23 / 69
歪んだ恋情が誘う罠
22
しおりを挟む
「俺は昔っからおめえ以外は目に入らんしな」
嬉しい言葉をさらりと言うが、どうにもこの亭主は自分の想い以外には無頓着過ぎる。困ったものだと思いつつも、お前以外は目に入らないなどとは言われれば、嬉しくもくすぐったい思いがしてならなかった。
「ったく! 相変わらずなんだからよぉ、遼……」
「今後は気をつけるさ。それよりも紫月――あんなことがあった後だ。浄化――なんて言やぁ言葉が悪いが、おめえでリセットさせて欲しいんだがな」
コツリ、またひとたび額と額をぶつけては、視界に入りきらない位置で揺れている視線が無言で訴えてくる。ゆらゆらと黒曜石の瞳の中に熱い炎が点って見えるようだ。欲情という名の炎である。
「バッカ、遼……」
「ああ、バカな亭主だ。薬食らって爆睡して、なんも覚えてねえ――なんていうとんだ抜け作だ。ついさっき電話で親父にもコンコンと説教食らった」
「親父っさん怒ってた?」
「まあな。コーヒーに入れられたのが催眠剤だったから良かったものの、下手したら今頃はあの世だったかも知れねえって」
バツの悪そうに頭を掻いて苦笑いしているが、確かに父の言う通りだ。
「ほんと、笑いごっちゃねえよな」
「親父には一から修行のし直しだって雷落とされたわ。だが、これだけは伝えておきてえ。どんなことが起ころうが、例えば天地がひっくり返ろうが――俺が想うのはこの世で唯一人。おめえしかいねえ」
「バッカ……なに急に」
「大真面目だ」
遼――。
「分ーってるって。俺だっておんなしなんだから……さ」
俺はお前で、お前は俺で。
お前が心底望むことなら俺が望むのも同じこと。
あの戸江田にも言ったが、あれは紛れもない本心だ。
お前がしたいと思ったならば、それが浮気であろうとただの戯れの火遊びであろうと構わない。俺も一緒に浮気して、一緒に火遊びに付き合ってやるさ。
そんでもって二人でバカやっちまったなって笑い合えばいい。しようもねえヤツだよなって突っつき合えばいい。
「言ったべ? 俺ァどんなことがあってもおめえだけのモンだ。おめえも俺だけのもん。だって俺たちは――」
「一心同体の夫婦なんだから――だろ?」
「そ! 分かってんじゃん」
「じゃあ……分かるな?」
今の俺がどんな気持ちでいるか。
何を望んでいるか。
もう抱きたくて抱きたくて仕方ないって、この熱情を抑え切れなくなってることが――!
そんな言葉に代えて、深く濃い口づけに奪われた。息もできないほどの激しく強い口づけだ。
手を取られ、誘われた先には硬く欲情した凶暴なほどの雄――。彼自らローブの下のブリーフに手を突っ込んでは硬いそれを握らされた。
嬉しい言葉をさらりと言うが、どうにもこの亭主は自分の想い以外には無頓着過ぎる。困ったものだと思いつつも、お前以外は目に入らないなどとは言われれば、嬉しくもくすぐったい思いがしてならなかった。
「ったく! 相変わらずなんだからよぉ、遼……」
「今後は気をつけるさ。それよりも紫月――あんなことがあった後だ。浄化――なんて言やぁ言葉が悪いが、おめえでリセットさせて欲しいんだがな」
コツリ、またひとたび額と額をぶつけては、視界に入りきらない位置で揺れている視線が無言で訴えてくる。ゆらゆらと黒曜石の瞳の中に熱い炎が点って見えるようだ。欲情という名の炎である。
「バッカ、遼……」
「ああ、バカな亭主だ。薬食らって爆睡して、なんも覚えてねえ――なんていうとんだ抜け作だ。ついさっき電話で親父にもコンコンと説教食らった」
「親父っさん怒ってた?」
「まあな。コーヒーに入れられたのが催眠剤だったから良かったものの、下手したら今頃はあの世だったかも知れねえって」
バツの悪そうに頭を掻いて苦笑いしているが、確かに父の言う通りだ。
「ほんと、笑いごっちゃねえよな」
「親父には一から修行のし直しだって雷落とされたわ。だが、これだけは伝えておきてえ。どんなことが起ころうが、例えば天地がひっくり返ろうが――俺が想うのはこの世で唯一人。おめえしかいねえ」
「バッカ……なに急に」
「大真面目だ」
遼――。
「分ーってるって。俺だっておんなしなんだから……さ」
俺はお前で、お前は俺で。
お前が心底望むことなら俺が望むのも同じこと。
あの戸江田にも言ったが、あれは紛れもない本心だ。
お前がしたいと思ったならば、それが浮気であろうとただの戯れの火遊びであろうと構わない。俺も一緒に浮気して、一緒に火遊びに付き合ってやるさ。
そんでもって二人でバカやっちまったなって笑い合えばいい。しようもねえヤツだよなって突っつき合えばいい。
「言ったべ? 俺ァどんなことがあってもおめえだけのモンだ。おめえも俺だけのもん。だって俺たちは――」
「一心同体の夫婦なんだから――だろ?」
「そ! 分かってんじゃん」
「じゃあ……分かるな?」
今の俺がどんな気持ちでいるか。
何を望んでいるか。
もう抱きたくて抱きたくて仕方ないって、この熱情を抑え切れなくなってることが――!
そんな言葉に代えて、深く濃い口づけに奪われた。息もできないほどの激しく強い口づけだ。
手を取られ、誘われた先には硬く欲情した凶暴なほどの雄――。彼自らローブの下のブリーフに手を突っ込んでは硬いそれを握らされた。
11
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説


どいつもこいつもサイドストーリー【短編集】
pino
BL
どいつもこいつもシリーズの、本編では書ききれなかったサイドストーリー達をこちらで書いてます。
こちらだけでも楽しめると思いますが、より楽しみたい方は本編を先にお読みください。
話により時期や時間が本編とはズレているので、キャラクターの心境などの変化前の話の時がありますのでご注意下さい。
貴哉だけでなく、いろんな人物の視点で書かれてます。
表紙は鉄仮面こと戸塚春樹です!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。


変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる