上 下
43 / 63
2章 粛清と祭

第43話 わたしの特別な人

しおりを挟む
 昇降口から外へ出て、学院の門を出たところのバス停近くにクレープ屋さんの車がある。




 周辺にベンチが並んでいて、大抵の学生は寮に帰る前に座って食べている場合が多い。


 1番売れる時間は夕方の下校時刻だが、昼前後も意外と売れるので、最近ではほぼ常駐している。



 僕は他の場所は一切探す事なく、一直線でこのクレープ屋さんを目指した。



 ちゆが行く場所の目星、というよりは、最終的に行き着く場所の目星というのが適切だろうか。




 案の定、ベンチに座って足をぶらつかせている、黒髪ツインテールの小柄な美少女の後ろ姿があった。

 黒い羽根は制服に大きく切り込みを入れて剥き出しにしているので、離れていてもすぐに分かる。



 ビンゴだ!



 意外にもクレープは買ってないようで、両手は後ろに回してベンチにペタッと付け、顎を上げて天を仰いでいる様子だ。


 僕は携帯で、ちゆを見つけたとゆかにメッセージを入れた。よもぎの方はとりあえず良いだろう。近くにいるし。

『はや!』

 という返信が返って来た。

 実際に早い。教室を出て2分も経っていないんだから。最短で見つけている。



 さすがに僕を1時間も探してたら、ちゆの体力的に疲れて休憩してるだろうと思ったが、間違いはなかったようだ。

 ちゆは羽根が大きいので飛べるのだが、飛ぶ方が体力を使うらしいので、あんまり飛びたくないと言っていた。

 まぁ、飛ばれると目立つので色々まずい。

 まさか通行人も、ほんとに生えているとは夢にも思わないだろうが、それはあくまで一般人の見解だ。

 羽根に関しては周囲にコスプレと言って誤魔化しているが、寮の共同風呂のせいで、本物の羽根だということが僕のクラスでは常識に成りつつある。

 とは言え、この学院は山奥にあるし、羽根が本物だったところで、パニックになるようなドラマ的な展開は無い。

 せいぜい、ふーん、そっかぁ、重そうだねくらいの感想だけだ。

 ちょっと触らせてよーと言われた事はあるそうだが、ひとしきりサワサワすると飽きて別の話題にシフトするらしい。

 人の関心なんて、その程度のもんなのだろうと思うと気が楽で良い。

 ……と、そんなことはさておき、僕はちゆの真後ろまで近付く。

 声を掛ける前に、僕に気付いたちゆが首をこちらへ向けた。

「ちゆちゃん、ここにいたんだ。探したよ」

 実際はほぼ探してないが。

 ちゆはキョトンとした無表情で僕を見ると、椅子から降りて僕と反対方向に駆け出した。

 逃げていくちゆ。

 呆然とする僕。





 なぜ!?





 僕から離れて下り坂を駆け降りていく彼女。


「え!ちゆちゃん、そっちは寮の方向だよ」


 僕は一瞬、足が動かなかったが、なぜ逃げているのか理解できないまま追いかけた。

 ちゆは逃げているが、別に全力疾走でもないので、すぐに追い付く。



 ぴこぴこと揺れる羽根。

 尻尾は巻いて制服の中に隠れている。


 適度な距離をとって追いかける。

 まるで早朝ランニングでもしているようだ。

 実際、ランニングしている白いTシャツの爽やかなオジサンと、買い物袋をカゴに入れて自転車を漕ぐ主婦っぽい人とすれ違い、軽く頭を下げた。

 2人とも微笑んでいて、変な誤解はされていないようで助かった。

 なんでこんな事になっているんだろう。


「ちゆちゃーん、待ってよ、皆んな心配してるよー」


 たったったっ、と無言で走るちゆ。


 そのまま近くの公園まで来た。

 公園には、鉄棒やブランコ、ジャングルジム、砂場、滑り台、水飲み場と小さな噴水。公共のトイレが設置されている。

 ちゆは滑り台の上まで登って、追いかけて来た僕を見下ろしている。

 僕は少し息切れしていた。

 5分くらいは走った気がする。


「……ちょっと、ちゆちゃん、なんで逃げるんだよ」


 ジッと、僕を滑り台の上から見つめるちゆ。


 何も言わない。


 ほんとに謎だ。



 もしかして、マリンといた事に気付いていたのか?

 だとしても、それなら声を掛けてくれれば良いのに。

 夢の中で友達になったはずだ。


 保健室に入る前に僕に抱きついていたマリンを見て嫉妬でもしたのだろうか?

 さすがにそれは無いか……。



「……お兄ちゃん」



「なに!」



 ちゆがついに言葉を発した。




「なんでちゆを捕まえないの?」



「へ?」



「だから!なんでちゆを捕まえないのって聞いてるの!!」


 大きな声で怒るように質問するちゆ。



「……どういうこと?」


「ちゆは!お兄ちゃんから逃げたんだよ」


「それは、……まぁ、見たらわかるけど」


「なのに、なんで捕まえなかったの?」

「捕まえるも何も、こうしてちゃんと追いかけたじゃん」

「追いかけるだけじゃダメでしょ」

「そんなこと言ってもな、追いかけるだけでも周りから見たら不審者なのに、捕まえたりしたら僕、ヤバい奴だと思われるでしょ」

「むぅ……、周りに人いないじゃん!」


「いたよ、さっきも2人くらいすれ違ったし」

「ほんとにぃー?」

「うん、気付かなかったの?」

「気付かなかった」

「そっか、一応、2人でランニングしてる風を装って、笑顔で会釈して乗り切ったよ」

「むぅううう」

 滑り台の上の手すりに顎を乗せ、頬を膨らませるちゆ。足をジタバタさせて、不満そうに唸っている。

 ちゆは不満があると、いつもむぅうーと、頬を膨らませる。


 なんだかリスみたいだ。

 よく分からないが、昔からの癖なのだろうか。

 小柄な身体つきなのもあって、より子ども感が増している。

 でも同級生なんだよな、と不思議に思う。

 そう言えば、マリンがずっとちゆのことを餓鬼って言っていた。

 たぶんこういう態度がより彼女を幼く見せているのだろうなと思った。


「とにかくさ、今は自習だからまだ良いけど、次の授業は先生も来るんだから出なきゃ」


「次の授業、ちゆの嫌いな数学」


「嫌いでも受けないと単位貰えないよ」

「ちゆは単位のために学校行ってるんじゃないもん」

「じゃあ何のために学校行ってるんだよ。卒業できないじゃんか」

「……みんな行ってるから」

「べつに義務教育じゃないでしょ、行ってない人もいるよ」

「知らないもん、ちゆの周りはみんな行ってるし」

「ちゆちゃんの周りが学校行ってるから、ここにも通ってるって事?」

「うん、みんなもそうだと思ってた」


「ある意味では、その認識でも合ってるけどさぁ、勉強もしなくちゃ」


「むぅううう……ちゆもサボりたいのに」


 僕が自主的にサボってると思われているようだ。

 微妙に面倒な誤解をされている。

 あまり人のせいにしたくないが、今回はマリンの状況から仕方なく一緒に保健室に行ったのだ。

 ここの誤解を解くには、マリンから言ってもらうしかない。

 どっちにしろ、今のマリンにはちゆのような友達が必要だ。

 放課後にちゆにも写真部に来てもらおうと思った。


 こんな感じだが、この学院のテストは難しいので、ちゆが投げやりになるのも分からなくもない。

 ちゆも、子供っぽいと言えばそうなのだが、実際は、この学院に入学可能なくらいには真面目に勉強ができるタイプなのだ。

 だからこそ、出席日数で留年というのはもったいない話だ。

 マリンにとっては嬉しいのかも知れないが……。



「僕はサボってない、事情があるんだ」


「ちゆにも事情がありますぅー」

「どんな?」

「数学の教科書見ると寝ちゃうの」

「それは事情じゃないでしょ」

「寝たら先生怒るじゃん」

「そりゃ寝てる生徒には怒るよ」

「先生の肩持つんだ」

「べつに肩持った訳じゃないよ」

「持ってるじゃん」

「分かった、なら、僕も正直に言う。眠くなる事もある」

「ほらぁー、ちゆの方が正論じゃん」

「数学の教科書を見て寝ることに、正論も何もないよ。単なる睡眠不足かもしれないし」

「じゃあ、来週の数学の授業の前の日はいっぱい寝るよ」

「そうだね、それが良い」

「それで寝たら、お兄ちゃん、ちゆに謝ってね」

「謝るんだ、僕が……」

「イヤそう」

「嫌っていうか、腑に落ちないというか」

「お兄ちゃんが、ちゆに夜寝たら数学してても眠くないって言ったんだよ。だから、実験してみて、間違えてたら謝るってこと、これは当たり前のことだよ」

「そっか……わかったよ、その時は、ちゆちゃんに謝るね」

「何でも買ってくれる?」

「謝るだけじゃダメなのか」

「ふふーん、やっぱり身体を張って実験するんだから」

「ぜんぜん納得できないけど、一応、何が欲しいのか聞いておくよ」

「ふふーん、バナナクレープ!バニラ増量のやつ」

「クレープかよ!……それなら良いよ」

「バニラ増量って、けっこう高いんだよ」

「……それくらいなら良いよ、あ、わざと寝るとかナシね」

「そんなことはしません」

「ほんとかなぁ」

「ふふふ、あー、クレープ食べたくなっちゃった」

「そういや、さっき買ってなかったね、食べてると思って来たんだけどさ」

「あー!ちゆのこと薄情者だと思ってたでしょー」

「思ってないよ」

「思ってなかったらそんなこと言わないでしょ、ちゆ、本気でお兄ちゃんのこと探してたんだよ」

「……ごめん、心配掛けて」

「クレープ買ってくれたら許すよ」

「結局買うわけね、バニラ増量中のやつ?」

「それはちゆが寝たら買って。ちゆ、ミックスベリーが良いの」

「なんで?珍しいね」

「ゆかさんが食べてるやつちょっと貰ったら美味しかったの」

「なるほどね、良いよ、それで許してくれるなら、あと、あのミックスベリーは、僕が頼んだやつね、ほとんどゆかが食べてたけど」

「うん、それから、お願いがあるの」

「なに?簡単な事にしてね」

「んとねぇー、ちゆを捕まえて欲しい」

「……どういうこと?」

「ちゆねー、教室から出る前に、携帯のショート動画で、『彼氏に捕まえられてみた』ってやつ見たのね。それで、捕まえられて、むりやりチューされるところがあって、ドキドキしちゃったの」

 教室から出る前は携帯を見ていたのか。ってことは、その後に1時間目が始まって、カバンに携帯を入れたんだな。

「それで、逃げてたんだ」

「そだよー、なのに、ぜんぜん捕まえてくれないし、なんかチューしたそうでもなかったから、変だなぁってなったの」

「変って……」


 それは、変なのは僕の方ではないだろう。

 チューしたそうに追いかけたら、それこそ捕まってしまう。

 そもそも、何も言わずに逃げたら捕まえてくれると思っている時点で常識から外れている。

 僕のことを野獣か何かだと思っているのだろうか。

 キスするにしてもムードと言うもんがあるだろう。

「んん、うんしょっと」

 ちゆが声を出しながら滑り台をすべって降りて来た。

 すべってる姿は本当に子供みたいだ。嬉しそうだし。

「ちゆちゃん、こんな公園で追いかけっこしてたら誤解されるから、放課後にしない?」

「ええー、今やりたいの」

「そんな」

「放課後になったら熱が冷めてるかもしれないでしょ?」

「そっか、じゃあ、今やるしかないんだ」

「……ちゆのこと、捕まえるの嫌なの?」

「そんなわけないじゃん、ちゆちゃんのこと捕まえたいよ」

「んふふふ」

 捕まえたいってのも、意味深だな。どう言えば伝わるんだろうか。

 ちゆが公園の太い木の幹を指差した。

「お兄ちゃん、じゃあ、ちゆがあの木の幹にもたれるから、無理矢理チューしてみてよ」

 ちゆが幹まで歩いて行くと、背中を預ける。

 両足を使って、背中を木の幹にかなり強く押し付けている。

 口に両手を当てて俯き加減になり、逃げ場がなく追い込まれた様に自分で演出している。

 表情の作り方もドラマのようで、鬼気迫る感じだ。

 ハァハァと、息を切らすように必死になって、チラチラと僕を見ては視線を外している。

 何だかそれだけで背徳感が凄い。

 これは世の男たちが騙されるわけだ。

 全然演技に見えない。というか、役に入り込んでいる様子だった。

 ちゆとの距離は1メートルくらい。

「……ちゆちゃん」

 僕が一歩近付くと、ちゆがビクッと身体を震わせる。

 ちゆは右手で自分の口を塞ぎ、左手で制服のスカートの裾を掴んだ。

 小柄で華奢な肩を振るわせながら、ちゆが息を荒げている。


 演技だと分かっているはずなのに、彼女の怯え方が上手過ぎて、本当に無理矢理に迫っているかのように感じて興奮してきた。

 僕にそういう趣味がある訳ではないのに、高揚感に逆らえない。

 これが、いわゆる男女のプレイというやつの喜びだ。きっとちゆの頭の中の妄想では、理想のシチュエーションが出来上がっているに違いない。

 そもそも、相手も僕で良かったのか心配になるくらいだ。

 また一歩近付くと、ちゆがあえぎ声を上げた。

「ぁあんっ!……ダメ、そんなつもりじゃ」


 わたし!!?


 僕は耳を疑った。

 ちゆが自分の事を『わたし』と呼んでいる。

 そんな事があるのか。

 新鮮さを感じて下半身が反応する。

 自分の身体の単純さが憎い。

 それくらいのギャップで反応するって、単純過ぎる。

 仕方ないんだけども。

 ちゆが地面を足でズリズリ擦りながら背中を幹に押し付ける。

 彼女の身体が蒸気して赤く火照ほてる。

 目が涙で輝き、僕に熱い視線を送っている。

 よく見ると、ちゆの左手が自分の股の間をスカートの上からガッツリと揉んでいた。

 人差し指、中指、薬指が、恥丘を覆うようにしてクニクニと刺激していた。

 ちゆが野外でオナニーをしている。

 僕は焦って周辺を見渡す。

 人はいない。

 ドクドクと心臓の鼓動が高まる。

 というか、外でこういう行為ができるちゆやゆかは凄い。

 見つかると思ってないのか、それとも見つかっても良いと割り切っているのか、見つかるかどうかのチキンレースを楽しんでいるのか、どれだろう。

 僕はまた、試されているのか。

 色んな解釈を考えたが結論は出ない。

 下半身は、ただただ勃起している。


 冷静になれ、とにかく、僕はちゆを捕まえてキスをするだけだ。

 別に青姦を始めようというわけではない。


 僕はさらにちゆに近付いた。


 もうかなりちゆとの距離が近い。


 これだけ近付けば、僕の身体で隠れてちゆのオナニーがバレることはないだろう。


 ちゆは自分の口に当てていた右手の中指と薬指を口に入れて舐めながら僕の顔を見上げる。

 長いまつ毛と、額の汗で張り付いた前髪が見え、淫らに欲情した表情を僕に向けている。

 彼女の左手が、スカートの中に入り、さらにショーツの中へ移動する。

「はぁ、はぁ、……あんっ、お兄ちゃん、わたし、わたし、んぅううん」

 くちゅくちゅ、くちゅくちゅと、ちゆが自分のまんこを弄る音が耳に入ってくる。

 僕はちゆの整った顔立ちが艶っぽく乱れる様に、理性を保てなくなってきた。

 ちゆは僕の反応を確かめるように、口に入れていた自分の中指と薬指を出して、見せつけるように舌で舐め回した。

 2本の指先をチロチロと舐める。

 第一関節を咥えて、ちゅぽんっ、ちゅぽんっ、と抜き差しする。

 次は、自分の手の平から中指の先までを丁寧に舐め上げて見せる。

 自分の舌の動きを見せつけたいようで、上目遣いで、舐め上げた後に口の中を僕に近付けた。

 僕はその行為に耐えられず、さらに一歩前に近付き、ちゆに身体を密着させてしまう。

「ぁあんっ」

 ちゆが嬉しそうに小さくあえぐ。


 むにっ、とした柔らかくて温かい身体の感触を自分の胸から太ももに掛けて感じ、全身が喜びに震えた。

 甘酸っぱい果実と、花束のような香りが鼻腔をくすぐる。


 僕の勃起テントが、ちゆの股に挟まり、彼女のオナニーしていた手の甲に当たる。


 ちゆがオナニーしていた左手をショーツから出し、僕のスラックスのチャックを下げ、パンツの窓から生でペニスを掴んだ。

 オナニーの愛液でベトベトに濡れたちゆの左手の温かい感触に、痺れるような快感を感じる。

 ちゆはショーツの中心を彼女から見て右側にずらして、僕の亀頭を膣口に押し付けた。

 彼女は、左手で竿部分を優しく握り、そのまま僕の亀頭をまんこに当てて、上下に擦っている。

「ちょ、ちゆちゃん、それは……入っちゃうよ」


「違うでしょ、お兄ちゃんっ」


 ちゆが僕に顔を近づけ、とろんとした目付きで可愛い舌先をくるくる回して見せる。

 僕はハッとする。攻めなくては。

 次は、ちゆの唾液で濡れた右手に、自分の左手の指を絡めてちゆの頭上の木の幹に押し付ける。

 彼女の体温と唾液のぬるっとした感触を手の平に感じて心地良い。

 好きな子の手と唾液に触れていると思うと幸福を感じる。

 ちゆの柔らかい身体を、木と僕で挟むように体重を掛けると、今まで感じた事のない気持ちよさだった。

 今は幹だが、ベッドはともかく、壁に押し付けたことは無かった。

 なんだか新しい体験をしたような気持ちだ。

 ちゆはツー、と唾液を口元から垂れたままで、まるで犬かのように舌先を僕に見せてハァハァ息を荒げている。


 こんなの、興奮するなという方が無理があるだろう。


 僕は勃起したペニスの先を膣口に押し付ける。

 裏筋がぬるっと、ちゆの下腹へ密着するが、ちゆが、左手で膣口まで戻してくれた。

 ちゆが舌を出したまま、僕を見ながら頷く。

 それを合図に、腰を前に進める。

 同時に、ちゆの唇へ僕の唇を近付ける。

 彼女はキスしやすいように首に軽く角度をつけ、僕はそのまま唇を重ねた。


 下半身で、ぬちゅっと、愛液の音が聞こえる。

 僕の亀頭が、ちゆの膣口から膣内へ挿入されていく。

 カリ首が彼女の膣壁に抱きしめられるように密着し、キュッと締まった。

 竿にまとわりつくような肉壁を通ると、コリっとした壁に行き着く。

 たぶんここはポルチオだ。

 奥まで入ったという事だ。

 膣口が僕のペニスの根本を咥え込んでいて、ゆっくり腰を回すように刺激すると締まったり緩んだりして気持ちよかった。

 僕は腰を小さく回しつつ、ちゆの口の中の感触も楽しむことにした。

 ちゆの舌と僕の舌が絡まる。

 僕の舌を吸い込むちゆ。

 口内が温かく、舌が包まれている感じが分かる。

 歯の裏の感触も伝わり、舌のマッサージを受けているようだ。

「……あ、んっ、ちゅ、んちゅっ、れろれろ、あむっ、むっ、んんー、んー」

 ちゆが吐息を漏らしながら一生懸命ディープキスをしてくれている。

 僕は、自分の右手でちゆの頭を撫でた。

 ちゆの全身がビクッと動き、僕の左手を、彼女の右手がギュッと握った。


「ふっ、うぅーん、あむっ、むっ、んちゅっ、んちゅうー」


 頭を撫でられたことに応えるように、口の中で舌を上下左右に大きく動かすちゆ。


 吐息が漏れて、顔が熱く、鼻がくすぐったい。

「ふふっ」

 キスしながら、ちゆが笑う。

 僕はそのちゆの一瞬の幸福そうな笑い声に、下半身が刺激されて硬くなった。

 すでに大きくはなっていたが、ビクビクと震えて硬さが増したことで、ちゆのまんこの締めつけがキュッと強くなった。

「あんっ、きもちー、んっ、れろれろ、んっ、んっ」

 ちゆの声が漏れる。

 硬くなったことでちゆの膣内への刺激も強くなったようだ。

 僕はそのまま、ゆっくりと前後に腰を動かした。

 凄い、めちゃくちゃに気持ちが良い。

 硬くなって締め付けが強くなっていた分、前後に動かした時の擦られ方に変化が生じたようだった。

 今までの中で1番の締め付け、というか、快感の種類で言うと初体験だった。

 たぶん、体勢の関係もある。

 立ったままで、上に突き上げるようなピストンなんて、やった事が無かった。

 コレは多分、重力の方向の問題だ。

 寝てる状態での刺激よりも、立って上から来る刺激の方が強いケースもあるということだ。

 木の幹と僕にちゆが挟み込まれているという状況も関係しているようだ。

 ちゆがほぼ固定されて動けないから、突き入れた時に逃げ場がない。

 これはたぶん、ちゆも今までと違う刺激を感じているはず。

 僕は口を離してみる。

「ちゆちゃん、どう?痛くない?」

 ちゆの顔が真っ赤に上気していて、とろんとした目で僕を見る。

 だらしなく口を開いていて、唾液が垂れていた。

 エロ過ぎる。

 その顔を見た瞬間に射精しそうになったので、前に朝食で食べたフレンチトーストを思い出してギリギリ耐えた。

 危ない危ない。

「気持ちいいの、きもちーよ、もっと突いてぇえー」

 ちゆの一人称が、わたしからに戻っている。

 余裕がない証拠だ。

 もっと突いて、……ということは、つまりはそう言う事だ。


 僕だけが気持ちいい訳ではないなら、続けても問題ない。

 僕は腰を動かすペースを早めた。

 ちゆがそれに合わせて可愛く喘ぐ。

「あんっ、あんっ、んっ、うんっ、はぁん、はぁん、ん、んぅ、んぅ、あっ、あっ、だめっ、んっ、だめっ、やっ、やんっ、あんっ、あっ、そこ、そこ、もっと、そこそこっ、んぅ、はぁんっ、はぁんっ」

 ちゆの淫らな表情を見ながら、まんこの奥を何度も突く。

 突くたびに反応してくれるちゆが愛おしい。

 ちゆがサキュバスだということを忘れてしまいそうになる。

 可愛い。

 こんなに可愛い子によがられると、僕には耐えられない。


 野外セックスなんて、何が良いのか全く分からなかったが、今こうしてちゆのよがる顔を見ながら腰を動かしていると、逆に何が悪いと思っていたのか分からなくなってくる。

 結局のところ、好きな子と愛し合えるなら場所など関係ないと言うことだ。



 当たり前と言えばそうなのだが、コレはまずい。

 延々とやってしまいそうだ。


「ちゆちゃん、……そろそろ、イッて良いかな」

「んっ、んっ、あんっ、え?なに?」

「……もうっ、イきそう」

「お兄ちゃん、イクの?」

「うん……そろそろ、出そうなんだ」

「ふーん」


 ちゆが、僕の左耳に口元を近づける。





 何だろうと耳に神経を集中させる。





 すると、甘くねっとりした声色で、僕の耳に囁いた。





「まぁーだ、……だめっ!イクなっ、ふふふっ、んっ」




 それを聞いた瞬間。




 ドクっ、ドクっ、ドクっ、ドクっ、ドクっ、ドクっ



 射精してしまった。




「あっ、……お兄ちゃん、もしかして出ちゃった?もぉおー、イクなって言ったのにぃいい、むぅうー」


 確かにほとんど限界だったのだが、耐えることはできるレベルだった。

 なのに、囁き声と、イクな、の言葉で耐えきれなかった。


 ……なんで急に命令形なんだ。



「ごめん、ちゆちゃん……耐えられなかった」

「むぅ、イっても良いなんて言ってないでしょ?なんで?」

「なんでって言われても、耳元で囁くから、気持ちがたかぶっちゃって」

「ちゆのせいなの?」

「ちゆちゃんのせいじゃないって言うと、それはそれで嘘になりそうな気がする」

「ちゆのせいじゃん!」

「だって、囁き声が可愛すぎて」

「そうなの?ちゆの声、そんなに良かったんだ」

「うん、本当はもっと長く楽しみたかったんだけどね、ダメだったよ」

「へー、そうなんだぁ、初めはあんまり乗り気じゃ無かったくせに、ふふっ」

 ちゆが楽しそうにしている。

 長く楽しみたかったのは本音だが、授業に戻らなくてはいけないので、結果としてはこれで良かった。

 僕はポケットティッシュ出して、ちゆに渡す。

「ありがとう、お兄ちゃんティッシュ持ち歩いてるなんて、すごいね」

 僕は、自分の亀頭をティッシュで綺麗に拭くと、スラックスを履き直した。

 ちゆもショーツに付いた性液を拭き取る。

 僕は拭いたティッシュをちゆから受け取った。

「よし、あとは、そこの公共トイレで手を洗って戻ろう」

「うん」


 僕らはトイレで手を洗い、身だしなみを整えて公園を出る。

「ちゆちゃん、ごめんね」

「ん?なにが?」

「なんかさ、僕だけ気持ち良くなっちゃったみたいで」

「ええー、お兄ちゃん、大丈夫だよー」

「ほんとに?」

「ほんとだよ、だって、ちゆ、2回イってたし」

「え?どこで」

「ふふーっ、ないしょー」

 嬉しそうに右手の人差し指を口の前に立てるちゆ。

「教えてよ、気になるじゃんか」

「うーん、じゃあ、1回目だけ教えたげるぅ」

「ありがとう」

「特別だよー?」

「うん」

「えっとねぇー、お兄ちゃんが、ちゆに引っ付いた時だよ」

「嘘、それって、最後の一歩で身体が触れた瞬間に、ってこと?」

「そだよー、お兄ちゃんが、一歩ずつ近付いてきて、ドキってしてて、あー、ちゆ、捕まえられるって思って、すっごい激しく手動かしちゃった」

「それ、ちゆちゃん自分の手でイったってこと?」

「うん、でも、お兄ちゃんの身体が密着したのが気持ち良かったんだよ?」

「そっか、……で、もう一回イったのは?」

「ダメだよ、さっき約束したでしょ?1回目だけだって」

「約束なんてしてないよ」

「だめー!特別って言ったもん」

「分かったよ、仕方ないなぁ」

「なんか膨れてるねぇ、お兄ちゃんそんなに気持ち良かったんだ」

「……どうして?」

「ちゆとのえっち、楽しかったからそんなに気になるんでしょー?ふふっ」

 僕は恥ずかしくなる。

 確かに、むりに聞き出そうとするのもおかしな話だ。

 冷静にならなくては。


「それは、否定しないけど」

「今度は、もっと耳元で囁いてあげるね」

 僕は耳が赤くなる。


「ちょっと、ちゆちゃん……」

「なに?囁かれるの好きでしょ?」

「いや、……好き……だけど」

「でしょ、お兄ちゃんの弱点分かっちゃったなぁ」

 ちゆの背中でパタパタ動く羽根を見て、僕は切なくなった。


 ……どうして、ちゆは悪魔なんだろう。




 僕はちゆを引き止める。


「ちゆちゃん」 


「なに?」

 ちゆが足を止めて僕の目を見る。



「僕のことを探してくれて、ありがとう」




「ふふっ、特別だよー」



 ちゆが幸せそうに笑った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

エクササイズマシン発表会

リビドー360
恋愛
ひょんなことから新型のエクササイズマシンのプレゼンをすることになった女子大生のリホと、リホの幼馴染でちょっとエッチな発明家のワタル。 プレゼン会場では大勢の観衆が見守る中、ワタルがマシンに細工した数々のエロエロな仕掛けがリホを襲う。 80年代のちょっとエッチな少年漫画をオマージュし、そこに少し過激度を加えたお話です。 パクリじゃないよ!インスパイアだよ!

からくり屋敷を脱出せよ

リビドー360
恋愛
からくり屋敷に囚われたリホとワタル。 知恵とエチを駆使して大脱出!? 80年代のちょっとエッチな漫画をオマージュし、少し過激さをプラス。 パクリじゃないよ!インスパイアだよ!

【R18 】必ずイカせる! 異世界性活

飼猫タマ
ファンタジー
ネットサーフィン中に新しいオンラインゲームを見つけた俺ゴトウ・サイトが、ゲーム設定の途中寝落すると、目が覚めたら廃墟の中の魔方陣の中心に寝ていた。 偶然、奴隷商人が襲われている所に居合わせ、助けた奴隷の元漆黒の森の姫であるダークエルフの幼女ガブリエルと、その近衛騎士だった猫耳族のブリトニーを、助ける代わりに俺の性奴隷なる契約をする。 ダークエルフの美幼女と、エロい猫耳少女とSEXしたり、魔王を倒したり、ダンジョンを攻略したりするエロエロファンタジー。

おもらしの想い出

吉野のりこ
大衆娯楽
高校生にもなって、おもらし、そんな想い出の連続です。

これ以上ヤったら●っちゃう!

ヘロディア
恋愛
彼氏が変態である主人公。 いつも自分の部屋に呼んで戯れていたが、とうとう彼の部屋に呼ばれてしまい…

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

処理中です...