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身勝手な愛
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「そのことを知った奥方の香蘭様がの……坊っちゃんと共にあゆみ殿にお会いなすって、子供を生んでくれとおっしゃった。あなたは主人の命の恩人だとおっしゃってな。香港に来て自分たちと共に暮らさないかとまでお勧めなされた。これからは互いに友となり、生まれた子を一緒に育てていこうと――そう言いなすったのじゃ」
そこまで聞いた冰の頬には潤み出した涙が滝のように伝わっていた。
「それが……白龍だったの……ですね?」
「そうじゃ。その後、坊っちゃんご夫妻の希望であゆみ殿は香港に越して来られたが、一緒のお邸で住まうことはできないとご遠慮なされた。ご夫妻は彼女に少し離れた場所へ家を建ててお送りなすった。焔君が無事に生まれ、彼は周隼と香蘭夫妻の実子として大切に育てられたのじゃ」
あゆみのことを気遣って、長く氷川家に仕えてきた執事の真田が一緒に香港へと移り住んできたそうだ。隼夫妻とあゆみは別宅で暮らすことになったものの、香蘭は事あるごとにあゆみを邸へと呼んで、共に食事をしたり赤ん坊の焔を育てたりしたそうだ。
「香蘭様が焔君をご自分の手元で育てたのは、何もあゆみ殿に意地悪をする為ではない。彼が成長した際に、長男の風君と分け隔てのない周家の後継として、れっきとした立場でいられるようにと思ってのことじゃった」
香蘭は腹違いの兄弟を自分の生んだ子として大切に育てたという。かといってあゆみの存在も隠すことなく、主人と私の大切な家族であり友でもあるのだと言って、社交界でもファミリーの中でも堂々仲睦まじくしてきたそうだ。
冰もまた、周から継母が彼と実母を大切に扱ってくれたということを聞いている。誠、その通りだったというわけだ。
「香蘭様は、焔君が成人した際にファミリーの証である龍の刺青を送ってやりたいと申されての。図柄もボスの隼坊っちゃんと風君と、三頭の龍がひとつになるように香蘭様がお考えなすったんじゃ」
兄弟の父である隼の背中には字にちなんだ黄色の龍が天を目指して一直線に馳ける昇龍が刻まれていた。兄の風には字と同様の黒い龍が右方向に昇るように配置され、弟の焔には白い龍が左方向に昇るようにした。三つの龍を重ね合わせた時、同じ場所から放射状に天を目指して駆け上がるように見えるというものである。
「三人は本当の家族であり、その誰が欠けても周家とは言えない。男三人が一緒にいて、はじめて本物のファミリーなのだという思いを込めて香蘭様はご兄弟の刺青を考えられたのじゃ」
以前、そう――初めて周に抱かれた時だ。同じ話を彼から直接聞いた。その時も感動して涙をこぼしたものの、両親たちの馴れ初めを聞いた今、冰はあふれる涙をとめることができなかった。
そこまで聞いた冰の頬には潤み出した涙が滝のように伝わっていた。
「それが……白龍だったの……ですね?」
「そうじゃ。その後、坊っちゃんご夫妻の希望であゆみ殿は香港に越して来られたが、一緒のお邸で住まうことはできないとご遠慮なされた。ご夫妻は彼女に少し離れた場所へ家を建ててお送りなすった。焔君が無事に生まれ、彼は周隼と香蘭夫妻の実子として大切に育てられたのじゃ」
あゆみのことを気遣って、長く氷川家に仕えてきた執事の真田が一緒に香港へと移り住んできたそうだ。隼夫妻とあゆみは別宅で暮らすことになったものの、香蘭は事あるごとにあゆみを邸へと呼んで、共に食事をしたり赤ん坊の焔を育てたりしたそうだ。
「香蘭様が焔君をご自分の手元で育てたのは、何もあゆみ殿に意地悪をする為ではない。彼が成長した際に、長男の風君と分け隔てのない周家の後継として、れっきとした立場でいられるようにと思ってのことじゃった」
香蘭は腹違いの兄弟を自分の生んだ子として大切に育てたという。かといってあゆみの存在も隠すことなく、主人と私の大切な家族であり友でもあるのだと言って、社交界でもファミリーの中でも堂々仲睦まじくしてきたそうだ。
冰もまた、周から継母が彼と実母を大切に扱ってくれたということを聞いている。誠、その通りだったというわけだ。
「香蘭様は、焔君が成人した際にファミリーの証である龍の刺青を送ってやりたいと申されての。図柄もボスの隼坊っちゃんと風君と、三頭の龍がひとつになるように香蘭様がお考えなすったんじゃ」
兄弟の父である隼の背中には字にちなんだ黄色の龍が天を目指して一直線に馳ける昇龍が刻まれていた。兄の風には字と同様の黒い龍が右方向に昇るように配置され、弟の焔には白い龍が左方向に昇るようにした。三つの龍を重ね合わせた時、同じ場所から放射状に天を目指して駆け上がるように見えるというものである。
「三人は本当の家族であり、その誰が欠けても周家とは言えない。男三人が一緒にいて、はじめて本物のファミリーなのだという思いを込めて香蘭様はご兄弟の刺青を考えられたのじゃ」
以前、そう――初めて周に抱かれた時だ。同じ話を彼から直接聞いた。その時も感動して涙をこぼしたものの、両親たちの馴れ初めを聞いた今、冰はあふれる涙をとめることができなかった。
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