1,039 / 1,212
身勝手な愛
28
しおりを挟む
「ありがとうございます、皆さん。僕はもう一度郭芳さんに会って、あの方が何を目的とし、どうしたいのかをうかがいたいと思います。これは僕の想像ですが――もしかしたら郭芳さんは白龍に対して上役を敬うという以上に特別な感情を持っているような気がしてならないのです。皆さんを拉致した理由は白龍をお父様の後継にしたいからで、その際反対しそうな皆さんが足枷になるという気持ちかも知れません。ですが僕を周家から遠ざけたいという理由が分かりません。考えられるのは、僕に代わって郭芳さんが白龍の伴侶になりたい――そう思っているのかも知れないということです」
それを確かめる為にも一芝居打って、郭芳の本心を引き出したいのだと冰は言った。重鎮方はさすがに驚いていたが、そう言われてみれば思い当たる節が無きにしも非ずだと逸る。
「確かに――あの郭芳は焔君の直下だった頃から異様に忠誠心の強い奴じゃった気がするのう」
「そう言われてみればそうじゃったな。我々を見る目はいつも反抗的だったし、焔君のことは自分が守るといったような態度じゃった」
「当時わしらもあの郭芳は焔君にとち狂った感情でも抱いているのかと疑ったことがある……。だがどういうわけか彼は自らファミリーを離れてヨーロッパでモデル業に専念したいと言い出したのじゃ。我々の勘ぐりは間違っていたのだと思い、その後はすっかり忘れておったわ」
ということは、やはり当時から郭芳は周に対して何らかの感情を抱いていたということだろうか。それを確かめる為にも打って出る他ない。
「僕は郭芳さんが何を考えているかを聞き出そうと思います。もちろんまともに訊いたところで本心は引き出せないでしょうから……策を講じます。その際、皆さんはこう訴えてください。昔はともあれ、今では風お兄さんと同様に弟の焔のことも大事に思っている――と。お父様の後継がどうのは別として、兄弟はファミリーにとって無くてはならない存在だと訴えていただきたいのです。そうすれば郭芳さんにとって皆さんは敵ではなく味方という考えに転じてくれるかも知れません」
しいては皆の安全の為にもなると冰はそう言うのだ。
「分かった。我々が焔君のことを誤解していたのは事実だし、今は本心から彼も風君同様ファミリーにとって大事なお方だと思っている。だがあんたはどうなさるおつもりじゃ。郭芳はあんたに周家から籍を抜けと言っておったが……それを阻止する良い方法でもあると言うのか?」
「いえ――籍を抜けと言うなら抜きましょう。実は僕自らそうしたかったのだと言って、郭芳さんにその手助けをしてくれと逆に頼み込むのです」
どういうことだ――? と、皆が驚く中、冰は自信に満ちた明るい表情でにこやかに笑った。
「大丈夫です――。とにかくどんな成り行きになろうと、僕は皆さんの安全を第一に考えて決して裏切るようなことはいたしません。場合によっては信じられないようなことを言うかも知れませんが、それも郭芳さんの目的を聞き出す為に必要な策と思って、どうか最後まで僕を信じていただきたいのです。皆さんは周兄弟を同じように大事に思っていると、それだけを強く訴えてください。あとは何とかします」
「わ、分かった。あんたの言う通りにしよう」
「お願いします」
冰は言うと、再び倉庫端の扉まで歩いて行き、郭芳に呼び掛けた。
それを確かめる為にも一芝居打って、郭芳の本心を引き出したいのだと冰は言った。重鎮方はさすがに驚いていたが、そう言われてみれば思い当たる節が無きにしも非ずだと逸る。
「確かに――あの郭芳は焔君の直下だった頃から異様に忠誠心の強い奴じゃった気がするのう」
「そう言われてみればそうじゃったな。我々を見る目はいつも反抗的だったし、焔君のことは自分が守るといったような態度じゃった」
「当時わしらもあの郭芳は焔君にとち狂った感情でも抱いているのかと疑ったことがある……。だがどういうわけか彼は自らファミリーを離れてヨーロッパでモデル業に専念したいと言い出したのじゃ。我々の勘ぐりは間違っていたのだと思い、その後はすっかり忘れておったわ」
ということは、やはり当時から郭芳は周に対して何らかの感情を抱いていたということだろうか。それを確かめる為にも打って出る他ない。
「僕は郭芳さんが何を考えているかを聞き出そうと思います。もちろんまともに訊いたところで本心は引き出せないでしょうから……策を講じます。その際、皆さんはこう訴えてください。昔はともあれ、今では風お兄さんと同様に弟の焔のことも大事に思っている――と。お父様の後継がどうのは別として、兄弟はファミリーにとって無くてはならない存在だと訴えていただきたいのです。そうすれば郭芳さんにとって皆さんは敵ではなく味方という考えに転じてくれるかも知れません」
しいては皆の安全の為にもなると冰はそう言うのだ。
「分かった。我々が焔君のことを誤解していたのは事実だし、今は本心から彼も風君同様ファミリーにとって大事なお方だと思っている。だがあんたはどうなさるおつもりじゃ。郭芳はあんたに周家から籍を抜けと言っておったが……それを阻止する良い方法でもあると言うのか?」
「いえ――籍を抜けと言うなら抜きましょう。実は僕自らそうしたかったのだと言って、郭芳さんにその手助けをしてくれと逆に頼み込むのです」
どういうことだ――? と、皆が驚く中、冰は自信に満ちた明るい表情でにこやかに笑った。
「大丈夫です――。とにかくどんな成り行きになろうと、僕は皆さんの安全を第一に考えて決して裏切るようなことはいたしません。場合によっては信じられないようなことを言うかも知れませんが、それも郭芳さんの目的を聞き出す為に必要な策と思って、どうか最後まで僕を信じていただきたいのです。皆さんは周兄弟を同じように大事に思っていると、それだけを強く訴えてください。あとは何とかします」
「わ、分かった。あんたの言う通りにしよう」
「お願いします」
冰は言うと、再び倉庫端の扉まで歩いて行き、郭芳に呼び掛けた。
21
お気に入りに追加
867
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
そばかす糸目はのんびりしたい
楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。
母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。
ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。
ユージンは、のんびりするのが好きだった。
いつでも、のんびりしたいと思っている。
でも何故か忙しい。
ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。
いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。
果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。
懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。
全17話、約6万文字。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
新しいパパは超美人??~母と息子の雌堕ち記録~
焼き芋さん
BL
ママが連れてきたパパは超美人でした。
美しい声、引き締まったボディ、スラリと伸びた美しいおみ足。
スタイルも良くママよりも綺麗…でもそんなパパには太くて立派なおちんちんが付いていました。
これは…そんなパパに快楽地獄に堕とされた母と息子の物語…
※DLsite様でCG集販売の予定あり
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる