41 / 66
マフィアの花嫁
16
しおりを挟む
「紫月、おそらく冰の拘束は解かれたと見て間違いない。縄か手錠か、はめられていたものが外されたんだろう」
「……じゃあ冰君は自由に動けるってことか? どんな手を使ったんだか……」
「分からんが、冰のことだ。また何か上手い口車に乗せたのかも知れん。だが動けない――ということは」
「行けば敵が俺たちを狙う――ということか」
「というよりも、敵と一緒になって俺たちを誘き寄せてやるとでも言ったのやも知れんな」
「つまり敵に寝返ったふりをしたってか?」
「そんなところかもな。ただし、段ボールが崩れて来そうということから――敵は確実に俺たちを待って攻撃してくるからから気をつけろということだろう。冰が簡単に態度を翻したということは、何らかの交渉に成功して、冰自身には憂いが無くなったことを示している」
「そっか! さすがは冰君だな」
「俺たちが近付けば敵は銃撃してくる。声の方向からすると、この先あと三十メートルほどの所に潜んでいるのは間違いない。紫月、二手に分かれよう。俺はこのまま正面から進んで囮になる。お前は背後に回り込んでくれ」
「分かった。気をつけて行け!」
密かに紫月はメインの通路をそれて敵の後方を目指す。外の嵐で多少の音が掻き消されるのが幸いといえた。その間、鐘崎は敵の正確な位置を把握すべく冰との会話を続けながらゆっくりと時間をかけて進んだ。
「冰君ー! どこだー?」
「ここです! こっちー!」
一歩、また一歩と進む毎に互いの声が近付いてくる。と同時に、背後からやって来た紫月が口元に指を立てて『しー、静かに!』としている姿が目に入った。敵の男二人は鐘崎の声のする方向に神経を集中していて、紫月には気付いていないようだ。
(冰君! 前の二人がこっちに気付かねえように、もうちょい適当な会話を続けてくれ)
紫月が身振り手振りと目配せでそう指示を出す。
(了解です!)
冰は親指を立ててうなずくと、鐘崎との会話を続けた。
「鐘崎さん、声が近くなってきたね! そう、あとちょっと! 次の通路を右に入ってくれれば落ち合えると思うよ!」
「分かった。待ってろ、冰君! すぐ行くよ」
残り五メートルと思える時を見計らって、
「鐘崎さん、今です!」
そう叫ぶと同時に男たちの背後から思い切り蹴りをくれて通路へと突き飛ばした。と同時に男の握っていた銃が通路へと吹っ飛ぶ。将棋倒しになった彼らを鐘崎の迅速な体術が襲った。
一人は即座に意識を刈り取られ、またもう一人の方は回り込んで来た紫月によって峰打ちを食らう。ものの見事に敵二人をその場に沈めることができた。
「冰!」
「鐘崎さん! 紫月さん! ありがとうございます……!」
緊張が解けたせいか、冰はヘナヘナ、その場にペタンと座り込んでしまった。
「……じゃあ冰君は自由に動けるってことか? どんな手を使ったんだか……」
「分からんが、冰のことだ。また何か上手い口車に乗せたのかも知れん。だが動けない――ということは」
「行けば敵が俺たちを狙う――ということか」
「というよりも、敵と一緒になって俺たちを誘き寄せてやるとでも言ったのやも知れんな」
「つまり敵に寝返ったふりをしたってか?」
「そんなところかもな。ただし、段ボールが崩れて来そうということから――敵は確実に俺たちを待って攻撃してくるからから気をつけろということだろう。冰が簡単に態度を翻したということは、何らかの交渉に成功して、冰自身には憂いが無くなったことを示している」
「そっか! さすがは冰君だな」
「俺たちが近付けば敵は銃撃してくる。声の方向からすると、この先あと三十メートルほどの所に潜んでいるのは間違いない。紫月、二手に分かれよう。俺はこのまま正面から進んで囮になる。お前は背後に回り込んでくれ」
「分かった。気をつけて行け!」
密かに紫月はメインの通路をそれて敵の後方を目指す。外の嵐で多少の音が掻き消されるのが幸いといえた。その間、鐘崎は敵の正確な位置を把握すべく冰との会話を続けながらゆっくりと時間をかけて進んだ。
「冰君ー! どこだー?」
「ここです! こっちー!」
一歩、また一歩と進む毎に互いの声が近付いてくる。と同時に、背後からやって来た紫月が口元に指を立てて『しー、静かに!』としている姿が目に入った。敵の男二人は鐘崎の声のする方向に神経を集中していて、紫月には気付いていないようだ。
(冰君! 前の二人がこっちに気付かねえように、もうちょい適当な会話を続けてくれ)
紫月が身振り手振りと目配せでそう指示を出す。
(了解です!)
冰は親指を立ててうなずくと、鐘崎との会話を続けた。
「鐘崎さん、声が近くなってきたね! そう、あとちょっと! 次の通路を右に入ってくれれば落ち合えると思うよ!」
「分かった。待ってろ、冰君! すぐ行くよ」
残り五メートルと思える時を見計らって、
「鐘崎さん、今です!」
そう叫ぶと同時に男たちの背後から思い切り蹴りをくれて通路へと突き飛ばした。と同時に男の握っていた銃が通路へと吹っ飛ぶ。将棋倒しになった彼らを鐘崎の迅速な体術が襲った。
一人は即座に意識を刈り取られ、またもう一人の方は回り込んで来た紫月によって峰打ちを食らう。ものの見事に敵二人をその場に沈めることができた。
「冰!」
「鐘崎さん! 紫月さん! ありがとうございます……!」
緊張が解けたせいか、冰はヘナヘナ、その場にペタンと座り込んでしまった。
12
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
後輩の甘い支配
ちとせ
BL
後輩(男前イケメン)×先輩(無自覚美人)
「俺がやめるのも、先輩にとってはどうでもいいことなんですね…」
退職する直前に爪痕を残していった後輩に、再会後甘く支配される…
商社で働く雨宮 叶斗(あめみや かなと)は冷たい印象を与えてしまうほど整った美貌を持つ。
そんな彼には指導係だった時からずっと付き従ってくる後輩がいた。
その後輩、村瀬 樹(むらせ いつき)はある日突然叶斗に退職することを告げる。
2年後、戻ってきた村瀬は自分の欲望を我慢することをせず…
後半甘々です。
すれ違いもありますが、結局攻めは最初から最後まで受け大好きで、受けは終始振り回されてます。
離したくない、離して欲しくない
mahiro
BL
自宅と家の往復を繰り返していた所に飲み会の誘いが入った。
久しぶりに友達や学生の頃の先輩方とも会いたかったが、その日も仕事が夜中まで入っていたため断った。
そんなある日、社内で女性社員が芸能人が来ると話しているのを耳にした。
テレビなんて観ていないからどうせ名前を聞いたところで誰か分からないだろ、と思いあまり気にしなかった。
翌日の夜、外での仕事を終えて社内に戻って来るといつものように誰もいなかった。
そんな所に『すみません』と言う声が聞こえた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる