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倒産の罠
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「いいか、まずは犯人が確実に丸中たちであるかを確かめる。このフレームを落とせばヤツらの内の誰かが様子を見にやって来るはずだ。そこで確保する必要はない。我々は身を潜めて何でもなかったということを確認させる」
見張りは地下へ戻って丸中らに報告するだろうから、その後で侵入できる入り口を探すという。
「見たところ地下へ通ずる階段は一箇所しかない。だが、さっきの動画では鉄製の扉が二箇所に見られた。おそらくは地下へ降りると入り口が二つあると思われる」
「親父、ヤツらがここから逃げおおせることを視野に入れているとして、爆弾を仕掛けるとしたら二つの扉の内のどちらかの可能性が高いんじゃねえか?」
警察がここを嗅ぎつけて踏み込んで来た場合、扉を開けたと同時に爆発するという、いわばトラップだ。もう一つの扉は彼らの逃走時に使うはずだから、トラップは仕掛けないだろうと予測される。
「遼二の言う通りだ。その可能性は高いな。あの動画に映っていた爆弾は一つしかなかった。仮に同じ物が幾つもあるとすれば、あの時点で我々に見せびらかしてくるはずだ」
犯人たちは皆、頭脳明晰でプライドの高い有能揃いだ。とかくそうしたタイプの人間は爪を隠すと思われがちだが、わざわざあんな動画を警視庁に送りつけてくるところからすると、自分たちが如何に優秀かということを誇示したい気持ちが先立っての行動とも受け取れる。
「心理的な線から勘繰ると、もしも爆弾を他にも所持しているとすれば必ず動画で大々的に見せつけてくるはず――。爆弾はおそらく一つしかない」
とすれば、あとはそれがどこに仕掛けられているのかということだ。
「復讐の矛先が警察であるなら、人質を殺すようなことは考えまい。万が一逮捕されても罪の重さがまるで違ってくるからな。そこら辺は頭のいいヤツらのことだ、人質に怪我を負わせるようなリスクは避けてくるはずだ。遼二の言うように、爆弾は警察へのトラップという目的で扉の一つに仕掛けられている可能性が高い」
問題は二つの扉の内のどちらに仕掛けられているかだが、現時点でそれを知る手立てはない。安易に開ければその場でドカンだ。
「とにかく――このフレームを落としてヤツらの出方を見よう」
僚一は皆に身を隠すよう指示すると、わざと大きな音が出るようにフレームを叩き落とした。
しばしの後、案の定地下から様子見にやって来る気配が感じられた。どうやら二人のようだ。
「クソ……! もう警察が嗅ぎつけやがったか……」
「まさか! この場所がバレるような情報は何一つ動画に残しちゃいねえ……」
犯人たちは恐る恐るといった調子で階段の上を窺っているようだ。
「仮にサツだとしたら――爆弾で吹っ飛ばしちまうしかねえんじゃありませんか?」
「ダメだ! あれはもうドアに括り付けちまってる! 今更外せるわけねえだろが!」
「けど……もし警察が大勢で待機していたとしたら……」
「その時は腹を括るしかねえな……。爆弾のスイッチは俺たちの手元にあるんだ。こいつを掲げて警察のヤツらを外に追い出すしかねえ。とにかくこのバットと鉄パイプを持って様子を見て来い。もしもサツがいたらスイッチを掲げるフリをしてすぐに戻って来るんだ」
「は、はぁ……了解です……。そんじゃ行って来ますが……」
どうやら指示を出しているのは丸中という男のようだ。様子見部隊は手下だろう、声の様子から尻込みしているのが窺える。
「やはり爆弾は扉の一つに仕掛けられているようだな。よし、ひとまず全員身を隠せ! ヤツらのツラを確認する」
僚一の指示で皆は物陰に身を潜めて犯人が登ってくるのを待った。
見張りは地下へ戻って丸中らに報告するだろうから、その後で侵入できる入り口を探すという。
「見たところ地下へ通ずる階段は一箇所しかない。だが、さっきの動画では鉄製の扉が二箇所に見られた。おそらくは地下へ降りると入り口が二つあると思われる」
「親父、ヤツらがここから逃げおおせることを視野に入れているとして、爆弾を仕掛けるとしたら二つの扉の内のどちらかの可能性が高いんじゃねえか?」
警察がここを嗅ぎつけて踏み込んで来た場合、扉を開けたと同時に爆発するという、いわばトラップだ。もう一つの扉は彼らの逃走時に使うはずだから、トラップは仕掛けないだろうと予測される。
「遼二の言う通りだ。その可能性は高いな。あの動画に映っていた爆弾は一つしかなかった。仮に同じ物が幾つもあるとすれば、あの時点で我々に見せびらかしてくるはずだ」
犯人たちは皆、頭脳明晰でプライドの高い有能揃いだ。とかくそうしたタイプの人間は爪を隠すと思われがちだが、わざわざあんな動画を警視庁に送りつけてくるところからすると、自分たちが如何に優秀かということを誇示したい気持ちが先立っての行動とも受け取れる。
「心理的な線から勘繰ると、もしも爆弾を他にも所持しているとすれば必ず動画で大々的に見せつけてくるはず――。爆弾はおそらく一つしかない」
とすれば、あとはそれがどこに仕掛けられているのかということだ。
「復讐の矛先が警察であるなら、人質を殺すようなことは考えまい。万が一逮捕されても罪の重さがまるで違ってくるからな。そこら辺は頭のいいヤツらのことだ、人質に怪我を負わせるようなリスクは避けてくるはずだ。遼二の言うように、爆弾は警察へのトラップという目的で扉の一つに仕掛けられている可能性が高い」
問題は二つの扉の内のどちらに仕掛けられているかだが、現時点でそれを知る手立てはない。安易に開ければその場でドカンだ。
「とにかく――このフレームを落としてヤツらの出方を見よう」
僚一は皆に身を隠すよう指示すると、わざと大きな音が出るようにフレームを叩き落とした。
しばしの後、案の定地下から様子見にやって来る気配が感じられた。どうやら二人のようだ。
「クソ……! もう警察が嗅ぎつけやがったか……」
「まさか! この場所がバレるような情報は何一つ動画に残しちゃいねえ……」
犯人たちは恐る恐るといった調子で階段の上を窺っているようだ。
「仮にサツだとしたら――爆弾で吹っ飛ばしちまうしかねえんじゃありませんか?」
「ダメだ! あれはもうドアに括り付けちまってる! 今更外せるわけねえだろが!」
「けど……もし警察が大勢で待機していたとしたら……」
「その時は腹を括るしかねえな……。爆弾のスイッチは俺たちの手元にあるんだ。こいつを掲げて警察のヤツらを外に追い出すしかねえ。とにかくこのバットと鉄パイプを持って様子を見て来い。もしもサツがいたらスイッチを掲げるフリをしてすぐに戻って来るんだ」
「は、はぁ……了解です……。そんじゃ行って来ますが……」
どうやら指示を出しているのは丸中という男のようだ。様子見部隊は手下だろう、声の様子から尻込みしているのが窺える。
「やはり爆弾は扉の一つに仕掛けられているようだな。よし、ひとまず全員身を隠せ! ヤツらのツラを確認する」
僚一の指示で皆は物陰に身を潜めて犯人が登ってくるのを待った。
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