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「島根県外の一切と連絡が取れないといっていましたが県内ではどうなんですか?それもやっぱりつながらないのでしょうか?」
「うーん…それがだね…。島根県内だとなぜかつながるんですよ…」
「え!?」

てっきり島根県内の通信にも被害が出ていると考えていた寺山は、岩本の言葉に拍子抜けする。

「いや、もちろんすべて今まで通り問題ないというわけじゃありません。一部つながらなかったりつながりにくかったりはするけど、島根県外との通信が全くできないことと比べればその影響は非常に小さいといえるレベルということです」
「なるほど…」

島根県外とは一切交信できない一方、県内であれば部分的に可能という状況に二人は頭を悩ませる。
島根県内の機器に異常が生じているなら県内の通信はさらに困難になってもおかしくはない。
にもかかわらず、県内と県外で通信状況に差がありすぎる。
そのような不自然な状況について岩本はいくつか仮説を立てる。

「現状分かっている範囲から考えると、まずはなんらかのサイバー攻撃などによって外部との通信が妨害されているという可能性です」

名前だけは有名なサイバー攻撃。
寺山も具体的なことはよくわからないが、このような深刻な事態に直面している以上考慮せざるを得ない。

「サイバー攻撃…。実際それを使って、今回みたいなことは可能なんですか?」
「うーん…。はっきり言って難しいでしょうね。特定の通信システムをピンポイントに破壊することとかはできるでしょうけど、固定回線やあらゆる電波の通信を同時に妨害するというのはちょっと考えられません」
「そうですか…」
「それに島根県内だけはある程度通信できるというのも腑に落ちません。なんで県外とはまったく取れない通信を県内だけなら取れるような、中途半端な攻撃をするのでしょうか?世界中と通信できなくすることが出来るなら島根県内であっても通信妨害することが出来るでしょう」
「確かに…こんな大規模に外部と通信が出来なくなるのであれば、それこそ戦争のときとかじゃないと…」

戦争という単語が寺山の脳内をよぎる。
考えたくもないことではあったが、現状を鑑みると最悪の事態を想定しなければならない。
岩本もそれは分かっていた。

「戦争ですか…。情報が全く入っていないので判断できませんが、敵をかく乱させるという意味では通信の妨害は有効な手段です。ですがもちろんそれはあくまで仮説のうちの一つです。確証はありません」
「そうですよね。いきなり戦争なんて…」

異常事態とはいえそれが戦争であると決まったわけではない。
単に大規模な災害という可能性もある。
そこまで話が進むと岩本は突然席を立ち、パソコンの置いてある机に向かう。

「それで実はちょっと今調べていることがありまして…」

そういいながら岩本はパソコンをしばらく操作したのち、プリンターから印刷された書類をもって戻ってきた。
そして手にした書類を机の上に置く。

「これは…もしかしてさきほどの地震に関することですか?」

寺山が見せられたのは紙の上に図やグラフに交じって文字が添えられたもの。
パッと見ただけではあったが節々の単語から内容を推測した彼は、そう質問する。

「そうです。これはさきほど発生した地震についての情報です」



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