62 / 66
マフィアの花嫁
37
しおりを挟む
「本当に自分たちのものはいらねえのか?」
「まあ、おめえらがいいなら構わんが」
周も鐘崎もやれやれと微苦笑でいる。だが、確かに四人でまったり散歩がてらというこんな時間もいいものだ。銀座から列車のガード下を抜けて東京駅の丸の内口へと出れば、目の前には皇居へ続く広々とした石畳の歩道が午前の陽射しを受けてキラキラと輝いていた。先週に引き続き、小春日和の晴天も実に気持ちがいい。
郵便局には様々な種類の記念切手があって、紫月と冰はまるで女子の如く選ぶのに夢中だ。
「かーわいい! 紫月さん、見てくださいこれ! 雪うさぎの図柄ですよー」
「お! ホントだ。時期的にもちょうどいいな!」
「こっちは秋冬の寺院シリーズですって。これも綺麗じゃないですか?」
「うんうん! ちょっとご年配のクライアントさんに送るには落ち着いてていいわな」
お目当てのものが決まれば、旦那二人は財布係である。窓口で精算を終える頃には、既に嫁たちの興味は次なる便箋と封筒へと移っていったようだ。
切手を選び終え、また少し運動がてら歩きで銀座まで戻る。馴染みの文具店も郵便局同様に相変わらず観光客などでごった返していたが、この喧騒もまた風物詩といえる。そんな中にあって周も鐘崎も長身の上にガタイもいい。紫月と冰も長身ではあるが華奢な為、混み合う店内では二人に選ばせて、周らは端の方で邪魔にならないようにして待つことにした。
目当ての品物を選び終え、割と大量に買い込んだので便箋と封筒とはいえ、袋は案の定ずっしりと重くなった。
「遼、それ一個俺が持つべ」
「白龍、ひとつ貸して」
紫月と冰が同時に手を差し出すも、鐘崎と周は必要ないと言ってニヒルに笑った。
「この程度、重い内には入らんさ」
「マジ? 悪ィじゃん」
「白龍、ありがとうね」
「これが俺たちの楽しみでもあるわけだからな」
亭主らが何気なく笑むその笑顔も男前ゆえ、周囲の客たちがチラホラと視線を送ってよこす。何だか気恥ずかしくなってしまい、冰はモジモジと頬を染め、紫月は「へへへ」と頭を掻く。世間から見れば、自分たちはどんな関係に映るのだろうと思いつつも、
「な、な、遼! まさかおめえみてえなイケメンが俺の亭主だなんてさ。皆んな想像つかねえべな」
紫月が誇らしそうに耳打ちする。
「そうか? そいつぁいかんな。じゃあちゃんと説明するか。俺たちは――」
夫婦です! ってな――などと平気で口に出しそうな鐘崎の上着の裾を引っ張っては、
「バッ……バカバカ……! ンなこと世間様に公表することじゃねって!」
慌てふためいて出口へと向かった紫月だった。
「ふふふ。鐘崎さんは相変わらずだよね。どこででも堂々と「夫婦です」とか言っちゃいそう」
冰がクスクスと笑う傍らで、周もまた自尊心をくすぐられたようだ。
「カネだけじゃねえぞ。俺だって堂々とお前の――」
亭主だと胸を張るぞ――と言い掛けた周の背中を押して、冰もまた慌てて店を後にするのだった。
「まあ、おめえらがいいなら構わんが」
周も鐘崎もやれやれと微苦笑でいる。だが、確かに四人でまったり散歩がてらというこんな時間もいいものだ。銀座から列車のガード下を抜けて東京駅の丸の内口へと出れば、目の前には皇居へ続く広々とした石畳の歩道が午前の陽射しを受けてキラキラと輝いていた。先週に引き続き、小春日和の晴天も実に気持ちがいい。
郵便局には様々な種類の記念切手があって、紫月と冰はまるで女子の如く選ぶのに夢中だ。
「かーわいい! 紫月さん、見てくださいこれ! 雪うさぎの図柄ですよー」
「お! ホントだ。時期的にもちょうどいいな!」
「こっちは秋冬の寺院シリーズですって。これも綺麗じゃないですか?」
「うんうん! ちょっとご年配のクライアントさんに送るには落ち着いてていいわな」
お目当てのものが決まれば、旦那二人は財布係である。窓口で精算を終える頃には、既に嫁たちの興味は次なる便箋と封筒へと移っていったようだ。
切手を選び終え、また少し運動がてら歩きで銀座まで戻る。馴染みの文具店も郵便局同様に相変わらず観光客などでごった返していたが、この喧騒もまた風物詩といえる。そんな中にあって周も鐘崎も長身の上にガタイもいい。紫月と冰も長身ではあるが華奢な為、混み合う店内では二人に選ばせて、周らは端の方で邪魔にならないようにして待つことにした。
目当ての品物を選び終え、割と大量に買い込んだので便箋と封筒とはいえ、袋は案の定ずっしりと重くなった。
「遼、それ一個俺が持つべ」
「白龍、ひとつ貸して」
紫月と冰が同時に手を差し出すも、鐘崎と周は必要ないと言ってニヒルに笑った。
「この程度、重い内には入らんさ」
「マジ? 悪ィじゃん」
「白龍、ありがとうね」
「これが俺たちの楽しみでもあるわけだからな」
亭主らが何気なく笑むその笑顔も男前ゆえ、周囲の客たちがチラホラと視線を送ってよこす。何だか気恥ずかしくなってしまい、冰はモジモジと頬を染め、紫月は「へへへ」と頭を掻く。世間から見れば、自分たちはどんな関係に映るのだろうと思いつつも、
「な、な、遼! まさかおめえみてえなイケメンが俺の亭主だなんてさ。皆んな想像つかねえべな」
紫月が誇らしそうに耳打ちする。
「そうか? そいつぁいかんな。じゃあちゃんと説明するか。俺たちは――」
夫婦です! ってな――などと平気で口に出しそうな鐘崎の上着の裾を引っ張っては、
「バッ……バカバカ……! ンなこと世間様に公表することじゃねって!」
慌てふためいて出口へと向かった紫月だった。
「ふふふ。鐘崎さんは相変わらずだよね。どこででも堂々と「夫婦です」とか言っちゃいそう」
冰がクスクスと笑う傍らで、周もまた自尊心をくすぐられたようだ。
「カネだけじゃねえぞ。俺だって堂々とお前の――」
亭主だと胸を張るぞ――と言い掛けた周の背中を押して、冰もまた慌てて店を後にするのだった。
22
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる