極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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「三春谷、心配してくれんのは有り難え。お前が世間一般的なイメージからヤクザを嫌うのも理解できる。だがな、俺もその”ヤクザ”だ」
「そんな! 紫月さんはヤクザなんかじゃありませんよッ! あの人に……鐘崎ってヤツに脅されて一緒にいるんでしょ? 俺にはそうとしか思えません!」
「バカ言え! そいつぁおめえさんの誤解だ。俺は脅されてなんかねえし、てめえの意思であいつと一緒になったんだ。心配には及ばねえ」
「そうでしょうか? 本当は……逃げたいって思ったことはありませんか? あいつが――鐘崎って人が怖いから我慢して一緒にいるんじゃないんスか? もしかしてDVとかも受けてるんじゃないかって、心配で仕方ねえんです! 誰にも相談できなくて困ってるんじゃないっスか?」
「おいおい……DVって、おめえも想像力豊かなぁ。ンなわきゃねえって。何でそうぶっ飛んだ想像ばっか……」
「想像じゃありません! あいつ……この前俺に言ったんです。あなたに指一本触れたらタマをもらうって! それってヤクザの世界じゃ命を取るって意味だそうですね? そんなおっかねえことを平気な顔して……仮にも堅気の俺に……顔色ひとつ変えないで言うようなヤツですよ? あんなヤツと一緒にいたらあなたがいつか危ない目に遭うんじゃねえかって……それが心配なんです!」
 正直なところ、まだ言うかとげんなりさせられそうだ。それ以前に道場に来たタイミングで電話がかかってくる自体に首を傾げさせられる。まるでどこかから自分たちを見張っていたようにも思えるのだ。
「三春谷、おめえ今何処にいる?」
「え……?」
 途端に声が期待を含ませたように逸るのが分かった。会ってくれるのかと浮き足だったかのようにも思えるのだ。
「あの……紫月さん? もしかして今から……」
「何で俺が道場にいることを知ってる」
「何でって……別に……。た、たまたまですよ。この前のこと……あ、謝りたくてご実家にかけたら……偶然紫月さんが出てくれたからラッキーだなって」
「そうか――?」

 本当はどこかから俺を見張っていたんじゃねえのか?

「い、嫌ですよ紫月さんったら……。まさか俺がどっかからあなたを監視していたとでも言うんですか? そんなストーカーみたいな真似するわけないじゃないですか……」
「だよな? 今日は平日だ。お前さんも仕事だろうしな」
「そ、その通りっスよ……。今は都内で……会社の近くっス」
「それならいい。疑って悪かった。とにかく――もう電話はかけてくるな。おめえはおめえの幸せだけを考えて彼女さんを大事にしろって」
 分かったな? そう言って静かに受話器を置いた。
「待って! 紫月さ……ッ」
 三春谷の焦る声を遮るように通話を切った。
「はぁ……。ったく! いい加減目ぇ覚ましてくれっといいけどな」
 重い溜め息と共に独りごちるのをとめられなかった。
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