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絞り椿となりて永遠に咲く
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鐘崎は自分の言い方が少々きつかった為に三春谷の気持ちを逆撫でし、彼をあのような大それた犯行に駆り立ててしまったのかも知れないと言った。もう少し別のやわらかい言い方をしたのなら、結果はまた違ったのではないかとも思う。だから決して紫月一人のせいではないし、気に病む必要はないとそう言いたいわけだ。と同時に、今回は鐘崎自身が被害に遭いながら意外にも落ち着いていられるのは、恨みの矛先が紫月に向かなかったという安堵感であると思われた。むろんのこと清水を巻き込んでしまったことは反省すべき点だが、清水とて組幹部という重い立場にある。いつ何時そういった危険に遭遇したとしても、対処すべき覚悟と備えはできている。にもかかわらず、若頭である鐘崎を守り通せなかった点では充分に反省すべきことだと言ってくれる彼の気持ちが有り難かった。
そんな皆のやり取りを聞いていた周が、誰も間違ってはいないと口を挟んだ。
「おめえらが三春谷って野郎に対してどんなふうに対応したのか――なんてことは聞かずとも想像がつくがな」
紫月の性質からすれば、例え邪なことを言われたとしても、怒ったり気分を害したりすることなく穏やかに諭しただろうし、それを知った鐘崎が少々厳しい態度で三春谷を牽制しただろうことも手に取るように分かると言うのだ。
「俺がカネの立場だったら同じように対処しただろう」
というよりも、もっと厳しいやり方をしたかも知れんなと言って周は笑った。
変な話だが、香港にいた頃はファミリーに与する者たちが自分の囲う女性にちょっかいを掛けられたりした際、有無を言わせずその相手を始末してしまったような事案も数多く見てきたものだ。
「羅辰を覚えているか? 以前、鉱山を狙って俺を嵌めたあの男だが――」
羅辰といえば周の兄・風の側近に取り立てられなかったことを恨んで、鉱山の宝を奪い取ろうと企てたならず者だ。その際、周を拉致してデスアライブという危険薬物を盛り、とんでもない目に遭わされたことは誰にとっても苦い思い出といえる。
「あの男は色事にもかなり派手でな。てめえは何人もの女を囲っちゃ奔放に遊んできたくせに、少しでも手をつけた女に粉掛けられたりすれば、次の日には湾に屍が浮かぶと言われていたくれえだった。実際手に掛けた数も相当なもんだったようだ」
羅辰に限らずそんな男たちを方々で見てきたという。好いた惚れたで簡単に殺人に手を出してしまうことは問題だが、それからすれば鐘崎が三春谷に対して苦言を呈したことなど厳しくも何ともないと言って周は苦笑した。
「嫁さんを護るのは亭主の務めだ。カネも一之宮もどこも間違っちゃいねえ」
だから気に病む必要などないし、互いが窮地にあれば助け合うのは当然だと言った。
「俺と冰だってお前らには散々世話になってる。お互い様だ」
これからも頼りにしているぜとニヒルに笑う周に、鐘崎も紫月も有り難い思いでいっぱいにさせられたのだった。
今回、鐘崎の父である僚一は例によって海外での仕事で留守にしていた為、側で逐一知恵を借りることは叶わなかったのだが、彼が帰って来た際にはいろいろと助言をもらいたいものだと周が笑う。
「カネや俺の親父たちから見れば俺たちはまだまだ半人前だ。また助言をもらいながら精進していきたいものだな」
「氷川の言う通りだ。もしも親父だったら、ああいった場合にどう対処したのかってなことを聞いてみたくなるな。それに、俺たちには窮地に陥っても互いに支え合える相手がいる。仲間ってのは本当に有り難いものだ」
どちらからともなく掲げたグラスをコツリと合わせて、周と鐘崎は微笑み合った。そんな亭主たちを見つめる冰と紫月もまた、尊い絆に胸温めるのだった。
そんな皆のやり取りを聞いていた周が、誰も間違ってはいないと口を挟んだ。
「おめえらが三春谷って野郎に対してどんなふうに対応したのか――なんてことは聞かずとも想像がつくがな」
紫月の性質からすれば、例え邪なことを言われたとしても、怒ったり気分を害したりすることなく穏やかに諭しただろうし、それを知った鐘崎が少々厳しい態度で三春谷を牽制しただろうことも手に取るように分かると言うのだ。
「俺がカネの立場だったら同じように対処しただろう」
というよりも、もっと厳しいやり方をしたかも知れんなと言って周は笑った。
変な話だが、香港にいた頃はファミリーに与する者たちが自分の囲う女性にちょっかいを掛けられたりした際、有無を言わせずその相手を始末してしまったような事案も数多く見てきたものだ。
「羅辰を覚えているか? 以前、鉱山を狙って俺を嵌めたあの男だが――」
羅辰といえば周の兄・風の側近に取り立てられなかったことを恨んで、鉱山の宝を奪い取ろうと企てたならず者だ。その際、周を拉致してデスアライブという危険薬物を盛り、とんでもない目に遭わされたことは誰にとっても苦い思い出といえる。
「あの男は色事にもかなり派手でな。てめえは何人もの女を囲っちゃ奔放に遊んできたくせに、少しでも手をつけた女に粉掛けられたりすれば、次の日には湾に屍が浮かぶと言われていたくれえだった。実際手に掛けた数も相当なもんだったようだ」
羅辰に限らずそんな男たちを方々で見てきたという。好いた惚れたで簡単に殺人に手を出してしまうことは問題だが、それからすれば鐘崎が三春谷に対して苦言を呈したことなど厳しくも何ともないと言って周は苦笑した。
「嫁さんを護るのは亭主の務めだ。カネも一之宮もどこも間違っちゃいねえ」
だから気に病む必要などないし、互いが窮地にあれば助け合うのは当然だと言った。
「俺と冰だってお前らには散々世話になってる。お互い様だ」
これからも頼りにしているぜとニヒルに笑う周に、鐘崎も紫月も有り難い思いでいっぱいにさせられたのだった。
今回、鐘崎の父である僚一は例によって海外での仕事で留守にしていた為、側で逐一知恵を借りることは叶わなかったのだが、彼が帰って来た際にはいろいろと助言をもらいたいものだと周が笑う。
「カネや俺の親父たちから見れば俺たちはまだまだ半人前だ。また助言をもらいながら精進していきたいものだな」
「氷川の言う通りだ。もしも親父だったら、ああいった場合にどう対処したのかってなことを聞いてみたくなるな。それに、俺たちには窮地に陥っても互いに支え合える相手がいる。仲間ってのは本当に有り難いものだ」
どちらからともなく掲げたグラスをコツリと合わせて、周と鐘崎は微笑み合った。そんな亭主たちを見つめる冰と紫月もまた、尊い絆に胸温めるのだった。
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