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倒産の罠
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「うむ――、その可能性もゼロではないが。それより今の動画に出ていた犯人の声だが、一人は中橋という野郎で間違いねえな。もう一人は聞き覚えのない声だった」
鐘崎と曹は直接中橋と対面している為、彼の声だというのは分かったようだ。
「氷川と冰を偵察に来た三人とも違う気がしたが――」
その三人の声は紫月が送ってきたボイスメモで確認していたが、彼らの声とも違うようだ。むろんのことボイスメモから周囲の雑音を取り除いて声紋だけを取り出す作業も済んでおり、比較してみたものの一致しない。
「ということは、丸中ってヤツかも知れんな。あれだけの人数を拉致して、わざわざ警視庁相手にこんな動画を送りつけてくるくらいだ。いよいよボスのお出ましというわけか」
鐘崎らの推測の傍らでは、僚一と源次郎が動画から組み立てた3D画像の作成を急いでいた。
「よし、細かいところは多少違うかも知れんが、大まかにはこんな感じの造りの部屋と思われる。動画から目視できた出入り口は二箇所、鉄製の扉だろう。天井の高さは一般的な家屋の約二倍くらいだ」
「とすると、倉庫か何かに使われていた感じでしょうか。人質になっている皆さんの手前側の様子が分かりませんが、もしかしたら警備室か電気室とも考えられますな。コンクリートに所々ヒビが見られますので、割合古いビルの地下室かと――」
ちょうどその時だった。僚一が目星をつけた三箇所のビルに向かっていた捜査員たちから次々と現場の状況報告が上がってきた。
「僚一さん! どうやら三箇所の内の一つがクサいようです! 周辺に車が数台確認されて、人の気配が見受けられると。どうやら解体直前のビルのようで、周りが工事用の足場とトタンで囲われているとのことですが――」
丹羽が僚一らに向かってそう言い掛けた時、残り二箇所を偵察していた捜査員からはどうやらハズレのようだと報告が入った。その二つ共に規模は似たような大きさの建物だそうだが、個人経営の会社や事務所らしきが混在する雑居ビルのようで、人影は見当たらないとのことだ。
「解体間近の工事現場か――。そこで当たりだろうな。丹羽、現場には俺たちが出向く。お前さんの方は引き続き犯人たちからの連絡を待っていてくれ」
「承知しました! 先程の話ではもうあと三十分ほどで再び連絡が来るはずですから、僚一さんたちの方へも画像と音声を共有します!」
「頼んだ。では我々はすぐに移動だ!」
僚一以下、周に鐘崎、曹に李ら側近たちと源次郎、紫月も同行して目星のビルへと急いだ。
その車中で僚一が犯人たちの動機について自らの考えを述べていた。
「丸中を筆頭に、今回の犯人たちはいずれも高学歴の有能揃いだ。そんなヤツらがわざわざ警視庁宛てにあんな動画を送ってよこしたところからすると、おそらく逃げおおせることは考えていないんじゃねえかと思われる」
「――どういうことだ。じゃあヤツらは最初から捕まる覚悟でこんなことをしでかしたってのか?」
息子である鐘崎が訊く。
「さっきの動画では爆弾を仕掛けてトンズラすると言っていたな。例えそれが成功して、今は逃げ切れたとしても、いずれにしろ捕まるのは時間の問題だ。ヤツらとてそれが分からないほど無能ではあるまい。――とすればだ、ヤツらの目的は――」
「目的は……?」
「おそらく復讐だ」
僚一の推測に周も鐘崎も皆、息を呑んだ。
鐘崎と曹は直接中橋と対面している為、彼の声だというのは分かったようだ。
「氷川と冰を偵察に来た三人とも違う気がしたが――」
その三人の声は紫月が送ってきたボイスメモで確認していたが、彼らの声とも違うようだ。むろんのことボイスメモから周囲の雑音を取り除いて声紋だけを取り出す作業も済んでおり、比較してみたものの一致しない。
「ということは、丸中ってヤツかも知れんな。あれだけの人数を拉致して、わざわざ警視庁相手にこんな動画を送りつけてくるくらいだ。いよいよボスのお出ましというわけか」
鐘崎らの推測の傍らでは、僚一と源次郎が動画から組み立てた3D画像の作成を急いでいた。
「よし、細かいところは多少違うかも知れんが、大まかにはこんな感じの造りの部屋と思われる。動画から目視できた出入り口は二箇所、鉄製の扉だろう。天井の高さは一般的な家屋の約二倍くらいだ」
「とすると、倉庫か何かに使われていた感じでしょうか。人質になっている皆さんの手前側の様子が分かりませんが、もしかしたら警備室か電気室とも考えられますな。コンクリートに所々ヒビが見られますので、割合古いビルの地下室かと――」
ちょうどその時だった。僚一が目星をつけた三箇所のビルに向かっていた捜査員たちから次々と現場の状況報告が上がってきた。
「僚一さん! どうやら三箇所の内の一つがクサいようです! 周辺に車が数台確認されて、人の気配が見受けられると。どうやら解体直前のビルのようで、周りが工事用の足場とトタンで囲われているとのことですが――」
丹羽が僚一らに向かってそう言い掛けた時、残り二箇所を偵察していた捜査員からはどうやらハズレのようだと報告が入った。その二つ共に規模は似たような大きさの建物だそうだが、個人経営の会社や事務所らしきが混在する雑居ビルのようで、人影は見当たらないとのことだ。
「解体間近の工事現場か――。そこで当たりだろうな。丹羽、現場には俺たちが出向く。お前さんの方は引き続き犯人たちからの連絡を待っていてくれ」
「承知しました! 先程の話ではもうあと三十分ほどで再び連絡が来るはずですから、僚一さんたちの方へも画像と音声を共有します!」
「頼んだ。では我々はすぐに移動だ!」
僚一以下、周に鐘崎、曹に李ら側近たちと源次郎、紫月も同行して目星のビルへと急いだ。
その車中で僚一が犯人たちの動機について自らの考えを述べていた。
「丸中を筆頭に、今回の犯人たちはいずれも高学歴の有能揃いだ。そんなヤツらがわざわざ警視庁宛てにあんな動画を送ってよこしたところからすると、おそらく逃げおおせることは考えていないんじゃねえかと思われる」
「――どういうことだ。じゃあヤツらは最初から捕まる覚悟でこんなことをしでかしたってのか?」
息子である鐘崎が訊く。
「さっきの動画では爆弾を仕掛けてトンズラすると言っていたな。例えそれが成功して、今は逃げ切れたとしても、いずれにしろ捕まるのは時間の問題だ。ヤツらとてそれが分からないほど無能ではあるまい。――とすればだ、ヤツらの目的は――」
「目的は……?」
「おそらく復讐だ」
僚一の推測に周も鐘崎も皆、息を呑んだ。
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