朝目が覚めたとき、私は魔女でした

宮原翔太

文字の大きさ
上 下
2 / 5
第1章 魔女アリーシャの誕生、そして旅たち

第2話 魔女アリーシャの旅立ち

しおりを挟む
 転生してから3日経って分かったことは、この街は魔女に対してとても優遇されていて、いろんなものが半額や無料になる事が多く、しかもこの街には私以外の魔女を見たことが無い。もしかしたらいないのかも。
 空を飛んでいる魔女もいないし。
 そういえば、私って飛べないのかな? 飛び方も知らないし、ほうきも無いし。
 そもそもほうきで飛ぶのかどうかもわからないし。
 でも、魔女と言ったらほうきで空を飛ぶと言うのが定番だよな。
 夜に魔法の本を少しずつ読んでいるけど、飛び方すら見つけていないし。


 朝、いつものように朝日で起きて魔女服に着替えて、朝ごはんを作りに行く。
 この家は転生して一日目にすべての部屋を見て回ったから、ある程度把握している。
 見て回って分かったことは、この家は一人で暮らすには、もったいないくらい広い家。
 転生してから思ったけど、この家って家具やいろんな道具がそろっていて「誰か住んでいたのかな?」って思っていたけど、家具と道具が新しいから多分違う。
 でも、冷蔵庫が無いのは不便だけど、異世界だから仕方がないことだとわかっているし、そんなに困っていないから問題ない。
 あ、魔法は毎日少しずつ練習していて、黙々と成長している。
 杖だって魔法の力で刹那の時間で出すことが出来るようになった。
 でも、杖を刹那の時間で出せられるようになっても、ほうきで飛んでみたいな。
 せっかく魔女になったし。
 魔女って言ったら「ほうきで空を飛ぶ!」って言うイメージがある。私だけかな? そんなことないよね。
 さて、今日は何をしよう? 魔法の練習は毎日夕方にやっているし、今日はお昼から始めようかな? 
 とりあえず朝ご飯を食べてから考えよう。

 ゆっくり朝ごはんを食べて、魔女服に着替えて外に出る。
 今日もいい天気だ。まるで5月の上旬のような風と気温。とても過ごしやすい。

「今日もいい天気だな」

 私はいつも一日目にパンを食べた河川敷で魔法の練習をしている。
 意外と広くて、いい風がたまに吹いてきてとっても気持ちいから。
 それにあんまり人はいないから。
 河川敷に行く前にパン屋さんに行って、お昼ご飯を買ってから行こう。
 最近いつもお世話になっているパン屋さんに足を運ぶ。
 今日は何のパンがあるかな。
 このパン屋さんにあるクロワッサンがとっても美味しい。

「こんにちは。今日はどんなパンがありますか?」

「魔女さん。今日も来てくれたのかい。ちょうどバゲットが焼きたてだよ」

 パン屋さんのおばあさんが、バゲットの乗ったプレートを持ちながら言った。
 確かにおばあさんの持っているプレートから「焼きたてだよ!」と言っているかのような匂いがしてきた。

「おいしそうですね。そのバゲットといつもクロワッサンを一つずつください」

「はいよ」

 おばあさんが紙袋にバゲットとクロワッサンを一つずつ入れて、渡してくれた。

「ありがとうございます」

パンを受け取ってお金を払う。

「まいど」

 お金を払って、2種類のパンの入った紙袋を持っていつもの河川敷に向かう。
 そういえば、このお金って無くなる前に稼ぐ方法を考えなくてはいけないな。
 思ったより小袋のお金は沢山あるし、この街は魔女に対して優遇されているから、すぐには無くならないけど、いずれはなくなる代物だからどこかで稼がないといけない。
 転生する前は、近くの喫茶店でバイトをいて生活していたし、大学は両親が亡くなってからは奨学金でないと通えないから、奨学金で通っていた。
 河川敷に到着して、ちょっとだけこの焼きたてのバゲットを食べてみることにする。
 せっかく焼きたてだと言うし、紙袋の上からでも焼きたてだと言うことがわかるくらい温かい。
 紙袋からバゲットの半分より少し少ないくらいの量を千切り取って、ちょっと大きく口を開けて頬張る。
 美味しい。小麦粉の香りがするし、やっぱり焼きたてのパンだから美味しいな。
 朝ご飯を食べたて2時間ちょいくらいして、バゲットを約半分食べてしまった。これは太るかな。
 まぁ、夕飯を減らせばいいだけなんだけど。
 でも、そんなこと言ったら転生してから、転生する前に比べて食べる量が増えたんだよな。
 転生してからも自炊はいているけど、つい作りすぎてしまう。
 転生する前は作りすぎても、冷蔵庫に入れておけばよかったけど、ここには冷蔵庫が無いから作りすぎたら食べちゃわないといけないから、転生前に比べて食べ過ぎてしまう。
 冷蔵庫の有難さがよくわかるな。
 バゲットを食べ終えてやっと魔法の練習を始める。
 最初に昨日練習した魔法を一通りやって、ちゃんと出来るか確認する。
 出来なくなっていたらいざと言う時に困るから。
 昨日出来るようになった魔法を一通りやって、ちゃんと出来ることを確認して、新しい魔法の練習に取り掛かる。

「えっと、昨日はこのページまでやったから、今日は次のページっと」

 本を1ページめくって題名を読むとそこには「ほうきでの飛び方」と書いてある。
 おう、これでようやく魔女らしいことが出来るようになる。
 「ほうきでの飛び方」を読む。

「なになに。【ほうきで空を飛ぶにはほうきが必要です。】・・・・要するにほうきが無いと飛べないということか」

 あれ? 買わないといけない? 
 読み進めていくと「ほうきは魔法協会に売っています」と書いてある。
 魔法協会? そんなものがこの世界にあるとは思わなかった。
 まぁ、魔女がいるくらいだから、魔法協会の一つや二つはあるのか。
 魔法協会ってどこにあるんだ?
 バックから魔女専用の地図を出して魔法協会の位置を調べる。
 魔法協会はこの国「リエルジー」ではなく、隣の国の「魔法国マーキスクロック」という所にあるらしくて、ここから歩くと2日はかかりそうな所にある。
 これは旅の準備をしないと買いに行けないな。
何かネット通販的なものはないかな。
 あったら使いたいけど、流石に無いだろうな。
 もしかしたら、魔法で出来るのかもしれないけど、その方法を探さないといけないな。
 まぁ、一回家に帰って準備をしないと、魔法協会に行けないから家に帰ろ。

 河川敷で魔法の練習をやめて、パンが入った紙袋を持って家に帰る。
 家に着くと、玄関の前に木箱が置いてある。
 そっか、この世界には段ボールなんてないから、箱と言ったら木箱なのか。
 なんの箱だろう?
 木箱を家の中に待ち運んで中を開けてみる。
 すると中には手紙と何やらいつも付けているのと別のバッチが入っている。
 何かよくわからないけど、中に入っている手紙を読んでみよ。
手紙には、

【魔女アリーシャ様。
この世界の魔女は魔法協会の名簿に名前を刻むようになっております。
ですが魔法協会の名簿にアリーシャ様の名前がありませんので通知させて頂きました。
 魔法協会にお越し頂いて、魔法協会の名簿に名前と魔女名を登録して下さい。
 なお、同封してあるバッチは、魔法協会に入るときに必要になりますのでお付けになってから入ってください。
 よろしくお願いします。】

 と、書かれてある。
 魔法協会に名前が刻まれてない? 転生したから?
 転生したときに、そういうこともやっておいて欲しかった。
 てか、私が転生して3日くらいしか経ってないのに、私がいるってよくわかったな。
 魔法の力って言われてしまったら、それまでなんだけど。
 ん? 魔女名? 私にはそんなはないと思うけど?
 ブローチには名前しか書いてないし、魔女名なんて初めて聞いた。
 なんて説明したらいいんだろう。
 勝手に付けていいものなのかな。でも、勝手に付けたらどうせすぐわかるだろうし、でも「転生しました」なんて、誰の信じてくれないだろうし。
 ま、そんなことは行ってから何とかなるかな。
 ほうきを買いに行って、名簿に名前を刻んで帰ってくるか。
 今日は魔法協会に行く準備をして、明日の朝から歩くか、なんか公共交通機関的なのがあったらそれを使って行こう。

 手紙を読んで、お昼を食べて魔法協会に行く準備をしていると、外が徐々に暗くなってきた。
 よし、夕飯を食べて今日はもう寝ようかな。
 魔法国マーキスクロックって一体どういう所なんだろう。楽しみだな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。

みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

処理中です...