1,049 / 1,212
身勝手な愛
38
しおりを挟む
「ご心配には及びません。どうせまたウチのやつがやらかしたことでしょうからな」
チラリと冰を見やりながらニッと笑む。その微笑みに深い夫婦の絆を感じてか、重鎮方は『そうか、そうか』といったように目頭を熱くした。
「焔君、赦してくだされ――。わしらが愚かじゃった」
「この通りじゃ。じゃが――誠、あなた方ご夫婦は……見事であられる。このような立派なご伴侶を持たれた焔君は幸せじゃの」
重鎮方はそう言うと、皆揃って冰を見つめ、深々と頭を下げてよこした。
「ありがとうございましたじゃ、姐様――!」
それには救助にやって来たファミリーの側近たちも驚いた様子で目を丸めてしまったほどだ。冰を『姐様』と呼んだことはもちろんだが、重鎮方六人が六人とも目頭を熱くしながら感動の笑みを浮かべて涙ぐんでいるのだ。冰がどのように彼らを守り通したのか、聞かずとも窺えるようだった。
そうして重鎮方が無事に保護されて行った後、だだっ広い倉庫内には周と冰、それに鐘崎と紫月、李に源次郎といったお馴染みの面々だけが郭芳を取り囲むようにして佇んでいた。
「さて――郭芳。言い訳があれば聞いてやる」
周の低い声音に郭芳はビクリと身体を震わせた。
「も、申し訳ありません……! か、覚悟は……できています……」
「何の覚悟だ」
「……は! その……」
「俺の一等大事な者に手を出した覚悟か?」
「……は、その通りで……。ボスのご側近方と……老板の奥方様を拐って監禁したのは私です。ど……うぞ、如何なるご制裁も……厭いませぬ……」
「如何なる――ね。父の側近を監禁した償いは俺の感知するところではない。後程父と兄から直々に沙汰が降ろうが、俺の妻を拐ったケジメはこの俺の手でつけさせてもらう」
「……は、も、申し訳ございません……! あなたに始末される覚悟はとうにできております……」
「よろしい。では望み通りあの世へ送ってやろう」
言うか終わらない内に周は初動なく郭芳の襟元を掴み上げては、重い一撃の拳を見舞った。
郭芳は数メートルほど吹っ飛び、倉庫床にぐん伸びてしまった。かろうじて意識はあったものの、既に今の一撃で立ち上がることさえできない虫の息だ。朧げな視界の先にぼんやりと映り込んだのは、気の毒そうに眉を八の字に寄せた冰の顔だった。
「郭芳さん、しっかり!」
「……あ……んた……」
「うん。もう大丈夫。痛かっただろうけど、これくらいは我慢してよね? あの人にもケジメってもんがあるんだからさ」
そう言って申し訳なさそうに笑む。
チラリと冰を見やりながらニッと笑む。その微笑みに深い夫婦の絆を感じてか、重鎮方は『そうか、そうか』といったように目頭を熱くした。
「焔君、赦してくだされ――。わしらが愚かじゃった」
「この通りじゃ。じゃが――誠、あなた方ご夫婦は……見事であられる。このような立派なご伴侶を持たれた焔君は幸せじゃの」
重鎮方はそう言うと、皆揃って冰を見つめ、深々と頭を下げてよこした。
「ありがとうございましたじゃ、姐様――!」
それには救助にやって来たファミリーの側近たちも驚いた様子で目を丸めてしまったほどだ。冰を『姐様』と呼んだことはもちろんだが、重鎮方六人が六人とも目頭を熱くしながら感動の笑みを浮かべて涙ぐんでいるのだ。冰がどのように彼らを守り通したのか、聞かずとも窺えるようだった。
そうして重鎮方が無事に保護されて行った後、だだっ広い倉庫内には周と冰、それに鐘崎と紫月、李に源次郎といったお馴染みの面々だけが郭芳を取り囲むようにして佇んでいた。
「さて――郭芳。言い訳があれば聞いてやる」
周の低い声音に郭芳はビクリと身体を震わせた。
「も、申し訳ありません……! か、覚悟は……できています……」
「何の覚悟だ」
「……は! その……」
「俺の一等大事な者に手を出した覚悟か?」
「……は、その通りで……。ボスのご側近方と……老板の奥方様を拐って監禁したのは私です。ど……うぞ、如何なるご制裁も……厭いませぬ……」
「如何なる――ね。父の側近を監禁した償いは俺の感知するところではない。後程父と兄から直々に沙汰が降ろうが、俺の妻を拐ったケジメはこの俺の手でつけさせてもらう」
「……は、も、申し訳ございません……! あなたに始末される覚悟はとうにできております……」
「よろしい。では望み通りあの世へ送ってやろう」
言うか終わらない内に周は初動なく郭芳の襟元を掴み上げては、重い一撃の拳を見舞った。
郭芳は数メートルほど吹っ飛び、倉庫床にぐん伸びてしまった。かろうじて意識はあったものの、既に今の一撃で立ち上がることさえできない虫の息だ。朧げな視界の先にぼんやりと映り込んだのは、気の毒そうに眉を八の字に寄せた冰の顔だった。
「郭芳さん、しっかり!」
「……あ……んた……」
「うん。もう大丈夫。痛かっただろうけど、これくらいは我慢してよね? あの人にもケジメってもんがあるんだからさ」
そう言って申し訳なさそうに笑む。
21
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【BL】SNSで人気の訳あり超絶イケメン大学生、前立腺を子宮化され、堕ちる?【R18】
NichePorn
BL
スーパーダーリンに犯される超絶イケメン男子大学生
SNSを開設すれば即10万人フォロワー。
町を歩けばスカウトの嵐。
超絶イケメンなルックスながらどこか抜けた可愛らしい性格で多くの人々を魅了してきた恋司(れんじ)。
そんな人生を謳歌していそうな彼にも、児童保護施設で育った暗い過去や両親の離婚、SNS依存などといった訳ありな点があった。
愛情に飢え、性に奔放になっていく彼は、就活先で出会った世界規模の名門製薬会社の御曹司に手を出してしまい・・・。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店
ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる