極道恋事情

一園木蓮

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春遠からじ

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 メビィは驚きながらもその通りだとうなずいてみせた。
「ええ……、実はそうなの。エージェントを目指している時に相手の心を読むっていうか、ちゃんと理論立てて分析できるようにって心理学を学んだわ。遼二さんを嵌めるっていう作戦の時も、チームがアタシに任せてくれたのはアタシなら彼の心を分析できると思ってくれたからなの」
「やはりそうでしたか。お話をうかがっていて、そうした方面のことを学ばれているのだと思ったものですから」
 鄧がそんなことを言うので、周もまたより一層興味が湧いたようだ。
「なるほどな。だったらちょうどいい、もう少し話に付き合っちゃくれねえか?」
「ええ、アタシでお役に立てることなら」
 周はまたしても皆が『え?』と思うようなことを口にしてみせた。
「だったら仮に俺たち全員がアンタに好意を持っているとしてだな。アンタがその気になりさえすれば確実に全員が振り向くだろうってな場合、アンタだったら誰を選ぶ? 実際誰にアタックするか――でもいい。できれば全員について答えられる範囲で構わねえから教えて欲しい」
 さすがのメビィも目を白黒させてしまった。
「そ、そうね……確実にアタシを愛してくれるならっていうことでしょう? だったら――鄧さんかしら」
「ほう? 鄧――とな」
 理由は――? と周が続きを待つ。
「頭のいい人の側でアタシ自身が成長できると思うから」
「なるほど」
 メビィは訊かれた通りに全員について思うことを答えていった。
「周さんでももちろん素敵だと思うわ。さっきも言ったけど、あなたは芯があって恋人や夫婦になったら一途で裏切らないと思うから。冰さんとなら穏やかで安泰な生活が送れそうね。でも幸せ過ぎて欲がなくなるっていうか――アタシ自身の成長が止まっちゃいそうだわ」
 だから冰を選ぶことはないだろうと言う。
「紫月さんとはお互いを高め合っていけそうだし、気取らずにやっていけそう。でも友達感覚の方が先行しちゃって恋人っていうよりも家族的な大切さになっちゃいそうね。だからドキドキできる恋っていう点ではちょっと物足りなく感じちゃうかも」
 えへへと笑いながら胸前で『ごめん』といったように手を合わせる仕草がチャーミングだ。
「だったら鐘崎はどうだ? 見た目は理想、誰かに盗られちまうのが心配ってほどにアンタから見てイイ男だってんなら、そんなヤツが振り向いてくれそうだとしたら、やはり猛アタックしようと張り切るか?」
 ところがメビィは意外な答えを言ってのけた。
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