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倒産の罠
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冰曰く、フォネティックコードで伝えることを思い付いたのは、紫月のピアスに仕込まれているGPSにアクセスする為のパスワードを思い出したからなのだそうだ。
「紫月さんのピアスはRYOをコード変換するって聞いていたんで、実は俺の腕時計のGPSもフォネティックコードでパスワードを決めたんですよ。犯人さんたち、皆さん頭のいい方たちのように見えたんで、そのままウェスト・イーストとか言ったらバレちゃうかもと思って」
ちなみに冰の腕時計のGPSにアクセスするパスワードはYANだそうだ。周焔の『焔』である。
「ってことはぁ……ヤンキー、アルファ、ノヴェンバーか!」
紫月がパチンと指を鳴らしながら、
「まさにピッタシじゃね? 高防ン時は遼も氷川もヤンキーだったしさぁ」
あははは! と腹を抱えて笑う。
「おいおいおい……カネは別としても俺はヤンキーだった覚えはねえぞ!」
周が口をへの字にして仏頂面を見せると同時に鐘崎が反撃、
「何をぬかす! 俺は至って真面目で健全だったぞ!」
二人のくだらないやり取りに、場が大爆笑と化したのだった。
「さて――と。そんじゃ帰るとするか! 久々にデカい風呂に浸かれるぞ、冰!」
周が当たり前のように李が乗って来た高級車に乗り込もうとしたのを見て、冰は思わず上着の裾を掴んで引き止めた。
「白龍……あの、俺たちは……」
帰る場所は川崎のアパートであって、汐留ではない――とそう言いたかったわけだ。
この緊急事態に李や劉という懐かしい面々も駆け付けてくれたのだろうとは思っていたが、冰は未だに周の社が本当に乗っ取られたものだと信じ込んでいるからだ。
その時点でようやくと気付いたわけか、周も鐘崎も申し訳なさそうにして頭を掻いてみせた。
「ええー!? じゃあ……会社……乗っ取られたっていうのは……嘘だったの!?」
「すまん――! 例のヤツらをふんじばる為にな。社を囮に使ったというわけだ」
旦那たちが二人共に平身低頭で謝る姿を前に、紫月もまた両腕を腰に当てて大威張りである。
「俺も今さっき遼に聞いたばっかでさぁ。親父や李さんたちも皆んな知ってたっていうじゃん! ンなことなら最初っから言ってくれりゃいいのにって思ったトコー!」
「ですよね! まさか囮だったなんて……ビックリ!」
「すまんすまん! 敵を騙すにはまず味方からって……な?」
「そうそう! おめえらの必死な態度が敵を信じ込ませるには必要不可欠だったってことで……うむ」
「それは……分かるけど……」
「な? 酷っえべ? 何が敵を騙すにはーだよ。こちとらマジでえれえことになったって右往左往しちまったじゃねえのおー! なあ、冰君」
「ホントですよー!」
こうなると普段は怖いものなしの大黒柱たちも形無しだ。
「そ、その分と言っちゃナンだが……上手く事が片付いた暁には、おめえらに何でもしてやろうって……カネとも話していたんだ」
なあ? と言って鐘崎に助けを求める。
「そ、その通りだ! 行きたい所でも欲しい物でも……何でも叶えてやろうって氷川と言ってたわけだ」
まるで拝み倒す勢いで旦那二人揃って「すまん!」と手を合わせる。
「ふぅん? 何でも叶えてくれる――ねぇ? ほんじゃ何してもらおっか、冰君」
「ふふ、そうですねぇ」
嫁二人はニヤっとしながら案外嬉しそうだ。
「紫月さんのピアスはRYOをコード変換するって聞いていたんで、実は俺の腕時計のGPSもフォネティックコードでパスワードを決めたんですよ。犯人さんたち、皆さん頭のいい方たちのように見えたんで、そのままウェスト・イーストとか言ったらバレちゃうかもと思って」
ちなみに冰の腕時計のGPSにアクセスするパスワードはYANだそうだ。周焔の『焔』である。
「ってことはぁ……ヤンキー、アルファ、ノヴェンバーか!」
紫月がパチンと指を鳴らしながら、
「まさにピッタシじゃね? 高防ン時は遼も氷川もヤンキーだったしさぁ」
あははは! と腹を抱えて笑う。
「おいおいおい……カネは別としても俺はヤンキーだった覚えはねえぞ!」
周が口をへの字にして仏頂面を見せると同時に鐘崎が反撃、
「何をぬかす! 俺は至って真面目で健全だったぞ!」
二人のくだらないやり取りに、場が大爆笑と化したのだった。
「さて――と。そんじゃ帰るとするか! 久々にデカい風呂に浸かれるぞ、冰!」
周が当たり前のように李が乗って来た高級車に乗り込もうとしたのを見て、冰は思わず上着の裾を掴んで引き止めた。
「白龍……あの、俺たちは……」
帰る場所は川崎のアパートであって、汐留ではない――とそう言いたかったわけだ。
この緊急事態に李や劉という懐かしい面々も駆け付けてくれたのだろうとは思っていたが、冰は未だに周の社が本当に乗っ取られたものだと信じ込んでいるからだ。
その時点でようやくと気付いたわけか、周も鐘崎も申し訳なさそうにして頭を掻いてみせた。
「ええー!? じゃあ……会社……乗っ取られたっていうのは……嘘だったの!?」
「すまん――! 例のヤツらをふんじばる為にな。社を囮に使ったというわけだ」
旦那たちが二人共に平身低頭で謝る姿を前に、紫月もまた両腕を腰に当てて大威張りである。
「俺も今さっき遼に聞いたばっかでさぁ。親父や李さんたちも皆んな知ってたっていうじゃん! ンなことなら最初っから言ってくれりゃいいのにって思ったトコー!」
「ですよね! まさか囮だったなんて……ビックリ!」
「すまんすまん! 敵を騙すにはまず味方からって……な?」
「そうそう! おめえらの必死な態度が敵を信じ込ませるには必要不可欠だったってことで……うむ」
「それは……分かるけど……」
「な? 酷っえべ? 何が敵を騙すにはーだよ。こちとらマジでえれえことになったって右往左往しちまったじゃねえのおー! なあ、冰君」
「ホントですよー!」
こうなると普段は怖いものなしの大黒柱たちも形無しだ。
「そ、その分と言っちゃナンだが……上手く事が片付いた暁には、おめえらに何でもしてやろうって……カネとも話していたんだ」
なあ? と言って鐘崎に助けを求める。
「そ、その通りだ! 行きたい所でも欲しい物でも……何でも叶えてやろうって氷川と言ってたわけだ」
まるで拝み倒す勢いで旦那二人揃って「すまん!」と手を合わせる。
「ふぅん? 何でも叶えてくれる――ねぇ? ほんじゃ何してもらおっか、冰君」
「ふふ、そうですねぇ」
嫁二人はニヤっとしながら案外嬉しそうだ。
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