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身勝手な愛
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「白……いえ、焔さんがファミリートップをですって? まさかそんな……」
周からはそんな話を聞いたこともなければ、何より彼が兄を差し置いて大それたことを企むような男でないことは聞かずとも承知だ。
「我々もまさかと思っていたのじゃが、その話し合いの為に皆で別荘に集まっていた最中にあの郭芳がやって来てな……。気がつけばここに監禁されていたというわけじゃ」
「なるほど……。そうだったのですか」
経緯は分かったが、問題は郭芳の目的だ。重鎮方を拘束した上に、今さっきは冰自身に向かって周家から籍を抜くようにと言ってきた。
「考えられるのは……あの方の目的の為にはここにいる皆さんと僕が邪魔になる――ということでしょうか」
冰にとっては自分が邪魔にされるのは何となく理解できるものの、ファミリーの要であるこの重鎮方をも排除したいという動機が分からない。
「とにかく――あの方が戻って来て焔さんやお父様とリモートが繋がったら、僕に周家との縁を切りたいと言わせるつもりなのは確かです。僕は言われた通りに話そうと思います」
そうすればとりあえずこの重鎮方だけでも解放されることだろう。
「だが……そんなことをすればボスや焔君は心を痛めるのではないか? さっきの紙切れくらいなら強要されて書かされたものと思うじゃろうが、あんたが直接そんな話をすればさすがに焔君も動揺されるじゃろうて」
重鎮方は心配そうにしていたが、冰は問題ないと言って穏やかに微笑んだ。
「大丈夫です。僕たちはこれまでにもいろいろなことがあって、拉致された際には焔さんと敵対感情を持っているように演技したり……そんなこともありましたが、焔さんは僕が本心からそんなふうに思っているのではないと、ちゃんと分かってくれましたから」
「……冰さん」
「それに、皆さんは長年お父様たちと共にあられたファミリーの大事な要の方々です。何を置いても無事にお父様の元へお返しするのが僕の務めです。僕は見ての通りの若造ですし、裏の世界のことなどまるで存じ上げない素人ですが、どうか僕を信じてお任せいただくことはできませんでしょうか」
「……冰さん。わしらのことをそんなふうに思うてくれるのは有り難いが……その為にあんたが焔君と縁を切るなど……例え虚偽といえどそんなことをさせるのは胸が痛む思いじゃ……」
「その通りじゃ。何か他にいい方法はないものかの」
周からはそんな話を聞いたこともなければ、何より彼が兄を差し置いて大それたことを企むような男でないことは聞かずとも承知だ。
「我々もまさかと思っていたのじゃが、その話し合いの為に皆で別荘に集まっていた最中にあの郭芳がやって来てな……。気がつけばここに監禁されていたというわけじゃ」
「なるほど……。そうだったのですか」
経緯は分かったが、問題は郭芳の目的だ。重鎮方を拘束した上に、今さっきは冰自身に向かって周家から籍を抜くようにと言ってきた。
「考えられるのは……あの方の目的の為にはここにいる皆さんと僕が邪魔になる――ということでしょうか」
冰にとっては自分が邪魔にされるのは何となく理解できるものの、ファミリーの要であるこの重鎮方をも排除したいという動機が分からない。
「とにかく――あの方が戻って来て焔さんやお父様とリモートが繋がったら、僕に周家との縁を切りたいと言わせるつもりなのは確かです。僕は言われた通りに話そうと思います」
そうすればとりあえずこの重鎮方だけでも解放されることだろう。
「だが……そんなことをすればボスや焔君は心を痛めるのではないか? さっきの紙切れくらいなら強要されて書かされたものと思うじゃろうが、あんたが直接そんな話をすればさすがに焔君も動揺されるじゃろうて」
重鎮方は心配そうにしていたが、冰は問題ないと言って穏やかに微笑んだ。
「大丈夫です。僕たちはこれまでにもいろいろなことがあって、拉致された際には焔さんと敵対感情を持っているように演技したり……そんなこともありましたが、焔さんは僕が本心からそんなふうに思っているのではないと、ちゃんと分かってくれましたから」
「……冰さん」
「それに、皆さんは長年お父様たちと共にあられたファミリーの大事な要の方々です。何を置いても無事にお父様の元へお返しするのが僕の務めです。僕は見ての通りの若造ですし、裏の世界のことなどまるで存じ上げない素人ですが、どうか僕を信じてお任せいただくことはできませんでしょうか」
「……冰さん。わしらのことをそんなふうに思うてくれるのは有り難いが……その為にあんたが焔君と縁を切るなど……例え虚偽といえどそんなことをさせるのは胸が痛む思いじゃ……」
「その通りじゃ。何か他にいい方法はないものかの」
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