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過去:花とねむる
クマは合歓を知る 1/3
しおりを挟むなんで今この時に、満面の笑みを浮かべた!?
叫び出すのを我慢したら、喉からおかしな音が出た。
草陰にいる牛蛙にそっくりな感じのやつだ。
微笑みを初めて見た時に痛感していた。
これを見るために命を差し出す奴がいてもおかしくない、と。
おれだな。
その時には満面の笑みを見せてくれる時がくるなんて、考えもしなかった。
じゅせいってなんだ?、とか今更しらばっくれて逃げるつもりはない。
喜んでくれるなら、財産でも体でも喜んで差し出す。
ただ、意味を理解しているのか、確かめようがないことが不安でたまらん。
樹木の種類は不明でも精霊なんだから、授精と言ったら花粉を雌しべにつける行為だと思っていてもおかしくない。
合歓は、おれと性交したい、それを望んでいると思って間違い無いんだよな?
これでおれの勘違いだったら、恥ずかしいとかそういう問題では済まない気がする。
人に似た姿でも雄しべと雌しべが分かりやすければ困らなかったんだろうな。
乳首もへそも体毛もないが人にそっくりで、色欲なんぞ見たことも聞いたことも感じたこともないと言いそうな見た目なんだぞ。
合歓を拾ってから一年以上が経つが精霊だからなのか口数は多くない、表情はほとんど変わらないし、動きもゆるやかで強い感情の発露を感じさせない。
酒場に行くと普通に転がってる、男の妄想話で出てくる育ちの良い貴婦人みたいなんだよ。
めちゃくちゃにしてやりたくなるというか、夜は別人のように乱れさせたいみたいな?
今回、押し倒された時に泣かれて……泣かれて?、泣いてた??
頬をとろとろとつたい落ちる蜜が光り輝いてきれいだった。
美しすぎて見惚れてた覚えしかない。
見惚れている間に合歓が出て行ってしまい、慌てて追いかけたら枯れそうになっていて。
老爺になるならともかく、本当に枯れた姿を見たのは初めてで焦った。
しおれて薄茶色くなって干からびた姿を思い出すと、目の前が真っ暗になる。
合歓がいなくなる。
枯れてしまう。
絶対にそんなことさせるかよ!!
たった一年で、どっぷり依存していると自覚した。
合歓が与えてくれた蜂蜜を調べてもらったことを、売ったことを後悔している、こっそりと隠しておけばよかった。
おれが受け取ったものだったのに。
合歓を奪われたくなくて樹精の怒りを買う、とかなんとか誤魔化して拠点に他人を寄せ付けないようにしているが、完全に面会を断ることはできない。
けれど、もう一年が過ぎた。
人の生活に慣れるまで待ってくれという言い訳では、もう断れない。
親の代からの付き合いがあって、あまり強く拒否できない相手もいる。
合歓は、自分の知っていることを教えることに抵抗がない。
聞いたこともなかったような知識を教えられて、おれが口を滑らせたせいで、国の研究所にいるとかいう魔術師の所長が何度も尋ねてくることになった。
樹精の知識を与えてもらえるのなら、王に約束された報酬と爵位だけでなく、領地も賜って貴族出身の女性を嫁にできるように掛け合いますよ、とか言われることが薄ら寒くて仕方ない。
地位や金がいらないか、と言われると、心はざわつくが。
あまりにも都合の良い好条件を提示されれば嫌な予感しかない。
人当たりが良くて美しくて若い貴族出身の魔術師の所長に会わせるなんて、冗談じゃない。
ずっと面会を断り続けているが、そろそろ限界だ。
抱けば、おれの側にいてくれるんだろうか。
地位も魅力も権力もある奴に靡かないでくれるだろうか。
植物相手に腰を振る変態だと知られ責められたとしても、なんにも間違ってない。
おれが変態扱いされるのは構わない。
本当のことだ。
でも、合歓はなにも知らない無垢な樹精なんだ。
人の性交と植物の受粉の過程が違うことを知らないんだよ、きっと。
なにも知らない合歓に付け入る隙があるなら、他人じゃなくておれがやる。
おれはこんなにも外道だったのか。
合歓を失わないためなら、なんでもする。
「合歓、教えてくれ」
「うん」
「合歓の言う、授精、はどういう行為を意味するんだ?」
「ここに生殖器官を入れて、中に精を注いでもらう?」
ここ、と言いながら尻に手を掛ける合歓。
気が遠くなった。
分かっているようで分かっていないのでは、と。
合歓の体は男に似ている。
尻で良いのか?
そもそも、体の中がどうなってんのかも知らん。
樹精ってのは、尻で授精できるのか?
人の種で樹精に実ができるのか?
……できないよな?
合歓がおれに背を向けて白い尻に手をかけて左右に広げると、そこには植物にはあるはずのない穴があった。
自分も他人もよく見たことがないので自信がないが、たぶん、動物の尻穴とは違う気がする。
中に蓋みたいなものが見える穴だ。
穴の周囲が赤く色づいて見える。
くそっ、めちゃくちゃえろいんだが。
なんでこんなに美しいんだよ、尻だろうが。
すべすべの花弁のようなつるりと丸い尻の真ん中に、色づいて誘う穴。
立ち上る甘い芳香。
なんだか頭がくらくらする。
「入れて、良いんだな?」
授精できるのかできないのか、そんなもんどうでも良い。
合歓の中に入りたい。
入って腰を振りたくって、合歓をおれのものにするんだ。
「うん」
この時のおれは、あまりにも駄目なやつだった。
合歓を失いたくない気持ちと童貞をこじらせすぎて、前戯の大事さをすっかり忘れていた。
下履きを蹴り脱ぎながら真っ白な傷ひとつない腰を片手で鷲掴みにして、痛いほど張り詰めていた陰茎を穴に押し当てる。
興奮で陰茎が硬く起き上がり過ぎていて、片手で支えないと腹にくっついてしまう。
三十過ぎてからこんなに硬く起き上がることはなかったのに、分かりやすすぎるだろ。
「はーっ、はーっ、はーっ」
自分の呼吸が荒過ぎて気持ち悪い。
呼吸のしすぎで頭がくらくらしてきた。
いいや、くらくらすんのは甘い香りのせいか?
ぐに、と握った陰茎の先がひんやりと冷たい蓋を押しのけるのを感じた。
「あっ、ぁついよぉ」
悲鳴というより甘えているような声を聞いて、ばくばくと胸を内側から叩いていた心臓が悲鳴を上げた。
かっと頭に血が上って。
「はーっ、はっ、はぁ、はぁっ、でる、うっ、ぅぅうっ」
「ひぅ、おなかあつぃい、あぅ、ぁあっ」
気がついた時には、合歓の腰を両手でがっちりと掴んで根元までねじ込んでいた。
本能に従って腰を振る。
二回、三回、とここで腰から背筋を走り抜ける快感と、陰茎を柔らかく包むひんやりと柔らかな感触に負けて、合歓の中で射精していた。
……そりゃねえよ。
まさかおれは早漏だったのか?
自慰では、全部出して正気に戻るこの瞬間が嫌いだった。
自分の手でするのは、なんだかこう、ひどく虚しい気持ちになる時があったからな。
すうっと血が下がるように頭が冷めていくと、おれは寝台の上でぐったりとしている合歓の姿に気がついた。
うつ伏せで脱力しているが枯れてはいない。
おいおい、おれだけが気持ち良くなってどうする!
「合歓、大丈夫か?、悪い、あのな、……あー、ひどくしてごめん」
すっきりとした頭で、なんて馬鹿なことをしたんだと知る。
おれは前戯もなにもせずに、いきなり突っ込んでいきなり射精したのだ。
合歓を穴扱いしていると勘違いされても、文句は言えない所業だ。
言い訳はしないが、しないつもりだが、気持ちよかった。
おれには女性経験はないが、一昨日に街に行った時に前戯でどんなことをするのかは学べた。
学んだことがなんの役にもたってねえよ、阿呆かおれは。
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