極道恋事情

一園木蓮

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封印せし宝物

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「それまで黄のじいさんから電話が来たことなどなかったんだが、じいさんは万が一のことを思って俺に連絡したと言っていた」
 運ばれた先の病院は繁華街の中ではそこそこ大きかったものの、医者の誰もが原因不明だと言って手を持て余していて、とにかくは解熱するしか方法が見当たらないということだった。
「俺は兄貴に事情を話してファミリーの専属医である最高峰の医師に診てもらえるように頼み込んだ。鄧の親父さんだ」
「――私の父に? そうでしたか……」
「当時、鄧はドイツに留学中だったからな。知らなくても無理はない」
 周の父も兄もその時初めて周がこの幼い少年の元に通い、いろいろと面倒を見ていたことを知ったそうだ。
「鄧の親父さんはすぐにあらゆる検査で出来得る限りの治療を試みてくれた。だが、やはり高熱以外に原因となる病は見当たらなかったそうだ。それでもひとつ思い当たる節があると言って、他の医師らがサジを投げた冰の病名を推測してくれた。おそらくは重度の精神的負担による発熱ではないかという診断だった」
 その精神的負担というのが何なのかは分からなかったが、つい数日前までは周も直に冰と会っていたし、それまでは普通に明るく元気だった。その後も特に変わったことはなく、学校にも普段通り通っていたというし、黄老人もこれといって思い当たる節はないと言った。ただし、ここ数日はどことなく気落ちしている様子で、いつものような元気はなかったそうだ。
「鄧の親父さんはとにかく熱を下げなければ身体的に危ないと言ってな。投薬で解熱自体は可能とのことだったが、幼い子供にとっては強い薬なので予期しない副作用が出る可能性が高いと言った」
「――副作用ですか。父はどのような症状が出ると申したのですか?」
「可能性が高いのは記憶に関することだと言われた」
「記憶――ですか」
「副作用が重ければ自分がどこの誰かもすっかり忘れてしまうという完全な記憶喪失、軽くて済んだとしてもところどころ断片的に記憶が抜け落ちて、最悪は黄のじいさんや俺のことも思い出せなくなるかも知れないと――」
 だが周も黄老人もとにかく冰の命が助かるならば自分たちのことを忘れてしまったとて構わないと思ったそうだ。
「結果、投与を決め、熱は下がり三日もする内には容態も落ち着いた。冰が意識を取り戻して、看病で付いていた黄のじいさんの顔を見て『じいちゃん』と呼んだ時は安堵させられた。しかも俺のことまでちゃんと覚えていてくれたのだ」
 ただ、それからしばらくして記憶が断片的に抜けてしまっていることが発覚したのだそうだ。
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