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過去:花は弄われる
相性の悪さを知った木 3/3 ※
しおりを挟む彼の生殖器官は、ふにゃふにゃでもとても温かかった。
人の体温はこの身には熱すぎる。
萎れてしまいそうなのに、手放したくない。
「待て合歓お前いきなりすぎるだろ」
奥行きこそ尻の捕生殖器官袋と同じに作ってあるけれど、口の中には歯も舌もある上に柔軟性は桁違いだ。
動かせるように作ってあるからこそ、いろいろと試すことができる。
歯にそっくりに作ってある部分が当たらないように気をつけつつ彼の生殖器官をもぐもぐすると、むくむくと大きくなっていく。
とっても不思議で、とっても熱い。
「授精したいの、ちょうだい」
「え、助けてほしいんじゃないのか?、……咥えたまま器用に話せるもんなんだな、まあそういうあれなら良いけども」
彼の手が頭部に乗せられたけれど、力は入っていない。
体の支えにしたいのかな。
「苦しかったら言えよ、いいな」
「うん」
「ぅ、はぁ、吸い付くっ」
彼がゆっくりと腰を揺らす動きに逆らわないように、袋の内側を消化液で満たしていく。
空気を抜いた内壁をぴったりと彼の生殖器官に張り付かせたら、彼が感極まったように呟いた。
ぐちゅ、ぐちゅ、と彼が動くたびに音がして、あふれた消化液が肌を伝っていく。
熱い、幸せ、嬉しい、もっと、もっと欲しい。
彼が欲しい、彼の精を注がれたい。
授精したいよぅ。
「はーっ、はーっっ」
彼が目をきつく閉じて、口を開いてあえいでいる。
気持ちよさそう、可愛い。
もっと奥まで入れて良いのに、彼は生殖器官の根元を残して腰を振る。
「んんっ」
状況は変わってないのに、お腹の中のイライラの塊をうまく識別できるようになった。
この身は彼に触れられるのが好きだから、安心して安定したのかな。
とりあえず彼の生殖器官を舐めしゃぶりながら、お腹の中のイライラを圧縮してぽいっと建物の外に押し流す。
拠点内の草避けに這わした蔦は、目に見えないなにかを介してこの身と繋がっているから、ドライアドの力を使えばこれくらい楽勝だ。
ドライアドの力を使うと、周辺環境が変わってしまうから、これまでは極力使わないようにしてたんだけど。
彼なら受け入れてくれると信じて。
「うわっななんだっ!?」
にゅぽんっ、と音がした。
ぐらぐらと建物が揺れたと思ったら、彼の生殖器官が口から抜かれてしまった。
「なんで抜くの!」
「待て待てなんだよ今の、地面揺れたぞ天変地異か!?」
「イライラぽいってしたの、植物が元気になるだけだから気にしないで」
「なんだそりゃ、とりあえず見てきて良いか?」
「いやっ」
話している間に、彼の生殖器官がゆっくりと小さくなってしぼんでいく。
せっかく熱くて硬くなってたのに、またふにゃふにゃになってしまう。
そんなのやだ。
彼の下半身を押さえ込んで、根元まで口の補生殖器官袋に迎え入れた。
イライラが無くなったんだから、彼をたっぷりと満喫して精を注いで欲しいと願って良いでしょ。
授精は、できないけど。
どうしたら彼が気持ち良いと感じてくれるのか。
手探り、舌探り?、で少しずつ学んで知っていきたい。
生殖器官を強く握るのは駄目。
棒状の部分を消化液でぬるぬるにしてから優しく包み込むように握る、少し強弱をつけてあげるともっと良さそう。
お腹側よりも、足側の筋が浮いている方を刺激されると気持ちいい。
生殖器官の一部、二つの玉は触るとくすぐったいらしい。
謎の記憶はそこも気持ちよくなれるはず、と言い張るんだけど、彼は違うのかもしれない。
つまり、生殖器官の半分くらいを口の袋でもぐもぐしながら、根元あたりを手で握ってしごくと、すっごくいい感じ!
「待て待て、でる、出るっ」
「待たないー」
ぐちゅぐちゅと音を立てると彼の反応が良くなる気がして、どうしたら音が大きくなるかも試してみる。
口の袋からあふれた消化液が垂れて、ぽたぽたと滴って音を立てる。
彼が気持ちよさそうに苦しい顔をしているから、嬉しくなってしまう。
出してくれるかなと期待したのに、歯を食いしばった彼がこちらを見ながらあごを震わせた。
「待てそこで上目づかいだめだろえろいんだよ、うぅっっ」
ぴゅ、ぴゅるっ、と口の袋の中に熱が注がれていく。
びくん、びくんっ、と熱を噴き出す勢いと同じタイミングで揺れる生殖器官。
はっ、はっっ、と荒れる彼の呼吸。
頭に置かれた手が強張って、指先が食い込む。
今この時、彼の体温も音も匂いも、全てがこの身のためにある。
授精したい。
彼の精で授精したい。
「きもちぃい」
生きてる。
この身は生きている。
彼の側にいると、生きていると感じられる。
生きて彼の側にいたいと思うことができる。
ドライアドなのに、人になれたような気がする。
体温も心音もないのに、彼と同じになれるような気がする。
好きだ、彼が好きだ。
本当は滋養になる蜜を食べてもらってもっとたくさん精を注いで欲しかったけれど、彼が外の様子を気にして気もそぞろだったので、一度だけで諦めた。
仕事の邪魔をしてはいけないよね。
この身に名前をつけてくれるくらい彼の特別だけど、居候の事実は変わらない。
「一緒に行く」
葉を作り出して体を覆い、服を着た彼と外に出る。
「なんじゃこりゃああーっ!?」
扉を開けた第一声で、なんかその単語を聞いたことあるような気がする、と思ったけど、どんなシチュエーションで使われた言葉か思い至れなかった。
建物の外は朝から一変していた。
拠点の周囲を囲んでいた里山の森が、まるで深い原生林のように巨木だらけになっている。
時間をかけて自然とそうなったのではない証に、巨木の根元には大量の草や若木がもっじゃもじゃに生え茂っていた。
これは、獣道だけでなく拠点までの道も埋まってるかもしれない。
蜂の巣箱を管理するため、拠点は森や林の近くが多いらしい。
現在滞在している拠点も彼が所有しているわけではなく、複数の養蜂家が共同で運用していると聞いた。
今ここには、彼とこの身しかいないけど。
建物などの設備維持金もみんなで積み立てていると聞いたし、ここまでの道も使用者が通ることで維持している。
草木が伸びれば刈り取って、道が埋もれないように管理している。
あーぁあ、ごめんなさい。
彼一人では元通りにできないだろう。
イライラを押し出した後にドライアドの力任せでバラバラに引き裂いて、細分化した塊をさらに粉々にして分解して吸収したら、何故か周囲一帯の木が巨木になっちゃったんだよね。
少しは育つと思っていたけれど、こんなにもじゃもじゃになるなんて。
想定外の事態だ。
「どうすんだこれ、なんだよこれぇ」
へにゃへにゃと膝から崩れ落ちた彼の背中が力無く見えて、思わず抱きついた。
「明日なんとかするから、今日はこのままで良い?」
「なんとかなんのか!?」
「うん、多分」
今日はもう、粉々にしたとはいえイライラだったものに近づきたくない。
二度とマジュツシにも会いたくない。
精を注いでもらってごきげんな気持ちを、胡散臭くて気持ち悪いもので汚したく無い。
彼がこの身を振り返りながら見上げて、うんうん唸って、諦めたように息を吐いた。
「良く分かんねえが任せる、本当になんとかなるんだよな?」
「うん、元に戻せるかは分かんないけど」
大きくなってしまった草木を小さくはできないけれど、道や拠点の周辺から引っ越してもらうことはできる。
明日は頑張るぞーと決めたので、座り込んでいる彼に抱きついたまま、幸せな吐息を吐いた。
マジュツシの真の望みを知るのはかなり先の事。
自分を実験体にしてしまう系まっどさいえんてぃすと、では無かったみたいで、本当に良かった。
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