極道恋事情

一園木蓮

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絞り椿となりて永遠に咲く

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「まあ……結婚するくらいですから? 庇うのも当然なんでしょうけど。でも紫月さん、俺心配なんス!」
 ますます身を乗り出しながら、まるで耳打ちするかのように顔を近付けて三春谷は続けた。
「あの人、ヤクザですよね? 地元じゃ有名だって。そんな人と一緒にいて紫月さんヤベエと思わないスか?」
 これにはさすがの紫月も返答に困らされてしまう。
「いや、まあヤクザってのはちょっと違うんだけどな。あいつとはガキん頃からの幼馴染でさ。性質もよく知ってっから」
 心配には及ばないと笑えども三春谷は大真顔を崩さない。
「脅されて一緒になったとかじゃないんスか? だったら俺、うちの会社にも弁護士とかいるし、力になれることがあるかも知れませんので」
「脅されてって……そりゃないない! つかさ、おめえが思ってるようなことは全然ねえからダイジョブダイジョブ!」
 紫月は極力明るくあしらったが、三春谷は納得できていないような顔つきでいる。
 後ろの席で聞いていた橘と春日野も無言のまま視線を見合わせてしまった。
「それよか今日はおめえの結婚祝いなんだから!」
 時間も時間だし、あと一杯飲んだらそろそろ引き上げるかと言って話題を変えた。
「今日は実家に泊まりだべ?」
 ラスト一杯なと言って三春谷と自分のグラスにビールを注ぐ。三春谷はまだまだ話し足りないような顔で黙り込んでしまったが、ちょうどその時だった。
「あら、遼ちゃん! いらっしゃーい!」
 オーナー・銀ちゃんの甲高い声で入口を振り返ると、なんと鐘崎が顔を出したことに紫月も――それに後ろの席にいた橘と春日野も驚かされることと相成った。
「遼!」
 大きな瞳をまん丸く見開いて嬉しそうな声を上げた紫月とは裏腹に、三春谷の方は何とも形容し難い顔つきで押し黙ってしまった。それもそのはず、席に向かってゆっくりと歩いてくる鐘崎の出立ちは一目で粋に見えるダークで上品なスーツ姿が店内にいた客たちの視線を一気に集めていたからだ。
 がっしりとした高身長の体格は堂々としていて、それに嫌味なほどによく似合う男前の顔立ちは一目見たら視線を外せなくなるような美丈夫ぶりだ。表情は穏やかながらもおいそれとは声すら掛けずらい独特のオーラを放っている。
 鐘崎は紫月らの席までやって来ると、ちらりと三春谷を一瞥し、
「鐘崎だ。今日は紫月が世話になった」
 低く落ち着いているが色香を感じさせる美声でそう挨拶を切り出した。
「ご結婚されるそうだな。おめでとう」
 こう出られては三春谷とて無視するわけにもいかない。言葉少なながらも、「どうも……」と言って焦ったように視線を泳がせたまま軽い会釈をしてみせた。
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