極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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 鐘崎曰く、自分で自分がイイ男だとは思っていないが、愛想がないのは認めるところだし、確かにそういった警戒心のようなものが全く無いとは言い切れないかも知れないと言った。
「俺には紫月がいるし、仮に恋愛感情を向けられても応えられない。だがそれをどう説明すれば分かってもらえるのかと悩むのは事実だ。せっかくの好意をあまり邪険にしてはすまないと思うが、断った挙句に逆恨みされても面倒だ――とも思う。その逆恨みが俺に向けられるならまだしも、紫月に向けられたらと思うと恐怖に感じるのは確かだ。実際、この前は紫月に向けられてしまった。今後もしも同じようなことがあったとしたらと考えると……恋愛感情を持たれること自体に嫌悪感が湧いてしまっている。実はあれ以降もそういう感情を向けられた際に、俺は失礼と思えるほどの態度で断ったのは事実だ」
 まるでカウンセラーに打ち明けるかのように素直な言葉がついて出る。と同時に、鐘崎が人間不信に陥りそうになっていることを周をはじめ周りの皆はずっと心配してくれていたのだということにも気づいたのだった。
 そうか――周が先程からメビィに『何でそんなことを訊くのだ』というような質問を投げ掛けていたのはそういう理由だったのだ。以前に自分を嵌めたことのあるこのメビィに、その時の気持ちを聞くことで少しでも自分が今抱えている悩みの突破口になればと思ってくれたのだろう。鐘崎は今更ながら皆に心配を掛けていたことを申し訳なく思った。
 メビィにしてもそんな鐘崎や周らの気持ちが分かったのだろう。もう二度とこの前のように紫月を危険な目に遭わせない為にはどうすればいいのかと思い悩む鐘崎の気持ちが手に取るようだった。
「ねえ遼二さん、さっきアタシがあなたには多分猛アタックはしないと言った理由だけど、それはあなたを手に入れるまでは必死になっても、実際手に入ったらいずれこうなるだろうっていう先が見えるからなの。それはね、こんなにイイ男でもオナラもするしゲップもする、なんだ普通の男とどこも変わらないじゃないの! だけどその割には気位高そうだし、正直言ってユーモアもないわ。顔がいいだけで安らぎも面白みもないなんて、これじゃもっと他の――一緒にいて気が楽な男の方が断然いいじゃないっていうことに気がつく時が来るから――っていうのが心理学上のアタシの意見」
 かなり辛辣な言い草だが、鐘崎には続きが気になって仕方ないらしい。気分を害するどころか、もっと自分を分析して欲しいといったような顔つきで話の続きを待っていた。
「何が言いたいかっていうと、要はそんなに気張らずにいられるようになった方が楽よという意味。あなたは確かに格好いいし、その見た目だけで女を惹きつけてやまないのは事実だわ。でもそれが鬱陶しいと思うが故に、あなたが相手との距離を取れば取るほど逆にこのひとをどうにかして手に入れたいっていう天邪鬼な気持ちに火をつけちゃうこともあるんじゃないかしら。あなたが思うようにならないから、その腹いせにあなたが大事にしている紫月さんを傷つけてやるわっていうような感情を起こさせちゃうこともある。でもあなたが鷹揚に構えていれば、いずれ女の方からこの人も普通の男なんだって気がつく時がくる。いざ手に入ったところで理想なんてすぐに崩れちゃうものよ。一生付き纏われるどころか案外飽きられちゃって女の方から逃げていくかも知れないわ。だから――」
 あまり疑心暗鬼にならないで、もっと楽に構えていたらいいのよと言ってメビィは笑った。
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