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倒産の罠
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しおりを挟む「冰――苦労をかけた。すまなかったな」
いつもの敷布団の上に座って向き合いながら周は言った。華奢な伴侶の手を取り、大事そうに自らの大きな掌で包み込みながらそう言った。
「ううん、苦労だなんて。俺よりも白龍の方がずっと大変だったと思うんだ。仕事も力仕事で体力的にも大変だったろうし、何より俺たちに囮作戦のことを黙ってるだけだって気苦労だったと思うよ」
本当にお疲れ様でしたと言って大きな掌を握り返す。それが作戦だったとはいえ真実を隠していたことを責めることもせず、逆に労いの言葉を掛けてくれる――そんな伴侶が愛おしくて堪らなかった。
「冰――俺は全てを知っていて、ここでの生活にもいつかは区切りが来ることを知っていた。汐留の社も邸も人手に渡ったわけではないと知っての生活だった。だがお前には……本当のことを何も話せずに大変な心配をさせてしまったと思う。一文無しも同然になったこんな俺を――お前は見捨てず側に居てくれた。どんなに嬉しかったか分かるか――?」
「白龍……そんな、見捨てるなんて……! 俺の方こそお荷物になっちゃいけないって思って。でもさ、俺ここで生活してみてよく分かったんだ。俺は今まで白龍に贅沢三昧させてもらって、ホントにのうのうとしてたんだって。一文無しって言うけど……俺はあなたと、それに真田さんや紫月さんや鐘崎さん、皆んなと一緒に居られるってことが何より幸せなんだって改めて思ったの。確かに汐留にいる時と比べればいろんなことが違って環境も変わっちゃったって言えるかも知れないけど、白龍や皆さんと一緒に過ごせるっていうことが何より心強いっていうかさ。俺、あなたがいればこれ以上の幸せはないって心からそう思うよ」
「冰――」
すっくと腕の中に抱き締めて、周は黒髪にくちづけた。
「ありがとうな、冰――。俺だって同じだ。お前が側に居てさえくれればこんな幸せはねえ」
本当はもっと言葉に表して伝えたい気持ちがたくさんあるのに、何からどう言っていいか上手くはまとまってくれない。ただ愛しいと思う気持ちだけがあふれあふれて、周はひたすらに抱き締めることしかできなかった。
「愛している――」
「白……龍……」
「この世の何よりも――誰よりも。てめえの命よりも――お前が大事だ。――愛している。上手くは言えないが、これがすべてだ」
愛している――。
周は幾度も幾度もそのひと言だけを繰り返した。
「白龍、俺も……あなたが大好き……! ずっと……ずっと死ぬまで側に居させて欲しい」
「ああ、もちろんだ。死ぬまで――いや、死んでからも、生まれ変わったとてお前と共にありたい」
「白龍……好き……。大好き……!」
「ああ――」
じゃあ、またあの晩みたいに――お前を抱く。
うん、あの時みたいにあなたに抱いて欲しい。
そのまま組んづ解れづというほどに夢中で、激しく、二人は互いへの愛を剥き出しにして求め合った。
耳元では小さなテレビから漏れる賑やかなバラエティ番組の声が、まるで二人の愛を応援するかのように高らかに繰り広げられている。隣の部屋に鐘崎らが居ようが、この激しい鼓動が伝わろうがどうでも良かった。布団に潜ればそこは二人だけの深海――。誰に遠慮することもなく、何に気遣う余裕もなく、例え片時も離れているものかというようにして二人は深く激しく愛し合ったのだった。
いつもの敷布団の上に座って向き合いながら周は言った。華奢な伴侶の手を取り、大事そうに自らの大きな掌で包み込みながらそう言った。
「ううん、苦労だなんて。俺よりも白龍の方がずっと大変だったと思うんだ。仕事も力仕事で体力的にも大変だったろうし、何より俺たちに囮作戦のことを黙ってるだけだって気苦労だったと思うよ」
本当にお疲れ様でしたと言って大きな掌を握り返す。それが作戦だったとはいえ真実を隠していたことを責めることもせず、逆に労いの言葉を掛けてくれる――そんな伴侶が愛おしくて堪らなかった。
「冰――俺は全てを知っていて、ここでの生活にもいつかは区切りが来ることを知っていた。汐留の社も邸も人手に渡ったわけではないと知っての生活だった。だがお前には……本当のことを何も話せずに大変な心配をさせてしまったと思う。一文無しも同然になったこんな俺を――お前は見捨てず側に居てくれた。どんなに嬉しかったか分かるか――?」
「白龍……そんな、見捨てるなんて……! 俺の方こそお荷物になっちゃいけないって思って。でもさ、俺ここで生活してみてよく分かったんだ。俺は今まで白龍に贅沢三昧させてもらって、ホントにのうのうとしてたんだって。一文無しって言うけど……俺はあなたと、それに真田さんや紫月さんや鐘崎さん、皆んなと一緒に居られるってことが何より幸せなんだって改めて思ったの。確かに汐留にいる時と比べればいろんなことが違って環境も変わっちゃったって言えるかも知れないけど、白龍や皆さんと一緒に過ごせるっていうことが何より心強いっていうかさ。俺、あなたがいればこれ以上の幸せはないって心からそう思うよ」
「冰――」
すっくと腕の中に抱き締めて、周は黒髪にくちづけた。
「ありがとうな、冰――。俺だって同じだ。お前が側に居てさえくれればこんな幸せはねえ」
本当はもっと言葉に表して伝えたい気持ちがたくさんあるのに、何からどう言っていいか上手くはまとまってくれない。ただ愛しいと思う気持ちだけがあふれあふれて、周はひたすらに抱き締めることしかできなかった。
「愛している――」
「白……龍……」
「この世の何よりも――誰よりも。てめえの命よりも――お前が大事だ。――愛している。上手くは言えないが、これがすべてだ」
愛している――。
周は幾度も幾度もそのひと言だけを繰り返した。
「白龍、俺も……あなたが大好き……! ずっと……ずっと死ぬまで側に居させて欲しい」
「ああ、もちろんだ。死ぬまで――いや、死んでからも、生まれ変わったとてお前と共にありたい」
「白龍……好き……。大好き……!」
「ああ――」
じゃあ、またあの晩みたいに――お前を抱く。
うん、あの時みたいにあなたに抱いて欲しい。
そのまま組んづ解れづというほどに夢中で、激しく、二人は互いへの愛を剥き出しにして求め合った。
耳元では小さなテレビから漏れる賑やかなバラエティ番組の声が、まるで二人の愛を応援するかのように高らかに繰り広げられている。隣の部屋に鐘崎らが居ようが、この激しい鼓動が伝わろうがどうでも良かった。布団に潜ればそこは二人だけの深海――。誰に遠慮することもなく、何に気遣う余裕もなく、例え片時も離れているものかというようにして二人は深く激しく愛し合ったのだった。
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