びくびくっと震えが伝わってきた。
じんわりと布が濡れていき、温かくなる。
彼の精の匂いが布越しに漂う。
さする手を止めて、彼の生殖器官がひくひくと震えるさまを思う存分感じ取った。
愛おしい。
なんて可愛らしいんだ。
彼が達している時の苦しそうにしかめられた表情に背筋がぞくぞくする。
普段は自分が植物であることを疎んでいるのに。
触れて感じられる肉体が作れた事を、こんなに嬉しく思う日が来るなんて考えたこともなかった。
「……ぅうう~~」
しばらくすると快感の波が通り過ぎたのか、彼がうめき声を上げながらじっとりと見つめてきた。
気持ちよさを極めている彼の姿は素敵だったけれど、後悔が胸をしめつける。
せっかくなら捕生殖器官袋の中に注いで欲しかったな、って。
「もったいない」
「もったいないって、どういう意味だ?」
彼が気持ちいいことに弱いのは知ってる。
あっという間に精を放ってしまうから。
いつか慣れると彼は言うけど、あまり慣れて欲しくない。
気持ちいいことに弱い方が、たくさん何度も精を注いでもらえそうじゃない?
そう、やっぱりこの身の中に注いで欲しい。
たくさんいっぱい、この身を彼の精で満たして欲しい。
「ここに注いで欲しかったな」
「それなら待ってくれよ」
困ったように苦笑いする彼。
頭部の捕生殖器官袋の唇を示しながら彼の下半身を覆う布を引っ張ると、仕方ないなと言いながら自分で脱いでくれた。
この身は写し身でしかないから、人のように指先を使うことに向かない。
指先で紐を結んだり、小さな種を扱ったりできないのだ。
蔓の方が器用に動かせるのに使われたくないと前に言われたから、彼自身にやってもらう他ない。
べっとりと白い粘液を纏った彼の生殖器官は、布から解放されたと同時にとっても美味しそうに上を向いた。
正確には彼のお腹に向かってびよんと伸びた。
精を吐いたのに再び固くなっている姿に嬉しくなる。
元気がいっぱい出る蜜を作るのは、もう少し先で良いかな。
訳がわからなくなるって言ってたから、これでも遠慮してるつもりだ。
精一杯背を伸ばしている生殖器官を見つめてから、すぐ近くにある彼の顔に向かって唇を開いた。
「食べてもいい?」
「たべる?、うん、まあ、歯は当てないでくれ(本当に食われたりしないよな?)」
人が消化して吸収できるものを体内に入れることが食べるなら、この身も同じはずと思ったけど、なにか間違っているのか微妙な返事が返ってきた。
食べるではないなら、正しく細かく言ってみよう。
「生殖器官をなめてしゃぶってから精をごっくんしても良い?」
「なめっ、しゃぶっ!?」
とんでもなく驚いているような彼の反応にこれも違うの?、と不安になる。
なめてしゃぶってごっくん、これで正しいよね?
もううまくできるはずなのに、初めての時に失敗したせいで、彼はこの身の頭部に作った捕生殖器官袋に生殖器官を入れるのを避けようとする。
頭部も臀部も捕生殖器官袋だと言ってるのに。
彼の胸を押して、起きてもらってからこの身も体を起こす。
背を丸めて彼の股間に頭部を近づけると、体勢を変えてベッドの上に座ってくれた。
日焼け知らずだけれど、体毛が生えそろっている彼の股間。
体の横側は毛が少ないけれど、腹側も背中側もぼうぼうだ。
濃い毛の中から鎌首を伸ばす無毛の生殖器官は、粘り気のある精を浴びててらてらと光っている。
焼けるような彼の体温と、放たれた精が濃厚な誘い文句で呼んでいる。
授精したい気持ちが一気に湧き上がってくるのを抑えて、消化液の分泌は咥えてからにしないと大変、と学んだから大きく口を開いても大丈夫。
舌を伸ばして、生殖器官を濡らす精を丁寧になめとる。
「んぅっ」
じん、と身の内に浸透してきた命の源の風味に、思わず声が出てしまう。
もじゃもじゃの股間の体毛が、肌をちくちくとくすぐってくる。
唇で啄むように熱い生殖器官をはさむと、驚いたようにひくひくと動いた。
「くぅ、えろいっ」
話しかけられたのかな、と生殖器官を啄みながら視線を上に向けると、彼のお腹が痙攣するように動いた。
「なぁに?」
「う、上目遣いの破壊力がすごい」
「?」
「うわ、ううっっ!」
上目遣いに破壊力なんて無いと思うけど、嬉しそうだから良い。
目を合わせたまま生殖器官を一息に根本まで咥え込むと、彼のお腹がびくびくと蠢く。
「んん~」
何度も受け入れているのに、やっぱり熱い。
高温障害になってもおかしくないほど熱くて痛いはずのに、幸せだと感じてしまうのはなぜだろう。
幸せがたくさん与えられすぎて、くらくらしてきた。
消化液を捕生殖器官袋の中に分泌しながら、彼がはあはあと荒げた息を吐く姿を、ぎらぎらと目をたぎらせる様子を心に刻み込む。
「おいしぃ」
そんなものが美味しいわけないだろう、と彼が口の中で呟くのを正しく聞き取って、目を細めた。
人の味覚とは違うはずだけれど、ドライアドだって味は分かる。
天から降り注ぐ恵みの雨と同じくらい、彼の精を美味しいと感じている。
捕生殖器官袋の中の空気を抜いて、内壁をぴったりと貼り付かせる。
ああ、熱い。
消化液があるのに袋の内側が爛れてしまう予感がする。
分泌した消化液があるから彼は痛くないだろうと頭を前後させると、目の前にあるお腹がぶるぶると震えて、毛がふわふわと揺れた。
声を噛み殺して、目をきつく閉じて、苦しんでいるように快感に浸ってくれている。
うん、可愛い。
お腹の震えと一緒に揺れる体毛まで可愛いなぁ。
ぐちゅぐちゅと音を立てながら頭部を動かして、彼の生殖器官を刺激する。
うっ、うっと彼の声が聞こえて、気持ちよくなってると知れて嬉しい。
袋の中で張り詰めた生殖器官がひくひくと震えて、先端から滲んだ体液の苦みを感じる。
熱くて痛い。
でも、ずっとこうしていたいな。
同時にたくさん注いで欲しい気持ちもある。
幸せに浸りながら頭部を動かすことが出来たのは、ほんの短い間だった。
「うっ、もう出る、我慢できんっ」
全身に筋肉の筋が浮いて硬直させた彼が宣言した直後に、袋の奥に熱を感じた。
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