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慟哭
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その間、敵の目を掻い潜って裏口から潜入した春日野が紫月の元へと急ぐ。
「姐さんッ! こちらへ!」
「春日野……!」
春日野は持ってきた防弾ベストを素早く紫月に着せると、
「退路を確保しています! 今の内に裏へ回りましょう」
そう言って、姐さんを守らんと盾になるように全身を使って紫月の身体を覆った。
「けど……遼が……」
「大丈夫です! 若にとって姐さんがご無事でさえあれば憂いは何もありません!」
「ん……分かった」
紫月は鐘崎を気に掛けながらも、ここでグズグズしていて春日野にまで怪我を負わせてはならないと、ひとまずは言われた通りに裏口へと向かった。
それを見届けた鐘崎にとって、恐れるものはもう何も無くなった。次から次へと向かってくる敵を重い拳と蹴りで打ち破り、ともすれば向けられた拳銃ごと掴み取っては素手で瞬時にその場へと沈めていった。
裏口から脱出した紫月を待っていたのは医師の鄧らと鐘崎組の組員たちだ。すぐに鄧が持って来た毛布で紫月の身体を包み込んでは体温の確保を促す。
「紫月君、医療車へ! お怪我はありませんか?」
「ん、俺は平気……。お陰で怪我もねえし……」
とはいえたった一人で大勢の敵に囲まれて闘い抜いたばかりの彼の精神面が危惧される。
「もう心配はいりません。医療車へ参りましょう!」
皆に囲まれて小走りする中、その医療車から飛び出して来た冰が夢中で駆け寄ってくるのを目にした瞬間に、現実が戻ってくるような気にさせられた。
「紫月さん! こちらです!」
今にも泣き出しそうになるのを必死に堪えて迎えてくれた冰の顔を見た瞬間にホッと気がゆるむ。その後方からは庭師の泰造と小川も駆けつけて、紫月の無事な姿に安堵の溜め息を漏らした。
「親方……! 駈飛ちゃんも……」
「姐さん! 良かった……お怪我なくて!」
小川は前のめりになって大きく肩を揺らしながら胸を撫で下ろしている。安堵の気持ちの大きさがありありと感じられた。
「この小川が天窓まで駆け上がって状況を知らせてくれたんです!」
組員たちに聞いて、紫月は驚くと共に瞳を潤ませた。
「そっか……駈飛ちゃんが。皆んなにも世話掛けちまって……すまなかった。ありがとうな」
紫月は礼を述べつつも、倉庫内の鐘崎らのことが気になっているふうで、すぐにも表へ回って加勢に――と視線を泳がせる。
「とりま応援に回るべ! 日本刀でもありゃあ言うことなしなんだけっども……」
源さん、持って来てくれてないかな――? と、倉庫内を気に掛ける。この状況でまだ加勢に行かんとする紫月に、医師の鄧はその精神の強さをひしひしと感じていた。
「大丈夫です。既に粗方のケリはつきました! ご主人の方には焔老板と李さん、源次郎殿もご一緒です! 全員怪我もなくご無事ですのでご安心を!」
「……マジ?」
「はい! あとは首謀者をふんじばるのみです!」
周らと繋がっている無線でリアルタイムの状況を受け取っている劉に言われて、ようやくと本当に助かったのだと現実感が戻ってくる。紫月は鄧と冰らに見守られる中、一足先に医療車で治療を受けながら待機することとなった。
「姐さんッ! こちらへ!」
「春日野……!」
春日野は持ってきた防弾ベストを素早く紫月に着せると、
「退路を確保しています! 今の内に裏へ回りましょう」
そう言って、姐さんを守らんと盾になるように全身を使って紫月の身体を覆った。
「けど……遼が……」
「大丈夫です! 若にとって姐さんがご無事でさえあれば憂いは何もありません!」
「ん……分かった」
紫月は鐘崎を気に掛けながらも、ここでグズグズしていて春日野にまで怪我を負わせてはならないと、ひとまずは言われた通りに裏口へと向かった。
それを見届けた鐘崎にとって、恐れるものはもう何も無くなった。次から次へと向かってくる敵を重い拳と蹴りで打ち破り、ともすれば向けられた拳銃ごと掴み取っては素手で瞬時にその場へと沈めていった。
裏口から脱出した紫月を待っていたのは医師の鄧らと鐘崎組の組員たちだ。すぐに鄧が持って来た毛布で紫月の身体を包み込んでは体温の確保を促す。
「紫月君、医療車へ! お怪我はありませんか?」
「ん、俺は平気……。お陰で怪我もねえし……」
とはいえたった一人で大勢の敵に囲まれて闘い抜いたばかりの彼の精神面が危惧される。
「もう心配はいりません。医療車へ参りましょう!」
皆に囲まれて小走りする中、その医療車から飛び出して来た冰が夢中で駆け寄ってくるのを目にした瞬間に、現実が戻ってくるような気にさせられた。
「紫月さん! こちらです!」
今にも泣き出しそうになるのを必死に堪えて迎えてくれた冰の顔を見た瞬間にホッと気がゆるむ。その後方からは庭師の泰造と小川も駆けつけて、紫月の無事な姿に安堵の溜め息を漏らした。
「親方……! 駈飛ちゃんも……」
「姐さん! 良かった……お怪我なくて!」
小川は前のめりになって大きく肩を揺らしながら胸を撫で下ろしている。安堵の気持ちの大きさがありありと感じられた。
「この小川が天窓まで駆け上がって状況を知らせてくれたんです!」
組員たちに聞いて、紫月は驚くと共に瞳を潤ませた。
「そっか……駈飛ちゃんが。皆んなにも世話掛けちまって……すまなかった。ありがとうな」
紫月は礼を述べつつも、倉庫内の鐘崎らのことが気になっているふうで、すぐにも表へ回って加勢に――と視線を泳がせる。
「とりま応援に回るべ! 日本刀でもありゃあ言うことなしなんだけっども……」
源さん、持って来てくれてないかな――? と、倉庫内を気に掛ける。この状況でまだ加勢に行かんとする紫月に、医師の鄧はその精神の強さをひしひしと感じていた。
「大丈夫です。既に粗方のケリはつきました! ご主人の方には焔老板と李さん、源次郎殿もご一緒です! 全員怪我もなくご無事ですのでご安心を!」
「……マジ?」
「はい! あとは首謀者をふんじばるのみです!」
周らと繋がっている無線でリアルタイムの状況を受け取っている劉に言われて、ようやくと本当に助かったのだと現実感が戻ってくる。紫月は鄧と冰らに見守られる中、一足先に医療車で治療を受けながら待機することとなった。
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